統合失調症の症状が現れた姉を、父と母は玄関に南京錠をかけて閉じ込めた――。社会から隔てられた家の中と家族の様子を20年にわたって記録したドキュメンタリー映画「どうすればよかったか?」が公開され、連日満席になるなどの反響が広がっている。
精神疾患を抱える患者を、その家族が自宅に閉じ込めてしまうケースは近年でも発生している。こうした事態が起こる背景には一体何があるのか。改善に向けて必要な取り組みは何か。専門家に詳しい話を聞いた。なお、本記事は映画の内容を取材したものではない。
「我が家の25年は統合失調症の対応の失敗例」と藤野知明監督
統合失調症を発症した姉を持つ藤野知明氏が監督を務めた映画「どうすればよかったか?」が、2024年12月7日から全国で順次公開している。上映中の映画館では満席になる回も相次ぎ、SNSや映画レビューサイトでも大きな反響を呼んでいる。
12月15日夜、横浜・関内駅から徒歩15分のミニシアター「ジャック&ベティ」で上映されたレイトショーには、若者から高齢者まで幅広い年代の観客が集まっていた。この映画がさまざまな層の関心を集めていることを実感させる光景だった。
映画が投げかける問いの重さについて、藤野氏は公式サイトで次のように述べている。
「姉はたくさん才能を持って生まれましたが、発症してからは、それを十分に発揮することなく、ほとんど独りで生きていました。我が家の25年は統合失調症の対応の失敗例です。どうすればよかったか? このタイトルは私への問い、両親への問い、そして観客に考えてほしい問いです」
精神疾患患者が家族によって自宅に閉じ込められ、事件化するケースは近年でも発生している。
2021年には、精神疾患の疑いがある30代の男性が神奈川県川崎市の自宅で死亡した。両親と妹の3人が4カ月にわたって自宅に監禁していたと報じられた。18年にも兵庫県三田市で同様の事件が発生。被害者の男性は保護されている。