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レポート倒産集計 2024年 6月報

2024/07/05

倒産件数は807件 26カ月連続で前年同月を上回る
6月としては過去10年で最多

倒産件数

807件

前年同月比

+3.2%

前年同月

782件

負債総額

1079億1800万円

前年同月比

▲12.4%

前年同月

1232億800万円

概況・主要ポイント
  • ■倒産件数は807件(前年同月782件、3.2%増)と、26カ月連続で前年同月を上回った。6月としてはコロナ禍初期に倒産件数が急増した2020年の806件を上回り、過去10年で最多となった
  • ■負債総額は1079億1800万円(前年同月1232億800万円、12.4%減)と、4カ月連続で前年同月を下回った。負債トップは、(株)カイロスの81億8200万円
  • ■業種別にみると、7業種中3業種で前年同月を上回った。『サービス業』(前年同月180件→214件、18.9%増)が、2000年以降で初めて4カ月連続で200件を上回った。特に、経営コンサルタントなど「専門サービス」(同23件→45件)が大幅に増加した
  • ■主因別にみると、『不況型倒産』の合計は661件となり、26カ月連続で前年同月を上回った
  • ■態様別にみると、「破産」が771件で最も多く、27カ月連続で前年同月を上回った
  • ■規模別にみると、負債「5000万円未満」(491件)が最多。資本金『個人+1000万円未満』(585件)は全体の72.5%を占め、過去2番目の規模となった
  • ■業歴別にみると、『新興企業』は276件となり、9カ月連続で200件を超えた
  • ■地域別にみると、9地域中5地域で前年同月を上回った。最も増加率が高かったのは『北海道』(前年同月16件→28件、75.0%増)で、10カ月ぶりに75%以上の増加率となった。『北陸』(同21件→26件、23.8%増)は7カ月連続で20件を超え、前年同月を上回った


■業種別7業種中3業種で前年同月を上回る 『サービス業』は4カ月連続で200件超

業種別にみると、7業種中3業種で前年同月を上回った。『サービス業』(前年同月180件→214件、18.9%増)が最も多く、『小売業』(同163件→171件、4.9%増)、『建設業』(同160件→148件、7.5%減)が続いた。『サービス業』は、2000年以降で初めて4カ月連続で200件を上回った。増加率でみると、『製造業』(同75件→90件、20.0%増)が最も高かった。
業種を細かくみると、前年同月を下回った『建設業』では、「総合工事」(前年同月44件→63件)が大きく増加した。『サービス業』では、経営コンサルタントなど「専門サービス」(同23件→45件)が増加。『運輸・通信業』では、ドライバー不足などに直面している「道路貨物運送」(同33件→34件)も増加となった。

■倒産主因別『不況型倒産』は661件、26カ月連続で前年同月を上回る

主因別にみると、「販売不振」が650件(前年同月619件、5.0%増)で最も多く、全体の80.5%(対前年同月1.3ポイント増)を占めた。内訳を業種別にみると、「サービス業」(前年同月147件→165件)が最も多く、「小売業」(同135件→148件)、「建設業」(同135件→124件)が続いた。「売掛金回収難」(同2件→5件、150.0%増)などを含めた『不況型倒産』の合計は661件(同632件、4.6%増)となり、26カ月連続で前年同月を上回った。
「経営者の病気、死亡」(前年同月23件→20件、13.0%減)は5カ月ぶりに、「放漫経営」(同17件→11件、35.3%減)は2カ月連続で、それぞれ前年同月を下回った。一方、「経営多角化の失敗」(同2件→6件、200.0%増)は2カ月連続で前年同月を上回った。

※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を『不況型倒産』として集計

■倒産態様別「破産」は771件、27カ月連続で前年同月を上回る

倒産態様別にみると、『清算型』倒産の合計は793件(前年同月751件、5.6%増)となり、全体の98.3%(対前年同月2.3ポイント増)を占めた。『再生型』倒産は14件(同31件、54.8%減)にとどまり、6カ月ぶりに10件台となった。
『清算型』では、「破産」が771件(前年同月724件、6.5%増)で最も多く、27カ月連続で前年同月を上回った。「特別清算」は22件(同27件、18.5%減)となり、7カ月ぶりに前年同月を下回った。
『再生型』では、「民事再生法」が14件(前年同月31件、54.8%減)にとどまった。個人が11件、法人で3件発生した。

■規模別資本金『個人+1000万円未満』の構成比が過去2番目の規模、中小零細企業の倒産増

負債額規模別にみると、「5000万円未満」が491件(前年同月435件、12.9%増)で最も多く、「1億円以上5億円未満」が166件(同181件、8.3%減)で続いた。
資本金規模別では、『個人+1000万円未満』の倒産が585件(前年同月536件、9.1%増)となり、全体の72.5%を占めた。構成比としては、2021年11月(72.6%)に次いで過去2番目の規模となり、中小零細企業での倒産が増えている。

■業歴別業歴10年未満の『新興企業』は276件、9カ月連続で200件超

業歴別にみると、「30年以上」が256件(前年同月245件、4.5%増)で最も多く、全体の31.7%を占めた。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は11件(同7件、57.1%増)発生し、3カ月連続で前年同月を上回った。
業歴10年未満の『新興企業』[「3年未満」(前年同月39件→34件、12.8%減)、「5年未満」(同46件→79件、71.7%増)、「10年未満」(同138件→163件、18.1%増)]は276件(前年同月223件、23.8%増)となり、9カ月連続で200件を超えた。内訳を業種別にみると、「サービス業」(同66件→97件、47.0%増)が最も多く、2000年以降で最多を更新。「小売業」(同43件→72件、67.4%増)、「建設業」(同49件→46件、6.1%減)が続いた。

■地域別9地域中5地域で前年同月を上回る 『北陸』は7カ月連続で20件超え

地域別にみると、9地域中5地域で前年同月を上回った。最も件数が多かったのは、『関東』(前年同月258件→274件、6.2%増)。「神奈川」(同31件→42件)が大幅に増加した。このほか、『近畿』(同204件→212件、3.9%増)は、「大阪」(同102件→119件)の増加が目立った。一方、「静岡」(同21件→11件)が大きく減少したことで、『中部』(同111件→99件、10.8%減)は前年同月を下回った。
最も増加率が高かったのは『北海道』(前年同月16件→28件、75.0%増)で、10カ月ぶりに75%以上の増加率となった。次いで、『北陸』(同21件→26件、23.8%増)は7カ月連続で20件を超え、前年同月を上回った。

■景気DI2024年6月の景気DIは43.3、3カ月連続後退

2024年6月の景気DIは前月比0.2ポイント減の43.3となり、3カ月連続で悪化した。国内景気は、円安にともなうコスト負担の高まりや個人消費の落ち込みにより改善が進まなかった。3カ月連続の悪化は2020年5月以来4年1カ月ぶり。
6月は、宿泊業や娯楽サービス業など個人向けサービスを中心に個人消費DIが大きく落ち込んだ。円安による原材料価格の高止まりなどコスト負担の増加が景況感を下押しする要因となった。さらに人件費の増加や2024年問題への対応、不十分な価格転嫁なども悪材料だった。近隣地域からの旅行客獲得が各地域の観光産業の明暗を分けた。一方で、インバウンド消費が好調だったほか、DX関連投資や民間工事の発注増加、エアコンなど季節商材の販売、活発なイベントの開催などは好材料だった。

■今後の見通しは横ばい傾向で推移

今後の国内景気は、賃上げやボーナスの増加にともなう実質賃金の動向がポイントになる。円安が進むなかで、インバウンド消費の拡大や自動車の挽回生産、世界的な半導体需要の回復などもプラス材料となろう。他方、下振れ要因として、人件費や物流コストの増加、仕入単価の上昇スピードに価格転嫁が十分に追いつかないことや、家計の節約志向の高まりなどが懸念される。今後の景気は、日本銀行の追加利上げや人手不足の継続などマイナス要因も多く、横ばい傾向で推移するとみられる。

今後の見通し■2024年の企業倒産は1万件突破も視野に

2024年上半期の企業倒産は4887件に急増し、前年同期(4006件)を22.0%上回った。物価高、人手不足、コロナ支援策の縮小を受け、上半期としては2014年(4756件)以来10年ぶりの水準まで増加した。急速な円安進行、力強さを欠く個人消費など、下半期も中小企業を取り巻く経営環境は厳しく、2024年の企業倒産は1万件突破も視野に増加基調が続く見通しである。
粉飾決算で金融機関から融資金を詐取したとして、ベアリング販売の堀正工業(2023年7月破産、負債282億6600万円)元代表らが6月18日に逮捕された。40超の金融機関が虚偽の決算書でだまされ、過去に類を見ない“世紀の大粉飾”となった。その後に相次いだ「粉飾倒産」の端緒ともなったが、破産からわずか1年あまりでのスピード立件となりそうだ。事件後、金融機関は融資先の粉飾可能性をこれまで以上に厳しく精査するようになり、今なお粉飾事案の発覚が続いている。今年下半期にかけても、こうした動きはしばらく続くに違いない。

■ゼロゼロ融資の返済が困難な企業は選別へ

政府は6月7日に「今後の中小企業向け資金繰り支援について」を公表し、金融機関に対してコロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底等を要請した。具体的には、新型コロナに焦点を当てた支援策は6月末で終了する一方で、今なおコロナ禍の影響に苦しむ事業者の再生支援を強化する。また、円安等に伴う資材費等の価格高騰対策として実施中の「セーフティネット貸付」は12月末まで継続する。一部の制度を除き、コロナ禍前の平時に戻される形となり、ゼロゼロ融資の返済が難しい企業の選別がどこまで進むのか注視したい。
“私的整理の多数決導入”に向けた議論が再び動き出した。これまでにも、政府は多数決原理に基づく倒産前手続(=私的整理手続)を可能とする法制化を検討してきたが、意見がまとまらず今日に至った経緯がある。経済産業省は6月28日、制度を議論するための新たな有識者会議となる「事業再構築小委員会」を立ち上げ、初回会合を開いた。2025年にも国会での議論に進む可能性がある今回の法制は、債務減免が必須な再生案件の増加が見込まれるなかで、中堅・中小企業の早期かつ迅速な事業再構築の動きを後押しすることになりそうだ。

■円安、利上げ、2024年下半期も小規模事業者の淘汰進む

円安の動きが止まらない。7月3日の外国為替市場で一時1ドル=161円90銭台まで下落し、1986年12月以来37年半ぶりの円安ドル高水準となった。財務省は「急速な円安進行に深刻な懸念を有している」との認識を示しているが、日米金利差を意識した円売り・ドル買いの動きは当面続くとみられる。帝国データバンクの調査では、企業の想定為替レートは平均1ドル=140円88銭と、実勢レートとの間で20円近くの隔たりがある。企業側の想定を上回るスピードで進む円安が事業遂行面に影響を与えるほか、輸入物価の上昇を通じて企業収益がさらに悪化しかねない。
追加利上げがいよいよ現実味を帯びつつある。日本銀行が6月24日に公表した6月の金融政策決定会合の「主な意見」では、一部の政策委員が「円安は物価見通しの上振れの可能性を高める要因であり、(中略)適切な政策金利の水準は、その分だけ上がると考えるべき」と述べるなど、物価や賃上げの動向を踏まえて早期の追加利上げに前向きな意見が出された。企業向け貸出金利は足元ではすでに上昇に転じているが、これからが本番だ。今後は金利負担に耐えられない小規模事業者の倒産が、2024年下半期にかけてさらに増える可能性が高い。

詳細はPDFをご確認ください
2024年上半期報・6月報(倒産動向データ編)