ソーラー推進宇宙船に期待〜日経サイエンス2017年12月号より
「ライトセイル2号」が近く打ち上げられる
宇宙にガソリンスタンドはない。手ごろな価格の軽い宇宙船を長距離飛行のミッションに送り出すため,米航空宇宙局(NASA)と数社の航空宇宙企業は太陽光を利用する方法を追求している。可能性としては風の代わりに太陽光を受けて進む反射膜の“帆”や,次世代のソーラー電力推進エンジンなどがある。
民間の支援による「ライトセイル2」というプロジェクトが今後数カ月内に弁当箱サイズの衛星を軌道に打ち上げ,大きさが駐車スペース2台分のポリエステル樹脂製の帆を展開する予定だ。成功すれば,火星やその先を目指す将来のNASAの宇宙船に採用されるかもしれない。
衛星操作から恒星間飛行まで
ソーラーセイルはSF物語ではない。2010年,日本のイカロス探査機が金星への惑星間ミッションを通じて概念実証に成功した。今回のライトセイル2の実証実験は非営利団体の惑星協会が資金提供している総額545万ドルのプロジェクトで,支持者たちによると,この技術で地球軌道上のキューブサットという低コスト衛星を燃料なしで操作できる可能性があるという。ライトセイル2の実績はNASAが2019年に打ち上げる予定の地球近傍天体探査機ニア・スカウト(NEA Scout)に生かされるかもしれない。
「ソーラーセイルが真価を発揮するのは,積載重量が小さく,ミッション期間が長く,必要な推進力が小さくて構わない場合だ」とNASAマーシャル宇宙飛行センター(アラバマ州ハンツビル)でニア・スカウト向け技術の代表研究者を務めているジョンソン(Les Johnson)はいう。太陽光の圧力(帆を押す力は1m2あたり0.007g足らず)を受け続けると,小さな探査機は徐々に加速できる。また,帆を傾けると太陽光が反射する角度が変わり,宇宙船を操舵できる。この技術はニア・スカウトが計画している小惑星監視のように,ペイロードが小さく比較的安価で時間がかかりそうなミッションに最適だ。(続く)
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