長らく続いた低金利時代が終わりを告げ、銀行業界に激しい預金争奪戦の幕が上がった。
メガバンクをはじめとする各銀行が、普通預金や定期預金の金利引き上げに踏み切ったのだ。

みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行などのメガバンクは、普通預金の金利を0.1%から0.2%に引き上げた。
さらに、ネットバンクを中心に1年もの定期預金の金利が1%を超える銀行が続々と現れている。これまでの金利と比べると、実に2倍近い上昇だ。
■金利上昇のプラスとマイナス 「バランスを取る政策が必要」
しかし、関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」に出演したジャーナリストの鈴木哲夫さんは、金利上昇はもろ刃の剣だと警鐘を鳴らす。

鈴木哲夫さん:預金で金利が上がってこれだけ入ってくるよって、もちろんいい話なんですけど、実は金利を上げると反対に良くない話もあるんですよね。
具体的には、住宅ローンや中小企業の借入金の返済負担が増加するリスクがある。
鈴木哲夫さん:お金を借りてるとか、住宅ローンとか、これが金利上がるとたくさん払わなきゃいけなくなったり、中小企業なんかもいっぱい銀行からお金借りてる。こういうのも、返すお金が、金利が上がると増えたり。
このプラスとマイナスのバランスを取ることが政府や日本銀行の役割だが、鈴木さんは現状について「まだまだ足りない」と厳しい見方を示す。
青木源太キャスター:石破首相は『経済政策はこれで行く』みたいな、強い発信はあんまりされてないですね。
鈴木哲夫さん:鋭いその通り。岸田政権を継承するという流れなんですよね。

鈴木哲夫さん:だけどそうじゃなくて、やっぱり物価高対策。例えばガソリンとか、今僕らの生活の色んな問題があって、そういうとこバーンとメス入れると、これはやっぱり石破さんなりの経済っていうメインになるんで、いいと思うんだけど、予算の中には経済政策も入ってるわけです。それでもっとメリハリをつけることもできたし、そこはちょっとやっぱり石破さんの弱さっていうかな、そんな気がします。
■サッカーチームの成績で金利上乗せ? ユニークな預金キャンペーン
各銀行は預金獲得に向けて、ユニークなキャンペーンも展開している。
広島銀行は地元のサッカークラブ、サンフレッチェ広島の成績に応じて定期預金の金利を上乗せするキャンペーンを実施。同チームが3大タイトルを全て制覇した場合、最大2%の金利上乗せが受けられるという。

このようなキャンペーンについて、青木源太キャスターは「応援に力入っちゃうけど、負けた時の悔しさもちょっと倍増しそうな気もしますけどね」と、サポーターの複雑な心境を表現した。
■専門家予想「来年には預金金利2倍に」 投資からシフトの可能性も
野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏によると、日本銀行の政策金利はさらに引き上げられる可能性が高い。「今年度中に0.75%、来年には1%になる」という見立てだ。

これに応じて、来年には民間銀行の預金金利もおよそ2倍になる可能性があるということだ。
この動きを受けて、「投資よりもリスクの低い定期預金を選ぶ人が増えていくのではないか」と話している。
しかし、鈴木さんは慎重な姿勢を示す。 「年内に1%っていう話が永田町を周ってると、聞こえてくるんですけど、『リスクが大きいよね』っていう意見がありますね」と述べ、急激な金利上昇による景気への悪影響を懸念している。
■住宅ローン借入者に警鐘 「見直しが迫られる可能性」
金利上昇は預金者にとってはプラスだが、住宅ローンを抱える人々にとっては大きな影響がある。

関西テレビの加藤さゆり報道デスクは「住宅ローンは見直しが迫られる可能性はある」と指摘する。
関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:借りてるお金に対する金利が上がるって事なので、結局、利息を払う人が増える。つまりローンを借りてる人ですよね。住宅ローンの方は、やっぱりちょっとその見直しみたいなのが迫られる可能性はありますよね。
関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:実際、日銀の委員の1人が、年内には1%を目指すとおっしゃっています。つまりそれは、イコール住宅ローンにも跳ね返ってくるよっていうところです。
さらに、4月からの値上げラッシュと相まって「住宅ローンが更に上がる」、「家の値段も上がっていくことになるので、家も買いにくくなる」というリスクも指摘された。
低金利時代の終焉と共に、私たちの暮らしにも大きな変化が訪れようとしている。
預金者にとってはチャンスの時代だが、借入者にとっては要注意の時代。複雑に絡み合う経済の歯車の中で、一人一人が賢明な判断を迫られている。
(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」2025年3月10日放送)