- 会員限定
- 2024/05/20 掲載
なぜ日本はITに“めっぽう”弱いのか? 根本原因が「大学教育とOJT」と言えるワケ
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
先端分野ほど強い米国、対する日本は?
米国の人口は、世界人口の約4.3%だ。ところがGDPでは世界の約25%を占める(注1)。こうなるのは、米国の1人当たりGDPが世界平均より高いからだ。この点では日本も同じだ(日本の対世界シェアは、人口では約1.6%だが、GDPでは約6%)。しかし、ここから後は、米国と日本で大きな違いがある。
企業の時価総額世界ランキングを見ると、上位100社の企業数は、米国で61社だが、日本は1社(トヨタ自動車)しかない(2024年5月2日現在)。上位10社を見ると、米国企業が8社と、ほとんど米国の独占状態になる。それに対して、日本はゼロだ。つまり、米国の産業構造は、日本に比べてはるかに収益力が高く、高度化している。
米国は、IT産業で圧倒的に強い。そもそも、IT産業という新しい分野を作ったのが、GAFA+マイクロソフトという米国企業群だ。最近では、高性能半導体の設計企業NVIDIAが注目を浴びている。
IT産業であれば、中国にも、米国並みの技術水準を持つ企業がいくつかある。ところが、IT産業の最先端であるAIになると、ほぼ米国の独走状態だ。中国IT企業もAIの開発を行っているが、技術水準は米国に到底追いつかない。
米国は、単に豊かな国というだけでなく、先端的な分野になるほど強くなる国なのだ。
日米の大きな違いは「大学水準の高さ」
先端分野の活動を支えるのは、高度専門人材だ。だから、米国が先端分野で強いことの背景には、米国の大学の水準の高さがある。それを、英国の教育問題調査機関「THE(Times Higher Education)」の世界ランキング2024年版で見ると、次のとおりだ(図1)。世界トップ100までに入る大学数が世界一多い国は米国であり、36校ある。つまり、世界トップレベルの大学の1/3以上は、米国にある。GDPの世界シェアより、やや高い。
トップ10までの大学を見ると、米国の大学が7校だ。つまり、米国への集中度は70%ということになる。時価総額トップ100社のシェアよりやや高い。
ところで、大学水準の国際比較は、前項で述べたのとは異なる指標で行うことも可能だ。人口が多い国で大学数が多くなるのは、当然のことだから、人口1億人当たりの「世界トップ100位以内大学数」を見ることが考えられる。それを計算してみると、図2のC欄のようになる。
関連コンテンツ
PR
PR
PR