カリス
カリス
カリス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/25 06:07 UTC 版)
カリス(古希: Χάρις、古代ギリシア語ラテン翻字: Kháris)は、ギリシア神話に登場する、美と優雅を司る女神たち。複数形はカリテス(古希: Χάριτες、古代ギリシア語ラテン翻字: Khárites)。
概要
カリスは通常はゼウスとオーケアノスの娘エウリュノメーの娘たちとされるが[1]、母親はヘーラーとする説もある。また、ヘーリオスとヘスペリスたちの一柱アイグレーの娘たち[2]、あるいはディオニューソスとアプロディーテーの娘たちとする説もある。ローマ神話にも取り入れられ、グラーティア(Gratia、複数形グラーティアエ、Gratiae)と呼ばれた。英語読みグレイス(Grace、複数形グレイシーズ、Graces)でも知られる。
カリスたちは美しい若い娘の姿であるとされる。オリュムポス山の山頂に住み、神々の宴ではアポローンの竪琴やムーサたちの歌声と共に演舞した。神々や人々に肉体的な美しさを表して喜ばせるだけでなく、精神的な部分においても優美を与えたといわれるため、美術だけでなく技術を志す人々にも信仰された。本来は春の芽生えの活力を表した神であったと考えられている。愛と美の女神となってからはアプロディーテーの従者とされるようになり、またその娘とする説も生まれた。
カリスのリスト
元々人数は不定であったらしい。ヘーシオドスの『神統記』によれば、ゼウスと美しき海の女神・エウリュノメーの娘たちとしてアグライアー(「輝き (aglaia)」)、エウプロシュネー(「喜び (euphrosyne)」)、タレイア(「花盛り (thaleia)」)の3柱の名があげられており、一般的にはこの「三美神」がよく知られているが、他の叙事詩ではパーシテアー(「万物の女神 (pasithea)」)[3]、カレー(「美女 (kale)」)[4]、アウクソー(「成長 (auxo)」)とヘーゲモネー(「女王 (hegemone)」)[5]、クレーター(「呼ばれる女 (kleta)」)とパエンナー(「輝く女 (phaenna)」)[6]、カリス(「優雅 (Charis)」)[7]などの名が挙げられている。また、ペイトー(「説得 (Peitho)」)もカリスの1柱と言われることがある[8]。
パーシテアーはホメーロスの『イーリアス』に登場することでよく知られており、パーシテアー、カレー、エウプロシュネーの3柱を、またはノンノスの『ディオニューソス譚』ではパーシテアー、ペイトー、アグライアーの3柱をカリスたちとする説もある。また、アテーナイではアウクソーとヘーゲモネーの2柱以外にペイトーも加えた3柱を、ラコーニア地方ではクレーターとパエンナーの2柱をカリスたちとしていた。後にラコーニア地方のスパルタではアグライアー、エウプロシュネー、クレーターの3柱を指すようになった。またヘーパイストスの妻をカリスの1柱とする説があり、一般的にはこれはアグライアーであるとされるが[9]、ホメーロスによれば単にカリスという名であるとされている[7]。
明らかとなっているカリスたちは下表参照。
カリス | 古代ギリシア語 | ラテン語 | 名前の意味 |
---|---|---|---|
アグライアー | Αγλαια | Aglaia | 輝き |
エウプロシュネー またはエウティミアー |
Ευφροσυνη Ευθυμια |
Euphrosyne Euthymia |
喜び 愉快さ |
タレイア またはタリアー |
Θάλεια Θαλια |
Thaleia Thalia |
花盛り |
パーシテアー | Πασιθεα | Pasithea | 万物の女神 |
カレー またはカレーイス |
Καλη Καλλεις |
Cale Calleis |
美女 |
カリス | Χάρις | Charis | 優雅 |
クレーター | Κλητα | Cleta | 呼ばれる女 |
パエンナー | Φαεννα | Phaenna | 輝く女 |
アウクソー | Αυξω | Auxo | 成長 |
ヘーゲモネー | Ἡγεμονη | Hegemone | 女王 |
ペイトー | Πειθώ | Peitho | 説得 |
脚注
- ^ ヘーシオドス、907~909。アポロドーロス、1巻3・1。ヒュギーヌス、序文。
- ^ アンティマコス(パウサニアス、9巻35・5の引用)。
- ^ 『イーリアス』14巻。
- ^ 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』p.100b。ロバート・グレーヴス『ギリシア神話』。
- ^ パウサニアス、9巻35・2。
- ^ パウサニアス、3巻18・6、9巻35・1。
- ^ a b 『イーリアス』18巻。
- ^ パウサニアス、9巻35・1。
- ^ ヘーシオドス、945~946。
参考文献
- アポロドーロス 『ギリシア神話』 高津春繁訳、岩波文庫(1953年)
- パウサニアス 『ギリシア記』 飯尾都人訳、龍渓書舎(1991年)
- ヘシオドス 『神統記』 廣川洋一訳、岩波文庫(1984年)
- ホメロス 『イリアス(下)』 松平千秋訳、岩波文庫(1994年)
- 高津春繁 『ギリシア・ローマ神話辞典』 岩波書店(1960年)
関連項目
「カリス」の例文・使い方・用例・文例
- 彼女は10代の若者の間でカリスマ的な歌手だ
- Kate Herseyは、ダイエットと健康に関して、国内でナンバーワンのカリスマ的指導者としての評判を得ている。
- 彼はそのサンディカリストの演説に心を打たれた。
- そのコスメトロジストはカリスマ的エネルギーを持っている。
- 彼は人種差別に反対するカリスマ的改革運動者だった。
- そのバンドのボーカリストは暖かい声をしている。
- 彼女はついに最もカリスマ性のある女優として国民から認められました。
- 彼ってクールだから、私たちみんな彼にはカリスマ性があると思っている。
- あの政治家には大いにカリスマ性がある.
- 重大でカリスマ的なリーダー
- カリスマ的指導者
- アメリカ産アカリス
- 米国極西部産のアカリスによく似たリス
- ユーカリストの聖餐の、または、ユーカリストの聖餐に関する
- 米国にあるプロテスタントのカリスマ派の宗派
- カリスマ的指導者の指示に基づきしばしば伝統的な社会の外でしばしば生きる、正統でないか、過激派であるか、間違った宗教または教派の支持者
- カリスマ的指導者の指導に従い、通常因習社会の外で暮らしている異端のカルトのメンバー
- エジプトの美しくてカリスマ的な女王
- 黒人の人種差別に抗議する運動を行った米国のカリスマ的な市民権リーダーでありバプティスト派の牧師(1929年−1968年)
- カリステモンという植物
固有名詞の分類
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