3月21日号の週刊ダイヤモンド特大号が、貧困を特集していました。真っ黒の表紙に白いでかい文字で「貧困」と書いてあってインパクトがありました。
ちきりんがこの号を買った最大の理由はこのタイトルがおもしろいと思ったからです。
「あなたの知らない貧困」って、おもしろくないですか?
「あなたの知ってる貧困」と「あなたの知らない貧困」があるってこと?
というのがとても興味深く、買ってみたわけです。
「あなたの知らない」という意味は、私が想像するに
「週刊ダイヤモンドなんかを読んでいるあなたは、当然に大企業の正社員か中小企業の経営者にあたる人で、たぶん部長やら役員やらで、当然に高給取りで、親戚やら友人知人を含めても、本当の意味で貧困の人なんて目に見える範囲にはいないでしょ?」「だけど、世の中にはあなたが想像できないくらい貧乏な人が実はたくさんいるんですよ!」ってことなんだろうと。
想像したんだけど、違うかしら?
他に「あなたの知らない貧困」ってどう解釈できます? 「あなたの知ってる貧困」との差はなに?
ちきりんは友達と飲みに行くと、よく自分から「貧困問題についてどう思う?」と話を振ります。ですが、友達の方からそんなことを聞かれたことは一度たりともありません。
しかも私から話を振り出しても、この議論にのってくる友人は非常に少ないです。
多くの人が「なんでそんな話、してんの?」って感じです。
二人で飲みに行っている時はちきりんもある程度粘りますが、数人で飲みでる場合は、たいてい 15秒くらいでスルーされちゃいます。
誰もそんな議論に興味がないです。そして知らないです。「わたしたちの知らない貧困」です。
二人で飲みに行っていて、かつ相手がこのブログの存在を知っている場合、つまり私がこの問題に関心があることを知っている場合、かつ、相手がちきりん(という人間の思考)に強い関心がある場合のみ、ある程度議論が続きます。
相手が貧困に興味がないのはこの場合も同じですが、「まあ、ちきりんがそこまでこの話がしたいなら、僕はつきあいますよ!」って感じです。お情けで話につきあってもらってるみたいです。
このことを私は長らく「自分の環境がとても特殊なのだ」と思っていました。そして「特殊な環境にいる人の世間知らずさ」を問題だと感じていました。
でも、この雑誌を見て思いました。ちきりんのいる環境は決して特殊ではないんだと。そう言う人が一定数以上(大多数かどうか知らないけど)いるんだなって。
「あなたの知らない貧困」を「この雑誌を読むことによって知ることができますよ!」という雑誌が成り立つわけだから。
そして、「ああ、だから解決できないわけだよね」とも思いました。私たちにとって貧困とは“雑誌や本で学ぶコト”であり“お金出してお勉強して学ぶこと”なわけで・・・“中世フランスの農地改革”とかそういうのと同じようなリアリティのない話なんだと。*1
実際この特集の中では「貧困問題を学ぶにはこの本を読め!」みたいな推薦図書も載っていて・・まさに「貧困とは本で学ぶモノ」であり、日常にあるものではないという扱いでした。
この“見えにくさ”にはいくつか理由があるとは思うのですが
→ 関連過去エントリ
「格差の“見えやすさ”」、
「格安生活圏的なものがない」
貧困の偏在や隔離、そして補色的な見えにくさについては日本社会の特殊性からくるものも種々あって、ここを探っていくと結構おもしろいかな、と思いました。
ちなみに週刊ダイヤモンドの記事には“このナイスなタイトル”に呼応する分析は特になく、「目に見えない貧困が拡がっている」とか書いてありますが、「なんで見えないのか」という一番おもしろい点には注目していません。
代わりに生活保護世帯数などのグラフをふんだんに掲載し、データを示すことによって「ほら、あなたの目には見えてないでしょうが、データにはこんなにきれいに表われていますよ」とたたみかけています。
「データにこんなに綺麗に表れているのに、なぜ見えないのか?」こそおもしろい点なのに。
センスないなあ、と思いました。
でもまあタイトルだけでもナイスだったので、許してあげる。
↑
何様?
↑
ちきりん様
↑
奢れるなんとか久しからず
あ〜、また叩かれる!
<参考図書>
貧困大国ニッポン―2割の日本人が年収200万円以下 (宝島社新書 273)
- 作者: 門倉貴史+賃金クライシス取材班
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正社員が没落する ――「貧困スパイラル」を止めろ! (角川oneテーマ21)
- 作者: 湯浅誠,堤未果
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- 発売日: 2009/03/10
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*1:“私たち”に他意はないですが、とりあえずここでは“週刊ダイヤモンドのターゲット読者”ってことで