[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/
 

2025年世界経済が直面する「SNAKE」の課題

執筆者:滝田洋一 2025年1月11日
エリア: 北米
新政権の基本はテックと製造業の二枚腰[新年のニューヨーク証券取引所のフロアにもトランプグッズ=2025年1月2日](C)AFP=時事
巳年の蛇にちなみ、25年の日本と世界を「SNAKE」で整理してみよう。Sは各国の選挙を左右したSNS政治。Nは新秩序(New order)をめぐる世界の角逐。Aは米国第一(America First)。Kはキングメーカー(Kingmaker)の不在。EはEVの曲がり角だ。トランプ次期米政権の威嚇に大手テック企業が競ってひざまずく一方で、その聖地カリフォルニアの経済規模はついに日本を上回った。踏まえておくべきポイントは「トランプ・リスク」だけにとどまらない。

 2025年は「昭和100年」であり、太平洋戦争の終戦から80年でもある。1975年のベトナム戦争終結(サイゴン陥落)から50年、85年のプラザ合意(ドル高是正のG5[先進5カ国蔵相・中央銀行総裁会議]合意)から40年といった具合に、節目が重なる。

 十二支でいえば巳年だが、これまた1917年のロシア革命に始まり、29年のウォール街暴落(世界恐慌の始まり)、41年の太平洋戦争開戦と歴史上特筆される出来事が相次いだ。第2次世界大戦後に限っても、53年のスターリン暴落、65年の山一證券への日銀特融という金融の波乱の年となった。

 もっと直近の出来事としては、1989年に日本のバブルが頂点となる一方、2001年には新自由主義を掲げる小泉改革がスタートし、13年には異次元緩和を看板にしたアベノミクスが本格始動した。十二支が運命を決するはずもないが、12年ぐらいがひとつのサイクルになっているとはいえるかもしれない。

 そこで25年の日本と世界が直面する課題を、蛇の英語である「SNAKE」を拝借して整理しておこう。Sは各国の選挙を左右したSNS(交流サイト)政治。Nは新秩序(New order)をめぐる世界の角逐。Aはトランプ次期米政権が掲げる米国第一(America First)。Kは選挙で政権与党が次々と敗北するキングメーカー(Kingmaker)の不在。EはEV(電気自動車)の曲がり角となろうか。

 

経済規模で日本を抜いたカリフォルニア

 これらのテーマの結節点にいるのが、1月20日に就任するドナルド・トランプ次期大統領と、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)であるのは、いうまでもあるまい。トランプ新政権が掲げるアメリカ・ファーストこそは、中国などによるグローバルな新秩序形成の挑戦に対する、米国側からの回答にほかならない。

 関税と減税、そしてエネルギー。トランプ政権の経済政策といえば、この3つに力点を置いて解説されることが多い。だが米経済の原動力となっているのは、AI(人工知能)に代表されるテック産業であるのは明らかだし、その事実を知らぬトランプ氏ではない。誰よりもマスク氏が、トランプ氏に寄り添い、そのことを刷り込んでいる。

 米経済の最先端部分を伸ばしつつ、競争の敗者となった製造業にも光を当てる。そんな二枚腰こそが、新政権の経済運営の基本。改めて強調したいのは、アメリカ“合州国”米国が州の集合体であり、州同士の強烈な競争が国全体の米経済を押し上げているという点だ。カリフォルニア、テキサス、ニューヨークが経済規模でビッグスリーだが、日本がうかうかしているうちにとんでもない逆転劇が起きた。州の国内総生産(GDP)に相当する州内総生産(GSP)で、カリフォルニア州が日本一国を上回ったのだ。

この記事だけをYahoo!ニュースで読む>>
カテゴリ: 経済・ビジネス
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
滝田洋一(たきたよういち) 名古屋外国語大学特任教授 1957年千葉県生れ。慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了後、1981年日本経済新聞社入社。金融部、チューリヒ支局、経済部編集委員、米州総局編集委員、特任編集員などを歴任後、2024年4月より現職。リーマン・ショックに伴う世界金融危機の報道で2008年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」解説キャスターも務めた。複雑な世界経済、金融マーケットを平易な言葉で分かりやすく解説・分析、大胆な予想も。近著に『世界経済大乱』『世界経済 チキンゲームの罠』『コロナクライシス』など。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top