アンジー・チェンは投資銀行を1年で辞め、現在はマーケティングの仕事をしている。
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- アンジー・チェンは、燃え尽きたと感じて投資銀行を退職し、キャンペーンマーケターに転身した。
- 彼女は業界を変える際の人脈作りや履歴書を刷新するコツを教えてくれた。
- チェンは創造的な自由と分析的でデータ主導という部分に魅力を感じ、マーケティング業界を選んだという。
投資銀行で働き始めて1年後、アンジー・チェン(Angie Chen)はボーナスを受け取った。そして2週間前に退職届を出した。
「正直に言うと、金融業で働いている、投資銀行で働いているということがとてもクールだと感じていた」と彼女はBusiness Insiderに語った。
しかしチェンは、金融業界でのキャリアというステータスは過酷な労働に見合うものではないと話す。誰もがうらやむ年収6桁(数十万ドル)の初任給、出世すれば数百万ドルになる可能性のある金融業界ではあるが、そのためには通常長時間労働が伴うことが多い。典型的な週80時間から100時間の労働によって、若手バンカーたちの中には燃え尽き症候群や疲労を訴える者もいる。
ウォール街での仕事がどんなものか理解していたものの、大学を卒業した後は、チェンにとってその仕事はますます耐え難いものになっていったという。
「年齢を重ねるにつれ、ただ会社のために24時間365日働き続けることより、自分の自由な時間や独立心、そして個人的な興味や情熱を大切に思うようになった」と彼女は話している。
TikTokで投資銀行でのキャリアについてのコンテンツを発信していたチェンは、ソーシャルメディアがきっかけでマーケティング業界への転職を考えるようになったという。
「そこから得られるクリエイティブな自由がとても気に入った」と彼女は語った。
「銀行業界から転職を考えたとき、マーケティングはその選択肢の一つだった」
現在、キャンペーンマーケターとして活躍するチェンは、「キャリアを格下げした」と言われることもあるが、まったく気にしていないと語っている。多くの人がマーケティング業界を低収入だと考えているからだろうが、実際には「分析的でデータ重視」のポジションが多く、高収入を得られる役職もあると彼女はBusiness Insiderに話している。アメリカ労働統計局(BLS)によると、さまざまなマーケティング職の給与には幅があるが、アメリカのマーケティングマネージャーの平均年収は16万6410ドル(約2457万円)と推定している。
自分自身のキャリア転換を考えている人たちのため、チェンは以下のようなアドバイスをしてくれた。
仕事の好きなところと嫌なところを把握する
あなたは今の仕事や会社に満足していない状態かもしれないが、その理由を理解するには時間がかかるとチェンは話す。
彼女は現在の職務が好きではない理由と、会社の良い面をリストアップすることを提案している。チェンによると、そうすることによって自分が次の会社で何をしたいかをイメージしやすくなり、さまざまな機会を探す際、優先順位を絞り込むことができるのだという。
「ある人にとっては、それは企業文化やチームワークかもしれないが、他の人にとってはお金や名声かもしれない。私にとって一番大きかったのは、他の業界やポジションへ転職する選択肢が広がること、二番目は報酬だった」
最終的にチェンは自分の理想的なポジションを、キャンペーンマネジメント、グロースマーケティング、プロダクトマネジメントマーケティングに絞り込み、いずれはその分野で働くことを目指している。
「私はそれがマーケティングに対する自分の関心と、分析に関するバックグラウンド、そしてテクノロジーについての理解を完璧に組み合わせたものだと思った」と彼女は言う。
「そのすべての要素を一つの役割にまとめているものだ」
チェンはマーケティング業界のカルチャーは、銀行業界よりも圧倒されることが少ないと感じたとも話している。銀行業界にいた当時、彼女は上級メンターを見つけるのを苦労したという。
「今の上司は私の日々の業務にとても積極的に関わってくれる。そのおかげで、自分の存在価値を示すチャンスがたくさんあり、自分がどのように貢献できているのかを示すことができる」
他の専門家たちも、現在の職業を辞めたくなって「押し出されている」のか、それとも別の職業に魅力を感じて「引き寄せられている」のかを分けて考えることを勧めている。もし、何かが原因で今の職場に居づらさを感じているのなら、チームを変えるなど、自分の役割を改善できるような対策を取ってみよう。
共通の知人を介して人脈を得る
リンクトイン(LinkedIn)で「コールドメッセージ(まだ関係が築けていない人に対して直接メッセージを送ること)」を送るのは一般的な戦略だが、チェンは、「ウォーマーコンタクト」、つまり共通の知人が紹介してくれる人脈を得ることを試みようと提案している。
「間違いなく、量より質の高いつながりが重要だ」と彼女は言う。
「人脈を作るのに、私はあまり堅苦しいやり方は好きじゃない」
チェンは自分がマーケティングに興味を持っていることを銀行の同僚にかなりオープンに話していたため、そのうちの何人かがマーケティング業界の人を紹介してくれたのだという。
「私はソーシャルメディアで自分のキャリアをシェアしていたことも幸運だった。多くの人がアドバイスをくれたり、仕事や相談相手を勧めてくれた」
またチェンは、「基本的な下調べ」をし、自分の興味のある職種をいくつか絞り込んでからコンタクトを取るべきだと話している。彼女はリサーチの際にマーケティングのさまざまなサブセクターを細分化し、興味のない分野を除外していったという。
「そして、人々になぜこの業界を選んだのか、長期的な目標は何か、そして彼らにアドバイスを聞いてみてほしい。もしその中で何かが自分に響くのであれば、その業界はあなたに合っているのかもしれない」
履歴書を見直す
現在の業界で通用したからといって履歴書はそのままでいいと考えてはいけない。
チェンが履歴書をマーケティングの専門家に見せたところ、何人かは「何について書いているのかさえまったく分からなかった」という。
「私の履歴書は非常に金融に偏ったものだった。金融の専門用語を減らし、マーケティングに適した内容にするために全面的に見直さなければならなかった」
チェンは多くのマーケティングの専門家と話し、「彼らがどのように話すのかを理解」して業界用語に慣れることができたという。彼らのフィードバックをもとに彼女は自分の履歴書を簡素化し、取引や金融特有のニュアンスを取り除いて、両方の業界に適用できる「(転職先の業界で)転用が可能なスキル」をアピールすることを強調した。
「データや分析は重要なスキルであり、マーケティングが進んでいる方向でもある。またクライアントとの関係構築やプレゼンテーション、プロジェクト管理のスキルもマーケティング業界で必要だ」と彼女は話している。
キャリアコーチも求職者に対して、履歴書を具体的な内容にしつつ、新しい業界に合わせた特定のキーワードを盛り込むようにとアドバイスしている。