日立製作所が開いたHitachi Social Innovation Forumでは、従業員向けの介護セミナーも実施された。
撮影:竹下郁子
団塊の世代800万人が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」を目前に控え、9月4日、日立製作所が介護に関するセミナーを開いた。従業員の51%を45歳以上が占める同社にとって(2024年2月末)、仕事と介護の両立は死活問題。約5000人の従業員が耳を傾けた。
経済補助、働き方改革、情報提供で手厚く支援
セミナーの様子。
撮影:竹下郁子
セミナーに登壇した介護と仕事の両立に詳しいチェンジウェーブグループの酒井穣さんは、介護期間は「75歳からの約10年間を想定しなければならない」こと、そして「月平均8万3000円、10年間で約1000万円のお金がかかる」として、親の介護を担うビジネスケアラーになったからと言って、離職するのはリスクが大きいと訴えた。
日立でも従業員を「介護離職させない」を合言葉に、支援を強化してきた。
提供:日立製作所
介護休業は法定日数の通算93日を大きく上回る最大1年間。カフェテリアプラン(選択型福利厚生)制度で両立支援ポイントとして年間10万円、体制構築支援ポイントとして最大30万円を補助するほか、介護のために特急・新幹線通勤を認めたり、単身赴任を解消したりしている。
介護は個人によって事情が大きく異なるため、電話やメールで無料で何度でも相談できる「介護コンシェルジュ」という相談窓口も設けた。従業員だけでなく、その家族や、介護をする部下のマネジメントに悩む上司からの相談にも応じるのがポイントだ。グループ全体で月平均約70件ほどの相談が寄せられているという。
実態調査には介護と仕事の両立の難しさにじむ
提供:日立製作所
一方でこれだけ充実した制度があっても、楽観的とは言えないのが現状だ。2023年11月に社員約1万6800人を調査したところ、介護をしながら「仕事を続けられる」と考えている人は42.2%と約4割。「続けられない」と考えている人は27.8%と3割近くを占めた。
また、介護は子育てよりも周囲に相談しづらいというのはよく言われることだが、職場で「相談できる雰囲気がある」と回答した人は49.7%と約半数だった。
人財統括本部・人事勤労本部・トータルリワード部長の小林由紀子さんは、こうした結果に対して「継続的なアプローチが必要」だと語る。
同じような課題を抱える日本企業は多いだろう。残された時間は少ない。持続的成長のため、今こそ行動を起こすべきだ。