SAP共同創業者兼スーパーアドバイザリーボード会長のHasso Plattner氏
SAPがインメモリデータベース「HANA」を発表して6年。HANAの生みの親である同社共同創業者兼スーパーアドバイザリーボード会長のHasso Plattner氏は「HANAのメリットは十分伝わった」と述べ、実際の導入のための支援強化にシフトする方針を示した。併せて、エンタープライズの将来像としてAIや機械学習の応用にも触れた。
SAPが米オーランドで5月17日から3日間開催した年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW 2016」。例年通り最終日のステージに登壇したPlattner氏は「HANAへの道、そしてその先」をテーマに話をした。
HANAのメリットの理解は進んだ
「Thank you」――Plattner氏は冒頭、集まった2万人の顧客、パートナーに対しステージから頭を下げた。「S/4 HANAへの移行企業が爆発的に増えている。顧客は大規模な予算を費やしており、(なぜS/4 HANAなのかよりも)どのタイミングでどんな機能が利用できるようになるのかを知りたがっている」とPlattner氏は述べ、「ありがとう」と続けた。
Platter氏をはじめ、他の幹部も、顧客との対話から、顧客の最大の関心事はS/4 HANAをどうやって導入するのかに移ったと感じているという。
「S/4 HANA」はSAP市場最速で受け入れが進んでいる製品だという。発表から1年で導入企業は3200社。これはSAPの予想を上回るとCEOのBill McDermott氏は初日の基調講演で述べている
「S/4 HANAの優位性は十分伝わった」としながらも、Plattner氏アーキテクチャの面からS/4 HANAの優位性を解説した。以下が、Platter氏が披露したスライドだ。
これまでの3層システム(左)では、4種類のデータベースと5種類のシステムアーキテクチャがあった。それぞれに検証が必要で、最新版のリリースも18カ月を要した。これが、1つのインメモリデータベース、1つのプラットフォーム、1つのフロントエンドになる(右)。フロントエンドの”ネイティブモバイル”は、先日のAppleとの提携でFioriを拡張してiOSネイティブのアプリを提供するためだ
1データベース、1プラットフォーム、1システムに、製品をあてはめるとこうなる。特にデータについては、Hadoopが利用できる「HANA Vora」(会期中にGAになった)、データサービス、ETL、Business Warehouse(BW)ツール、、BusinessObjects(BO)universe、さらにデータフェデレーションによりほかのHANA DB、OracleやIBMのDBなどもデータソースにできる。「基本的にあらゆるデータにアクセスできる」とPlattner氏。BWについては、「S/4 HANAはBWの機能を網羅する」としながらも、「一部の用途にとっては正しいコンフィグかもしれない」と述べ、「BWは死ぬのか?」という意見を否定した
ECC 6.0と比べると、S/4 HANAは機能はほぼ同等で、コード、テーブル、データエレメントはすべて50%近く削減される。「システムが約半分になり、複雑性も半減する」。これを、HANA上で動くソフトウェア(on HANA)とHANA向けのソフトウェア(for HANA)の違いとする。問題があったときもデータベースに物理的な変更を加える必要はなく、アルゴリズムを変えるだけでよい。データを変更してリロードするなどの手間がないので、2週間の作業が1時間で解決するという
データベースのフットプリントが大きく削減されるのもS/4 HANAの特徴だ