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  • 2024/11/22 掲載

日銀「12月に利上げ後、25年に1%到達」、エコノミストが自信を深めるワケ

【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」

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第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 藤代 宏一氏は、日銀が2024年12月に25ベーシスポイント(新たな政策金利はプラス0.50%)の利上げを決定した後、2025年末までに追加で2回(累積50ベーシスポイント)の利上げを実施し、政策金利が1.0%に達するとの見通しに自信を深めているという。本稿ではその見通しの根拠となる、消費者物価、名目賃金、個人消費、トランプ氏の大統領選勝利がもたらすであろう影響について、藤代氏が解説する。
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日銀はついに利上げに踏み切るか
(Photo/Shutterstock.com)

増加基調にある「個人消費」と「物価見通し」

 消費者物価が日銀の目標を大幅に上回って推移する中、名目賃金が1990年代前半と同等かそれ以上の伸びで推移し、最近は個人消費のデータに一部明るい兆しが見えてきた。

 そうした下で、日銀は個人消費の基調判断を「底堅い」から「緩やかな増加基調」へと上方修正しており、国内経済の先行きを楽観視しているように見える。また為替が円安傾向にあることを踏まえると、日銀が利上げを先送りする理由は乏しくなっていると判断される。

 10月31日の金融政策決定会合で示された、展望レポートの物価見通しは2024年度がプラス2.5%、2025年度と2026年度がともにプラス1.9%となり「おおむね2%」という仕上がりであった。

 従来型の思考様式に基づくと「物価見通しが上方修正されない限り、利上げは見送り」となるが、最近の日銀は、経済・物価が(日銀の)見通しに沿って推移することを「オントラック」と表現しており、それを事実上、利上げの条件としている。

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日銀が2%程度の物価見通しを維持したことは、利上げ確率の上昇を意味する
(Photo/Shutterstock.com)

トランプ政権がもたらす「インフレ圧力」

 このような状況下、11月の大統領選でトランプ氏が勝利し、しかも上下両院を共和党が過半を握るトリプル・レッドとなった。トランプ氏の掲げる大型減税の実現可能性が高まっており、少なくとも短期的には米国経済の景気後退確率が低下したと考えられる。また関税引き上げ、移民抑制などインフレ圧力を増幅させる政策が、公約そのままではないにせよ、実行に移される見込みである。

 関税引き上げは、ようやく落ち着いた財物価の上昇に直結し得るため、素直にインフレ要因と理解される。対中関税60%、それ以外の地域に対して一律10%、メキシコ工場から出荷される自動車に対して200%という過激な案は、政治的な演出が含まれていると推察されるものの、米中の経済的分断が加速する中、少なくとも中国製品については引き上げが実施される可能性が高いだろう。

 移民抑制策(含む強制送還)も、同様にインフレ再加速を起点とする展開を想起させている。コロナ期において55歳以上の労働者が早期退職し、労働参加率が顕著な低下を示したことで、労働市場は極度の人手不足状態に陥り、それは賃金の異常値的上昇をもたらした。そうした労働供給側の問題を緩和したのは、安価な労働力としての不法移民であり、これまでのインフレ沈静化に大きく貢献してきたことに疑いの余地はない。大量の移民が引き起こす社会的問題に対処すべく移民管理を厳格化するというトランプ氏の主張は、経済的にはインフレ再加速の危険性を内包している。

 もちろん、移民抑制は国境管理など実務面での難しさに加え、予算や人道的な面でも一筋縄ではいかぬことから、月次や四半期統計に「断層」を発生させるような急変は想像しにくいが、第一印象としては「インフレ」であろう。

 そうした下で金融市場では大統領選の前から続くトランプ・トレードが引き継がれ、米金利は上昇、為替はドル高傾向にある。こうした海外要因は円安に伴う輸入物価の上昇などを通じて日銀を利上げに動かすと見られる。 【次ページ】整いつつある利上げの基盤
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