カリフォルニア州の規制当局はウェイモなどが提供するロボタクシーのサービスをサンフランシスコ全域に拡大することを承認した。
Taylor Rains/Insider
- サンフランシスコでロボタクシーの運行が解禁された。
- 2023年8月10日、カリフォルニア州の規制当局は市内全域でロボタクシーサービスを拡大することに賛成票を投じた。
- しかし、ロボタクシーの安全性に対する懸念は拭いきれていない。
サンフランシスコの通りで、危険なまでにコースを外れてしまうのではないかと懸念されているのにもかかわらず、無人で走る車はさらに動きを活発化しようとしている。
シリコンバレーの本拠地であるこの街は、自動運転技術とレーダーセンサーを巧みに組み合わせ、運転手がいなくても加速、車線変更、信号でのブレーキ操作が可能な自動車を開発する企業にとっての実験場となっている。
だが、アメリカ運輸省道路交通安全局(NHTSA)によると、アメリカでは2022年、4万2795人もの交通事故死者が出ている。ロボタクシー開発企業が「運転手がいない車に乗客を乗せることは賢明なアイデアだ」と規制当局を納得させるのはかなり難しいと思われた。
しかし、彼らはそれをやってのけたようだ。
2023年8月10日、カリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)は、サンフランシスコ全域でのロボタクシーのサービス拡大にゴーサインを出すことについて、3対1で承認した。これは80万人以上の市民に対する無人運転車の安全性への彼らの自信を示すものだ。
アルファベット(Alphabet)傘下のウェイモ(Waymo)や、2016年にゼネラルモーターズ(General Motors)に買収されてから約10年が経過したクルーズ(Cruise)などにとって、電気自動車をベースとした無人運転の移動手段を一般市民に提供できることは、長い道のりを経た正当性を証明するものだ。
両社は規制当局の信頼を高めるため、さまざまな制限のもと、市内でロボタクシーのサービスを試験的に導入してきた。ウェイモの場合、乗客に無料で乗り物を提供している。一方、クルーズが運行する範囲は市内の半分以下の区域に限られている。
繰り返される事故、長い交通渋滞、スモッグが続くことによって損なわれた都市での移動の未来を自動運転車に託す人々にとって、今、市内でいつでもロボタクシーの有料サービスを自由に開始できるようになったことは、明らかに大きな勝利だ。
この決定を受け、GMクルーズのバイスプレジデント、プラシャンティ・ラマン(Prashanthi Raman)は、「サンフランシスコに住むすべての人が、よりクリーンで持続可能な、自立した交通手段を利用できる」「行きたい場所に安全にアクセスできる」とリンクトイン(LinkedIn)に投稿した。
しかし、カリフォルニア州の規制当局がゴーサインを出したことで、制御不能に陥りかねない自動運転殺人マシンによる新時代の到来を予感している人もいる。
ロボタクシーへの不安が現実に
この決定が下されるまでの間、サンフランシスコの市職員や地元住民は、ロボタクシーは路上で走る準備ができていないのではないかという懸念から、街の中を走る可能性に抗議してきた。
ロイターによると、「数百人の住民とさまざまな利益団体のメンバー」が審議される公聴室に入り、安全性から利用のしやすさに至るまで、あらゆる問題について懸念を示したという。
その中には、2022年春以来「自動運転車が関与した事故が600件近く記録されている」とする地元交通機関の証言も含まれていた。ロボタクシーがサンフランシスコで主流の交通手段となろうとしている今、住民の懸念はこの件だろう。
ウェイモは、同社の車両は「数え切れないほどさまざまな状況で、2000万マイル(約3218km)以上の実走行経験」があり、「厳格な安全体制」に従っていると述べている。
確かにその通りかもしれないが、実際に自動運転車による衝突事故は起きている。2022年NHTSAが発表したデータでは、10カ月間で400件の事故が発生した結果、数人の死者が出ているという。
これはもちろん、一般的な自動車で日常的に発生する事故の数と比較にはならないほど少ないが、それでも自動運転車の課題を浮き彫りにしている。
「エッジケース」は特に難しい問題だ。これは、無人運転車がテスト走行では遭遇しなかったが、実際の走行で直面することになり、どう対処すればいいのかわからなくなるような、通常なら起こりえない出来事のことだ。
自らを「分散型活動家グループ」と称するセーフ・ストリート・レベル(Safe Street Rebel)は今回の決定に対し、「ロボットカー会社は、規制当局との判決を勝ち取った。しかし、我々が知っているように、車が増えるということは問題が増えるということだ」とX(旧Twitter)に投稿した。
2022年8月10日の投票に先立って、セーフ・ストリート・レベルは、ロボタクシーに抗議する対抗手段として、トラフィックコーンをロボタクシーのボンネットに置くことでロボタクシーをシャットダウンモードにすることを提案した。
危険を冒す価値があるかどうかは、地元住民の判断に委ねられている。