提供元:遠藤隆尚
地図を見るフィリピンの首都マニラの中心地ともいえる、高架鉄道(LRT)のセントラル・ターミナル駅(Central Terminal Station)から15分。マニラ最大の観光スポット「イントラムロス(Intramuros)」は、初代フィリピン総督となったスペイン人のレガスピが、1571年に外敵の侵入を防ぐために建造した城砦都市跡です。全長4.5kmの堅牢な外壁に囲まれた街は、スペイン統治時代の面影を今に残しながら、東南アジア独特の雑多感と活気があふれだしそうな、ちょっとカオスな街並みです。
今回ご紹介する世界遺産の聖堂は、イントラムロスの目貫通りともいえるルナ通り(General Luna St.)のちょうど中間地点に位置しています。イントラムロスのカオスな街並みを楽しみながら、聖堂を目指しましょう。
正式名称は「ラ・インマクラーダ・ コンセプシオン・サン・アグスティン聖堂」で、1571年に建築されたフィリピン最古の石造りの聖堂といわれています。 しかしその後2度に亘る火事で消失、現在私達が目にしている建物は、1587年に再建されたものです。
スペイン植民地時代に建設された聖堂は、スペイン本国のバロック様式の聖堂をモデルにしつつも、フィリピンの風土に合わせて独自の工夫が施されています。聖堂の入り口ではなんと狛犬さんがお出迎え。フィリピンにカトリックが持ち込まれる前には仏教が息づいていたのか、はたまた中華系の人々による寄贈なのか。謎は深まるばかりです。
提供元:遠藤隆尚
地図を見る聖堂内に足を踏み入れてみましょう。
バロック風の祭壇や壁画が見られます。天井はスペインの聖堂よりも低いのですが、これは日本でもお馴染みの台風や地震に備えた設計なのだそうです。また堅牢な石造りによる耐震構造は、その後の第2次世界大戦時に、爆弾が直撃するも倒壊を免れたほど。スペインのバロック様式の聖堂に見られる豪華さは無いものの、「地震のバロック」と呼ばれる堅実さと工夫が、世界遺産としての価値を認められた理由の1つなのでしょう。
堅実だけではありません。
実はこの天井と壁面に施された装飾は、彫刻ではなく「絵」なのです。トロンプ・ ルイユと呼ばれるだまし絵の技法は、言われなければ気がつかないほどの精密さ。これもまた彫刻が崩れ落ちないための工夫の1つなのかもしれませんが、その出来上がりの素晴らしさは「感動」のひとことです。
提供元:遠藤隆尚
地図を見る聖堂に隣接する博物館は有料ですが、是非立ち寄っておきましょう。
「太陽の沈まない国」と謳われたスペイン帝国の絶大なる力が、東方の地まで及んでいたことが伺える、さまざまな宗教的美術品と宗教画が見られます。僧院を改装して作られた博物館自体も一見の価値があり、ドア飾りや階段、棚や照明など、どれも素晴らしい工芸品です。
*博物館内の展示は写真撮影が禁止です。廊下のみ写真撮影が許可されています。
提供元:遠藤隆尚
地図を見る博物館側から聖堂の2階部分へと回ってみましょう。
2階のバルコニーは、聖堂全体が見渡せる絶好のポジションです。天井画もより近くで見られ、立体的な工夫に加えて、ステンドグラスから差し込む光を考慮して陰影が付けられているのがよくわかります。
パイプオルガンにも目を向けてみましょう。
重厚でシンプルな造りのパイプオルガンの上には、かわいらしい天使たちの彫刻が美しくも躍動的で、今にも飛び立ちそうな勢いです。そして天使の左手の壁には、なんと秘密結社フリーメイソンのシンボルともいわれている「プロビデンスの目」が!なんて、思わず陰謀説と結びつけて、想像するのも楽しいですね。
*「プロビデンスの目」のデザインは、古くから教会や聖堂で用いられる一般的な紋章の1つで、ドイツの世界遺産「アーヘン大聖堂」などでも見られます。
今回ご紹介したのは、世界遺産に登録された4つの聖堂のうちの1つ。その他ルソン島北部に2つ、パナイ島に1つあります。それぞれの聖堂を立ち寄って、その違いを楽しみつつ世界遺産の価値を探ってみるのもおもしろいですね。
*ルソン島北部パオアイの「サン・アグスティン聖堂」、サンタマリアの「ヌエストラ・セニョーラ・デ・ラ・アスンシオン聖堂」、パナイ島ミアガオの「サント・トマス・デ・ビリャヌエバ聖堂」が世界遺産に登録されています。
■サン・サン・アグスティン聖堂・博物館
住所:General Luna St., Intramuros, Manila
*博物館の営業時間など、詳細はMEMOの「San Agustin Church(英語)」を参照してください。
トラベルjpで250社の旅行をまとめて比較!
このスポットに行きたい!と思ったらトラベルjpでまとめて検索!
条件を指定して検索