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歌島(金田一少年の事件簿)

登録日:2018/02/12 (月) 11:02:13
更新日:2024/12/21 Sat 17:44:11
所要時間:約 8 分で読めます





この劇場もいろいろありましたからね…

いいことも… そうでないことも…


歌島」とは、『金田一少年の事件簿』に登場する架空の島である。


概要


南伊豆の沖合に浮かぶ周囲1kmほどの小さな島。『新たなる殺人』にて、静岡県に含まれている事が判明した*1
島の大半は樹木や芝生で覆われており、その中に一軒だけホテルが建っている。
この島は明治時代にとある資産家が別荘を建てるまではまったくの無人島だったらしく、その後何度か持ち主が入れ替わった後で演出家だった黒沢和馬が島ごと買い取り、数年かけて別荘を改築しホテル「オペラ座館」を開業した。
現在は島には定住している人はおらず従業員のみが通う。ちなみに島の行き来や食糧の調達にはクルーザーや定期船を使っている。

最初の所有者だった資産家の男はガストン・ルルー原作の歌劇『オペラ座の怪人』に魅せられていたようで、わざわざ別荘の隣にオペラ座さながらの劇場を建てている。
しかしこの男は、音楽や演劇に天才的な才能を発揮しながらも奇妙な仮面を常に被って素顔を決して見せようとしなかったらしく、『オペラ座の怪人』の「ファントム」さながらの人物だったと伝えられている。

劇場の地下には『オペラ座の怪人』に出てきそうな迷宮が張り巡らされており、地下に入る度に天井から漏れる光が作り出す幻想的な光景を楽しんでいたらしい。
また離れの塔には彼が隠れ住んでいた小部屋があり、その中にはたくさんの仮面が飾られていた。

後に華族の白神家が館を買い取ると、その男は忽然と姿を消し行方知れずとなる。恐らくこの頃から本格的に地下迷宮や塔の小部屋に隠れ住むようになったものと思われる。
白神家当主(白神海人の祖父)はその人物の事をなぜか恐れており、臨終の間際には一族に対し館を必ず手放すようにと告げるとともに、「今でもあの男(資産家)がどこかに隠れ住んでいるような気がしてならない」と言い遺してこの世を去った。
館を手に入れてから白神家では良くない事が立て続けに起きたらしく、海人の父の代で白神家は遂に没落。そして海人の父は「もっと早く館を手放すべきであった」とずっと漏らしていたという。

その後、日本で5本の指に入ると言われている天才演出家だった黒沢が、館を島ごと買い取ってホテルに改装する。
だが4年前に黒沢の娘・美歌が、オペラ座館で『オペラ座の怪人』上演中に服毒自殺。葬儀はオペラ座館で執り行われ、島の岬に埋葬された。
そして同じオペラ座館で2件の連続殺人に関わった後、黒沢自身も車で崖から海へ転落。遺体は上がっていないが、生存は絶望的だろうという事で事故死扱いとなっている。
事故の原因は不明。一部では自殺だと噂されているが、遺書は見つかっていないので真偽は定かではない。

黒沢の死後は、作曲家で黒沢の知人の響静歌がこの館を入手。
この館の曰くは知っていて、それでもそのようなところに魅力を感じて館の主となった。
黒沢の死を受けてオペラ座館は取り壊される事となるが、その前に新たな連続殺人が発生し劇場が焼失してしまう。

なぜこの館を建てた資産家の男は、そこまで自らをファントムになぞらえて人目を忍んで暮らしていたのか?
今となってはその理由を知る由はないが、その男の執念が今もなお渦巻いているからなのか、この館の所有者やその一族には何らかの災難が降りかかっている。
そして本作の主人公金田一一にとってもここは因縁の場所となっており、この館で3回も連続殺人に巻き込まれた後で「この館を建てた仮面の男の異様な執念が次々と事件を呼び寄せたのかもしれない」と語っていた。
また地下迷宮にその男の死の痕跡がどこにもなかった事から「案外劇場に来る人がいなくなって1人退屈したから島を出てどっかに行ったんじゃないか」と推測している。


島の詳細



  • リゾートホテル「オペラ座館」本館
ジョージアン・スタイルという建築様式で建てられた荘厳なたたずまいの洋館。
周囲は手入れが行き届いた洋風庭園で囲まれているが、裏側は絶壁に面している。崖下は海であり、落ちればまず助からない。
元は資産家の別荘だったが、黒沢が6年かけてホテルに改装した。

  • 劇場
演劇好きだった資産家の男が建てた小さな劇場。
古びているが設備はしっかりしており、独特の風情があるので『オペラ座の怪人』を演じるには絶好の場所と言える。
『オペラ座館殺人事件』の後で老朽化に伴い取り壊されるが、その後で新しい劇場が建てられた。
地下には迷宮が張り巡らされており、劇場の真下の部分からは幾つもの光の筋が漏れるようになっている。

  • 離れの塔
本館の食堂から見る事の出来る塔。
中には螺旋階段があり、毎晩螺旋階段に蝋燭の火が灯される。
ここには資産家の男が隠れ住んでいた小部屋があり、中には何枚ものファントムの仮面と男がつけていた日記があった。

  • 黒沢美歌の墓
4年前にオペラ座館の劇場で自殺した黒沢美歌が葬られている墓。
黒沢の計らいで、見晴らしのいい岬の上に立てられた。

  • 間久部青次のアトリエ
オペラ座館の常連である画家・間久部青次が使っているアトリエ。
中には美歌の肖像画が何枚も飾られている。


歴史



  • 100年前
明治時代の資産家が歌島を買い取り、別荘と劇場を創建。
館に地下迷宮を造り、そこに隠れ住むようになる。

  • 数十年前
華族・白神家が館を買い取り、資産家の男は失踪。
白神家当主が他界した後は白神家は没落し、館も人手に渡る。

  • 10年前
黒沢が館を島ごと買い取る。
当初は別荘にするつもりだったが、ホテルに改装する事を決める。

  • 4年前
洋館の改装が完了。
リゾートホテル「オペラ座館」として開業する。

美歌が舞台上で服毒自殺。オペラ座館で葬儀が執り行われる。

  • 現在(金田一少年の事件簿)
不動高校演劇部が合宿のために訪れる。
後に演劇部関係者3人が殺害される事件が発生。事件解決後に劇場が取り壊される。

オペラ座館の新たな劇場が完成。
それを記念し、劇団「幻想」が黒沢の演出で『オペラ座の怪人』を公演する予定だったが、劇団員3人が次々と殺害される事件が発生し中止に。
事件後に黒沢は館を手放し、新劇団「遊民蜂起」を旗揚げする。

静歌が館を買い取り、新たなオーナーとなる。
黒沢の逝去に伴い、オペラ座館の取り壊しが決定。「遊民蜂起」が追悼公演として『オペラ座の怪人』を行う。
その最中に劇団員3人が殺害され、犯人が自殺を図った事で劇場が焼失する。

  • 20年後(金田一37歳の事件簿)
20年の間に予定通りオペラ座館は取り壊され、替わりに現代風のリゾートホテルが建てられる。
だがオープンして間もなく婚活ツアーの客が次々と殺害される事件が発生する。


島で起きた主な事件



  • オペラ座館殺人事件>オペラ座館殺人事件(Fileシリーズ1作目)
演劇合宿のためにオペラ座館を訪れた不動高校の演劇部関係者が、「歌月」という謎の人物に次々と殺害された事件。
『オペラ座の怪人』になぞらえた犯行だったが、この事件には1ヶ月前の女子部員の自殺が大きく関わっていた……。

  • オペラ座館・新たなる殺人(ノベルスシリーズ1作目)
新劇場のこけら落とし公演で訪れた「幻想」の団員が、『オペラ座の怪人』の筋書きに見立てられ殺害されていった事件。
4年前の美歌の自殺が今回の事件に深く関わっており、黒沢の人物像も掘り下げられている。
またこの事件の真犯人は、シリーズ史上最も高潔な犯人として有名。

  • オペラ座館・第三の殺人(第2期シリーズ2作目)
取り壊しが決まったオペラ座館の最後の舞台という事で、黒沢を偲ぶために「遊民蜂起」が『オペラ座の怪人』の公演をする事となる。
だがそのリハーサル中に劇団員が殺害され、それを皮切りに次々と劇団員が殺害されていった。
この話では、ファントムさながらに醜く焼け爛れた顔で「ファントム」を演じきった人物が登場。その人物の失踪が、今回の事件の動機に繋がっている。

  • 歌島リゾート殺人事件(金田一37歳の事件簿1作目)
オープンしたばかりの歌島リゾートで、婚活ツアーの客が第4のファントムによって次々と殺害された事件。
これまでとは違い行き当たりばったりな計画で犯行に及び、事件の動機は早い話が結婚詐欺という生々しいものであった。

なお、これらの事件はどれも最初の被害者が女性という共通点がある。


関連人物



  • 黒沢和馬
ホテル「オペラ座館」の元オーナー。
かつては『幻想』で演出家として活躍していた。その手腕は日本で5本の指に入ると言われ、本場ブロードウェイの演出家さえもわざわざ観に来たほどという。
『オペラ座の怪人』だけでも8種類の演出を試みており、その全てを大成功に導いた。
また現代演劇を改革し、それをビジネスとして成立させた立役者でもある。

引退した後はオペラ座館のオーナーとなるが、2つの連続殺人に巻き込まれた後で新劇団を立ち上げ、歌劇『オペラ座館殺人事件』で新たな演出を試みた。しかし、その後は転落事故により消息不明となる。
ちなみに3件ある連続殺人のうち2件は彼の一族が深く関与しており、いずれも「恋人(黒沢の子供)を失った事の復讐」が動機であった。
犯人たちの事件簿』の番外編では何度も殺人事件が起こっている事をあの世から突っ込んでいた。気持ちはよくわかる

横浜市の開業医。
『オペラ座館殺人事件』に巻き込まれた後でオペラ座館を妙に気に入り、毎週末をここで過ごすようになる。
しかし『第三の殺人』には登場しないことから、建物そのものよりも黒沢オーナーの人柄を気に入っていたのかも知れない。
映像化作品には『第三』に限らず一切未登場。

  • 響静歌
ホテル「オペラ座館」の新オーナー。
かつては作曲家として様々な舞台の楽曲を創っていた。
かつて黒沢と歌島で暮らしていた時に彼の息子を妊娠するが、黒沢の負担になりたくないと思い、1人でこっそり産んで従姉妹に引き取ってもらっていた。

  • 白神海人
ミステリールポライター。
オペラ座館の以前の所有者だった華族・白神家の人間。
彼の祖父がここを資産家から買い取ったが、祖父の死後は何かに呪われたかのように白神家は衰退の道を辿った。

  • 冬木栄助
歌島リゾート支配人。


追記・修正は、オペラ座館に宿泊してからお願いします。


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最終更新:2024年12月21日 17:44

*1 「前回の事件で静岡県警の世話になった」と話す場面がある事から。