[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/

ハコヅメ~交番女子の逆襲~

登録日:2020/06/28 Sun 18:25:11
更新日:2024/06/20 Thu 22:03:51
所要時間:約 10 分で読めます



私はそれからの人生で
この日の出会いを
何度も後悔することになる


『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』は、泰三子(やすみこ)による漫画作品。
講談社の『モーニング』に連載されていた。
単行本は既刊21巻(+1巻)。

第66回(2020年度)小学館漫画賞(一般向け部門)および第46回(2022年度)講談社漫画賞(総合部門)受賞作。



概要

架空の町にある交番に勤務する女性警察官の日常を描いた作品。

交番で勤務する警察官の日常を描いたコメディ……といえば大先輩がすぐに思いつくところだが、こちらは作者自身が過去に女性警察官として某県警で実際に勤務していた経験からくる、リアルな作風と、ぶっ飛んでいるように見えてどこかに実在していそうな濃い面々とが織りなすドラマが特徴。
リアルな交番勤務ということで、扱うテーマも、小学校での講話、警察のお守り、通常点検、体力測定といった警察の日常的なものから、性犯罪、デートDV、介護といった重いものまで幅広い。

そのコメディとシリアスの振れ幅が、この作品の最大の魅力であるといえよう。
コメディ側の内容が、捜索現場でのアダルトグッズや万引きAVタイトル読み上げ、露出嗜好の変態など下ネタエピソードに偏っている気がしないでもない。*1

基本は一話完結の作品であるが、たまに2~3話の中編や、5話以上をかけて描かれる長編シリーズもある。
16巻までに描かれた長編シリーズ3本*2のほとんどは、登場人物たちの過去に深く根を下ろしている出来事の精算であり、短編での日常的エピソードやさらりと描写された人間関係が伏線となっていることも多々あるため、再読時の驚きにもなっている。

そして4本目の長編エピソードは、作者自ら『楽しいことは何も出てこないので、好まない人は飛ばして読んでもいいように』とタイトルを変え『ハコヅメ 別章アンボックス』として連載され、単行本1冊にまとめられた。
だが、飛ばして読んでもと言いつつも、時系列的には17巻と18巻の間に入るものであり、舞台となる町山警察署内においても決定的な変化を伴う内容となっているため、できれば続けて読んでいただきたい。

ちなみにこの作者、
在職中に、警察官の宣伝のため「警察はしょうもない人でもなれますよ」という漫画を描こうと志す(この時点で漫画制作は未経験
     ↓
1ページ漫画を16ページ描き、たまたま知ってた漫画雑誌である『モーニング』編集部に持ち込む
     ↓
なんやかんやで連載が決まる
     ↓
週刊連載なので警察をやっていられるだけの時間的余裕が無い、しかも公務員である警察官では副業が一切禁じられているので、警察官を辞める
という、漫画みたいなエピソードで漫画家デビューを果たしている。
さすがに初期の頃は絵柄が堅いが、連載を経るうちに全体的な画力も目に見えて向上している。

早い段階からドラマ化オファーが殺到していたらしいが、2021年7月に日本テレビ系列で『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』のタイトルで放送。
ドラマは全11話だが、このうち2話は主演の永野が新型コロナに罹患し撮影が中断したため特別編で繋いでいる。
更に2022年の1月期にテレビアニメがマッドハウス制作で放送された。

2022年6月に第一部完として連載をいったん終了している。
作者曰く、「漫画家としてピークのうちにどうしても描きたい別作品を2022年10月から描くための休止」であり、「編集部ともども第二部の再開を前提としてのもの」という話だったが、1年ほど音沙汰無しが続いた。
この点については当時批判もあったが、連載開始までの経緯を語るインタビューによれば夫の急死があったようなので仕方ないところだろう。
2023年6月より「日本警察の父」である川路利良を描く超本格幕末史コメディ『だんドーン』がスタートした。第二部の再開は『だんドーン』完結後になるだろう。

あらすじ

岡島県警察*3町山警察署町山交番に勤務する新人女性警察官の川合麻依は、安定収入のために公務員を志しどうにか警察官にだけ合格するも、精神的にも肉体的にも負担の大きい激務にさらされ、退職することを決意していた。
そこに、新しい指導員として、刑事部のエースだったが後輩へのパワハラで交番へと飛ばされてきた美女、藤聖子が着任する。
それは、川合にとって、本当の意味での警察官人生の幕開けだった。


登場人物

  • 川合麻依
演:永野芽郁
声:若山詩音
町山交番勤務の巡査。
気弱な性格もあり、最初の頃は頼りなかったが藤の教育を受け、気の弱さや見かけの弱ささえも武器として使うほどのふてぶてしさを会得しつつ、警察官として身体を投げ出すこともできるようになった。
周囲からは、ゴリラである藤に付き従うチンパンジーとして見られており、イケメンの如月とペアを組んで捜査にあたった際には偉大なコメディアンとの交流を想起されていた。
ふとしたきっかけで、似顔絵捜査官としての才能に目覚め、本人もわりとその気になっている。画力は無いが、目撃者が伝えたいことを反映する能力はあり、実際に成果を出している。
恋愛経験は皆無で、少女漫画のような恋愛に憧れており、またイケメンに弱い。
署員勢揃いの救急講習で、ファーストキスを人形相手に捧げてしまった。

  • 藤聖子
演:戸田恵梨香
声:石川由依
町山交番勤務の巡査部長。
目を引くほどの美女であり、作中でも、単体セクシー女優のレベルだと言われている。
だが精神的には男勝りというレベルではなく、男性の同僚からはゴリラのように思われている。
警察学校時代から優秀で成績トップを譲らずミス・パーフェクトと称えられており、巡査部長試験も一発合格している。男性同期生間での愛称は「パーフェクトゴリラ」。
ペアっ子の川合を厳しくしつけ、一人前の女性警察官として育てようとしていたが、結果的に甘やかしてしまっていることは自覚している。
高校時代に交際した男性は複数いるようだが、警察官となってからはまったく縁がない。なお男心検定は八級

  • 源誠二
演:三浦翔平
声:鈴木崚汰
町山警察署刑事課勤務の巡査部長。
天然パーマのモジャモジャヘアが特徴。藤と同期で、彼女とは対照的に成績はビリだったが、刑事として現場に出てからは頭角を現し、巡査部長にも藤と同時に昇任している。
とにかく人たらしかつ取り調べの天才で、老若男女を問わず、被疑者だろうが被害者だろうが、心のガードの内側にするりと入ってしまえる。本人も「アイス食い終わるだけの時間があれば、どんな人間でも手玉にとれる」と言ってのけるほど。
また、実は短髪にすると天然パーマが目立たなくなり、超イケメンへと変貌する。
が、刑事という立場上、イケメンでは押しが効かないといった弊害が発生するために、上司から部下まで結託してその事実を悟られないようにしている。

  • 山田武志
演:山田裕貴
声:土屋神葉
町山警察署刑事課勤務の巡査長。
ツンツンヘアであり、源と二人でモジャツンペアと呼ばれている。
源に心酔しているが、新人時代には藤と指導員としてペアを組んでおり、彼女にも頭が上がらない。
藤と源が衝突する場合には、自ら頭を差し出してはたかれてでも止めようとする。

  • 伊賀崎
演:ムロツヨシ
声:家中宏
町山交番の交番所長。
いかに自分が仕事をしないか、最小限の作業で無難に仕事をこなすことを信念としている。
が、裏返せば仕事をしないための手間なら惜しまないために、それなりの結果は残している。
ドラマ版では「秀一」の名前が設定されている。

  • 牧高美和
演:西野七瀬
声:花澤香菜
町山警察署刑事課勤務の巡査長。
刑事課の紅一点で、一期先輩の藤を慕っている。
重度の新撰組オタクで、また業務で性犯罪を多く取り扱うこともあって、リアルの男性にまったく興味を持っていない。好きな男性のタイプは司馬遼太郎
最近の恋バナは、新撰組の推し隊士の墓参りに行くも、数十メートル離れたところから手だけ合わせて帰ってきたというエピソード。

  • 北条保
演:平山祐介
声:小山力也
町山署刑事課係長の警部補。
リーゼントゴリラ。刑事としての激務を自らもこなしながら、休みが必要な部下には自分が無理をしてでも理由をつけてどうにか帰らせようとするなど、中間管理職としての業務管理をどうにかやりくりしようとしている。
また、厳しい課長に対し、部下の代わりに頭を下げることが自らの仕事だと位置づけている。

  • 刑事課長
町山署刑事課課長の警部。
小柄だが眼光鋭いベテラン刑事。睨みだけで刑事課を抑えつけられるほど恐れられているが、それは刑事として育てるためでもあり、それが部下にも伝わっているために信頼も厚い。

  • 宮原三郎
演:駿河太郎
町山署交通課勤務の巡査部長。
交機隊出身で仕事に厳しいが、作中随一の良心キャラ。交通警察という仕事に、県民を守るという信念と誇りを持っている。
藤と如月が幼い頃に剣道を教え、彼女らが警察官を志すきっかけになった人物。
だが、それを面と向かって言われると照れるオッサン。
ある長編シリーズのクライマックスで放った一言は、一種のジョークでありながらも泣ける。

  • 秀山課長
町山署交通課課長。
優秀ではあるが頭脳労働系で、特に刑事畑の警察官たちの体育会系ノリには弱い。
宮原とは、現在は上司部下という関係ではあるが同期であり、気安い間柄ではある。どころか、他課(特に刑事課)に対して物申したい時には、自分の代わりにはっきりと言ってくれる宮原を頼りにしている。

  • 黒田カナ
町山署生活安全課勤務。
小柄・童顔のため、くノ一捜査員として高校生のような服装をしての張り込みなど、外見を生かした捜査に携わっている。事務仕事も含め、ソツなく無難にこなせる上、さらに難しい仕事に挑む根性もあり、同僚からは信頼されている……どころか「裏課長」とまで呼ばれている。
藤の一期下の採用であり、補修科で入ってきた藤(とその同期生)に接近し、いろいろと可愛がられてきた。
やはり仕事で風俗業や裏ビデオ、青少年関連の事件を多く取り扱っているため、現実の男性には興味を持てない。
先述の『アンボックス』は、主に彼女の視点から、ある事件の一部始終が描かれる。

  • 敷根
町山署内の交番に勤務している、藤と山田から露骨にウザがられるほど警察権力を自分の力と誤解している勘違い巡査。同期からも嫌われ無視されており、川合にも苦手意識を持たれている。高圧的な職質を繰り返していたが、ヤクザの若頭に絡まれ何も言い返せず、自身の技量を思い知らされてからは高圧的な態度を改める。だが、市民からも嫌われている様子。
その後も彼の行動から発生するトラブルが話の発端になるなど、役柄上、作中での「横柄な警察官」を一身に背負わされているが、正義感は本物であり、その思いが通じることもたまにある。
作者曰く「そういうタイプは身内にも嫌われると言いたかった」。

  • 上杉
町山署留置係勤務→刑事課勤務の巡査。
爽やかなイケメンで真面目、仕事も優秀だが、下ネタに疎いところがあり、作中ではそういう話題でのいじられ役になっている部分もある。
敷根の同期だが、彼を嫌っており面と向かって話しかけられてもガン無視する。

  • 副署長
演:千原せいじ
声:ケンドーコバヤシ
町山署副署長の警視。原作では名前がでない(名字は鬼瓦と思われる)が、ドラマ版では「吉野正義」という名前が設定された。
スキンヘッドの大男。機動隊出身の強面で、それを前面に押し出して部下の指導を行う。が、訓練では女性警察官に優しい。
見た目はヤクザそのものであり、初期の頃は殆ど笑わなかったが、中期以降は表情が柔らかくなり、ギャグをかましたり顔芸も披露するようになった。特に、川合、源、如月の表彰の場での一撃は腹筋崩壊もの。
幹部と女性が苦手であり、県警の女性本部長を恐れている。
立場ゆえ現場に出ることはないが、主に刑事課による署内の大小様々な騒動に対して最前線で対応をしている。
かなり年下の妻も元警察官であり、警察学校の教官として藤の期を指導していた。
ドラマ・アニメとも吉本芸人がキャスティングされており、アニメ版の中の人は本作の大ファンで知られ*4、原作者との対談実績もある。

  • 署長
演:深沢敦
町山署署長の警視。ドラマ版では田邊司という名前が設定された。
定年間近で、穏やかな性格。ただし、必要であれば部下を叱咤もするし、責任を取ることも辞さない。

  • 猿渡署長
署長の定年退職後に異動してきた新署長。
猿顔で気のいいおっちゃん風だが、部下に対する観察力など管理職として優秀。
源の父親とは昔からの知り合いであり、その縁で源とも親しい。

  • 源(父親)
源部長の父親で駐在所勤務。
人当たりの良いナイスミドルで、管内のおばちゃんたちに人気。その外見も手管も含め、川合に源部長そっくりだと思われた。
猿渡署長など、以前からの知り合いからの愛称は「閣下」。

  • 如月昌也
本部の捜査二課から町山警察署へ転勤してきた。
藤の一歳上の幼なじみで垢抜けたイケメン。結婚目前の女性警察官の彼女がいたが、町山への転勤後ほどなく別れた。
非の打ち所のないような人物ではあるが、方向音痴という欠点がある。
なお、アダルトビデオ八段を嗜む。

  • 鬼瓦京子
声:きそひろこ
副所長の妻で、結婚して子供がいる現在でも通用するクールビューティ。藤や源の警察学校時代に教官をしており、その厳しくも愛のある指導から慕われている。
新任時代に、用事で機動隊に行く度にマッチョどもがメロメロになったことから「GIANT KILLING」*5とも呼ばれていた。

  • 松島
演:大西礼芳
藤と同期で「大豊作」の期の4人の女性警察官の一人。
男性ばかりの警察本部で勤務しているせいか、藤以上に言動がオッサンくさくなっている。牧高曰く、むしろ山賊
鬼のメンタルと、陸上のオリンピック選手くずれというフィジカルを有する。
男性同期生内での愛称は「スピードゴリラ」。

  • 桃木
演:臼田あさ美
藤と同期で「大豊作」の期の4人の女性警察官の一人。
県警一の美人と言われながらも努力を惜しまない性格でファンは多い。
戸成警察署戸成交番勤務で、ペアっ子の新人男性警察官との距離感を図りかねている。
美人であるものの、父親が県警の幹部であり、同業者で手を出そうとする者はいない。
カナのお腹の肉が好き。
男性同期生内での愛称は「ビューティゴリラ」。

  • 桜しおり
演:徳永えり
藤と同期で「大豊作」の期の4人の女性警察官の一人。
どこか川合にも似たところのある、おっとりしたタイプ。
警察学校時代は、源と落ちこぼれコンビ的な扱いで、彼に好意を抱いていた。

  • 中富係長
県警本部の捜査一課のエースと呼ばれる刑事。県下で大きな事件では大抵の場合に取り調べの担当者となる。
柔和な顔で人当たりもよく、警部補であるにもかかわらず宴会の片付けを手伝うなど人間的には作中人物の中でも最高レベル。
過去に町山署の刑事課長の部下だったことがあるが、その際は筋が悪いと見限られた。だが、その経験をバネに、才能のない者であっても努力と気遣いで優秀な刑事になれることを体現している。

  • 米田班長
演:矢柴俊博
県警本部捜査一課の警部であり、中富係長の上司。
チームを使って部下の才能を育てる方針であり、町山署刑事課長を『才能至上主義』として反目している。

  • 鎌田部長
県警本部捜査一課の巡査部長であり、中富係長のペア。
左頬に縦に入る傷跡がある強面の刑事であり、取り調べの腕は確かだが偏屈な性格から「狂犬」と呼ばれている。
米田班長と同様、刑事課長のやりかたを認めていない。



余談

名探偵コナン』のコミックス第102巻掲載のおまけコーナー『名探偵図鑑』において藤が紹介されている。


追記・修正は連続空き巣犯を捕まえてからお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 漫画
  • モーニング
  • ハコヅメ
  • 警察
  • 交番
  • 小学館漫画賞
  • お仕事もの
  • コメディ
  • 講談社
  • ドラマ
  • 日本テレビ
  • 埼玉県
  • 埼玉県警
  • 所轄
  • 警察官
  • (ある意味)百合
  • (ある意味)バディもの
  • 22年冬アニメ
  • 実写化
  • アニメ
  • マッドハウス
  • 水曜ドラマ
  • 21年夏ドラマ
  • ケンドーコバヤシ
  • 2017年

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年06月20日 22:03

*1 Twitterでたまに公開される担当編集とのやりとりを描いたマンガによれば、「ネタ出しに困った時は下ネタのネームを出せば通る」という理由もある模様。

*2 17巻において描写された、『ハコヅメ』されたファイルの数による。

*3 ドラマ版では埼玉県警。

*4 連載4話の時点でテレビドラマ化があると確信していたが、作風的に日本テレビではなくTBS系を予想していたという。

*5 モーニングで連載されている同名のサッカー漫画と掛けた表現と思われる。