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世界のクリエイターたちが絶賛。あの有名漫画家も認めたマンガ界に欠かせないツールとは?

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Dec 17, 2024, 11:00 AM

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クリエイター向けのデジタル制作ツールを提供するセルシスが、2024年9月25日、東証スタンダード市場からプライム市場へと上場市場区分を変更した。

セルシスといえば、イラスト・マンガ・アニメーション業界を30年にわたって支えてきた存在で、今や日本の漫画家の90%以上が、同社のドローイングツール『CLIP STUDIO PAINT』を使用している(※)。その上場記念パーティーでも、多くの出席者から、同社のコンテンツ文化への貢献ぶりが語られた。

1991年から始まるセルシスの軌跡と、プライム上場を“第二の創業”ととらえた新たな挑戦を、当事者の声も交えながらつづった。

※ セルシス調べ(マンガ家実態調査アンケートより)

セルシスとともに歩んだコンテンツのデジタル化

history

セルシスの歴史は、日本のアニメーションやマンガのデジタル化の歴史とそのまま重なる。創業は1991年。セルアニメーションをシステム化したいという思いから、「セルシス」の社名が付けられた。

1993年、同社がまずリリースしたのが、アニメーション制作ソフト『RETAS!』だ。このソフトでは、アナログ環境での制作に慣れたユーザーが操作しやすいようにと、作画・トレース・彩色・撮影の4工程を、別々のソフトでまかなう設計が採られた。1997年、その『RETAS!』を、業界最大手の東映アニメーションが採用。2003年には、アニメーションスタジオの国内シェアが90%を超えるまでになり、“業界標準ツール”となった。

2001年、セルシスは次なる挑戦として、世界初のマンガ制作ソフト『ComicStudio』を発売。同ソフトでも、ラフ・下描き・ペン入れ・ホワイト修正・トーン貼り・ネーム製作といったアナログ制作の各工程が、デジタルツールにもそのまま踏襲された。

『ComicStudio』は当初、パソコンのマシンスペックが追いつかないといった問題も起こったものの次第に支持を広げ、全世界で160万本を出荷するヒット製品に。その結果、国内のマンガ制作のデファクトスタンダード(事実上の標準)といえるソフトになった。

その後、「せっかくデジタルでマンガを作るなら、わざわざアナログで出力しなくてもデジタルで読めるようにできないか」と、ビューアの開発にも着手。2003年には、KDDIの液晶付き携帯電話端末「CDMA 1X WIN」に、セルシスの電子マンガビューア『ComicSurfing』が標準搭載された。

『ComicSurfing』は、2018年までに電子書籍サイト1200サービス以上で採用され、スマートデバイス向けアプリは450万ダウンロードを記録。さらに2018年には、マンガから小説まで多くのジャンルに対応した電子書籍ビューア『CLIP STUDIO READER』を発売。同ビューアも、マンガアプリ「めちゃコミック」をはじめ、多くのサービスに採用されている。

また2022年には、デジタルコンテンツをリアルな“モノ”のように扱えるコンテンツ流通基盤ソリューション『DC3』の提供を開始(※)。こうしてセルシスは、電子書籍ソリューションや流通ソリューションを通してクリエイターの発表の場を広げることにも、力を注いだ。

※『DC3』は、セルシスのグループ会社である株式会社&DC3が提供

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マンガ界のデジタル化に大きく躍進した『CLIP STUDIO PAINT』。

そして中でもセルシスの代表作といえば、2012年に発売されたドローイングツール『CLIP STUDIO PAINT』だ。コンテンツのデジタル化をさらに大きく進めることになる新たなアプリとして、これまでの知見を統合。後に同アプリにはアニメーション制作機能も追加され、イラスト・マンガ・アニメーションのすべてを制作できる万能ドローイングツールとなり、高い機能性とコストパフォーマンの良さで支持を着実に伸ばしていく。

今や『CLIP STUDIO PAINT』は、世界の4500万人のクリエイターに使用され(※)、日本においては漫画家の90%以上が利用。イラスト・マンガ・アニメーション制作における、世界的なインフラともいえる存在になっている。

※ 世界11言語に対応し、80%が海外利用

また『CLIP STUDIO PAINT』ではサブスクモデルを早くから採用し、それによってもたらされる安定収益も、セルシスのプライム上場を後押しした。

作家がデジタルツールを採用し、制作風景が一変

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司会を務めた佐々木クリス氏と久慈暁子氏

はたしてセルシスは、アニメーションやマンガといったコンテンツ文化に、何をもたらしたのか。

11月13日、同社の上場記念パーティーが、ヒルトン東京で開催された。パーティーには200名を超える関係者が出席し、佐々木クリス氏、久慈暁子氏の司会による華やかな雰囲気のもと、セルシスの2人の創業者、現代表、次代を担う取締役らが挨拶を行った。あわせて、セルシスとともに業界の歴史を作った来賓者たちが登壇し、同社がもたらした価値について語った。

その中から、とくに印象的だった言葉を紹介していこう。

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人気雑誌「なかよし」の販売担当をしていた講談社の山端剛氏が登壇。

「2013年、『なかよし』で『まんが家セット』を付録にしたことがあります。その号は瞬く間に完売となりました。編集部の“若い読者に漫画家を目指して欲しい”という思いからの企画でしたが、本当に想像以上の反響がありました。この出来事がきっかけになって、編集部が長年実施していた『まんがスクール』にさらに力を入れていくことになるのですが、共感いただいたセルシスさんには技術面でのサポートや『CLIP STUDIO PAINT』のご提供など、本当に至れり尽くせりのご協力をいただいてきました。あの頃からずっと変わらずクリエイターへ尽力されてこられたのだと感慨深く受け止めています。

『CLIP STUDIO PAINT』のような素晴らしいツールが誕生したことで、マンガ界は急激な発展を遂げたと感じています。私の中学生の娘からも『CLIP STUDIO PAINT』を誕生日プレゼントとしてリクエストされました。そんなふうに、今、漫画家になりたいという明確な目標がなくても、デジタルでイラストを描きたい子供たちがたくさんいる。セルシスさんのおかげでそういったカルチャーの裾野が広がったのだと思います」(講談社 出版営業本部 副本部長兼デジタル営業第一部 部長/山端剛氏)

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「魔法先生ネギま!」などで知られる赤松健氏からのメッセージが届いた。

「セルシスは『ComicStudio』をリリース後も絶え間ない改良と努力を重ねた結果、多くの漫画家がセルシスのソフトを使うようになり、マンガ制作の風景が一変しました。セルシスは業界に革命をもたらし、マンガ文化の発展そのものに多大な貢献をした存在です」(漫画家、参議院議員/赤松健氏)

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セルシスの創業と自身の秋田書店への入社年が同年で縁を感じていたとも話す秋田書店・牧内真一郎氏

「やりとりする漫画家さんに『CLIP STUDIO PAINT』のことを聞いたら、もうそれがないと描けないしアシスタントにも頼めない、というほどのインフラであると話していました。漫画家にとって、すごく大きなものをご提供いただいていて、本当にありがたいです」(秋田書店 取締役事業局長/牧内真一郎氏)

また、電子書籍ソリューションを通したコンテンツ文化への貢献にも、複数の登壇者が言及した。その中から、電子書籍の父とも称される萩野正昭氏のコメントを紹介する。

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長年の付き合いだからこそ語れる、熱いメッセージで会場を盛り上げたボイシャー・萩野正昭氏。

セルシスさんは2003年頃から一緒に仕事した、いえ、共闘した仲間です。あれこそが、デジタル出版の夜明け。日本のデジタル出版は、マンガを読むことができるガラケーからスタートし、セルシスさんはその中心的な存在でした。

そこからマンガだけでなく、テキストコンテンツの電子書籍化にまで拡張しましたが、当時は全然売れなくて……。それでもセルシスさんとは胸を開いてとことん話し合い、その道を前に進めてくれたのが、創業者の川上さん、野崎さん、そして現代表の成島さんでした。その執念、情熱、心の温かさに触れることができました。こういう会社こそが成功・発展するのだと、心から思います」(ボイジャー 顧問/萩野正昭氏)

プライム上場は“第二の創業”。より大きな変革を

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(左)取締役CTO・稲葉遼氏、(中央)代表取締役社長・成島啓氏、(右)セルシス 取締役兼&DC3 代表取締役社長・髙橋雅道氏。

なぜ、セルシスはマンガやアニメーションのシーンを長年にわたって支え続け、そこに革新をもたらすことができたのか。代表取締役社長・成島啓氏は、こう振り返る。

「結局当社は、ずっと同じことをやってきているんですよね。決して上場がしたくてとか、お金を儲けたくてとかではなく、ただやりたいことをあきらめずに、しつこくしつこくやり続けてきた。それが一番ではないでしょうか」(成島氏)

では、その「やりたいこと」とは?

創業当時から『クリエイターをテクノロジーでサポートする』というのが会社の行動原理となっていて、今もそれは変わりません。クリエイターにできるかぎり寄り添って、制作ツールや発表の場などを提供することで、クリエイションを縁の下から支える。当社の社員の半分以上をエンジニアが占めるのも、それを実現するためなんです」(成島氏)

そしてセルシスは、今回のプライム上場を、“第二の創業”とも位置づけている。

「セルシスは長く、“知る人ぞ知る”会社でした。プライム上場は、コンテンツビジネスを下支えするこういった会社があることを世に広く知ってもらう、大きなチャンスだと捉えています。また当社のコンシューマー向けサービスは、お客さまの8割が外国の方なので、海外の投資家にアピールできることも大きなチャンスとなります。

そして今後は、私たちがずっと作ってきた道具とソリューションの上に何を作るかを、ぜひ若い人たちに任せたいなと。そこについては、新しい血を入れて、攻めの姿勢でやっていく。今回の上場は、そこに向けたターニングポイントになるかもしれません」(成島氏)

そうした若い世代を代表するのが、稲葉遼氏と髙橋雅道氏の2人の取締役だ。稲葉氏は、開発業務に10年ほど携わった経験があり、現在CTO(最高技術責任者)を務める。現在27歳の髙橋氏はWebマネージャーなどを経て、グループ会社代表としてコンテンツ流通基盤ソリューション『DC3』を手掛けている。今後の展望について、2人はこう話す。

「これまでセルシスは、クリエイターを支えるツールやソリューションで、強みを発揮してきました。今後はそこに加えて、コンテンツのオーディエンスをも巻き込んでの『サービス』や『プラットフォーム』の提供に、ぜひ力を入れていきたいです」(稲葉氏)

「私たちがやるべきことは、二つあると思います。一つは、先人たちが大切につなげてきたバトンをしっかり受け取ること。そしてもう一つは、それを手に新しい場所へ走っていくこと。コンテンツのクリエイターやオーディエンスに価値を提供するという軸は決してぶらさずに、新しいことを仕掛けていきたいです」(髙橋氏)

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セルシスの中枢を担うメンバーたち。

セルシスの事業展開と歩を合わせるようにして、30年で飛躍的な進歩を遂げた、マンガやアニメーションのデジタル化。そして、“セルシス第二の創業”によって、この先の30年では何がもたらされるのか。その変革の幅は、これまでの30年より、さらに大きなものとなるかもしれない。


セルシスについてはこちら

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