昨日(5月24日、月曜日)の日本経済新聞の朝刊、一面ボトムのコラム(朝日新聞の天声人語と同じ位置のコラム)である“春秋”の下記の部分が笑えた。
今春卒業した大学生の就職率は、2年連続で悪化した。業績次第で企業が採用人数を絞るのは仕方ないとして、せめて新卒偏重を早くやめてはどうか。
一応、日本経済新聞の採用サイトを見てみたら、新卒採用サイトはデザインも凝っており、情報もいろいろ掲載されてる一方で、社会人採用のセクションはシンプルに「現在募集している職種はありません」の一文のみ。
ほら→http://www.nikkei.co.jp/saiyo/employ1.html
イヤ別にどうでもいいのだが、これっておもしろいよな、と思いました。
ちきりんは最近ブログに頂くコメントに全く返事ができてない。昔は全部に返答してたんだけど、最近はコメント数が多く全部に返答する時間はないし、一部にのみ返事をするのも不公平な気もして、ついついそのままになってしまってる。もちろん申し訳ないとは思ってます。
で、もしこの状態でちきりんが「ブロガーは、コメント欄を設けている限り、せめて一言でもいいから全員に返事をするようにしてはどうか?」って書いたらどうなりますかね。
たちまち炎上?
そこまでいかなくても「お前が言うな!」的なフィードバックが瞬くまにコメント欄やブックマーク欄に、さらにツイッターコメントとして押し寄せるよね。
でもですね、日経新聞にかぎらず他の新聞も(加えてテレビも)自分達の役員会には男性しかいなくても「女性を活用すべき」と繰り返し書くし、自分達は相当早い時期に新卒学生を青田買いするのに「就職活動の早期化が勉学を阻害している」と書く。社会人採用なんて全然やらないくせに「新卒採用偏重はよくない」と主張し、派遣や契約社員と正社員の待遇格差がもっとも大きい業界でありながら「格差問題」を大げさに嘆いて見せる。
ちきりんがおもしろいと感じたのは、彼らは「お前が言うな!」的なフィードバックが全く届かないメディアなんだなってことです。だからずうっと態度が変わらないのよね。一度でも厳しく「お前が言うな」と責められたらさすがに一面には書かなくなるでしょ。
もしネット上に「日経新聞の編集委員のブログ」が存在していて、そこでこの文章が書かれていたら、かなりの確率で、厚顔無恥な言行不一致を指摘されて炎上しそうじゃないですか?でも紙(の新聞)に書いても、もはや誰もそんなもんに反応しないんだよね。
それくらい“死んでるメディア”だってことなんです、紙の新聞って。別の言い方をすれば、みんなもう紙の新聞に期待してないんだよね。「別におかしな記事はこれだけじゃないし。新聞が書いてることなんて、たいてい適当な話だしねえ」みたいな。「まともに信じてる人も多くないんだから、何でも好きに書いてればいいんじゃないすかね」みたいな。そんなふうに思われてるんじゃあるまいか。
ちきりんブログだって、もしも今「ブロガーはコメントに返事したほうがいいんじゃないの〜」とか書いて誰にも反応されなかったらそれこそ“終わってる”でしょ。
いろんな反応が集まるのは、発言者として注目されていることの証左であり、正しく言動することを期待されているからだよね。自分達にはできもしないこと、やる気もないことを、偉そうに他者に向かって“やったらどうか”などと書いても、何のフィードバックももらえない段階にきているメディアってある意味すごい。
世間から関心を持たれなくなったメディアは、市場(顧客、読者)からフィードバックが得られなくなる。そしてそのことが、メディアの寿命を縮める。“まともに言動すること”を期待されなくなったメディアで発言することは、楽ちんな行為である一方で、その意味するところはちょっくら不気味だ。
まあ、教訓的に受け止めておきましょう。
そんじゃーね