イベント開催報告

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ABC2012sを終えて

安田講堂

安田講堂 撮影:小山哲志(ABC実行委員会)

安田講堂

安田講堂では、日本Androidの会の丸山会長、総務省の谷脇康彦様の基調講演と、グーグル株式会社の坂本達夫様、産業技術総合研究所の高木浩光先生、IntelのMargaret LaBrecque様、株式会社クレージーワークスの村上福之様による講演、およびグリー株式会社の梶原大輔様、株式会社ディー・エヌ・エーの山口徹様、株式会社ミクシィの田中洋一郎様によるトークセッションが行われました。

午前の基調講演では、雨という悪天候にもかかわらず、1000人を超える方が安田講堂に集結しました。
まず最初は丸山会長による基調講演で、テーマは「変貌するWebの世界 — クラウドとクラウド・デバイスのインパクト」。今までのインターネット、デバイスの進化の歴史を振り返り、今後起きるだろう様々な事象について紹介して頂きました。そして、日本の若い世代へのアドバイスで講演を締めくくりました。
続いて、総務省の谷脇康彦様。クラウドを軸とする情報通信技術のり活用の方向性について、現在の政府の取り組みや直面する課題を紹介して頂きました。

午後の最初のセッションは、グーグル株式会社の坂本達也様によるご講演でした。
アプリと広告を組み合わせ、上手く収益を上げるポイントを紹介して頂きました。

2番目のセッションは、産業技術総合研究所の高木浩光先生によるご講演でした。
昨今問題となっているスマホアプリの利用者情報送信における同意確認について、様々な問題事例や具体的な対応策について紹介して頂きました。

3番目のセッションは、グリー株式会社の梶原大輔様、株式会社ディー・エヌ・エーの山口徹様、株式会社ミクシィの田中洋一郎様による座談会でした。
ソーシャルの未来や、エンジニアに求められるものなど様々なテーマについて熱く思いを語って頂きました。

4番目のセッションは、IntelのMargaret LaBrecque様によるご講演でした。
Intelプラットフォームに用意されている様々な最適化(性能・低消費電力)をサポートするツールや、Intelの取り組みについて紹介して頂きました。

5番目のセッションは、株式会社クレージーワークの村上福之様によるご講演でした。
村上様の過去そして現在進行中の取り組みについて、裏話を交えながら面白おかしく紹介して頂き、終始会場は和やかな雰囲気でした。

最後は、共催である東京大学 空間情報科学研究センターの瀬崎薫先生によるClosingでした。
普段あまり目に触れることが少ない研究におけるAndroidの位置付けについて紹介して頂き、Androidの活用先の広さを改めて認識する内容でした。

A会場

A会場では、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン、日経BP、アスキー・メディアワークス、エイチツーオー・スペース、ビーワークス・バイドゥ、スクウェア・エニックスと、合計5本のセッションが行われました。
中でも、第3セッションと第4セッションの注目度が高かったです。
エイチツーオー・スペースの谷口さんには、スマートフォン向けWebサイトの構築について非常にわかりやすくお話いただき、真面目な内容にもかかわらず笑いも起こっていました。
ビーワークスの河合さんとバイドゥのadamrockerさんのトークセッション「なめことしめじがきゃっきゃんふんふ」は、立ち見する人もでるほどの人気でした。

B会場

B会場では
第1セッション:秋葉ちひろさん(フリーランス:デザイン・トラック)
第2セッション:海老原智さん(グリー株式会社 開発本部 ソーシャルメディアプラットフォーム統括部 SNS-Android開発チームリーダー:ゲーム・トラック)
第3セッション:山内洋典さん(ReDo:デザイン・トラック)+西岡靖代さん(頓智ドット株式会社:デザイン・トラック)
第4セッション:近澤良さん(株式会社ディー・エヌ・エー ソーシャルゲーム統括部:ミドルウェア・トラック)
第5セッション:あんざいゆきさん(株式会社ウフィカ:デザイン・トラック)
以上5名によるセッションが行われました。
トラックジャンルとしてはデザイン・ゲーム・ミドルウェアの3トラックです。

◆第1セッション:秋葉ちひろさん

UIをテーマにAndroidのフロントエンド実装(XMLレイアウト)におけるエンジニアとデザイナーの連携の大切さとその手法について重点的に話されました。
実際のプログラミングにおけるUI実装はエンジニアに一任するのではなく、デザイナーもその知識を持ってエンジニアに積極的に近づくべきとの視点から、いかにして「ダサいUI」をデザインされたモノしていくかの過程における実例、そして洗練されたUI改善結果がもたらしたマーケティング的成功例を交えてのデザイナーのスタンスについての講演は興味深く聴講者を引き込みました。
フロントエンド実装を「できることから」、「積極的に参加する」ことの重要性を実践的に解説、Android SDK以外を用いた設計ではなく、最初からAndroid SDKに挑戦の際に生じるデザイナーとして見過ごすことができない1ピクセルの大切さや実際の移行後におけるデザインの崩れの解決方法、EclipsとSDKによるコーディングサンプルを交えた手法の紹介、そして優れたUIがもたらすユーザーフレンドリーな使い勝手などなど、実践的な事例素材の講演はでデザイナー、エンジニアを始め制作担当以外の参加者も含めて熱心に聴講していました。

◆第2セッション:海老原智さん

Androidアプリにおけるホットなテーマとして、過去の遺産との相互運用や導入コストの点から発生している様々なケースについて、Androidアプリ開発における記述性を向上させるための可能性の1つとして、Eclipse Xtendを活用する事例を話されました。
フレームワークという現在の標準とも言える開発環境上で運用できるXtendの実用性について、まさにクラウドのもつ機能的な利点を活かすツールをAndroidプロジェクトで使う際のtipsとして紹介、JavaとXtendで相互に参照可能なしっかりとした文法構成の基本的なポイントを実際のプログラム式を元に解説、参照演算子の独特な事に関する注意点、JavaでAndroid開発していて⼀番微妙に感じる記述無名関数などのXtendにおける記述など極めて専門性の高い実践的な解説は聴講者からもその活用について本格的な質問がありました。

◆第3セッション:山内洋典さん+西岡靖代さん

はじめに山内さん、引き続き西岡さんにバトンタッチされUIのもたらす重要な点について講演されました。
山内さんの実際のデザイン現場における「あれ?」的なデベロッパーとのギャップについて、開発の形態を社会のピラミッド構造を図式化してデザイナーの立場を解説するところかはじめ、わかりやすい比喩と明快なトークで一気に会場の空気をつかみとりました。
本題のテーマであるUIについて、デザイナーとして必須の10のAndroidのルール、プログラマとデザイナーが共有すべき10のルールという極めて現実的で取り組みやすいテーマは、シンプルでわかりやすいプレゼンテーション画面効果もあり熱心な聴講の支持を得ました。そしておまけの「iAndroid」の話も大変興味深い内容でした。
同様にセカイカメラからつながるインターレストへのシフトの中、UIテーマの西岡さんのキラーアプリについての解説から始まり、UIを構成する機能美、オリジナルデザイン、効果的なアニメーションと動きという部分についてのUIを介したスムースな動きの連携についての実践的な解説、デザイナーとプログラマの理解の方法の違いから生じる問題解決についても一元的なファイル管理によって解決できる方法などが紹介されました。重要な点はエンジニアとデザイナーが一同に会してどのように問題を解決するかについてのUI/UX優先で役割分担を決めることや、プロジェクト管理へのデザイナーの同列参加など具体的手法が熱心な聴講に繋がりました。

◆第4セッション:近澤良さん

プラットフォームフリーな言語となるHTML5、「Arctic.js」なるHTML5のcanvas要素を使ったJavaScriptゲームフレームワークの紹介と実際の使い方が講演のメインです。Android、iOSの差異やデバイス間のパフォーマンス差異を吸収して、開発者はシンプルなコードですばやく実装を行うことができる特徴があり、元々はご自身がゲーム制作用に開発したものをオープンソースとしてGitHubで公開中。また、ActionScript3.0に近いAPIを用意しており、Flash開発者の学習コストを軽減することができることが特徴的です。
特にDOMの持つ欠点である再描画の高コスト回避やスマホにおけるパフォーマンスの確保などHTML5ならではのプライオリティについて、また環境差異の吸収など「Arctic.js」利点の使い方や機能について実際にコマが連続するアニメーションのプログラム、タッチイベント他などを用いたDemo実施と併せてまさにミドルウェア的視点で実用性の高い内容で紹介されました。

◆第5セッション:あんざいゆきさん

本来デザイナーとしての立場でありながら、高度なUI実現のために敢えてこれからのAndroidプログラム開発の重要なフェーズとなるAndroid 4.0 をターゲットとするアプリ開発で必須となるフラグメントの解説が熱心な聴講を導きました。
新しい概念であるフラグメントについて、概要や一般的な使用方法を知るだけでは効果的に利点を生かすことができない経験から、UIとの関わりや、特にフラグメントを使用する上で最も重要なライフサイクルや画面遷移に関連してくる設計をAjax登場の前後と比喩してのわかりやすく説明、会場の聴講者は熱心に聞き込んでいました。フラグメントを生かせない設計はむしろコードが複雑になり良質なUIに繋がらない問題を積極的に解決する手段として、設計思想として押さえるべき実際のポイントを理解しやすい資料を投影して示しながらフラグメントを生かした実践的な設計方法を紹介、200人定員の会場に260人が詰め掛ける大好評の講演となりました。
また、講演後に書籍のプレゼントサービスも出版社とタイアップで行われ人気を博していました。

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