旅先へ向かうのは新幹線か飛行機か。荷物を運ぶのはトラックか船か。スピード、距離、費用、旅情、荷物の量、地球環境に優しいかなど、国内で交通手段を選ぶポイントを様々なデータから見てみよう。
東京から北海道の札幌へ向かう旅は今、空路が主流だ。そこへ今春、有力な対抗手段が登場する。3月26日に開業する北海道新幹線。開業時は東京ー新函館北斗(北海道北斗市)を4時間2分、2万2690円(大人1人、普通車指定席、通常期)で結ぶ。この新幹線を利用して札幌に向かうとどうなるか。「東京駅ー札幌駅」の設定で、在来線や飛行機、船のケースと比べてみた。
ここで示したケースはあくまで目安。早期予約や割引切符などを利用すれば、料金をさらに抑えることも可能だ。北海道新幹線は2030年度末に札幌まで延伸される予定。そうなると鉄道の旅はぐっと便利になり、交通手段を選ぶポイントも変わるはずだ。
国土交通省の全国幹線旅客純流動調査では5年に1回、旅行客がどの交通手段で移動しているかを調べている。2010年度の調査結果では、300㌔未満ではクルマが主流、700㌔以上になると飛行機の利用がぐっと増える(距離の基準は鉄道距離)。その間の距離帯では新幹線を中心にした鉄道が存在感を示している。
航空機と競うように日本国内の「高速移動」を実現させてきたのが新幹線。1964年、東京五輪開会式の9日前に東京ー新大阪間で開業した新幹線は、九州、東北、北陸、そして北海道へと鉄路を延ばしている。開業当初は約550㌔だった営業キロ数は、2013年度時点で5倍近い2620㌔にまで延びた。輸送人員は同時点で年間約3億7千万人となり、1日あたり約100万人が利用している。
物流に目を向けると、旅客とは違う事情が見えてくる。日本国内で運ばれる貨物を「トンキロ」ベースで見た場合、2013年度の1位はトラック、2位が船、3位が鉄道、4位が飛行機。トンキロは、運ぶ重さ(トン数)と輸送距離(キロ)を掛け合わせた単位で、重たいものを遠くへ運ぶほど大きくなる。この単位でみると、トラックに次いで2位になった貨物船の存在感が目を引く。
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貨物輸送をトラックから鉄道や船に切り替える「モーダルシフト」が進んでいる。輸送時の二酸化炭素(CO2)排出量が減少すること、トラックの運転手不足が深刻なことなどが背景だ。現実的な課題は採算が合うかどうか。鉄道総合技術研究所の研究では、5トン鉄道コンテナと10トントラックの運賃率(1トンの貨物を1km輸送した場合の単位運賃)を比べた場合、輸送距離が350キロ以上であれば、トラックより鉄道輸送のほうが少ない費用で済むという。2014年には、日本貨物鉄道(JR貨物)がイオンに納める荷物を運ぶ専用列車「イオン号」を運行するなど、鉄道会社と荷主企業が協力するケースも増えている。
船とトラックの比較ではどうか。国土交通省の資料によれば、一般的な国内貨物船1隻で10トントラック約160台分の荷物を運べるという。1隻の船員数は約6人で、トラック160台に160人の運転手が必要と考えれば、少ない人手で多くの荷物を運べる船の輸送も有力な手段といえる。