登録日:2020/04/04 Sat 04:34:20
更新日:2024/12/06 Fri 23:16:40
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『クローバーの国のアリス』は2007年12月25日にQuinRoseから発売されたPC専用
乙女ゲーム。愛称はクロアリ。さらに縮めて黒蟻とも。
乙女ゲー的クソゲーオブザイヤー(以下KOTY)の
2007年大賞受賞作品。乙女ゲーム部門は2007年から始まったので、初の女王と言えるゲームである。
不思議の国のアリスをモチーフとしたQuinRoseの人気作品『ハートの国のアリス』の続編。
前作で誰ともくっつかず不思議の国に残った主人公が日々を送っていた所から始まり、再び新たな事件が起こった不思議の国で困難を乗り越えていくというストーリー。
……だが、そもそもの『ハートの国のアリス』自体がバグの塊であった上、発売日が12月25日というド年末、発売日前にパッチ配布、などから少なからず不安視する声もあった。
それでも当時は特に波紋もなく、訓練された信者たちは「またか」「QuinRoseではいつものこと」「デバッグぐらいする覚悟はできている」などと寧ろ受け流す乙女が多かった。鍛えられすぎだろ
12月25日に、とんでもない内容を見せられるとも知らずに……。
【ストーリー】
白ウサギに不思議の国へ引きずり込まれた主人公。
そこはメルヘンなだけの場所ではなく、銃弾と血が飛び交う物騒な世界だった――。
誰とも恋愛関係にならずに不思議の国に残った主人公。時間さえも定まらない世界と、個性的な住人達にもようやく慣れて来たというのに、ある日突然起こった地殻変動で世界は一変。
「遊園地」と「時計塔」が消えてしまい、代わりに現れたのは「クローバーの塔」。海と陸の境界すら曖昧になって、森の中にもクジラが泳ぐ始末!?
さらに常識が通じなくなった世界で、現実主義の主人公に、まともな恋愛は出来るのか――。
【登場人物】
CV.なし(劇場版では
釘宮理恵)
主人公兼ヒロイン。捻くれたツンデレ少女。とある事情より現実世界から不思議の国にやって来た。
過去の出来事により、恋愛沙汰を嫌っている。
CV.
小西克幸
マフィアグループ「帽子屋」のボス。冷静沈着で非常に頭が切れるがその反面、強引で主人公に対する物騒な発言が多い。
CV.最上嗣生
帽子屋ファミリーのナンバー2であり、帽子屋の相棒。
無邪気で短気だが、ブラッドを妄信的に敬愛している。あとアホの子。
CV.
福山潤
赤と青の双子の少年。帽子屋屋敷の門番をやっている。
いいかげんな双子であり、どちらが兄であるかはコロコロ変わる。一見子供っぽいが、その実非常に残酷。
CV.
甲斐田裕子
斬首が大好きな、冷酷無慈悲かつヒステリックな女王様。
周囲をゴミのような扱いをするが、主人公のことだけは愛している。
CV.宮田幸季
主人公を不思議の国に引き込んだ張本人。通称「電波ウサギ」。
主人公が大好きで、その他のものは嫌いという分かりやすい二面性と独占欲を持つ。
CV.
平川大輔
ビバルディの部下。
爽やかでにこやかなイケメンなのだが、いい人すぎる上にドジで不運で方向音痴という残念なイケメン。
CV.
杉山紀彰
ナゾナゾが大好きな猫耳男。
猫のようにきままで自由な性格をしている。ピアスに嗜虐心を刺激されており、今作から常にナイフとフォークを持ち歩くようになった。
CV.
保志総一朗
コーヒーの飲み過ぎで常に寝不足なネズミ。
あどけない性格であり、自分の利害から好き嫌いの線引きをはっきりと決めている。
CV.
杉田智和
人の心を読み、入ることが出来る夢魔。
極端に体が弱く吐血するという貧弱体質。
【概要】
早期購入特典により23日にクロアリを手にしたロゼ民達は、そのまま攻略・ネタバレスレとゲームを行き来する攻略を始める。
最初期の時点でバグは見つかっており、
- あるシーンで強制的にスキップされる
- 立ち絵と表情があっていない
- セーブできるはずのシーンでセーブが出来ない
- 大量の誤字脱字
などがあった。
だが「これくらいなら予想の範囲内」と捉える乙女が多く、当初は大した問題にはならなかった。訓練されすぎである
しかしフラゲ組のプレイ開始から約1日後、ある事件が起こる。
スレにて、プレイ中いきなりフリーズが起こったと報告されたのである。
しかも生半可なフリーズではなく、「Ctrl + Alt + Del」のキーでやっと再起動が始まるという、ガチでOSにダメージを与えかねない代物であった。
商業ゲームでは流石にあり得ない事態に、最初こそアンチによるデマが疑われた。
しかし複数点写真が挙げられたこと、報告者がどんどん増えていったこと、アンチが逆に慰めだしたことなどにより、「クロアリによりフリーズが起こる」というのはほぼ確定事項となる。
被害者は増え続け、最終的には
青画面が発生したとの報告もあった。
大事なことなのでもう一度。
Wiki籠りの皆さまには今更釈迦に説法だが青画面とは、「死のブルースクリーン」とも呼ばれ、深刻なエラーが起こった際に吐き出されるPCの悲鳴である。
しかもヘタすりゃフリーズよりも青画面の方が起こりやすいという例もあったらしく、クロアリ=ブルースクリーンと乙女たちの記憶に深く刻まれた。
有名な被害だと
- 本当に業者を呼ぶ羽目になった
- トラブルシューティングに「最も新しくインストールしたソフトが不調の原因の可能性があります」と言われたので見直したらクロアリがあった。
- フリーズしたせいでレポートが消え、あやうく留年しかけた
- 強制再起動を食らったのでもう一度プレイしようとしたらソフトを入れていたファイルごと消滅していた
などなど。
これらが疑われずに報告するたびに同情された辺り、当時のスレが異様な雰囲気に包まれていたことが分かる。
このように『クローバーの国のアリス』はOSにリアルダメージを与え、PCを不思議の世界にいざなう作品であった。
これらの事態を受け、乙女たちはガチの「攻略」に入る。
その結果スレでは「攻略には高い処理速度を持つVistaが必要不可欠」だの「もしフリーズせずにクリアできた場合は是非PCのスペックを教えてほしい」というようなレスが流れ、ゲームではなくPCそのものを攻略するという流れにシフトし始めていた。
この状況でもプレイを辞めない辺り乙女……いや、姐御達の執念がうかがえる。
「私は快適に遊べているよ。叩きたいからデマ流してるんじゃないの?」などと煽ろうものなら「攻略の見本にしたいのでPCのスペックを教えていただけないでしょうか……」と逆に懇願される始末であった。流れを見るに煽り返したわけでもなく、本当にただ懇願していた。
そこまでして遊ぶ人いるの?と思われるかもしれないが、居たから選評・総評が存在しているのである。
まあ『ハートの国のアリス』から続編が出る程度にはキャラ人気は高いゲームだった。
キャラに萌えようとするとPCが死ぬのが問題だっただけで……。
なおフリーズ・青画面の根本的な原因と言われているのはゲーム全体のスクリプト。
本来ゲームは使うデータだけを持ち出し、使わなくなったデータは一旦削除する。そうしないとハードにデータがどんどん溜まっていくこととなる。
しかし本作はバグによって削除する機能が失われており、使わなくなったデータが溜まり続けるので、PCに負荷がかかっていくこととなる。そして負荷が一定値を超えるとエラーを吐き出すということである。
事実連続クリックもしくはスキップを行うとフリーズしたという例が多かった。
なお以上のことから出来る処置は『フリーズ・青画面になるのを遅らせる』であり、それらの危険性を無くすことはほぼ不可能。どんな処理速度の速いパソコンを使っても、負荷は小さくなるだけで消えることはない。
PCである以上負荷をゼロにするのはまず無理。
実際攻略スレで最強候補だったVistaも長時間のプレイで青画面を吐いたという報告もあった。
そんなこんなでクリアした姐御もいたが、スチルモードにもバグがありスチルコンプが実質的に不可能というバグも見つかった。
そしてもう一つ有名な問題点がパッチ。
前述するように、一つ目のパッチは発売前に既に配布されていた。
「え、でもさっきバグが見つかったしフリーズしてたじゃん」と思う人がいるかもしれないので言っておくと、そのパッチを当てた状態で上述のバグは起こっていたしフリーズした。
ちなみにパッチを入れた状態で見つかったバグは大小合わせおおよそ20。
「無理に発売せず延期した方がよかったのではないか?」という意見も見られた。
さらにパッチは一部暗号化されていないというどこかで聞いたことがあることをやらかしており、その気になれば買わずともシナリオ・スチル・BGMを閲覧可能であった。
ちなみにこの問題が発覚したのはアンチスレでのこと。
アンチはQuinRoseを嘲笑すると同時に、ファンに対し本気で同情した。
発売から半年後にまたパッチが配布された。
しかしというかやっぱりというか、バグの大半は処理されず残っているものが多かった。
特に修正を期待されていたフリーズ・青画面もパッチ使用後に発生したとの報告がある。
そしてパッチを適用すると、今までのセーブデータが消去されるという問題も発生した。これが賽の河原か……。
最終的にQuinRoseはクリアデータを配布した。
そして攻略スレから話は移り、KOTYスレだが……。
ちょっと話は変わるが乙女ゲーム部門のスレが立ち上がったのは、そもそも2008年のこと。
そこでまず2007年の大賞を決めようという流れになり、まず選評が投稿されたのが本作であった。
……そしてそのまま誰も他のゲームの選評を投稿しなかったため、本作はそのまま大賞入りとなった。
大切なことなのでもう一度。
KOTY史上初にして唯一の一人勝ちという偉業を成し遂げた
一応申し訳程度に『翡翠の雫 緋色の欠片2』と数作品が対抗馬として挙げられたが、クロアリの圧倒的戦力の前には歯が立たず、結局選評は投稿されなかった。
また反対意見として、
- あからさまに見えている地雷であったし、買う方が悪い
- 初年度からインフレを起こすと、今後きめ細かな分析が出来なくなる
- あれはゲームではなく兵器だ
などが挙げられたが結局本作を大賞とする声が大きかった。
このように状況がやや特殊ではあったが偉業を成し遂げ、クソゲーの女王の名を欲しいがままにした。
【その後】
2010年にPS2移植版が発売。
女性向けゲーム専門誌「B'sLOG」にて“移植して欲しいソフト部門”ランキングでは、連続13ヶ月もの間、第1位を獲得し続けた。本来の意味と違うが
今遊びたいのであればこちらを使うことをお勧めする。いやマジで。
しかし相変わらず「スキップ機能を使うと一定確率でフリーズする」と言われているのでプレイには十分注意が必要。
さらに翌年にはPSP版が発売された。
ちなみにPSP版は様々な事情が重なり、中古品がやたらと高いことで有名。豪華版であれば多少傷があっても2、3万前後で取引される。
2009年には続編となる『
ジョーカーの国のアリス』が発売。
前作の件で身構えていた姐御たちの予想を裏切り、
バグはほぼなかった。
正確には膨大な量の誤字・脱字が見受けられたが、鍛え抜かれた姐御たちにとっては微々たる問題であった。
だがとあるとんでもない『仕様』が組み込まれていたことと、前作に比べ水増し上等で明らかに劣化したシナリオから、KOTYスレにて「QuinRoseはバグなど無くとも生身で十分強かったのである」と言わしめ、またも
大賞入りした。
なお2008年に発売された『クリムゾン・エンパイア』もゲームと全然関係ない所で問題がありまくり
大賞入りしたので、QuinRoseは3年連続大賞を受賞したことになる。
さて、最後に。
本作は様々な問題点があるが、その上でゲームクリアを目指すには「パソコンを犠牲にする覚悟をし、次の瞬間ブルースクリーンが起こるかもしれない可能性に震え、フリーズを起こさないためにスキップせず丁寧に扱ってやり、大小さまざまなバグに苦しみながらその果てに待つのはスチルコンプ不可、さらにパッチは賽の河原」という修行のようなプレイをしなければならない。
だがこのようなプレイ方法が求められると判明しているということは、逆に言えばこれを行った姐御が存在するということである。
姐御たちはこれを行いながら、傍らデバッグ作業も行っていた。その苦しみは想像を絶するものであろう……。
次の瞬間に何が起こるかが分からない恐怖、いつ戦いが終わるかも知れぬ絶望を乗り越え、今があるということである。
つまり『クローバーの国のアリス』の選評は姐御達の血と涙と執念の結晶と言えるものである。
それだけは覚えていかなければならないのではないだろうか……。
追記・修正はクロアリをクリアしてからお願いします。
- ゲームをしたらPCが破壊されるなんて糞ゲーの領域を超えてないか -- 名無しさん (2020-04-04 06:18:01)
- 乙女界のみずいろってところか?PCのスペックを揃えないと攻略のスタートラインに立てず揃えてもPCクラッシュに震えながら進めなければならないってのは聞いている分には面白いけど当事者にはなりたくないな。 -- 名無しさん (2020-04-04 08:46:09)
- 「正しい遊び方:パッケージを眺める」をリアルでやらかすとは…。 -- 名無しさん (2020-04-04 22:53:14)
- 誰か一人くらい「これ納品して大丈夫?」って言い出すスタッフは居なかったのか -- 名無しさん (2020-04-04 23:00:09)
- クソゲーにおいてバグはあくまでサブウェポンだけど、サブウェポンがベクターキャノン並みじゃねーか!! -- 名無しさん (2020-04-05 00:14:44)
- ↑5 FF14(根性版)「PCクラッシュさせるPCゲーとかないわー」 -- 名無しさん (2020-04-05 08:25:08)
- ↑PSO2「まったくだ」 -- 名無しさん (2020-04-05 12:04:57)
- 乙女界も修羅の国だった -- 名無しさん (2020-04-07 00:16:10)
- こっち方面は詳しくないんだが、これだけ問題がでかくてもプレイされる辺り、キャラ人気は本当に凄いって事なんだろうな -- 名無しさん (2020-04-08 11:56:59)
- 自分の当時のパソコンが臨終した最大の原因……。プレイ前にしっかり調べてたら…… -- 名無しさん (2020-05-05 01:21:54)
- ↑3これのせいで間違えられるが乙女ゲームで修羅の国に足突っ込んでるのはクインロゼ三部作だけ。他の年はむしろ全部門で一番ハードル低い -- 名無しさん (2020-05-05 17:58:02)
- 神のみぞ知る世界に出てきそう感 -- 名無しさん (2020-09-07 22:59:00)
- もはやゲーム以前にプログラム自体が駄目なのに、それでも攻略しようとする辺りガチのファンが揃ってたんだろうな。これで技術が伴ってれば… -- 名無しさん (2020-10-01 10:36:35)
- ガベージコレクタを自力で実装する猛者はいなかったのね…… -- 名無しさん (2021-11-01 18:08:22)
最終更新:2024年12月06日 23:16