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お前を殺す(新機動戦記ガンダムW)

登録日:2012/07/04(水) 19:44:50
更新日:2024/11/30 Sat 23:00:20
所要時間:約 5 分で読めます










お前を殺す……


















「お前を殺す」とはアニメ『新機動戦記ガンダムW』の主人公、ヒイロ・ユイの名言であり迷言でもある。
彼の有名な台詞にして結果的に生存フラグとなってしまったことでも知られている。



【この台詞までの経緯】
「お前を殺す」というセリフが初めて飛び出したのは、第1話「少女が見た流星」である。
主人公ヒイロは、秘密兵器『ガンダム』を流星に偽装して地球に送り出すコロニーの一大反抗作戦『オペレーション・メテオ』の実行者として地球に降下していた。
この時、連合軍のエースパイロットゼクス・マーキスと遭遇。

バスターライフルによってゼクスの部下が操縦する2機のエアリーズを容易く撃墜し、高笑いを上げるヒイロ。
しかし、ゼクスの腕前は伊達ではなく、リーオーでウイングに組み付き自身は脱出することで相討ちに持ち込む。ウイングは第1話にして量産機のリーオーに撃墜される*1という大失態を犯し、空中から水面に叩きつけられ海底に消えたのであった。
ウイングガンダムェ……。

しかしヒイロは死んではいなかった。
なんとか見た感じ充分に深海の海底から自力で這い出したヒイロはパイロットスーツを着たまま砂浜まで流れ着いていた
人によってはこの時点で???となるだろうが、こんなものはまだ序の口。

さすがのヒイロも体力が尽きて気絶。
そのヒイロを発見したのは、偶然近くにいた外務次官の娘リリーナ・ドーリアンだった。

何も知らないリリーナはヒイロを介抱するが、目覚めたヒイロは飛び起きるや否や、
「見たのか!?」
と発言。
それに対してリリーナは、
「え? 何を?」と聞き返した。……当たり前だ。
(一応補足しておくと、ヒイロの任務は奇襲である。一般人とはいえガンダムとそのパイロットであることを知られた可能性に対する反応としてはまあ普通……多分…ということにしておこう)

その後シラを切っていると判断したのか何なのか、この時点では本当にリリーナは何も知らなかったのに、
ヒイロは躊躇なくいきなり自爆しようとして吹っ飛ぶ。そして装置の故障で不発だと知るやリリーナが呼んだ救急隊を殴り倒して救急車を強奪し、そのままどこかに走り去ってしまった機密を守りたいはずなのにサイレンまで鳴らして。
その様子はどう見ても海底からどうにか抜け出し、さっきまで気絶していた人の動きではない

重ねて言うが、第1話である。しかも前半。

その後のリリーナはというと、こちらもなんだかおかしく「私は…私はリリーナ・ドーリアン。あなたは…?」とヒイロの走り去った先を見つめながら呟いていた。

訳も聞かずにいきなり死のうとした挙句、自分を助けようとした救急隊を全員殴り飛ばすという蛮行を目の当たりにした(はずの)彼女であったが、そんな明らかにヤバい少年との接触に身の危険を覚えるどころか、何か強烈に惹かれるものを感じ、いつの日か再会することを夢見ていたのであった。

どういうことなの……?


そして問題の後半へ。

リリーナの通う聖ガブリエル学園にひとりの男子生徒が転校してくる。
ヒイロ・ユイです。よろしく
その男子生徒こそ、リリーナが助けた少年だった。

どうやって急に転校してきた?
……とは多くの視聴者が思ったことだろう。
だが、ここまで来てもまだ終わらない。

あまりに衝撃的な出会い、そして突然の再会をしてしまったリリーナはその男子生徒が気になり、翌日行われる自分の誕生日パーティへの招待状を渡す。

ヒイロは招待状を受け取り、周囲にいたリリーナを慕う学友たちは拍手を贈った。

だが……。
ヒイロは何故かややもったいつけてその招待状を破り捨ててしまった
しかも何故か目の前でかっこいい破り方をしていた(そしてこの時のヒイロは何故か満面のドヤ顔)

さすがのリリーナも「ひ……ひどい……」と涙目になってしまった。
さらにリリーナの涙をすれ違いざまに指で拭いながら去り際に一言。


「お前を殺す」
デ デ ン !

リリーナ「なんなの……この人……」
(視聴者「なんなの……この人……」)


こうしてガンダムWの第1話は終わった。
くどいようだが第1話である

いきなりヒロインの好意を無下にし、すれ違いながら指で涙を拭うというキザな仕草を見せたかと思えば「お前を殺す」という物騒にもほどがある宣言をして去って行った。

直後の目を見開いたリリーナの顔のアップとともに視聴者にもの凄いインパクトを与えたのであった。

ちなみに、ざわめきやどよめきが一切聞こえないことからリリーナを見守っていた周囲の学友たちが一瞬にして消え去ったようにも見える。この点もこのシーンのシュールさをより一層引き立てている。

また、招待状を破り捨てられたリリーナには大いに同情の余地はあるものの、砂浜でヒイロと初めて出会った時の一連のシーンを踏まえると彼女の方もかなり夢見がちであった。
明らかに出てくるアニメを間違えているとしか思えない、夢を見ている発言を繰り返しているため、第1話のラストで「なんなの……この人……」とこぼしたリリーナに対しても前半Aパートで「なんなの……この人……」と思った人は多かっただろう。

なんなの……このアニメ……(褒め言葉)

前作とは違った意味で、早くも「このアニメはヤバい」と視聴者に印象付ける事となった。

コミックボンボンで連載されていた漫画版では、尺の関係で上記の奇行の幾らかはカットされたが、
その代わりにこのコマの表情がなんかもう危険なことになっており、こちらでも読者に凄まじいインパクトを与えた。


【その意図】
「お前を殺す」とは、あまりにも端的かつ唐突に飛び出した発言だったため意図が分かりづらい。実際いわれたリリーナが発したのは「なんなの……この人……」という台詞であり、命を狙われることへの恐怖というよりは驚愕や困惑が感じられた。だが、当初においては文字通りな意味であったと思われる。

ヒイロはオペレーション・メテオを実行する少年であり、彼の行動は後にトロワが心から認める程徹底的で極端なものであった。ヒイロは極秘中の極秘であるこの作戦にかかわった存在は自身も含め跡形もなく消し去る覚悟を秘めていた。

その証拠に、第2話ではガンダニュウム合金を破壊できるミサイルをわざわざ調達し、愛機であるはずのウイングガンダムを機密保持のために爆破しようともくろんでいた。

となれば(事情を一切知らなかったとはいえ)自身と接触したリリーナが抹殺の対象となるのも自然なことだろう。

その殺意もまた序盤では本物であり、同じく第2話では「深入りしすぎた。さようなら、リリーナ」とためらいなく銃を向けて発砲しようとした。ここでデュオが現れなければリリーナは本当にここで命を落としていた可能性が高い。

「お前を殺す」とは始末するべき対象への冷徹な宣告であり、工作員である自分にこれ以上近づくなという拒絶の現れ、あるいは警告であった。自分で招待状を破っておいて涙を拭うという仕草も、無関係なリリーナを一応は気遣いつつ涙目になって顔を伏せた彼女の注意を自分に向けるためにしたのだろう。

招待状を受け取る→破り捨てる→涙を拭う→「お前を殺す」という流れを俯瞰してみると、演出的にも見事である。上げて落とすを繰り返し、最後にとんでもない爆弾発言を持ってきたことでそのインパクトを最大級に引き上げることに成功している。

【生存フラグとして】

当時こそインパクト抜群のこの台詞だが、きょうびの冷徹系主人公の台詞としては(多分)そこまでおかしくもないこの台詞。

この台詞の何が凄いのかと言えば、この台詞をヒイロに言われた人間は全員生存しているという、生存フラグとしての驚異的な性能である。

本編でヒイロにこの台詞を言われた人間は3人。
1人目は前述の通り、ヒロインであるリリーナ・ドーリアン
2人目は同じガンダムパイロット、カトル・ラバーバ・ウィナー
3人目はライバルである連合のエース、ゼクス・マーキス

この3人、どんなピンチになろうともまず死なない。結構な量の死亡フラグも立てているのに死なない。
特に吐血の多いゼクスのしぶとさは最早ギャグのレベルである。

小説版EWではヒイロがマリーメイアに対して「この子を殺さなくてはならない……」と考えている場面があるが、マリーメイアがどうなったかはお察し。

映像化されていないこの作品ではヒイロはラスボスを能動的に射殺しているのだが
その時に限って「お前を殺す」ではなく「止める」と発言している。

ネットが普及してからのネタ……かと思いきや、普及しきっていない時期から既にネタにされている。
まあ電波な行動を繰り返したイケメンボイスのイケメンが、どや顔で堂々と「殺す」とか言っておきながら1人も殺せていない時点で無理もない。
そもそも、当のリリーナ本人が序盤から「早く私を殺しにいらっしゃーい!」と「もう一度私の前に現れてほしい」という意味で叫んでおり、原作からしてすでに「お前を殺す」を字義通りに捉えていない。

ボンボン版に至ってはラストシーンもアニメ版とは違い火星に旅立つ事になったヒイロにリリーナが「また私を殺しに来てね」と告げて(ヒイロもヒイロで「任務了解」とか言っちゃう)イチャつくという
まさに「お前を殺す」から始まって「お前を殺す」で終わってしまった。

公式側でも生存フラグ扱いらしく、GジェネレーションでのIDコマンド「お前を殺す」の効果は大抵「クリティカル&敵ユニットを撃破しない」である。

とはいえ、この台詞をいわれた3人はいずれもガンダムWにおいて欠かすことのできない重要人物であり、そう簡単に死なれたら困るという面はある。また、物語とは視聴者や読者の予想を超えることで面白さが生まれるもの。「お前を殺す」と言われた相手が本当に死んでしまってはお話的にシャレにならないだろう。

この台詞は強い覚悟を秘めた発言でもあり、このようなセリフをヒイロに言わせるだけの動機や状況があった。カトルについてもウイングゼロに乗って大規模な破壊を繰り広げていたため、トロワの説得がなければ本当に殺していたかもしれない。

様々な要因が重なって結果的に生存フラグにはなっているが、この台詞を発する際のヒイロの殺意と覚悟は本物なのである。

【余談】
今でこそネタ台詞が定着しきったが、当時は緑川ボイスも相まってヒイロの「危険な魅力」を表す台詞だった。
これに痺れた男子女子が結構いる。
ヒイロといえば「任務了解」と「任務完了」も有名だが、台詞のインパクトから「お前を殺す」が彼の代表的な台詞として扱われる事が多い。
だが緑川本人曰く「なんでこんな物騒な台詞が人気なのか理解できない」との事。


尚、某笑顔動画を初めとしてこの台詞とセットで使われる「デデン!」という擬音は、BGM『任務遂行』の冒頭のフレーズである。
これ自体は戦闘シーン等でも使われる緊迫感を伴ったカッコいい曲であり、第1話のAパートでもウイングが大気圏突入する場面で一度使われている。
だが、同時に登場人物が何かやらかした際に流れる事も多いため、「お前を殺す」とリリーナの顔のアップが思い出されて腹筋が自爆してしまう視聴者もいるとか……。


第1話からこんな事になった理由は、スタッフ曰く「普通をやらないのがガンダムW」だそうである。

因みに緑川はこの第1話、40度近い熱を出しながら収録に臨んだとかなんとか。

ガンダムシリーズの生みの親の富野監督はこのシーンを見て「新しいS〇X*2の表現だ!」と絶賛したとか。


【用量】
1話につき3回が理想。
言われてもゼロはともかくウイングガンダムの売上は変動しないらしい。



【その他】
スーパーロボット大戦シリーズではボス級の敵に対する決め台詞として使われる傾向があり、
スーパーロボット大戦L』までは、言われた人物はを除いてほとんど死んでいた。
生存フラグだった原作とは大違いである。「殺意自体は本物」という点を踏まえた描写だろう。本当に殺してしまう事に違和感を感じてしまうのは仕方ない

しかし、久々にTV版Wが参戦した『第2次スーパーロボット大戦Z』でついにこの傾向が変わった。
コードギアスの主人公ルルーシュ(ゼロ)に対して使われたのだが、きっちり生存フラグとしての仕事をこなしたのである。
この台詞の性能を知るユーザーは、使われた際には早くもルルーシュ生存を悟ったとか何とか。

まあスパロボでの死亡回避は珍しくもないが、今回のWの扱い方からするにスタッフも狙って使ったと思われる。最終決戦でも使うし。
ちなみに、これ以降本気でボス級を殺すつもりの場合、ヒイロは「お前を倒す」と言う事が多くなった。これはこれでなんか締まらないと思うユーザーもいたとか

また、『第3次スーパーロボット大戦Z時獄篇』ではAGが「ヒイロ様のあの台詞は生き残るフラグという噂もある」と堂々とぶっちゃけている。

スーパーロボット大戦X』では戦闘台詞で雷張ジョー総帥シャア、ホープスに対して使っている。
作中でこの3名がどうなったかは言うまでもないだろう。


SDガンダムバトルアライアンスでガンダムファイトに参加したヒイロは
「お前を殺す…ガンダムファイト国際条約第2条補足事項『試合中の過失によるファイターの殺害は認められる』に則りお前を殺す」と ルールの隙をついて殺すことを宣言していた。
それ試合中にわざわざ言っちゃバレるだろ

現在展開中の続編小説『フローズン・ティアドロップ』でも登場しており、カトルの妹であるカトリーヌ・ウード・ウィナーに対して使用した。
きっと彼女も生き残るだろう。


ガンダムトライエイジ』では低年齢層プレイヤーへの配慮からかこのセリフが避けられており、バーストのセリフに「お前を殺す」が使われたヒイロのカードは1枚もない。
また、敵NPCとして登場するヒイロも「お前を…倒す!」とは言うが殺すとは言わない。


また別作品ではあるがガンダムAGEでもキオ編最終決戦でゼハートアセムに向かって言い放ったのだが……結果はお察しの通りである。
むしろ55秒でクッキングされてしまった。


アニメ『ポプテピピック』TVスペシャル玄武ver.14話Bパートでは、緑川光がポプ子の声優を担当し、パロディとしてこの台詞も使用している。


TRPG『メタリックガーディアンRPG』ではガンダムW&∀ガンダム系の機体を再現した結果、ウイングゼロ以外のガンダムだろうが∀だろうが絶対にゼロシステム的なアレを取得させられるブッ飛びクラスとしてアポカリプス級が存在しており、
特技の中に「死を告げる天使」というあからさまに「お前を殺す」を意識したものがある。
あからさま過ぎてヒイロとウイングガンダムを再現する時は是非取得したくなるが、ヒイロっぽくバスターライフルをブッパするプレイングだと使いどころが一切ないという二重の意味で「お前を殺す」を再現したネタ特技である。
ちなみにデュオで「死ぬぜぇ…俺の姿を見た者はみんな死んじまうぞぉ…!」をやりたい時は有効という三重の意味で再現したネタ特技であった


尚、いかに生存フラグとはいえ言葉自体は非常に暴力的なものです。
ネタとして使う場合は死ぬ程イタい可能性を覚悟しましょう。



この項目が狂っているのなら、俺は自分を信じて追記・修正する……。

Wiki篭り……お前を殺す。


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最終更新:2024年11月30日 23:00

*1 この戦闘でウィングガンダムはよく「撃墜された」と言われるが既存のガンダム作品だと撃墜といえば「機体が穴だらけになったり真っ二つになったりして爆発四散する」状態のことを指すがこの戦闘でのウィングガンダムはスラスターが損傷しただけ。しかし「飛行中の戦闘機(に変形する可変MS)を攻撃し墜落させた」という本来の撃墜の定義には則っている

*2 いわゆる性交渉そのものではなく、男女の関係性全般のことの模様