VUCA
当世を端的に表現するキーワードとしてしばしば言及される語。不安定さ、不確実さ、複雑さ、曖昧さという、困難な状況が世の中に通底しているという見方を示す。
VUCAの語は軍事分野で用いられ始めたとされ、1990年代にはすでに登場している。2010年第には経営・マネジメントの文脈においてVUCAがキーワードに取り上げられ、あらためて注目を集めている。
VUCA
「VUCA」とは、変化が激しく想定外のことが起こりやすい世界情勢のために将来の予測が困難な状態のことを意味する表現。
「VUCA」とは・「VUCA」の意味
「VUCA(ブーカ)」とは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)という4つの英単語の頭文字を組み合わせて生まれた造語である。変化が激しい世界情勢のため、先行きが不透明で想定外の出来事が起こりやすく、将来の予測が困難な状態を意味する言葉だ。古い意味としては、1991年に「US Army War College(アメリカ陸軍戦略大学校)」で提唱された軍事用語に由来し、アメリカとロシアの冷戦終了後に戦略が複雑化して、先行き不透明になった国際情勢を表した。「VUCA」はその後2010年代に入って、ビジネス分野を中心に新しい意味で捉え直される。2016年の世界経済フォーラム(ダボス会議)では、「VUCA world」という表現が登場し、「世界が予測不可能な状態にある」という意味で広く社会に認知されるようになった。経済産業省が2019年3月に作成した『人材競争力強化のための9つの提言(案)』では、VUCAは「不確実な経済・社会情勢」と定義されている。VUCAの具体的な例として、アメリカ同時多発テロや東日本大震災、EUからの英国の脱退など、予測不可能・想定外な事態が挙げられる。
「VUCA」の読み方
「VUCA」は、ブーカと読む。アルファベットの頭文字を組み合わせて生まれた単語だが、一音ずつブイユーシーエーとは読まないため、注意が必要である。「VUCA」の熟語・言い回し
「VUCA」の熟語・言い回しには、下記のような例がある。VUCA時代とは
「VUCA時代」とは、変動が激しく、予測不可能で複雑な問題を抱える時代のことだ。VUCA時代がいつから始まったのかは、一般的に2010年代以降と考えられている。VUCA時代を示す日本の事例として、終身雇用の崩壊、AIの発展やグローバル化、国際分業などの多様性・複雑性の増大、コロナ禍などが挙げられる。文部科学省も、VUCA時代に入った予測不可能な社会を生きる子どもたちの教育に力を入れている。たとえば、2018年7月28日付の資料『2030年に向けた日本の教育政策について』や、2020年4月27日付の資料『今、教育に問われていること』などで、教育によって「想定外を乗り越えられる」「AIを使いこなせる」「自立的に生きる」などの資質や能力を育むことが提唱された。
Vucaの時代とは
「Vucaの時代」とは、「変動性・不確実性・複雑性・曖昧性」が高いVUCAの状態が続くことで、これまでの価値観やビジネスモデルが通用しなくなった時代のことをいう。将来を予測しやすい安定した世界情勢の時代とは、必要とされる仕事の基本から異なる点に対応するため、特にビジネスの世界で多く使われる言葉だ。たとえば経済産業省が毎年公表する『製造基盤白書(ものづくり白書)』の2020年版では、カリフォルニア大学バークレー校教授デイヴィット・J・ティース氏の提案として、不確実なVucaの時代に企業に求められる能力が3つ挙げられている。
1.感知:脅威や危機を感知する能力
2.捕捉:機会を捉え、既存の資産・知識・技術を再構成して競争力を獲得する能力
3.変容:競争力を持続的なものにするために組織全体を刷新して、変容する能力
VUCA worldとは
「VUCA world」とは、2016年の世界経済フォーラム(ダボス会議)で、「世界が予測不可能な状態にあること」を指して用いられ、広く認知されるようになった言い回しだ。以前から重要課題だった人口減少に伴う縮小経済問題に加え、毎年世界のどこかで発生する大規模自然災害など、次々と予測不可能な出来事が起こる現代世界の状態を表す。また、ビジネスの世界では、ダボス会議より前の使用例も多く存在する。たとえば2014年、世界有数の一般消費財メーカーであるユニリーバ社の年次報告書では、CEOが世界市場の現状を「VUCA world」と表現した。企業経営者などがビジネス分野で用いる場合の「VUCA world」には、「不安定で不確実、複雑で混沌とした市場」という意味がある。
ブーカ【VUCA】
読み方:ぶーか
《volatility(変動性)、uncertainty(不確実性)、complexity(複雑性)、ambiguity(曖昧性)の頭文字から。「ブカ」とも》変化が激しく複雑で、将来の予測が困難となった社会を表す語。
VUCA
VUCA
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/13 03:04 UTC 版)
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VUCA(ブカ[1][2]、ブーカ[3][4])はビジネス用語。volatility(変動性)、uncertainty(不確実性)、complexity(複雑性)、ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べたアクロニム[5][4][6][7]。1990年代後半にアメリカ合衆国で軍事用語として発生したが[8]、2010年代になってビジネスの業界でも使われるようになった[8][4][7]。「今はVUCAの世界になった」というような文脈で使われることも多い。
経緯
1990年代以前の戦争は、国と国との戦いであった。参謀本部が作戦を立案し、現場の部隊が作戦を実行する。ビジネスも同様で、経営陣は経営戦略を立てて、現場が実行する。軍隊もビジネスに携わる企業も組織の形態はヒエラルキーであったと言える[7]。
1990年代以降に発生したアルカーイダがアメリカ合衆国を標的として実行された数々のテロ行為をアルカイーダとアメリカの戦争と見た場合、以前のような「国と国との戦い」とは根本的に異なる状態であった。アルカーイダは国ではなく、組織のようだがトップが誰かはよく分からない。また、トップが作戦を立て現場が実行しているわけでもなく、アルカーイダの思想に同調した人たちが同時多発的にテロを実行している。このようなアルカイーダとの戦争のスタイルを呼ぶのにVUCAという言葉が生まれ、それに応じた新しい戦い方が必要になった[7]。
ビジネスの現場においても、テクノロジーの進歩は急速であり予測は困難、世界の市場は不確実性や不透明性を増した状況となっており、不安定なビジネスの状況を表すのにVUCAが用いられるようになってきた[2]。
VUCAへの対応法
VUCAへの有効な対応方法としてOODAループがある。状態は安定状態から、事態が未知か既知か、そして行動の効果が予測可能か不能かの条件に従いVUCAの状態を構造的に分析して、有効な対応をする戦略をとる[5]。これをVUCAフレームワークという[9]。
あらかじめ、ありうる複数の未来を予測し経営計画を立てるシナリオ・プランニングなどの手法もある[10]。新しい新規のノウハウを得る手段としてオープンイノベーション[11]や越境転職なども注目されている[12]。
出典・脚注
- ^ 入江 2018, p. 25.
- ^ a b 遠藤功 (2015年5月7日). “脱フラット型経営! トヨタの最強組織づくり”. プレジデントオンライン. 2017年9月11日閲覧。
- ^ 入江 2019, p. 97.
- ^ a b c 齊藤美保 (2016年5月9日). “シャープがハマった「VUCA時代」の罠”. 日経BP. 2017年9月11日閲覧。
- ^ a b 入江 2018, pp. 61–64.
- ^ Oliver Mack; Anshuman Khare; Andreas Krämer; Thomas Burgartz (2015). Managing in a VUCA World. Springer. p. 5. ISBN 9783319168890
- ^ a b c d 山下竜大 (2017年7月27日). “軍事用語として誕生したVUCA――激変するビジネスの戦場でリーダーはいかに立ち振る舞うか (1/2)”. ITmedia. 2017年9月11日閲覧。
- ^ a b 入江 2018, pp. 12–20.
- ^ 入江 2019, pp. 68–98.
- ^ VUCA時代に有効なビジョン・戦略策定アプローチ「シナリオプランニング」とは? 第1回
- ^ デジタルビジネスと社会課題に挑む ̶現場や生活者のアイデアを活かす仕組みづくり̶
- ^ VUCA時代の人材獲得戦略 MRI
参考文献
- 入江, 仁之『「すぐ決まる組織」のつくり方 ー OODAマネジメント』フォレスト出版、2018年。ISBN 978-4-866800-09-7。
- 入江, 仁之『OODAループ思考[入門] 日本人のための世界最速思考マニュアル』ダイヤモンド社、2019年。ISBN 978-4-478-10662-4。
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