DMクラスター、高速バリアブル機能を駆使〜小ロット・超短納期DMサービス展開
[FormMagic5導入事例]独自の仕分けシステムと連携:1部から受注、最短5時間で発送
ダイレクトメール(DM)の制作から発送までを一貫して手がけるDMクラスター(株)(本社/福井県坂井市坂井町福島8、平林満社長)は、小ロット・短納期対応のための生産工程自動化の一環として、約7年前にFormMagicを導入。独自開発の仕分けシステムとの組み合わせで、「オーダーから最短5時間で発送」という超短納期を実現している。導入の経緯や効果、FormMagicのメリットを活かした生産プロセスなどについて、DM事業本部執行役員本部長の飛田要二氏に伺った。
受注量が増加する中、いかにスピードを維持するか
DMクラスターは、1979年、「協業組合プリンティングクラスター」として設立。当初はビジネスフォームをメインに手がけていたが、2007年11月にDM専門サイト「圧着DM仕事人」を開設し、DM事業をスタート。2016年からは商材をDMに一本化し、社名も「DMクラスター(株)」へと変更した。現在、DMの制作から印刷・加工、梱包、発送までをワンストップで行っている。
同社のサービスの強みは、小ロット対応と圧倒的なスピードだ。効率性を徹底追求した生産ラインと、10台の高速POD機を駆使することで、1部から受注、短時間での発送を可能にしている。
「当社が携わっている工程は、いわばDM施策の最終工程だから、そのリードタイムを可能な限り短くすることで、お客さまがDMの企画やデザインにより多くの時間を使えるようにしたいというのが、私どもの考え方。そのために、スピードには一貫してこだわっている」(飛田氏)
そんな同社がFormMagicを導入したのは約7年前。DMの受注が順調に伸びる中で、最大の武器である短納期対応を維持していくための「生産工程の自動化」の一環として採り入れた。
「完全な自動化は無理としても、アナログの作業を可能な限りシステム化していく必要があると感じていた。印刷前の工程でネックになっていたのは、デザインデータに宛名のレイアウトを当て込む作業。従来は、これをオペレーターが手作業で行っており、しかも使用する宛名作成ツールの統一ができていなかったため、レイアウトを作成してから印刷するまでの工程が煩雑になっていた。この状況を何とか改善できないかと考えたのが、FormMagic導入のきっかけだった」(飛田氏)
両面一括バリアブル処理で、印刷データを高速生成
DMクラスターでは、極小ロット・超短納期を実現するため、オーダーごとに製造するのではなく、さまざまなオーダーを一括し、エリアごと・印刷仕様(サイズ・紙種など)ごとに仕分けして製造する独自の仕組みを採り入れている。すべてのオーダーは、自社開発の仕分けシステムに登録され、発送先の郵便番号、仕様ごとに自動で仕分けられる。ここでは、さまざまな宛名レイアウト(オモテ面)やデザイン面(ウラ面)が混在している状態だが、表裏同時にバリアブル処理が可能なFormMagicで自動組版を行うことにより、印刷データを高速に一括生成することができる。複数のオーダーをエリア別・仕様別にグルーピングしたうえで面付け・印刷するため、1部からでも採算がとれ、また、印刷後に仕分ける必要もないことから、なんと「オーダーから最短5時間で発送」というスピード対応が可能になっている。
「オーダー別ではなく、エリアごとにまとまったジョブをつくるので、住所はテンプレートとして固定しておき、その他の部分を一気にバリアブル処理することになる。つまり、宛名だけでなく、広告画像なども1部ずつ可変するわけだ。このような方法をとれるのは、宛名面とデザイン面をセットでワンパス処理できるFormMagicならでは」(飛田氏)
ここでは、さまざまな宛名のバリエーションに対応できる自動組版機能、大量の広告画像を高速で差し替えられるバリアブル機能が、如何なく発揮されているのだ。
なお、封入・封緘タイプのDMでは、封筒に宛名ラベルを貼るのではなく、中身に宛名を印字し、窓開き封筒などと組み合わせて封緘して発送することで時間短縮を図っている。
約7年にわたりFormMagicを活用してきた同社だが、飛田氏によると、リードタイム短縮の方法を模索する中で、他のツールによる自動化を試みたこともあるという。
「上流工程に関して、マーケティングオートメーション(MA)のツールを絡めて効率化できないかと考え、2年ほど前、FormMagicの代わりにInDesignサーバーで宛名処理などの自動化を目指したことがある。ただ、結果的には、1年ほどでFormMagicを使ったフローに戻すことになった。InDesignでも同様のことはできるが、操作性があまり良くなかったり、やりたいことを上手く形にできなかったりと、期待したメリットが得られなかった。その点、FormMagicは、高度な自動組版や面付けの機能を持っていて使い勝手もよく考えられており、パッケージ製品として完成度が高い。改めてその使いやすさ、機能の高さを実感し、もっと深く使い込んでいく必要があると感じた」(飛田氏)
昨年末からは、最新バージョンの「FormMagic5」の運用を開始。飛田氏は、前バージョンからの進化について「新しく搭載されたホットフォルダ機能がとくに便利」と評価する。
「データを指定のフォルダに入れるだけで、自動で組版・出力できるので、出力作業の時間短縮に大きく貢献している。さまざまなデザインデータと宛名データを組み合わせる際、従来の手作業では、A社のデータにB社の宛名を合わせてしまうといったことが稀にあった。ホットフォルダ機能を使えば人が余計な手を加えずに済み、こうしたミスも防止できるため、今後積極的に活用していきたい」
「個」へのアプローチを目指す企業のニーズに応える
FormMagicを導入したことで、DMクラスターでは、「必要最低限の部数で、ベストなタイミングでDMを送りたい」というクライアントのニーズに、より柔軟に応えることが可能になった。たとえば、企業が顧客に送るバースデーDM。いままでは、誕生日の週、あるいは誕生月にDMが届くよう、ある程度まとめて発送する形が多かった。しかし、DMクラスターの極小ロット・超短納期対応のサービスであれば、1人ひとりの誕生日の前日に届けることができる。
「最近は顧客の購買行動の温度感を大事にする企業様が増えていると感じる。それにともなって、DMに関しても、1人ひとりにタイムリーに届けたいというニーズが高まっており、そうしたお客さまの要望に応えるうえで、FormMagicは有効なツールになっている」(飛田氏)
DMで「個」へのアプローチを目指す企業は確実に増えており、飛田氏によれば「バリアブルのバーコードを入れて、送付後に顧客のアクションを追跡できるようにしたいというお客さまも多くなっている」という。いまはマーケティングのノウハウを持つ企業も増え、DMだけでなくWebさいとやEメール、ポスティングなど、さまざまな手法を組み合わせ、効果的なプロモーションを模索する動きが加速している。こうした最新のニーズを踏まえたきめ細かい提案を行うことで、同社のDMの受注は堅調に伸び続けているという。
「個人向けDMの需要が高まっている背景には、コロナ禍で在宅勤務が増えているという状況もあると思う。また、紙のDMは、Eメールに比べて開封率が圧倒的に高いため、その効果に着目した企業が顧客データを使ったデータドリブンマーケティングの中でDMを積極的に活用するようになっているという印象を受ける。当社の受注内容としては、学習塾などの教育関係や、各種セミナー案内、通販などのDMがとくに増えている。また、緊急事態宣言の発出後は、営業自粛や営業時間短縮を知らせるDMが増加する。今年に入って2回目の宣言が出された際にも同様の動きが見られ、やはり何かを知らせる必要が生じたときにも紙のDMが活用されるのだと改めて感じた」(飛田氏)
スピードと付加価値提供の両立を目指す
今後のFormMagicの活用について、飛田氏は「画像のバリアブル(1件のオーダーの中で画像を可変)など、より効果的な活用のノウハウを蓄積していきたい」と語る。
「お客さまの要望や課題に対して、FormMagicで何ができるのか、どんな可能性があるのかをもっと深く理解し、提案に活かしていきたい。画像のバリアブルのお問い合わせも多くいただいているので、ぜひお応えして、お客さまの商材・営業ツールに付加価値を提供できればと考えている。そのために、いま、データの処理時間がどれほど増えるのか、お客さまからどんな形で入稿していただけばいいのか、といった検証を進めているところだ」
最大の強みである「スピード」と、新たな付加価値の提供をいかに両立させるか。そのバランスの見極めも同社にとって重要なテーマだ。「スピード重視という姿勢は、会社としてブレてはいけない部分」と飛田氏は強調する。
また、飛田氏は、Web to PrintとFormMagicの連携活用も視野に入れている。同社が運営するECサイト「圧着DM仕事人」に自動組版の機能を持たせ、発注者が選択したデザインに宛名を流し込むところまで自動処理することにより、さらなるスピードアップを図りたい考えだ。
同社が掲げるミッションは、「クライアントのビジネスチャンス創出・売上拡大に貢献すること」。DMを通じてクライアントのプロモーション活動に「より大きな効果」を提供するため、DMクラスターは今後も、生産工程を進化させ、提案力を強化しながら、サービスの質の向上に取り組み続ける。