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レポート2024年1月の景気動向調査

国内景気は、4カ月ぶりに悪化 ~ 能登半島地震や暖冬、自動車の不正問題などにより改善傾向がストップ ~

2024/02/05
景気動向  アンケート

■調査結果のポイント

  1. 2024年1月の景気DIは前月比0.7ポイント減の44.2となり、4カ月ぶりに悪化した。国内景気は、能登半島地震の影響ほか、暖冬による季節商品の不振や自動車メーカーの不正問題などがマイナス要因となり、改善傾向がストップした。今後の国内景気は、2024年問題など構造的な悪材料を抱えるなか、賃上げの継続が焦点となり横ばい傾向で推移するとみられる。
  2. 暖冬や自動車メーカーの不正問題などが幅広い業種にマイナスの影響を及ぼし、10業界中7業界で悪化した。地域別では、10地域中9地域が悪化、1地域が改善した。能登半島地震による影響が『北陸』を中心に表れ、特に「石川」は全国で最大の落ち込みになった。また慢性的な人手不足なども下押し要因だった。規模別では、「大企業」「中小企業」「小規模企業」が4カ月ぶりにそろって悪化した。
  3. 能登半島地震に対して、北陸地方を中心に企業活動への影響を見込んでおり、企業からは消費の自粛ムードを危惧する声もあがっている。

< 2024年1月の動向 :改善傾向がストップ >
2024年1月の景気DIは前月比0.7ポイント減の44.2となり、4カ月ぶりに悪化した。国内景気は、能登半島地震の影響ほか、暖冬による季節商品の不振や自動車メーカーの不正問題などがマイナス要因となり、改善傾向がストップした。


1月は、令和6年能登半島地震により北陸地方を中心に工場などの操業停止や消費マインドの低下といった悪影響が表れた。また暖冬による冬物商品の売り上げ不振や大手自動車メーカーの不正問題なども下押し要因となった。加えて、旅館やホテルなどではオフシーズンを迎え需要の落ち着きがみられた。


他方、都市開発や半導体関連の設備需要などは景気を下支えしたほか、日経平均株価など金融市場の安定も好材料だった。

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< 今後の見通し : 横ばい傾向で推移 >
今後は、インバウンド需要ほか、GXなどの設備投資拡大が見込まれるなかで、持続的な賃上げによる個人消費の行方がカギとなろう。価格転嫁の進展などによる企業の業績改善、経済対策の実施、生成AIの発展などはプラス材料と言える。また、能登半島地震への復旧・復興需要は押し上げ要因となろう。

他方、人手不足や職人不足、2024年問題など構造的な問題に加えて、物価や金利の動向などの影響も注視が必要である。さらに、自動車の不正問題や海外経済の動向も見守る必要があろう。

今後の国内景気は、2024年問題など構造的な悪材料を抱えるなか、賃上げの継続が焦点となり横ばい傾向で推移するとみられる。

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業界別: 10業界中7業界が悪化、暖冬や自動車の不正問題などが悪材料に

  • 暖冬や自動車メーカーの不正問題などが幅広い業種にマイナスの影響を及ぼし、10業界中7業界で悪化した。さらに、観光の閑散期を迎え、旅館やホテルなどを中心に需要の落ち着きがみられた。加えて能登半島地震による先行き不透明感も下押し要因となった。
  • 『製造』(40.4)… 前月比1.1ポイント減。2カ月連続で悪化。ダイハツ工業の不正問題の影響を受けて「対象車種の部品生産が停止状態」(自動車部分品・付属品製造)といった声があがる「輸送用機械・器具製造」(同3.1ポイント減)は2カ月連続で悪化。暖冬の影響で売り上げの不振が続く「繊維・繊維製品・服飾品製造」(同2.2ポイント減)は4カ月連続で下落した。また、海外経済の低迷や電線関係が入手困難になったなどと聞かれる「機械製造」(同1.3ポイント減)は、2年11カ月ぶりに30台に低下した。他方、蓄電池需要が堅調といった声のある「電気機械製造」(同1.1ポイント増)は2カ月ぶりに改善した。
  • 『サービス』(50.2)…同0.7ポイント減。4カ月ぶりに悪化。オフシーズンを迎え需要に落ち着きがみられる「旅館・ホテル」(同5.6ポイント減)は2カ月連続で悪化。加えて能登半島地震の影響で「予約のキャンセルが多数に渡り、また断水により休館となった」(旅館)といった声も寄せられた。また年末からの需要が一段落した「飲食店」(同3.7ポイント減)も下落した。民間設備投資の動向は依然として不透明といった声がある「リース・賃貸」(同1.3ポイント減)や、製造各社の減産などの影響を受ける「人材派遣・紹介」(同1.2ポイント減)は、ともに2カ月連続で悪化した。他方、「医療・福祉・保健衛生」(同1.2ポイント増)は2カ月連続で改善した。
  • 『小売』(40.8)…同0.7ポイント減。2カ月ぶりに悪化。総合スーパーなどを含む「各種商品小売」(同1.4ポイント減)は5カ月連続で悪化、暖冬の影響で冬物商品の売り上げ低迷が響いた。暖冬に加え、能登半島地震等により消費マインドの低下を感じるといった声が複数聞かれる「繊維・繊維製品・服飾品小売」(同3.7ポイント減)は2カ月ぶりに悪化した。また、「医薬品・日用雑貨品小売」(同0.3ポイント減)は4カ月ぶりに落ち込んだ。他方、「中古車相場は年が明けて若干上昇基調」(中古自動車小売)といった声がある「自動車・同部品小売」(同2.7ポイント増)は厳しいながらも3カ月ぶりに改善した。
  • 『不動産』(48.1)…同0.6ポイント増。3カ月ぶりに改善。「都市開発が進み、人流が回復、飲食店舗などの活気が回復している」(貸事務所)など大都市圏での再開発事業が好材料となっている。また「価格高騰はしているものの新築分譲マンションの供給が少なく、低金利も後押しになり売れ行きは比較的好調」(不動産代理・仲介)といった声も聞かれた。他方、物件価格の高騰の持続により、今後の購入意欲の低下を危惧する声もあがっている。



規模別: 全規模が4カ月ぶりにそろって悪化、個人消費の落ち込み目立つ

  • 「大企業」「中小企業」「小規模企業」が4カ月ぶりにそろって悪化した。『サービス』『小売』など個人消費が落ち込んだ一方で、全規模で『建設』『不動産』が好転した。
  • 「大企業」(47.9)…前月比0.2ポイント減。2カ月連続で悪化。飲食店や旅館、総合スーパーなどが大幅に悪化し『サービス』『小売』など6業界が落ち込んだ。他方、貸会議室の稼働が高まる『不動産』や、年度末に向け業務確保が進む『建設』など3業界で改善した。
  • 「中小企業」(43.6)…同0.7ポイント減。4カ月ぶりに悪化。ダイハツ工業の問題などから自動車関連が大きく落ち込む『製造』が悪化した。また、燃料費の高止まりなどで運輸関連も下落。他方、「大企業」と同様に『建設』『不動産』は改善した。
  • 「小規模企業」(42.6)…同0.7ポイント減。2カ月ぶりに悪化。「故障しても買替ではなく、修理を希望」というように家電などで買い控えが目立つ『小売』が2カ月ぶりに悪化した。他方、貸店舗の賑わいや再開発事業が後押しし『不動産』は5カ月ぶりに改善した。

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地域別: 能登半島地震の影響などで9地域で悪化、人手不足などの問題も

  • 『北陸』『北海道』など10地域中9地域が悪化、1地域が改善した。能登半島地震による影響が『北陸』を中心に表れ、特に「石川」は全国で最大の落ち込みになった。加えて、慢性的な人手不足など構造的な問題が下押し、都道府県別では32都道府県が悪化した。
  • 『北陸』(40.0)…前月比2.5ポイント減。3カ月ぶりに悪化。「石川」「富山」「新潟」の3県が悪化し、「福井」は横ばいだった。「地震の影響でホテル・飲食店の予約キャンセルがある」など能登半島地震の影響が色濃く表れ、「石川」は5ポイント以上の悪化となった。
  • 『北海道』(41.6)…同1.7ポイント減。2カ月ぶりに悪化。慢性的な人手不足や原材料費の高騰、天候不順などで『製造』や『農・林・水産』を含む7業界で下向いた。また、全規模で悪化し、とりわけ「小規模企業」が大きく落ち込んだ。
  • 『近畿』(43.6)…同1.0ポイント減。4カ月ぶりに悪化。域内6府県すべてで下落した。人材確保に厳しさが表れる『運輸・倉庫』など8業界で悪化し、大阪・関西万博の準備で資材などの調達が困難になってきたといった声も複数聞かれた。



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【今月のポイント(1)】能登半島地震による影響

  • 能登地方に本社を置く企業数は、4,075社。最も多い自治体は七尾市で705社だった
  • 北陸地方を中心に企業活動への影響を見込んでおり、企業からは消費の自粛ムードを危惧する声もあがっている



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【今月のポイント(2)】 自動車メーカーの不正問題に関する動向

  • ダイハツ工業、豊田自動織機それぞれを頂点とするサプライチェーン企業は8,136社と5,319社にのぼった
  • 企業からは部品生産の停止などを受けて、売り上げへの影響を懸念する声があがっている

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【調査先企業の属性】

1.調査対象(2万7,308社、有効回答企業1万1,431社、回答率41.9%)

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2.調査事項

・景況感(現在)および先行きに対する見通し
・経営状況(売り上げ、生産・出荷量、仕入れ単価・販売単価、在庫、設備稼働率、従業員数、時間外労働時間、雇用過不足、設備投資意欲)および金融機関の融資姿勢について

3.調査時期・方法

2024年1月18日~1月31日(インターネット調査)

【景気動向指数(景気DI)について】

■TDB景気動向調査の目的および調査項目
全国企業の景気判断を総合した指標。国内景気の実態把握を目的として、2002年5月から調査を開始。景気判断や企業収益、設備投資意欲、雇用環境など企業活動全般に関する項目について全国2万7千社以上を対象に実施している月次統計調査(ビジネス・サーベイ)である。

■調査先企業の選定
全国全業種、全規模を対象とし、調査協力の承諾が得られた企業を調査先としている。

■DI算出方法
DI(ディフュージョン・インデックス〈Diffusion Index〉)は、企業による7段階の判断に、それぞれ以下の点数を与え、これらを各選択区分の回答数に乗じて算出している。

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景気DIは、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる(小数点第2位を四捨五入)。また、企業規模の大小に基づくウェイト付けは行っておらず、「1社1票」で算出している。

■企業規模区分
企業の多様性が増すなか、資本金や従業員数だけでは計りきれない実態の把握を目的に中小企業基本法に準拠し、全国売上高ランキングデータを加え下記の通り区分している。

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■景気予測DI
景気予測DIは、ARIMAモデルと構造方程式モデルの結果をForecast Combinationの手法で算出。破線は予測値の幅(予測区間)を示している

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