読書法というのは奥が深く、なかなか決定版に巡り会えないものだ。今回は、さまざまな読書法の中から、何とか実践できている比較的ルーズな方法をご紹介する。
読書家が多いであろうBiz.IDの読者諸兄は、読書中「ここにはいいことが書いてある!」と思ったときにどうしているだろうか。実践的な読書法を5つ紹介しよう。
斎藤孝氏の「3色ボールペンで読む日本語」に代表されるように、本を読みながら筆者の趣旨が凝縮されているところ、読み手が面白いと思ったところなどに線を引いていく方法はポピュラー。3色ボールペンほどマジメにやらなくても、これぞと思ったところに線を引いていくだけで、頭への入り方が違う。
しかし問題もある。まずペンを持っていなくてはいけないこと。風呂に浸かりながら読書をしようというときに、赤ペンを忘れずにもっていくことは難しい。さらに本を左手で持って、右手で線を引かなくてはいけないわけで、満員の通勤電車の中で本を読みながら、周りに睨まれつつ、線を引くのは相当な芸当である。
さらに何より、知人や図書館などで借りた本には適用できない。ものの本には「だから本は借りるのではなく買いなさい」と書いてあることが多いのだが、買える本だったら最初から買っている。そもそも誰もが本代にいくらでもつぎ込める(つぎ込みたい)というわけではない。線を引くクセを付けてしまうと、借りた本にも習慣でつい線を引いてしまう。「あっ、引いてしまった……」と思ってもあとの祭り。新品を購入して返した経験もある。
線を引くよりも簡単なのが、「ここにはなかなか面白いことが書いてある」と思ったら、そのページの上の隅を折ることだ。何しろ手軽。本自体のほかに何の道具もいらないし、立ったまま作業もできる。
折る場所は、やっぱり上側の隅だ。この“上折り法”を実践していくと、たくさん折った本ほど膨らんで見える。上の隅を折っておくと、この膨らみ具合が書棚に立てた状態でも分かるのだ。逆に、「ここまで読んだ」というしおり代わりの折りは、下隅がお勧め。
この方法、実は多くの方が実践しているようで、Biz.ID「達人の仕事術」で取材したコンサルタントの松尾順さんも同様のやり方をしている(7月10日の記事参照)。
モノの本を読んだり、読書家と言われる人の話を聞くと、このように線を引いたりページを折ったり……という方法を勧められる。個人的には、本は使って汚してナンボだと思っているが、「いや、本はきれいに読むものだ」と思う方も多いはず。また図書館で借りた本に書き込みがしてあるのを見ることがあるが、借りた本は当然きれいに読むべきだ。そんな方に、本は汚して読め! といっても生理的に受け付けないので、別の方法を使うべきだ。
そんな場合にお勧めなのがポスト・イットである(と教えてくれたのは、文具王の高畑正幸さん)。とにかく気になったページの上側に貼っていくのだ。また、しおり代わりにもお勧め。電車の中で読んでいても落とすことがないし、頻繁に付けはがしできるのが特徴だからだ。
本に貼るポスト・イットは、いくつか条件がある。まず下部分が透明であること。別に何かを書き込むわけではないので、もし文字部分にかかっても読みやすい透明なタイプがいい。またのり面ができるだけ広く、付箋全体はずんぐりしているほうがいい。細長い形だと取れてしまったりするのだ。
自分の蔵書をきれいに読むためにポスト・イットを使うなら、このまま保管すればいい。が、もし借りた本に貼ったなら、迷惑にならないよう、返すときはしっかりはがす。その際に、セットで行いたいのがノートなどへの転記だ。
読んだ本の内容を自分のものにするために、いろんな方が言っているのが、再読と転記。確かにこの転記を実践すると効果が高いことが実感できる。
具体的には、
を読み返し、ここだと思ったフレーズや感想などを、ノートやPCなどに転記していくのだ。一読後、この作業を行うだけで、本の全体像をまとめ直せるだけでなく、読んでいる最中の盛り上がった気分から、冷静な目で捉え直すことができる。それほど時間がかかる作業でもないので、お勧めだ。
転記先は、紙の手帳やノートか、PCになるだろう。
紙の手帳の場合、出先の空き時間で作業ができるのが利点だ。自宅やオフィスに帰ってから転記しようと思っても、なかなか時間が取れないもの。またPCを立ち上げて、記入するというのは一大イベントだ。たいていは続かない。また、当然手書きで転記するので、「本当に転記に値する重要なポイントなのかどうか」、改めて問い直すことにもなる。手書きの良さともいえるだろう。
PCに入力する利点は、検索性と再利用性の高さだ。テキストファイルでもブログでもオンラインのノートサービスでもいいが、一度デジタル化しておけば検索は容易。書名も記入しておけば、いずれ蔵書データベースにすることだってできるだろう。あとからブログやリポートなどに再利用するときも、デジタル化しておけば容易だ。キーボードと違い入力がかなり辛いが、ポイントとなる1文を携帯で入力して、自分宛にメールするというのも一法だ(2006年10月の記事参照)。検索性は落ちるが、買った本の該当ページを携帯のカメラで撮影してメール送信するのもいい。
で、これらの方法がうまくいっているのかというと、実は、まだうまくいっていない。いろいろなツールを使いすぎたために、データの保存先がバラバラになってしまっているのだ。
どのツールも一長一短があるのだが、バラバラというのは最悪。何か良い方法はないだろうか?
転記のほかにお勧めしたいのは、携帯などに付いているカメラを使って、表紙などを撮影しておくこと。「これについて書かれた本を読んだことがあったんだけど、なんて本だっけ?」ということがよくある。内容の一部は覚えていても、書名はけっこう忘れてしまうものなのだ。
逆に意外と覚えているのが、表紙の装丁と、読書した場所。書名は分からなくても、表紙の雰囲気とどこで読んだかはけっこう覚えているものだ。表紙を写真に撮っておき、たびたびそれを見返すようにすれば、表紙を見ただけで中に書いてあったことを思い出す。つまりは簡単な復習ができる。
撮影した写真は1カ所にまとめ、カシオ計算機製携帯が昔から備えている、「携帯を開いたときに、特定のフォルダ内の画像をランダムに表示」する、オープンエミーロという機能を使って、目に入れるようにしている。また、Picasaを使って写真が順に表示されるスクリーンセーバーを作り、それを仕掛けておくという方法も使っている。
筆者は敢えて本にカバーをかけず表紙を眺めながら読んでいる。そのせいからもしれないが、例えば、D・A・ノーマンの「エモーショナル・デザイン―微笑を誘うモノたちのために」は、成田空港の飛行機待ちで読んだ。西城活裕の「渋滞学」は、有楽町の中華料理屋でラーメンを食べながら読んだ──なんてことを、表紙の写真を見ると思い出せる。ついでに写真を見れば書名も分かるという具合だ。
本を読み捨てにせず、身に付くよう工夫する実践的な読書法。皆さんはどんな工夫をしているだろうか?
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