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「Titan Quest」

先日開催された“THQ Nordic デジタルショーケース”と大規模イベント“gamescom 2024”を通じて、2000年代後半に人気を博したアクションRPGのナンバリング続編となる「Titan Quest II」の多彩な新情報が解禁され、ギリシャ神話の世界を再現する風光明媚なロケーションや初代をしっかり踏襲する数々のシステム、モダンなアクションRPGに進化したゲームプレイが確認できる複数の映像が登場しました。

ここ数年の所謂“Diablo”系アクションRPGジャンルは、人気の高い現行作品「ディアブロ IV」や「Path of Exile」、「Last Epoch」を中心に、「ディアブロ II リザレクテッド」や「ディアブロ III」、「Warhammer 40,000: Inquisitor – Martyr」、「Titan Quest Anniversary Edition」、「Grim Dawn」といった優れたタイトルも選択肢に入る、新たな黄金期と呼べるような状況を迎えているわけですが、10年選手も少なくないこのジャンルに参戦する久方ぶりの完全新作として、「Titan Quest II」を楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。

前述した「Titan Quest II」のゲームプレイ映像が何れも非常に面白そうな仕上がりだったため、オリジナルの発売から20年近い歳月を経て復活を果たす続編「Titan Quest II」に備えるべく、初代「Titan Quest」の解説やディアブロ系アクションRPG(“Diablo-like”)の歴史を含む“タイタンクエスト”特集を数回に渡ってお届けすることにしました。

参考:先日遂にお披露目された続編「Titan Quest II」のゲームプレイトレーラー

オリジナルの「Titan Quest」は、パブリッシャー“THQ”が2006年6月に発売したPC向けのアクションRPG。ギリシャ神話と幾つかの神話をベースにしたファンタジー世界を舞台に、古代ギリシャやエジプト、シルクロードを渡り中国を旅して、人間の英雄が巨人族(タイタン)の復活を阻止する壮大な戦いを描き、高い評価を獲得しました。

本作は、2016年に現世代向けの新エディションとして復活を果たし、現在ではPC(SteamGOGEpic GamesWindows Store)のみならず、PS4(PS5は後方互換で動作)とXbox OneXbox Series X|S、Nintendo Switch(※ 日本未発売)、さらにはiOSAndroidに至るまで、幅広いプラットフォームで気軽に楽しむことができます。

「Titan Quest」には、前述の復活を含む近年の展開や開発スタジオの変更を含め、20年近い歴史があるため、ゲームプレイの内容を掘り下げるための前提として、まずはオリジナルの誕生から復活後の展開まで、全体的な流れをざっと振り返っておきましょう。

古代の神話世界を旅するアクションRPG「Titan Quest」、その誕生と復活

“Titan Quest”の世界観を分かりやすく描いた象徴的なシネマティック、プロダクションは名門“Blur Studio”

2006年に発売されたオリジナル「Titan Quest」の開発スタジオは、名門“Ensemble Studios”で初代“Age of Empires”のデザイナーを務めたベテランBrian Sullivan氏が中心となって設立したデベロッパ“Iron Lore Entertainment”。本作の開発に当たって、Brian Sullivan氏が自らデザイナーを務めたほか、メル・ギブソンが主演した映画“ブレイブハート”の脚本を手がけたランダル・ウォレスが本作のシナリオを担当したことでも広く知られています。

“Iron Lore Entertainment”は、オリジナルの成功を経て、2007年3月に多数の新要素や追加のストーリーを導入する大規模拡張パック「Immortal Throne」をリリースし、神話世界の壮大な戦いを無事完結させましたが、(“Warhammer 40,000: Dawn of War – Soulstorm”拡張への開発参加を経て)次回作の資金調達が適わず2008年2月に閉鎖。これにより、「Titan Quest」は“Iron Lore Entertainment”唯一のリリースタイトルになってしまいました。

しかし、2013年1月に起こった旧“THQ”の倒産騒動と各種IPのアセットオークションを経て、当時のNordic Games(現:Embracer Group)が「Titan Quest」を含む大量の旧THQアセット/商標/IPを購入。これにより、現在のTHQ Nordicが「Titan Quest」に再び命を吹き込み、日本語ローカライズを含む夥しい規模の改善を加え、“Immortal Throne”拡張を統合した新バージョン「Titan Quest Anniversary Edition」のPC版を2016年9月に発売しました。

この後、「Titan Quest」はTHQ Nordicの熱心な取り組みによって、コンソールとモバイル向けのリリースや日本語対応まで果たしたほか、追加で分割画面Co-op機能や3つの大規模拡張パックまで導入し、現行のアクションRPGとして驚きの復活を果たしたわけです。

来る「Titan Quest II」は、旧作を大切に育ててきたこれらの取り組みと長い歴史を礎に登場するナンバリング続編であることから、THQ Nordicが今なお愛されるクラシックを、どんなアプローチで最新のアクションRPGとして復活させるのか、オリジナルをじっくりと温めてきたTHQ Nordicの手腕も見どころの1つと言えそうです。

なお、オリジナルを開発した“Iron Lore Entertainment”の主要メンバー達は、スタジオの閉鎖後に新スタジオ“Crate Entertainment”を立ち上げ、「Titan Quest」直系の精神的後継作品“Grim Dawn”を開発。前述した「Titan Quest Anniversary Edition」とそれ以降の開発には参加しておらず、新エディションと新拡張3種の開発は、THQ Nordicを中心に、“Pieces Interactive”や“Digital Arrow”が参加しています。

「Titan Quest」の魅力と特徴について

「Titan Quest」

前述した経緯から、今なお幅広いプラットフォームで現行作品として楽しめる「Titan Quest」は、(復活までのブランクはあるものの)オリジナルのコンセプトとプレイフィールを18年に渡って維持したままプレイできる、極めて貴重な作品だと言えます。

こういった出自もあって、「Titan Quest」のペーシングやプログレッション、コアループを含むゲームプレイの基礎部分は、(現世代の最新タイトルとは大きく異なる)文字通りクラシックそのものですが、本作が長年に渡って愛されている背景には、やはり「Titan Quest」でなくては味わえず、今なお色褪せない固有の魅力が存在しているわけです。

代表的なものを挙げると、ゲームプレイ面では、後述する“マスタリー”システムによって柔軟なビルド構築が楽しめること、“Diablo”系アクションRPGとして非常にプリミティブなプレイ経験を維持していることが挙げられるでしょう。

舞台となる作品世界も実に個性的で、同ジャンルにおいては意外にも珍しい神話ベースのタイトルであること、この神話世界と英雄譚が(とかく暗くなりがちな同ジャンルにおいて)悲壮感の薄い、かなり明るいタッチで描かれていること、同様のアプローチで日の光が燦々と降り注ぐ明るい昼間のロケーションが多いことも印象深く、非常に長い道のりの冒険と旅を軽やかに楽しませてくれます。

「Titan Quest」
参考:“Titan Quest”のスクリーンショット
「Titan Quest」
参考:“Titan Quest II”のスクリーンショット、晴れやかなレベル環境は続編にも受け継がれている

「Titan Quest」の大きな魅力は“マスタリー”システムと柔軟なビルド構築の楽しさ

「Titan Quest」

本作のプレイアブルキャラクターには、作成時のクラス選択が存在せず、成長する過程で独自のスキルツリーを持つ“マスタリー”と呼ばれる専門分野を専攻することで、プレイスタイルの方向性が決まり、多彩なアクティブ/パッシブスキルや属性値の強化を得ることができます。

この“マスタリー”は、最大で2つ選択でき、組み合わせによってプレイヤーの最終的なクラス名が決まるのですが、選択可能なマスタリーは(拡張の追加分を含め)11種あり、この組み合わせは66種類に及びます。

“マスタリー”には、定番の近接戦闘型から、魔法系、召喚型、弓による遠隔攻撃系、サポートタイプまで、多彩なアーキタイプが用意されていて、これらを自由に組み合わせることで独自のプレイスタイルを思いのままに作り上げることができます。

ということで、まずは“マスタリー”11種のラインアップとそれぞれの概要を見てみましょう。

  • ストーム:氷と電撃の力で戦う魔法タイプ。スタンや凍結といった状態異常に加え、攻守に秀でる範囲攻撃が特徴。
  • アース:炎と大地の力で戦う魔法タイプ。炎を軸とする与ダメージ特化型で、防御面はかなり心許ない。
  • ドリーム:夢の世界から力を得て精神能力で戦う魔法系ハイブリッド。敵を眠らせる状態異常や多彩なバフ/デバフなど、便利な能力が揃う。“Immortal Throne”拡張にて追加された新マスタリー。
  • ウォーフェア:二刀流もいける火力重視の典型的な近接タイプ。範囲バフや範囲攻撃、強力な範囲スタン能力を持つ。
  • スピリット:ライフ吸収やリッチの召喚、強力な杖攻撃など、死を司る力で戦う魔法タイプ。強力なバフとデバフもあり、使い勝手の良い万能型。
  • ディフェンス:盾持ちの近接タイプ。防御に秀でるが、盾で殴ったり突撃したり、盾専用の強力な攻撃も特徴的。巨人化や亡霊の召喚能力まである。
  • ネイチャー:召喚特化型の魔法タイプ。ニンフや数匹の狼を従えて、わいわい楽しめるのが最大の魅力。回復やヘルスバフ、範囲足止めなど、補助系の能力も充実している。
  • ルーン:武器と魔法の両方を活かして戦う魔法戦士系の北部シャーマン。エレメンタリー系のダメージ強化や設置系の魔法を特色とする。“Ragnarök”拡張にて追加された新マスタリー。
  • ハンティング:槍や弓、投擲に秀でる刺突特化タイプ。生存性強化やバフ/デバフも揃う万能型で、他のマスタリーとの相性も抜群。
  • ローグ:ナイフや毒で戦うアサシン系近接タイプ。毒や出血によるDoT、設置型の罠、超強力な単体攻撃などが特徴。
  • 内丹術:東洋の薬学で生命力を強化するちょっと変わった魔法タイプ。ポーションを飲むと発動する強化や優秀なバリア、敵を倒した際の報酬増など、珍しくも優秀な能力が多く、(本作はポーションがぶ飲み系のゲームであることも相まって)どんなマスタリーと組み合わせても優秀。“Eternal Embers”拡張にて追加された新マスタリー。
「Titan Quest」
参考:“内丹術”マスタリーのスキルツリー

前述した通り、各マスタリーにはそれぞれ独自のスキルツリーが用意されており、レベルアップやクエスト報酬で得られるスキルポイントを消費することで、アクティブスキル(上の画像では四角アイコン)やパッシブスキル(丸アイコン)を入手、もしくはUI左下の大きな“+”ボタンからマスタリーのレベルを上昇させることができます。

マスタリーそのもののレベルはUIの左部分で縦に伸びているバーで示され、取得可能なスキルは、マスタリーのレベルに応じて解禁される仕組み。このシステムは続編「Titan Quest II」にも継承され、幾つかの拡張を施していることが判明しています。(※ 今回ご紹介した画像は“内丹術”をレベル13まで上げていて、レベル10までのアクティブ/パッシブスキルが取得できる状態です)

「Titan Quest」
参考:プレイヤーの主要属性値

なお、本作の主人公には5つの主要な属性/アトリビュート(ヘルス、エナジー、腕力、知性、敏捷性)が用意されており、こちらもプレイヤーレベルの上昇時やクエスト報酬で得られる属性ポイントを消費することで強化できます。

このアトリビュートは、選択したマスタリーのレベルを上げることでも上昇しますが、強化されるアトリビュートとその数値は選択したマスタリーによってそれぞれ異なります。

例えば、魔法系マスタリー“アース”のマスタリーレベルを1上げた場合、知性3と敏捷性1、ヘルス21、エナジー15が獲得できますが、近接盾系マスタリー“ディフェンス”のマスタリーレベルを1上げた場合は、腕力2と敏捷性2、ヘルス50が得られます。これは、魔法系のマスタリーを選択すれば、魔法使いタイプに有利な属性値が、近接系であれば戦士タイプに適した属性値が強化されることを示しています。

つまり、似たタイプのマスタリーを組み合わせると、より特化型のビルドが作りやすく、タイプの違うマスタリーを組み合わせると、バランスやハイブリッド型になりやすいという傾向が生じ、ここに属性ポイントによる微調整を加え、実際のビルドを調整していくことになるわけです。(※ 属性値はキャラクターの強さに直結していますが、しばしば装備品の要求値を満たすために使用されます)

「Titan Quest」
参考:装備品の一例、着用には腕力177と敏捷性454が必要となる

この辺りの調整が「Titan Quest」のビルド構築における面白いところで、マスタリーの様々な組み合わせによって、剣盾近接から弓特化、ピュアキャスターといったオーソドックスなものから、とにかく死なない極タンク、近接系一撃必殺型、召喚わんこ特化強化、投擲武器の二刀流などなど、様々なプレイスタイルを追求することができます。

また、マスタリーの組み合わせが同じであっても、取得スキルや装備によって全く異なるアプローチのビルドが出来上がったりすることもあるため、一見あり得ないと思えるマスタリーの組み合わせでビルドを試行錯誤したりするのも非常に楽しいところ。(※ 詳しくは後述しますが、現行の“Titan Quest”は、一部拡張によりビルドの試行錯誤がとても手軽に楽しめるよう改善されているため、文字通り好きなだけビルド構築を楽しむことができます)

「Titan Quest」は風光明媚な神話世界の名所を突き進むのんびり観光プレイも楽しい

冒頭でもご紹介した通り、「Titan Quest」は意外と珍しい実在する神話ベースの“Diablo”系アクションRPGで、ストーリーもさほど深刻にならず、世界全体を明るく軽やかに描いていることが大きな特徴の1つだと言えます。

同ジャンルにおける現在の主要タイトルを見回してみると、同じようなアプローチの作品はやはり珍しく、ダークで絶望的な状況に陥った過酷な作品世界が広く一般的だと言えます。これは、オリジナルの“Titan Quest”開発チームが手がけた精神的後継作品である“Grim Dawn”でさえ例外ではありません。

もちろん、作品の明るさやダークさは、善し悪しで語られるものではありませんが、「Titan Quest」の明るさは“他にない”という意味で、実に個性的です。神話世界の英雄譚を描くストーリーもまた(世界の命運を左右する危機的な状況とは裏腹に)軽妙洒脱であり、神々を救う人間の英雄の物語を人間賛歌のような爽やかさで称えていることも本作ならではの珍しいアプローチだと言えるでしょう。

世界の神話世界を旅する「Titan Quest」の冒険譚は、古代ギリシャに始まり、アテネ、ギザのスフィンクスとピラミッド、シルクロード、万里の長城など様々な名所を越えて、ミノタウロスの迷宮を彷徨い、スティクス河を渡り、神々が住まうオリュンポス山に挑み、ついにはアトランティスの地にまで足を踏み入れる、壮大すぎる道のりで描かれ、全体を通じて目見麗しい数々のランドマークが効果的に用いられています。

「Titan Quest」
「Titan Quest」
「Titan Quest」
「Titan Quest」
「Titan Quest」
ギザには工事中のスフィンクス
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王家の谷のピラミッド
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ここは万里の長城
「Titan Quest」
ロードス島にも足を踏み入れる、ここはアポロンの神殿
「Titan Quest」
オリュンポス山を登る主人公

「Titan Quest」のゲームプレイに関する雑観

続いて、「Titan Quest」が復活を果たすきっかけとなった新エディションや拡張パックについてご紹介しますが、その前に本作のゲームプレイに関する全体的な雑観と一部印象的なディテールを簡単にまとめておきましょう。

まず「Titan Quest」の戦闘は、2006年の作品であることを如実に示すクラシックなもので、“ディアブロ III”以降の主要タイトルに比べれば、敵単体を個別に処理する基本攻撃が多めで、AoEはやや控えめなバランス。アクション性も(年々、避け要素が増えている同サブジャンルの現行タイトルに比べて)同じく抑えめで、基本的にステータスや装備品を積み上げて、キャラ性能で殴り合うタイプのプレイを特色としています。

近年のタイトルに比べて戦闘時の視覚的なエフェクトが控えめなことから、近接武器で戦う場合に、敵を殴ってもしくは斬りつけて倒している感覚が強調され、シンプルながら重さを感じるラグドールやどさっと落下する戦利品の物理演算がプレイにフィジカルな気持ちよさを与えてくれます。

また、戦利品と関係する本作の特徴の1つに、“敵が実際に着用もしくは手にしていた装備品をドロップする”という点があり、プレイに慣れてくると、戦利品が視覚的にある程度見分けられるようになるため、珍しい装備を身につけたネームドやエリートに出会った際のワクワク感は本作ならではの魅力だと言えるでしょう。

このどさっと落ちる感覚が癖になる気持ちよさ

一方、個性豊かなボスたちとの戦闘は、工夫を凝らしたものが多く、神話世界のビッグネームが多数登場するボス戦もお楽しみの1つです。

先ほど、景観を含むマップの美しさをご紹介しましたが、「Titan Quest」のマップは幕単位でかなり大きめのオープンフィールドを用意するタイプの構成で、ここにはダンジョンや街も統合され、フィールド全体をシームレスに移動できるため、オープンワールドに近い感覚で楽しめるのですが、マップのランダム/プロシージャル生成要素はなく、この部分でのリプレイ性は低めです。(※ 例外として、“Atlantis”拡張の新コンテンツにランダム生成ダンジョンが存在しています)

余談ながら、本作のマップは前述の通り広大なオープンフィールドですが、(一部の拡張を除いて)メインストーリーの進行方向を示す導線や目印を非常に分かりやすく配置していることが特徴で、基本的に大きな道に沿って移動しながら、下の目印があればメインクエストで進むべき方向、それ以外の横道やエリアはサイドクエスト/サイドアクティビティと非常に分かりやすく見分けられるようデザインされています。

「Titan Quest」
この2本の柱があれば、メインクエストの進行方向

また、本作には近年主流となっているシーズン運用もありません。実のところ、これは本作ならではの面白さを下支えする重要な要素の一つだと感じます。「Titan Quest」のプレイヤーキャラクターやビルドを強くするための要は、なんといっても長時間のプレイによって洗練される装備やリソースの資産そのものにあり、複数のキャラクター間で簡単にアイテムの受け渡しができるため、プレイすればするほど強くなる実感がはっきりと得られます。

長い時間を掛けてじっくりと資産を形成する楽しさは、近年主流となっているシーズンコンテンツのライブ感とは大きく趣きが異なるもので、どっちにもそれぞれの魅力があるのですが、「Titan Quest」はいわゆる通常レルムしか存在しないため、腰を落ち着けて長く楽しめることも本作の大きな魅力と言えるでしょう。

さらなる本作の特徴として、どうしても外せないのが、圧倒的なボリュームの大きさです。キャンペーンの進行や全体的なペーシング、レベル上げを含むキャラクターの成長など、ほとんど要素が長大で、多くの時間を必要とします。やるべきゲームが山積みとなっている多くのゲーマーにとって、このクラシックなボリュームはある種の障壁だと感じられるかもしれませんが、“Diablo”系アクションRPGを1本長く遊びたいという方が居れば、(セール時など非常に安価で購入できる機会も多いため)これほどコスパが高い作品はありません。

この長大さは、新エディションによる復活と拡張によって、さらに増大していて、エンドゲーム的な位置づけとなる“Eternal Embers”拡張のメインストーリー第6幕をスキップなしで楽しむためには、全5幕構成のながーいキャンペーンをノーマルとエピック、レジェンダリー難易度で3周分クリアした上で、第6幕に到達しなければなりません。(※ 余りにも長いため、本作には新規キャラクターで第6幕からプレイするオプションが用意されています。これについては後述)

ということで、「Titan Quest」のコア部分を構成する主要な魅力や特徴は概ね以上のような内容ですが、前述の通り本作は新エディションによる復活と複数の拡張を通じて、現世代タイトルとして数々の進化を遂げているため、次はこの復活と拡張によって本作がどう進化したか、その流れを整理して、現在の「Titan Quest」像を明らかにしてみましょう。

新エディション「Titan Quest Anniversary Edition」の登場

オリジナルの発売から10年が経過した2016年9月、“Titan Quest”の誕生を祝う新エディション「Titan Quest Anniversary Edition」が発売され、現行タイトルとして驚きの復活を果たしました。

「Titan Quest Anniversary Edition」は、オリジナルの“Titan Quest”と拡張パック“Immortal Throne”を統合し、大量の改善と機能的拡張を施した現世代版。高解像度対応を含む描画周りの改善をはじめ、ほぼ全域に及ぶバランス調整、大量のバグ修正、インベントリの拡張や動作スピード設定の追加を含む広範囲なQoL改善、日本語対応を含む追加のローカライズ、マルチプレイヤー機能のアップグレード、ワークショップ対応を含む公式MODサポートなど、文字通り全面的な進化を果たした決定版・完全版となっています。

筆者はPCで本作をプレイしていますが、現在の「Titan Quest Anniversary Edition」は、オリジナルの感覚を維持しつつ、現代的に進化した機能周りの改善が特にありがたく、待望の“カーソル移動”機能(※ いわゆるForce Moveオプション、筆者は仕事がら指と手首を酷使しているためマウスクリック/ホールド移動は身体的苦行でしかなく、この機能が存在しなかったオリジナルのレジェンダリー入りは本当に地獄でした。ただ、本作のカーソル移動はちょっとクセがあるため、僅かに操作量が増えます)を筆頭に、ゴールドとポーションを瞬時に回収できる“クイックピックアップ”キーの追加、シンプルながらキー操作で6段階に調整できる必要十分な機能を備えたアイテムフィルター、さらにコントローラー対応も加わって、操作量の多さやプレイのスムースさが大幅に向上しています。

また、ゲームの速度変更オプションも追加され、3段階の速度調整が可能になり、最もスピーディな設定ではうっかり事故に注意が必要なほど高速なプレイが楽しめるようになりました。

北欧神話の世界で巨人や怪物と戦う拡張パック「Titan Quest: Ragnarök」

「Titan Quest Anniversary Edition」の発売からおよそ1年が過ぎた2017年11月、突如として新たな拡張パック「Titan Quest: Ragnarök」がアナウンスされ、なんと発表と同時に販売がスタート。“Anniversary Edition”のサプライズに続いて、ファンを大いに驚かせました。

「Titan Quest: Ragnarök」は、オリジナルの本編と“Immortal Throne”拡張を通じて一先ず完結したギリシャ神話ベースの壮大な戦いのその後を描く拡張パックで、舞台を北欧神話の世界へと移し、神殺しとなって人間の時代を築いた英雄が一部の神族や恐ろしい怪物、巨人たちと戦う、熱すぎる冒険を描いています。

本拡張の旅は、ギリシャからドイツを真っ直ぐ北上しながら、スカンジナビア半島へと渡り、世界樹ユグドラシルを登っていき、さらにはオーディンやフレイヤといった北欧神話世界のビッグネームとも相まみえる神話好き垂涎の経験であり、「Titan Quest」観光の楽しさを凝縮したような魅力を備えています。

また、ゲームプレイ周りの新要素として、魔法戦士系の個性的な能力を持つ10番目のマスタリー“ルーンマスター”をはじめ、最大で85となるレベルキャップの拡張、投擲武器を含む大量の新装備/アイテムを導入しており、ゲームの全体的な物量とボリュームをさらに巨大化させています。

アトランティスへの旅を描く拡張パック「Titan Quest: Atlantis」

続いて、2019年5月にはさらなる拡張パック「Titan Quest: Atlantis」がアナウンスされ、こちらも発表と同時にPC向けの配信が開始されました。

「Titan Quest: Atlantis」は、その名の通り伝説の島“アトランティス”をテーマにした拡張パックで、メインストーリーの第5幕を導入した“Ragnarök”とは異なり、メインクエストを用意せず、一続きのストーリー展開を持つサイドクエストを多数導入する独自の構成を特色としています。

これにより、“Atlantis”のクエストは完全なオプション扱いとなるため、難易度エピックとレジェンダリーの解除に本DLCのクリアが必須ではないことも“Atlantis”の良いところ。

本拡張の冒険は、英雄ヘラクレスの足跡を追い、アトランティスを目指すというもので、スペイン南部からアフリカ大陸へ渡り、アトラス山脈を越えて、謎の大陸アトランティスを目指す、非常にエキゾチックかつプラトンの言説をしっかり踏襲する、古代神話世界の観光としてかなり楽しめる内容となっています。

その他の主要なコンテンツとしては、ウェーブベースのランダム系チャレンジモード“タルタロス”に加え、各マスタリーの新スキル、非常に便利な倉庫用のレリック専用保管庫、強力な装備、カジノなどが挙げられますが、“Ragnarök”や後述の“Eternal Embers”に比べると全体的にコンパクトな拡張だと言えるでしょう。

中国で伝説の獣“窮奇”を追う拡張パック「Titan Quest: Eternal Embers」

2019年5月の“Atlantis”拡張リリース後は、現行拡張のコンソール対応やモバイル向け完全版「Titan Quest: Legendary Edition」の発表・発売が続き、本編の拡張についてはしばらく静かな状況が続いていましたが、2021年12月に最新の拡張パックとなる「Titan Quest: Eternal Embers」が突如リリース。再び大量の新コンテンツと改善が導入されました。

「Titan Quest: Eternal Embers」は、本作のエンドゲームコンテンツとして、最高難易度レジェンダリーでのみプレイできるメインストーリーの第6幕を導入する大型拡張で、中国の歴史的な皇宮庭園からシルクロード、万里の長城、崑崙寺院といった名所を経て、エジプトや天壇、果ては神の領域にまで足を踏み入れる壮大な冒険が描かれます。

前述した通り、“Eternal Embers”拡張のメインストーリーを楽しむためには、本編をノーマルとエピック難易度をクリアした上で、レジェンダリー難易度の第6幕に到達する必要があり、そこに辿り着くまでにかなりの時間を要するのですが、本作にはレジェンダリー第6幕をすぐに始められるlv70の新規キャラクター“レジェンダリーヒーロー”を作成するオプションが導入され、すぐに東の地での冒険を開始することができます。

ただ、これにはちょっとした罠があって、特にアカウントの資産が乏しい状態でlv70の冒険を始めたとしても、第6幕の敵には全く歯が立たないため、最初の街に用意された“ヘロス”(第1幕)へのポータルを通って、レジェンダリー難易度を冒頭からやり直し、装備やリソースを貯めていく必要があります。

一方で、既にレジェンダリーをプレイしていて、ある程度の防御力や主要耐性値、資産を確保している場合は、特に問題なく“Eternal Embers”のメインストーリーを楽しむことができます。

“Eternal Embers”拡張の大きな魅力の一つは、この“レジェンダリーヒーロー”機能にあります。このLv70ヒーローは、未使用スキルポイントを221、属性ポイントを156も保有した状態で誕生するため、ある程度の蓄えさえあれば、エンドゲームで戦えるビルドをいくらでも試し放題というわけです。

本作の大きな魅力の1つは、マスタリーの組み合わせがもたらす柔軟なビルド構築にあるわけですが、一度選択したマスタリーを変更することは出来ないため(※ スキルポイントは街の施設で回収可)、これまでは新しいビルドを試すために1から、もしくは“Ragnarök”DLCにて導入された新規のLv40キャラクター“熟練の勇者”を利用する必要があり、高レベルのビルド構築を試行錯誤するには多くの手間が必要でした。“Eternal Embers”拡張はその手間を大幅に軽減してくれる新しい時間泥棒と言えるでしょう。

以上、概要の紹介だけでもかなりの量になってしまった最新の「Titan Quest」に関する全体像ですが、本作はとにもかくにも自分のペースで気楽に、長く楽しめるというのが本質的な魅力であり、(ビデオゲームに限らず、数多あるコンテンツがユーザーの限られた可処分時間を奪い合っている2024年現在における是非はともかくとして)このデザイン面のコンセプトが今もプレイできるクラシックの名作「Titan Quest」と最新のモダンな“Diablo”系アクションRPGを明確に分かつ決定的な違いだと言えます。

続編に向けて「Titan Quest Anniversary Edition」をおさらいするには?

「Titan Quest」

ということで、「Titan Quest II」の登場に向けて、初代「Titan Quest」の魅力と歩みをまとめてご紹介してきたわけですが、来る続編の発売に先駆けて、「Titan Quest」を実際にプレイしておきたい方もいらっしゃるでしょう。

新エディション「Titan Quest Anniversary Edition」は、今遊んでも十分に楽しく、それこそ何百時間でもプレイできる極めてコスパの良いクラシックですが、数多くの大作がひしめく昨今、時間を十分に確保することも難しく、一先ずは手軽に「Titan Quest」の全体像やストーリー、システム、プレイ感を掴みたいという場合、現在はとても便利な方法が用意されています。

PC Steam版「Titan Quest Anniversary Edition」の大きな新要素の1つに、Steamワークショップ対応があり、大規模な新キャンペーンや追加のマップ、クエストや敵、装備、マスタリーに至るまで、200種を超える多彩なMODが利用可能となっているのですが、この中には、獲得XPや戦利品の量を増やすタイプのMODが存在していて、キャンペーンの進行を大幅に短縮し、ファーミングの手間を軽減することができます。

所謂チート系のMODということになりますが、シングルでキャンペーンをさらりと楽しむ程度であれば、さほど問題はないでしょう。とはいえ、やり過ぎも興が削がれますから、経験がさほど損なわれない程度の強化として、“More Exp (x2, x5, x8, x10) + Loot Plus”(戦利品増と獲得経験値x倍、2倍がオススメ)、物足りなければ“Loot Plus + Exp x3 + Spawn Rate+”(戦利品増と獲得経験値3倍、敵の数増加)あたりを利用すれば、特段ファーミングの必要もなく、潤沢なレベル上昇でビルド構築も楽しみながら、ノーマルの1周をストレスなく堪能できるはずです。

エンドゲームを楽しみたい場合は、“Eternal Embers”拡張のレジェンダリーヒーロー機能と前述のMOD等を併用して、第1幕からファーミングを少々頑張れば、後半でもプレイできるキャラクターが出来上がります。終盤のゲームプレイには、システムとメカニクスの理解が必要ですが、一先ずは刺突耐性を優先しつつDPSを上げていきましょう。

シーズンが存在しない「Titan Quest」は、プレイ時間と戦利品の資産がものを言うクラシックですので、最初のハードルをお手軽に超えた辺りで、じわじわと本作の魅力に感じ入る可能性も十分にあると言えます。

続編「Titan Quest II」は、初代のプレイを必要としないタイトルとして開発されているはずですが、オリジナルをプレイしておけば、理解も早く、楽しみが増すのもまた事実。この規模の“Diablo-like”が完全新作として発売されるのは、それだけでお祭りのようなものですから、興味がある方は続編の発売までに残された時間を利用して、オリジナルに触れてみてはいかがでしょうか。

ということで、初代「Titan Quest」を振り返る第1回の特集はここまで。

次の第2回は、続編「Titan Quest II」に焦点を当てる前に、来る続編がオリジナルからどう進化し変化するのか、最新のビデオゲームとしてどの部分を強化、或いは圧縮するのか、トレンドの取り入れ方や方向性、取捨選択を適切に見極められるよう、この機会にディアブロ系アクションRPG(Diablo-like)の出自や歴史を整理したいと思います。

“Diablo-like”の歴史やコンセプトを改めて振り返れば、「Titan Quest II」の全体像もきっと分かりやすくなるはず……、ということで次回の特集をお楽しみに!

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