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アカマツとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 植物 > 草木 > アカマツ > アカマツの意味・解説 

あか‐まつ【赤松】

読み方:あかまつ

マツ科常緑高木山野自生樹皮赤褐色裂け目がある。針状2枚が対になってつき、柔らかい。材は建築・家具用、樹脂テレビン油香料原料となる。雌松(めまつ)。


あかまつ【赤松】


マツ類

別名:アカマツ, クロマツ
【英】:Pinus densiflora, P.thunbergii
(マツ科)


本州北部から四国九州経て屋久島にまで分布します。クロマツは、一般に海辺に近い処で見られ海岸防風林として広く造林され、アカマツは、一般的にいえば、海辺から離れた地域見られます。また、両者の間の雑種もあり、アイグロマツ呼ばれます。これらの木材性質は、極端な例除けば、ほとんど同じと考えられます。

木材
アカマツとクロマツは、マツ類のうちでも重硬で、気乾比重は、0.42~0.52(平均値)~0.62です。心材の色は、やや黄色帯びた桃色からかなり赤褐色帯びたものまであり、辺材黄白色です。春から夏にかけて、つくられ細胞の形が大きく違っているため、年輪はっきりし木材の肌目は粗です。細胞間道樹脂道をもっているため、材面に“やに”がにじみ出てくることが多く木材を使うときには注意しなければなりません。未乾燥材は、青変菌によって、青ないし黒色変色することが多いので、伐採早く乾燥することが必要です。水中に完全に入っている時は耐久性あり、かつては用材大量に用いられたものです。一般に木材の形が良くなかったり、変色したりするので、どちらかといえば表面出ない構造用に用いられます。

用途
建築主として軸組敷居床板)、坑木枕木経木木毛パルプ材などが知られています。
かつて、パルプ用材として、エゾマツトドマツなどが多く用いられいましたが、当時大量にあったマツ類をパルプ用材として使うために技術開発熱心にすすめられ結果、この類の木材本州などマツ類の多い地域重要な原料なりました


赤松

読み方:アカマツ(akamatsu)

アカエゾマツ別称
マツ科常緑針葉高木高山植物

学名 Picea glehnii


赤松

読み方:アカマツ(akamatsu)

マツ科常緑針葉高木園芸植物薬用植物

学名 Pinus densiflora


赤松

読み方:アカマツ(akamatsu)

カラマツ別称
マツ科落葉針葉高木高山植物園芸植物

学名 Larix kaempferi


赤松

読み方:アカマツ(akamatsu)

所在 山形県最上郡大蔵村


赤松

読み方:アカマツ(akamatsu)

所在 大分県別府市


赤松

読み方:アカマツ(akamatsu)

所在 静岡県静岡市葵区


赤松

読み方:アカマツ(akamatsu)

所在 愛知県名古屋市緑区


赤松

読み方:アカマツ(akamatsu)

所在 兵庫県川西市


赤松

読み方:アカマツ(akamatsu)

所在 兵庫県赤穂郡上郡町


赤松

読み方:アカマツ(akamatsu)

所在 鳥取県八頭郡若桜町


赤松

読み方:アカマツ(akamatsu)

所在 鳥取県東伯郡三朝町


赤松

読み方:アカマツ(akamatsu)

所在 鳥取県西伯郡大山町


赤松

読み方:アカマツ(akamatsu)

所在 徳島県海部郡美波町

地名辞典では2006年8月時点の情報を掲載しています。

アカマツ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/07 03:13 UTC 版)

アカマツ
 
岩場に生えるアカマツ(十和田湖
保全状況評価[1]
LOWER RISK - Least Concern
(IUCN Red List Ver.2.3 (1994))
分類
: 植物界 Plantae
: 球果植物門 Pinophyta
: マツ綱 Pinopsida
: マツ目 Pinales
: マツ科 Pinaceae
: マツ属 Pinus
: アカマツ P. densiflora
学名
Pinus densiflora Siebold et Zucc.[2]
シノニム
和名
アカマツ
英名
Japanese Red Pine

アカマツ(赤松[4]学名: Pinus densiflora)は、マツ科マツ属の常緑針葉樹である。

形態

常緑針葉樹の高木[5]。樹高は条件が良いと30メートル (m) を超える[6]。樹形は環境によって左右される。明瞭な主幹を持つものが多いが、滋賀県のウツクシマツのように根元から多数分岐し主幹の分からないものもある。樹冠の形状はモミ属Abies)やトウヒ属Picea)といったマツ科針葉樹と比べて比較的崩れやすく形は様々である。樹皮は赤みの強い褐色であり鱗状に薄く剥がれ[6]、次第に亀甲状に縦の割れ目がはっきりしてくる[7][4]。樹皮が剥がれたばかりのところは、赤味を帯びた地肌が見える[5]

枝は同じ高さから四方八方に伸ばす(輪生)。枝は2種類あり我々が枝として認識するものを長枝、葉の付け根にある数ミリメートル (mm) のごく短いものを短枝と呼ぶ。これを枝の2形性などと呼び、マツ科針葉樹では本種を含むマツ属(Pinus)のほか、カラマツ属Larix)やヒマラヤスギ属Cedrus)でも見られる。長枝は鱗片葉という特殊な葉で覆われる。一般に我々が認識する葉については短枝に束生し、本種では1つの短枝には針状の葉が2本である(いわゆる二葉松)。葉の長さは7 - 12センチメートル (cm) 程度[6]。カラマツ属やヒマラヤスギ属も短枝に葉を付けることを基本とするが、これらは枝先の若い長枝に限り長枝にも葉を付ける。これに対し本種を含むマツ属は短枝にしか葉を付けない。葉はクロマツに比べて色が薄く、細く短く、軟らかい。

冬芽は赤褐色の鱗片に覆われ[5]、伸びて新枝になって、下部に雄花がつき、後に先端に雌花をつける[4]。花期は4 - 5月[4]雌雄同株[6]雄花は緑黄褐色を帯びており、若い枝に多数つく[6]雌花は紅紫色で若枝の先端につく[6]

マツ属にはよくあることであるが、雌花で受粉後、胚珠が受精するまでに時間がかかり、球果が本格的に成長するのは受精後である。球果は翌年の10月頃熟す[6]。球果(松ぼっくり)は、長さは4 - 5センチメートル (cm) の卵形になり、開花翌年に熟す[8]。毬果につく種鱗はくさび型で、その内側に長い翼がついた種子が2個つく[8]。毬果は晴れた日に種鱗を開き、種子を散らす[8]

発芽は地上性(英:epigeal germination)で子葉は地上に出てくる。このタイプの子葉は胚乳の栄養を吸い取る吸器、および最初に光合成をおこなう器官という2つの役割がある[9]。子葉は3枚以上ある多子葉植物であり、通常は5枚以上出る。

生態

他のマツ科針葉樹と同じく、菌類と樹木のが共生して菌根を形成している。樹木にとっては菌根を形成することによって菌類が作り出す有機酸や抗生物質による栄養分の吸収促進や病原微生物の駆除等の利点があり、菌類にとっては樹木の光合成で合成された産物の一部を分けてもらうことができるという相利共生の関係があると考えられている。菌類の子実体は人間がキノコとして認識できる大きさに育つものが多く、中には食用にできるものもある。土壌中には菌根から菌糸を通して、同種他個体や他種植物に繋がる広大なネットワークが存在すると考えられている[10][11][12][13][14][15]。アカマツ苗木に感染した菌根では全部の部分の成長を促進するのではなく、地下部の成長は促進するが地上部の成長はむしろ抑制するという報告[16]がある。外生菌根性の樹種にスギニセアカシアの混生や窒素過多の富栄養状態になると菌根に影響を与えるという報告がある[17][12][18][19][20]

石灰岩蛇紋岩花崗岩(真砂土)のような他の植物が嫌う土壌でも生育でき、しばしば優勢となる。尤もこのような土壌では成長はあまりよくないことも多い。

菌根の種類、花粉の媒介、種子の散布様式という3つの事象は独立して進化してきたように見えるが、連携して進化してきたのではないかという説が近年提唱されている。外生菌根、風媒花、重力散布(および風散布)はいずれも同種が密集する状況ほど有利になりやすい形質であると考えられている[21]。マツ科、ブナ科ヤナギ科カバノキ科フタバガキ科などはこの条件を満たす代表的な一群である。

アカマツは尾根沿いや岩場などの貧栄養地によく分布する。このような場所は土壌が酸性のことが多く、アカマツは窒素の利用形態として硝酸態窒素ではなく、アンモニア態窒素をより利用することで適応していると考えられている[22]。肥料分の多い土地を嫌うというわけではなく、苗木に対して施肥を行うと非常に成長がよくなるとされる[23]、また種子の産地によって肥培試験での成長に差が出ることが報告されている[24]。アカマツは多雪には弱い[25]。特に積雪地では雪の吹き溜まるような場所では苗木が定着できないとされ、このことも比較的雪の少ない尾根上によく出現する理由となっていると見られている[26]。種子は雪に埋まった環境で進展する雪腐病にも弱いという[27] 。多雪地に適応できるかできないかの差の理由の一つに樹形が考えられており、適応できない種はハイマツPinus pumila)のような地を這うような樹形に変形できないために雪圧を強く受けてしまうからではという推測がなされている[28]

アカマツの遺伝的な多様性は西日本のものよりも東日本のものが高いという[29]

更新は実生による。萌芽更新(Coppicing)や伏条更新を行うことは知られていない。また、挿し木困難樹種として知られる。人工的にも苗木は実生、もしくは庭木などの場合は接ぎ木苗で生産しているが、親の遺伝子を確実に受け継ぐクローンである挿し木技術についても病害対策などから研究が進められている[30]。小さな挿し穂を用いる所謂「マイクロカッティング」[31]、挿し穂の薬剤処理[32]、挿し床の加温[33]、湿度を保つ密閉挿し[34]などによって発根率が向上するという。

典型的な陽樹であり日あたりを好む。また、アカマツ林に落ちたアカマツ種子は春に数万本/haで発芽するものの、その年の秋までには8割以上が死んでしまうといい、原因としては昆虫などによる食害、立枯病(damping off)、乾燥害が挙げられている[35]。これは生態学でいうジャンゼン・コンネル仮説(母樹の近くの同一種の稚樹ほど病害等の影響を受けやすく生存率が低いために、他の種が侵入する隙が生じ森林の多様性が進むという仮説)に近い。林内で更新できない理由は日照だけでなく、動物の影響もあるといい林内では捕食による死亡率が高いという[36]

アカマツが優勢な森林では共生できる植物が限られ、林床には植生が発達しない状況がしばしば見られる。アカマツの葉の抽出物質は一部の植物の発芽を妨げるアレロパシー(他感作用)を示すという[37][38]。また、落ち葉を頻繁に除去している地域でも同様の現象が見られ、生体から葉以外の経路でも放出されていると見られている[39]。なお、キノコの子実体の水抽出物にもアレロパシーを示すものがある[40]とされるが、アカマツ林の菌類がどの程度のアレロパシーを持つのかという点はよくわかっていない。

日長は動物、植物共に様々な影響を与えていることが知られている[41]。本種も実験室で18時間-20時間の日長に調整してやると側枝を発達させず、主幹だけが伸び続けるfoxtailing(和名未定)という異常成長が見られる[42]。この現象は熱帯産のマツ類ではしばしば知られており、日本産種でも亜熱帯に分布するリュウキュウマツは日長12時間程度に調整してやることで発現するという[43]

木炭を大量に使って酸化鉄還元するたたら製鉄や定期的に火入れを行う焼畑農業で農地や牧草地を造成するような地域 では植生遷移が退行ししばしばアカマツが優勢となる。中国山地北上山地[44]がよく知られる。ただし、山火事の頻度があまりにも高いとアカマツは定着できない。草原の維持のために毎年のように野焼きを行う阿蘇山由布岳ではアカマツの群落はほとんど見られず、草原の中にカシワQuercus dentata ブナ科)などが点在する光景が見られる[45][46][47]。アカマツの苗木や成木は山火事自体には弱く焼損すると枯死してしまうが、火災後に競合相手のいなくなった環境にいち早く苗木を定着させ優占種となる生存戦略だと見られている[48]。山火事後の種子供給源としては残存木が重要であり、埋土種子からの発芽には期待できない[49]。山火事や火山の噴火のような大規模な攪乱に対しては萌芽更新を行う植物が最初に再生してくることが多い[50]。マツ類に寄生し時に枯死させる菌類の一種ツチクラゲRhizina undulata ツチクラゲ科)の胞子は地温が高いときに発芽し、山火事がしばしば発芽のきっかけとなることで知られている。

猛禽類の営巣場所としてアカマツがしばしば高い確率で選ばれることで知られる[51][52]。アカマツをはじめとするマツ科針葉樹は同じ高さから輪生に枝を出すことから、巣を安定させやすいのではないかと言われているがよくわかっていない。

クロマツに比べ内陸のマツのイメージが強く、クロマツの方が耐塩性が高いという報告が多い[53][54]が、さほど変わらないという報告もある[55]。実際に三陸海岸などではアカマツが海岸付近まで分布し、高田松原などはアカマツが優勢な松原として知られた。

本種の最も重要な病害は下記のマツ材線虫病であるが、他の病気も存在する。初夏の針葉の内部にはマツバノタマバエの幼虫が付き虫こぶを形成し内部を食害する。激害が2年続くと、枯死することも多いという。タマバエの幼虫は初夏から翌年春にかけて葉を食べ進み、春にマツから脱出し地中で蛹になる。羽化は初夏で、成虫の寿命は一日で交尾成功率は気象条件の影響などが大きいなどの生活史が分かっている[56]

マツ材線虫病

マツ材線虫病(英:pine wilt、通称:松くい虫)は全国的にアカマツの枯死被害をもたらしている病害である。原因は線虫による感染症であることが1971年に日本人研究者らによって発表され[57]、その後カミキリムシによって媒介される[58]ことが判明した。アカマツはこの病気に感受性が高く[57][59]、枯死しやすいことから媒介昆虫であるカミキリムシの駆除や殺線虫剤の樹幹注入などの対策が被害の先端地域や保安林などの重要な森林を中心に進められている。また、被害の大きかった森林でも枯死せずに生き残ったアカマツを選抜して種を採り、線虫に強い系統を探し固定する試みが全国で行われている[60][61]

分布

日本産のマツの中で最も広い範囲に分布し、本州四国九州[8]に自生するが、北海道南部を北限とする説もある[62]南西諸島のうち、吐噶喇列島以南には別種のリュウキュウマツが分布する。国外では朝鮮半島中国東北部などに分布する[5]

人間との関係

木材

気乾比重は0.5程度。辺材は黄褐色で赤みを帯びた心材との境界ははっきりしている。軟らかく加工しやすい[63]。軽いわりに強度もあるために建築用構造材として使われ[64]、特に材として評価が高い。

疎植貧栄養で育つイメージがあるが、疎植だとマツ類は樹形が暴れやすく太い枝を出す特性(樹形の密度効果などと呼ばれる)があり、良材にはならない。高品質の通直な材を採るためには、比較的地力のある場所に4,000本/haから10,000本/haで密植する必要がある[65]。このために植栽本数が多くなりがちなことから、形質の良いものを伐採時にわざと一部残し、種を散布させて植栽の手間を省く天然下種更新という造林技術についても古くから各種研究されている[66][67]。この方法では数万本/haという高密度で実生が発生するために、ある程度自然に間引かせた後に間伐等の作業へと続く。

シロアリの被害を受けやすく[68][69]、使用場所と処理方法を選ぶ木である。マツ類は一般にシロアリが好み、沖縄ではリュウキュウマツを建材としては用いずに、家の周りに埋めてシロアリ誘引剤として使っていたという[70]。土場で放置するとキクイムシによる穿孔と虫が持ち込む青変菌による変色被害を受けやすいことにも注意が必要で、伐採後は速やかに製材し乾燥処理を行う必要がある。土場で放置しなければならない場合は薬剤処理が有効だという[71]。薬剤の浸透性は良好なので、防腐剤を浸透させたうえで鉄道用の枕木にも使われた[72]。防腐剤を使用することでマツ枕木の寿命は10年程度と無加工のものに比べて大幅に伸びる[73]

カラマツ同様に旋回木理で乾燥によるねじれが生じやすいのも特徴である。アカマツは特にS回旋が多いという[74]。乾燥技術は各種研究されている[75]

マツ類は良くも悪くも豊富な樹脂(ヤニ)が特徴となる木材である。過湿に強いために土木用杭材などとしては評価が高く、遺跡の発掘調査ではマツ類の杭がしばしば見つかる[76][77]。江戸の街では棺桶にも使われていたという[78]。これらはヒノキ科樹木の枯渇による代用の面もあるのではと推測されている。

強度に関係ない場所としては敷居の摩擦部や和室の床柱などに使用される。加工性が良いことから家具材、食器などにも使用できる。色味の濃い材は「肥松」と呼ばれ珍重される。ヤニが出やすいことから彫刻に用いられることは少ない。京都・広隆寺弥勒菩薩像のうち1体がアカマツ材で作られていることが知られている。この時代の仏像はクスノキを使うものが圧倒的に多く、アカマツは非常に珍しいもので国宝に指定されている。

かつては全国的に銘木の産地があり、甲地松(青森県)、御堂松(岩手県)、東山松(岩手県)、白旗松(山形県)、津島松(福島県)、霧上松(長野県)、諏訪森松(山梨県)、大山松(鳥取県)、滑松(山口県)、茂道松(熊本県)などがあった。これらは樹形や枝の付き方で昔から選抜されてきたといわれており[72]、国や県の保護林などに指定されているものもある。マツ材線虫病(松くい虫)の蔓延に伴い西日本の産地は壊滅した。また、松くい虫の蔓延地域に指定されると伐採木材の移動が制限されるため、国産アカマツ材市場も相当影響を受け縮小した。林野庁統計によるとクロマツも含めマツ類の生産量は1975年に390万立方メートル(㎥)の生産量があったが、2016年には約70万㎥まで減少している。対照的にカラマツで1975年には統計なし(1979年に80万㎥)だったのが、2016年には230万㎥と増加している[79]。1990年代以降の主要産地は岩手県青森県、および長野県である。このうち、岩手県と長野県ではマツ材線虫病の被害が拡大しており、影響が危惧されている。

燃料

材には松脂を多く含み、火付きがよく火力も強い[5]。そのための原料として重視されていた。化石燃料が普及した現在でも、陶芸登り窯にくべる薪やお盆松明などに使われている[5]。陶芸用の薪窯の燃料としては最も重要な樹種であり、炎が大きい点(火足などと呼ばれる)、燃焼温度が高い点、炭化しにくく灰になるまで燃え尽きて窯の温度が下がりにくい点等が他の樹種に比べて優れているとされる。アカマツの薪にこだわる陶芸産地としては釉薬を使わずに高温で焼き上げる備前焼が特に有名[80]だが、その他の窯元でも薪窯はアカマツを主として使っているところが大半である。京都の五山送り火でも、大量のアカマツの薪が組まれて焚かれ、それぞれ文字の形になる[5]。炭化したものは松炭と呼ばれ、たたら製鉄の還元剤として使われるほか、高温で燃えることからクリの炭などと共に日本刀や高級包丁の製作の燃料としても使われている[81]

繊維

辺材部より繊維を採り、縄に結って「松縄」を作った。水に強いので船のロープなどに使ったという。球果からも繊維を摂ることができ、こちらは布団のワタなどに使用した[81]

製紙パルプ原料としても用いられる。昔よく用いられた亜硫酸パルプでは、アカマツパルプは樹脂により生成物の質が低いこと、および心材部の蒸煮困難による歩留まりの低さが大きな問題とされていた。最近主流のクラフトパルプではこのような問題は起きていない。アメリカのテーダマツではリグニン合成経路の酵素を一部欠き、パルプ精製でリグニンを除去しやすいパルプ向きの優良個体が発見されており、増殖させたうえで製紙パルプ用として大規模に植林されているというが[82][83]、日本のアカマツではこのような事例は知られていない。

園芸

樹形をコントロールしやすいので、庭木として栽培される他、盆栽としても利用される。

庭木で用いられる伝統的な害虫対策の手法に藁を編んだ菰をマツの樹幹に巻き付けるこも巻き(菰巻)がある。対象とされる害虫は幼虫がマツの葉を食べるマツカレハDendrolimus spectabilis)で、十分終齢幼虫が蛹になるために地上に降りる際に菰の中で留まるという性質を利用し、菰を定期的に処分することで駆除するというものである。大抵は晩秋に菰を設置し春先に撤去し処分することから冬の風物詩になっている場所が多い。こも巻きの効果については農薬よりも低コストであるとしてこれを推奨するもの[84]もあるが、マツカレハよりもそれを食べるサシガメクモなどが菰を隠れ家として利用する例もあり[85]、マツカレハ幼虫の死因は特に成長後期ではこれらの肉食節足動物によるものが多いとされること[86]から 、不用意に菰を焼却処分などするのは逆効果ではないかという意見もある。材線虫病を媒介するマツノマダラカミキリの薬剤駆除においても益虫が死亡する例が報告されている[87]。菰巻と並ぶ冬の名物に雪吊がある。

並木道にもしばしば使われる。道南七飯町には、明治天皇行幸を記念して植樹された並木が国道5号沿いにあり、「赤松街道」と呼ばれている[88]

食用・薬用

東北地方では明治時代の凶作時に、ドングリトチノキの実から作った餅やなどとともに「松皮」が食べられていたという記述がしばしば登場する。これはマツの樹皮の内側を食べていたと見られる[89][90]。現在でも秋田県南部の山沿いにはアカマツの樹皮を餅に練りこんだ松皮餅が伝わる[91]

葉は松葉(しょうよう)、ヤニを集め乾燥した塊を松脂(しょうし)と言い、生薬として用いられる。葉は生もしくは炙ったものをアルコールに漬け、酒として飲むことで服用する。松脂は蒸留の結果、個体部分をロジン、液体部分をテレピン油と分ける。塗り薬もしくは飲用する。抗菌作用や血流を増加させる作用(引赤)などがあり、炎症や冷え性に効くとされる。[92]。二(三)針葉マツ類の利用は中国や欧米などでもよく見られ、アメリカではロジンとテレピン油は製紙パルプ業界でマツ材を原料にクラフトパルプを製造する際の副産物として大量生産しているという。原料とするマツおよび製法の違いにより成分は様々である。テレピン油は摂取量次第で有毒であり、海外では子供の死亡例もあるという[93]

生態面で触れたようにアカマツをはじめとするマツ属は菌類と共生し菌根を作る。アカマツと共生し栄養をやり取りする菌類の子実体を食べることは間接的にアカマツを食べているともいえる。共生する菌類は幅広く、テングタケ科イグチ科、ヌメリイグチ科、フウセンタケ科キシメジ科ベニタケ科など多数知られる。どの菌根菌が優先するかについては腐植の量、周囲の植生や微地形等により異なるとされている[94][95]。アカマツ林は日本各地の平野部ではブナ科広葉樹の優先する里山と並び、身近なキノコ狩り・観察のフィールドの一つである。

象徴

冬枯れの中でも青いマツ類は東アジアでは生命力の象徴とされ、冬でも青いと早春に花が咲くと共に親しまれている。この3種を中国では歳寒三友、日本では松竹梅と呼ぶ。冬でも青々とした常緑樹への信仰はヨーロッパにも似たようなものが見られる。日本の正月には玄関前に門松を飾るが、この際にしばしば2つが対で置かれ、このうち片方をアカマツ、もう一方をクロマツで作ることがある。

家紋にもよく用いられ、種類数は梅と並びかなり多いという。図柄としては特徴的な丸く平たい樹冠や針葉を象ったものが多く見られる[96]

アカマツの花言葉は、「不老長寿」とされる[5]

著名なアカマツ

著名な個体群や個体は各地に存在するが、クロマツと同じくマツ材線虫病の蔓延によりかなりの数の銘木がここ数十年のうちに消えている。植物天然記念物一覧も参考のこと。巨樹信仰はアカマツ分布域の日本と朝鮮半島いずれでも見られるが、立地や所有者、巨樹にまつわる伝承などには違いが見られるという[97]

アカマツをシンボルとする自治体

 日本

市町村

大韓民国

アカマツをモチーフとしたゆるキャラ

名称

マツの由来は「(神を)祀る木」「(神の降臨を)待つ木」「(冬でも緑を)保つ木」など諸説ある。

標準和名アカマツは樹皮の色に由来すると見られる。なお、形態節の通り新芽も赤褐色であり、方言名にはこちらを呼んだと見られる名前も僅かに知られる。方言名の種類は少なく、アカマツが訛った程度のものが多い。アカマツの方言名で特徴的なのは「メマツ(雌松)」、「オナゴマツ(女子松)」、「オンナマツ(女松)」、「ヒメマツ(姫松)」などの女性を連想させる名前で、これは全国的に知られる[100]。これに対して男性的な名前はクロマツに与える地域が多い。他は少数派であるが「フタバマツ(二葉松)」(東日本)など葉の形態に由来する名前のほか、「ヤニカキマツ(脂掻き松)」(岩手県内陸)のように用途による名前、「ジマツ(地松)」(静岡県)、単なる「マジ(松)」(岩手県沿岸部)など普通種であることを示す名前もみられる[100]

朝鮮語名は소나무(ウシの木)といい、恐らくは曲がった樹形を牛の角に例えたものだとみられる。種小名のdensifloraも「密集した花」という形態的な特徴に因む命名で、他のマツ類に比べて雄花が花穂のかなり上まで付くことがある様を示しているとみられる。

分類学上の位置づけ

ユーラシア地域に広く分布するヨーロッパアカマツPinus sylvestris)やアメリカに分布するレジノーサマツPinus resinosa)は樹皮が赤く二針葉であることなど形態的な類似点やしばしばred pine(赤いマツ)などと呼ばれる名前から、アカマツに近縁ではないかなどと言われることもあるが、これらとは生殖的には交雑できない(健全な種子を生産できない)ことが報告されている[101]

クロマツとはしばしば雑種を作ることで知られ、アイグロマツなどと呼ばれる(アカクロマツ、アイマツ、アイノコマツ等々雑種の呼び名も知られる。)

園芸品種

アカマツには下記の園芸品種がある。

Pinus densiflora 'Pendula' シダレマツ[102]
Pinus densiflora 'umbraculifera' タギョウショウ[103](多行松、シノニムPinus densiflora f. umbraculifera[104]
元から幹が分かれて立ち上がり、高木にはならない。種で繁殖させると同じ性質を持ったものができにくく、接ぎ木で殖やす。
Pinus densiflora 'Oculus-draconis' ジャノメアカマツ[105]

脚注

出典

  1. ^ Conifer Specialist Group 1998. Pinus densiflora. In: IUCN 2010. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2010.4..
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Pinus densiflora Siebold et Zucc.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年2月5日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Pinus densiflora Siebold et Zucc. f. subtrifoliata Hurus.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年2月5日閲覧。
  4. ^ a b c d 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 250.
  5. ^ a b c d e f g h 田中潔 2011, p. 113.
  6. ^ a b c d e f g 西田尚道監修 学習研究社編 2000, p. 30.
  7. ^ 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 274.
  8. ^ a b c d 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2012, p. 246.
  9. ^ ヴェルナー・ラウ著, 中村信一・戸部博訳 (2009) 新装版 植物形態の事典. 朝倉書店, 東京. 国立国会図書館書誌ID:000010550996
  10. ^ 谷口武士 (2011) 菌根菌との相互作用が作り出す森林の種多様性(<特集>菌類・植食者との相互作用が作り出す森林の種多様性). 日本生態学会誌61(3), pp. 311 - 318. doi:10.18960/seitai.61.3_311
  11. ^ 深澤遊・九石太樹・清和研二 (2013) 境界の地下はどうなっているのか : 菌根菌群集と実生更新との関係(<特集>森林の"境目"の生態的プロセスを探る). 日本生態学会誌63(2), p239-249. doi:10.18960/seitai.63.2_239
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参考文献

関連項目

外部リンク


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「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
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