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エシカルバンブー、竹由来の無添加洗剤で竹害を「竹財」に

記事のポイント


  1. 「バンブークリア」は、竹由来の天然成分だけで作る無添加洗剤
  2. 山口県の放置竹林の竹を資源として活用し「竹害」の解決に貢献する
  3. 竹に新たな価値を見出し、100年・200年先まで続く産業に育てる

エシカルバンブー(山口県防府市)が製造・販売する「バンブークリア」は、天然成分の竹炭、竹炭灰、湧き水だけで作る無添加洗剤だ。原料は県内の放置竹林で伐採した竹を使い、繁殖した竹が生態系を破壊する「竹害」の解決に向けた一翼を担う。代表取締役の田澤恵津子氏は国産竹のブランド化を図り、100年・200年先まで続く産業に育てたいと未来を見据える。(オルタナ副編集長=長濱慎)

エシカルバンブーの「バンブークリア」を担当する田澤恵津子代表取締役、バンブークリアは「サステナブル★セレクション2024」の三つ星に選出された=2024年10月、都内で 写真:廣瀬真也
エシカルバンブーの田澤恵津子代表取締役、バンブークリアは「サステナブル★セレクション2024」の三つ星に選出された=2024年10月、都内で 写真:廣瀬真也

※エシカルバンブーの「バンブークリア」は、オルタナとサステナ経営協会が共催する「サステナブル★セレクション2024」の三つ星に選ばれました。次回の一つ星エントリーは、2025年1月14日まで受け付け中です。エントリーフォームはこちら
※「サステナブル★セレクション」とは、サステナブル(持続可能)な理念と手法で開発された製品・サービスを選定し推奨する仕組みです。
一つ星(★)は、製品・サービスが、持続可能な社会づくりに貢献していることを表します。
二つ星(★★)は、★に加え、企業・組織がサステナブル経営に取り組んでいることを表します。
三つ星(★★★)は、★★の中から特に大きな社会的インパクトを生み出していることを表します。
サステナブル★セレクション公式ページはこちら

界面活性剤をイメージさせる「洗剤」という言葉を使わずに、「汚れをクリアに」という意味を込めて「バンブークリア」と命名した
界面活性剤をイメージさせる「洗剤」という言葉を使わずに、「汚れをクリアに」という意味を込めて「バンブークリア」と命名した

■ 「口に入れても安全な洗剤が欲しい」という声から誕生

――竹を使った洗剤は、どういった経緯で生まれたのでしょうか。

田澤:エシカルバンブーの前身の会社で、2010年に竹繊維を使ったタオルの販売を始めました。そして、お客さまの一人から「子どもがタオルを口に入れてしまうが、柔軟剤の匂いがして心配。口に入れても安全な洗剤はないのか」という相談を受けたのが始まりです。

調べたところ、タオル同様に「竹」を使うのが良さそうだとなりました。竹のアルカリ成分には皮脂汚れを分解する働きがあり、昔の人々は竹灰を水に混ぜた灰汁(あく)を洗濯に使っていたのです。

山口県・防府市で灰汁を作っている工場も見つけました。工場といっても、自宅横のガレージで地元のおじいちゃんがボランティアのようなかたちで細々と作っているのが実態でした。それでも私は「サステナブルな製品やサービスが求められるこれからの時代、必ずビジネスになる」と、可能性を感じました。

こうして工場の事業を承継した上で2016年にエシカルバンブーを設立し、小さなプレハブからスタートしました。ソニーやパナソニックをはじめ、最初は小さな町工場だった企業も少なくありません。社会のためになり、100年・200年先も続くビジネスにしたいという想いもありました。

先人の知恵を活かして開発した「バンブークリア」は竹炭、竹炭灰、ミネラルを含んだ湧き水だけを使って自然抽出法で仕上げ、界面活性剤や香料などの化学物質は一切使っていません。製造工程で有害な物質も出ないため、工場の廃液・排気処理にかかる設備投資も抑えられます。

原料の竹炭
原料の竹炭
同じく原料の竹炭灰、湧き水を使用し、自然抽出製法で作る
同じく原料の竹炭灰、湧き水を使用し、自然抽出製法で作る

■ 前例のない製造工程をゼロから作り上げる

――天然の素材だけを使うにあたり、大量生産品としての品質をどう確保しているのでしょうか。

田澤:最初に取り組んだのが「飲めるぐらい安全」な品質の確保でした。これをクリアしなければ生産規模を拡大したときに環境破壊を引き起こし、お客さまや社会に大変な迷惑をかけると考えたからです。そこで、ある大手の研究機関に成分分析を依頼し、安全なことを証明するデータが得られました。

経験とカンに頼っていた製法を可視化するのもハードルが高く、安定した品質で作れるようになるまで約1年半かかりました。竹の種類や伐採の時期によって成分に差があり、炭の焼き方によっても品質にバラツキが出ます。これらの工程を一つひとつ細分化し、炭の大きさから抽出の速度に至るまで細かく設定しました。

竹炭を使った洗剤というもの自体前例がなく、工程を考える際には樹木の研究者や抽出液の専門家など色々な人を訪ねてリサーチを重ねました。国会図書館にも通い、竹の専門書にもずいぶん当たりました。

当初は「本当にビジネスになるのか」といった声も聞かれましたが、時代がエシカルな方向に進むに従って状況が変わってきました。広告を一切行わないにもかかわらずバンブークリアの売り上げは当初の150倍に、お客さまのリピート率は88%になりました。口コミを通してファンが広がったおかげです。

製造現場では「飲めるぐらい安全」な品質のため試飲も
製造現場では「飲めるぐらい安全」な品質のため試飲も

――お客さまからは、どんな声が寄せられていますか。自治体も注目しているようですね。

田澤:衣類用洗剤として家庭で愛用されているほか、洗濯洗浄剤が不要になるという理由でクリーニング店やコインランドリーでの採用も増えています。掃除にも使われており、木の床をバンブークリアで磨くと木材本来の香りが戻ると評判です。

山口県は2023年、「YAMAGUCHI Bamboo Mission(ヤマグチ・バンブー・ミッション)」という竹利活用プラットフォームを立ち上げ、47社・団体が参画しています(24年9月現在)。県内の竹林は全国4位の1万2000ヘクタールもあり、まだまだ利活用できるポテンシャルがあります。

■ 目指すのは「日本の竹のブランド化」

――エシカルバンブーは創業から8年を迎えました。多様性・包摂性を重視した働き方にも取り組んでいますね。

女性を中心に20代から30代の若いスタッフが増えました。一方で、事業承継時からいるおじいちゃんなど、時間が空いたときだけ手伝いたいという方には「炭窯貯金」という、作業量に応じた額を貯める仕組みを設けました。無償で働くボランティアは無くしたかったのです。

2023年7月からは、県内にある官民協働の刑務所「美祢社会復帰促進センター」に刑務作業を提供しています。ここでは竹箸づくりを通して受刑者の技術習得や地域との共生を促し、すべての人が活かされる地域社会の実現を目指します。

――竹を活用したビジネスを持続可能なものにするためには、何が必要と考えますか。

田澤:最初に100年・200年先も続くビジネスにしたいという話をしましたが、長期的な視点を持つことと、何のためにビジネスを行うのかという軸をブラさないことが大切です。100年以上続いている企業はいずれも「三方よし」を実践しており、そうなるという覚悟なしに始めてはならないと思います。

近年「竹害から竹財へ」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。ついこの前まで「竹害をなくすには竹をやっつけるしかない」と言われていたことを考えると、大きな変化を感じます。しかし、これを一時的なブームととらえて短期的な利益を追求するようでは、海外産の竹を輸入するといった誤った方向になりかねません。

目指すのは地産地消を通した「日本の竹のブランド化」です。現在のところ竹は雑草に区分されていますが、将来はこの区分がなくなり、荒れ果てた竹林が整備されて大きな価値を生み出す。そんな未来が実現するプラットフォームづくりに、一つずつ取り組んでいきます。

※エシカルバンブーの「バンブークリア」は、オルタナとサステナ経営協会が共催する「サステナブル★セレクション2024」の三つ星に選ばれました。次回の一つ星エントリーは、1月14日まで受け付け中です。
・エントリーフォームはこちら⇒ https://www.alterna.co.jp/135966/

・サステナブル★セレクション公式ページは⇒ https://www.alterna.co.jp/sustainable-selection/ 

S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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キーワード: #サステナビリティ

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