女性VTuberグループ「ホロライブ」など運営の「カバー」M&Aに触手 ANYCOLORとどちらが先か

女性VTuberグループ「ホロライブ」などを運営するカバー<5253>が、M&Aに前向きな姿勢を見せている。

同社は2024年5月に戦略的パートナーシップや、M&Aなどを積極的に検討するとの方針を示したのに続き、この方針に沿って2024年9月には日米のスタートアップへの投資の加速を狙いに、米国のベンチャーキャピタルRice Capital(カリフォルニア州)が組成したファンドに出資した。

同業界ではVTuberグループ「にじさんじ」などを運営する最大手のANYCOLOR<5032>もM&Aに積極的に取り組む方針を明らかにしている。

VTuber市場は成長が見込まれており、事業拡大の方策としてM&Aに関心が集まりつつある。

関連記事はこちら
Vチューバ―グループ「にじさんじ」運営の「ANYCOLOR」が企業買収に舵

対象は技術やコンテンツ、海外など

カバーが2024年5月に公表した「事業計画及び成長可能性に関する事項」によると、同社はM&Aの対象として、IP(知的財産)や現在展開している事業との相乗効果で企業価値が向上する企業や事業を挙げている。

例えば技術力や制作力では、最先端のモーションキャプチャー(人の動きを記録する装置)技術や、メタバース(仮想空間)に関わる人材の拡充などを、またコンテンツ領域では、ショート動画、短編アニメなどのコンテンツ企画の多様化、さらにはゲームやメタバース領域でのコンテンツの拡大などを見込む。

海外でも、イベントの開催や商品の現地生産、海外メディア企業との提携などの関連でM&Aを予想する。前年の2023年に公表した同様の資料には、M&Aに関するこうした表現はなく、M&A実現に向け舵を切ったことがうかがえる。

一方、同社が出資したファンドを運営するRice Capitalは、米シリコンバレーで起業やM&Aの経験を持つ福山太郎氏が立ち上げた企業で、主に米国と日本でスタートアップへの投資を行う予定という。

カバーは、Rice Capitalが運営するファンドを通じて、国内だけでなく北米の有望なスタートアップとのネットワークを構築し、社内外の技術やサービスを組み合わせて革新的な価値を創り出すオープンイノベーションを推進する。

同社では「VTuberという文化を拡げ、さらにスケールの大きな IPビジネスに拡大していくためには、自社での事業開発に加えて、戦略的パートナーシップや M&Aなどが必要」と力を込める。

2ケタの増収営業増益

カバーは2016年に事業をスタート。2017年にVTuberアイドル「ときのそら」が活動を開始したあと、国内外にいくつものVTuberグループを立ち上げ、業容を拡大してきた。

2025年3月期の売上高は364億8100万円(前年度比20.9%増)、営業利益は73億円(同31.8%増)と、2ケタの増収営業増益を見込む。

ANYCOLORの2025年4月期は売上高390億円(同21.9%増)、営業利益148億円(同19.7%増)と、こちらも2ケタの増収営業増益を見込む。

両社ともに業績が好調で、M&A余力は十分にある。どちらがM&A一番手になるのか。答えが出るのにそれほど時間はかからないかも知れない。

女性VTuberグループ「ホロライブ」など運営の「カバー」M&Aに触手 ANYCOLORとどちらが先か
カバーの沿革

文:M&A Online記者 松本亮一

女性VTuberグループ「ホロライブ」など運営の「カバー」M&Aに触手 ANYCOLORとどちらが先か
編集部おすすめ