【銀の盾に聞いてみた】ゲームをどれだけ早くクリアできるかを競うコンテンツ「RTA」に熱中する人がいることをご存じだろうか。そんなRTAの国内最大イベント「RTA in Japan」の公式ユーチューブチャンネルの登録者数は40万人を突破している。今回は自らもRTA走者(=プレイヤー)である運営のもか氏に、これまで〝走ってきた〟道のりについて話を聞いた。

 ――まずはRTAというコンテンツの概要について教えていただけますか?

 もか氏(以下もか)RTAはゲームを早くクリアするまでの実時間(時計等で計測する実際の所要時間)を競う遊びになっています。ゲームが好きな方々の中で、さらなるやり込みの1つとしてこのような遊び方が始まりました。

 ――ゲーマーの方がRTAコミュニティーの中心ということでしょうか

 もか もちろん一番最初にRTAを考えた人たちは、何もないところから開拓したわけですが、最近はインターネットでゲームの動画を検索すると、「RTA」という単語が出てくるんです。そこで早くプレイしている〝前例〟を見つけて、新たに取り組まれる方もいらっしゃいますね。

 ――つまり門戸は広がっている、と

 もか 加えて内容にも変化がありまして。「ゲームを始めてから最初のボスを倒すまで」や、「レースゲームのとあるコースだけ」をプレイするといった、ゲームの一部分で競争するスタイルも生まれています。元々RTAの定義も「達成するまでの実時間を競う」ということだけなので、解釈を広げる余地があるということなのかもしれません。

 ――評価が決して高くない、〝クソゲー〟と称されてしまうタイトルを中心にプレイされる方の投稿もありますが、各自がジャンルを決めているのですか?

 もか ジャンルを絞るというよりは、それぞれが自分の好きなゲームをやり込んでいるという場合が多いですね。(評価が低いゲームに関しても)あくまでプレイヤーの方がそういう系統のものが好きだった、ということになるとは思います…。

自らもRTA「走者」であるもか氏
自らもRTA「走者」であるもか氏

 ――それではもかさんがRTAに感じられている魅力を教えてください

 もか 実時間を測るというルールさえ守れればいいので、あらゆるジャンルのゲームでRTAが展開されていることは魅力ですね。

 ――多様性があるということでしょうか

 もか アクションゲームやRPGだけでなく、世の中にはパズルゲームやクイズゲームのRTAを行う方もいらっしゃるんです。タイムを測ることさえできればRTAにはなりますから。

クイズゲームもRTAの対象に(RTA in Japan Summer 2023)
クイズゲームもRTAの対象に(RTA in Japan Summer 2023)

 ――タイムを重視するということですと、スポーツに近い魅力があるのでしょうか?

 もか いえ、むしろエンタメ寄りのコンテンツという感覚がありますね…。やはり「自分たちが楽しいからやっている」という方が大半なんですよ。1分1秒タイムにこだわるという方もいらっしゃいますが、プレイすることの楽しさや、工夫の面白さを追究される方が圧倒的に多いです。普段から遊んでいるゲームの面白さを、より多くの方に知ってほしいという目的でイベントに出場される方もいらっしゃいますね。

 ――それでは「RTA in Japan」を開催するまでの経緯も教えてください

 もか 元々はアメリカで「Games Done Quick」という、会場でRTAを披露するチャリティーイベントが2010年からスタートしまして。これを日本でもやりたいと思ったのが開催のきっかけです。

 ――その頃の日本のRTAを取り巻く状況は…

 もか ユーチューブやニコニコ動画に、個人でプレイ動画を投稿されている方は数多くいました。あとはオンラインのイベントは結構開催されていたのですが、『ドラゴンクエスト』だけ、『ファイナルファンタジー』だけといったように、特定のゲームシリーズを扱うイベントが多くて。RTAをできる方はたくさんいるのに、それを披露する大きな会場だけがないという状況でした。

 ――初の総合型イベントになった、と

 もか そうですね、初の総合型オフラインイベント、ということにはなるかと思います。

2016年からリアルイベントがスタート
2016年からリアルイベントがスタート

 ――開催当初は苦労もあったのではないですか

 もか どうすれば開催できるのか、というところから模索していきました。初回は配信プラットフォームのTwitchさんにかなり協力してもらっていて、そこから少しずつコミュニティー内で運営できるように変えていきました。

 ――「in Japan」と名づけられた当時、日本中に愛好家の方がいらっしゃったのですか?

 もか 日本全国、津々浦々に走者がいるという感覚はありました。それに日本のイベントなのだから、分かりやすく「Japan」と付けてしまおうと(笑い)。今は各地への出張イベントも実施していますが、むしろこれまで「RTA in Japan」に参加した方が、お住まいの地方にRTA文化を持ち帰ってイベントを開催するという事例も増えまして。より広がりを見せているという印象はあります。

2人同時にRTAを披露する時間も(RTA in Japan Summer 2023)
2人同時にRTAを披露する時間も(RTA in Japan Summer 2023)

 ――現在はTwitchで約37万人、ユーチューブで40万人以上の登録者を集めていますが、道のりは順調でしたか?

 もか 基本的には順調で、その中で人気が爆発した瞬間が2回あるという感覚ですね。

 ――ではそのターニングポイントを教えてください

 もか 1つ目は2019年の『街へいこうよどうぶつの森』のトーナメント形式のRTAです。『どうぶつの森』というゲームの本来の目的はのんびり過ごすことなのですが、あるキャラクターに借金を返さないといけないというストーリー上の目標があるんですね。その最初の借金を返すまでの時間を競うという内容で、5人の走者を集めて対戦してもらいました。特に初戦が大接戦で、すごく盛り上がったんですよ。その時は最終的に入力用にキーボードを持ち込んだ方が、わずか1秒差で勝ちました。

 ――この展開が話題を集めたのですね

 もか 実は話題になるまでにも「ラグ」がありました。というのも配信から1~2日後にツイッター(現「X」)で動画を切り抜いてアップされた方がいらっしゃって、その投稿が非常にバズったんです。一般的なイベントは後日バズっても効果が薄いのですが、「RTA in Japan」は5~6日連続で開催していまして。話題になった時点ではまだイベント中だったんですよ。結果的にどれだけの方がSNS経由で配信にたどり着いたのかは分かりませんが、前年は7000人程度だった最大同時視聴者数が、19年は2万5000人強と3倍以上に増えました。そこは1つ大きなターニングポイントだったと感じますね…。

(後編ではもう1つのターニングポイントや、年末に開催される「RTA in Japan Winter 2023」の裏側についても聞きます)

【RTA in Japan】ゲームをクリアするまでのタイムを競う「RTA(Real Time Attack)」の愛好家が集う、国内最大のリアルイベント。公式ユーチューブチャンネルは40万人超の登録者を有する。26日からは「RTA in Japan Winter 2023」が、ベルサール飯田橋ファーストで開催予定。

 公式HPは【https://rtain.jp/】。