波乱必至の通常国会が幕を開けた。消費増税の関連法案は成立するのか、衆院解散・総選挙はあるのか――。永田町や霞が関界隈は、早くも緊迫した空気に包まれている。

 ここにきて、混迷政局のキーマンに浮上してきたのが、「バッジ」を付けていない2人。橋下徹・大阪市長と石原慎太郎・東京都知事だ。

 橋下氏が代表を務める地域政党「大阪維新の会」は、次期衆院選に全国規模で国政進出を狙う可能性を示唆。「橋下人気にあやかりたい」「敵に回したくない」といった思惑から、中央政界に乱気流を巻き起こしている。

 一方の石原氏も、たちあがれ日本の平沼赳夫代表らが結成を目指す保守新党への参画が取りざたされる。

共通項は「リーダーシップへの期待」

 2人に共通するのが、国民の間での高い人気とリーダーシップへの期待だ。

 例えば、産経新聞とFNNの合同世論調査では、「日本のリーダーとして最もふさわしい人は」との質問に対し、橋下氏が国会議員を差し置いて21.4%でトップ。2位は石原氏の9.6%だった。

 「民主党は期待外れ、揚げ足取りの野党の自民党もダメ。投票したい政党や国会議員がない」という無党派層を中心に期待値が高まっている構図だ。

上京して石原慎太郎氏と会談した橋下徹氏。2人がタッグを組む新党説も囁かれるが…(写真:時事通信)

 生き残りをかけた政治家の虚々実々の駆け引きの中で、2人を政界再編の核に、と目論む声が広がっている事情もある。両氏がタッグを組む「橋下・石原新党」説もまことしやかに囁かれている。

 果たして2人が手を結び、いきなり国政の主役に躍り出るような展開はあるのだろうか。

 橋下氏、石原氏のうち、自身の国政進出へのハードルが低いのは石原氏のほうだろう。橋下氏は大阪市長に就任したばかりで、掲げる「大阪都」構想の道筋が付くまでは動きにくい。「少なくとも年内に総選挙があった場合は、橋下氏自らが出馬する可能性は低い」(自民党関係者)との見方が一般的だ。

 これに対し、石原氏は既に都知事4期目。石原氏と近い議員や都庁幹部からは「本当は3期で辞めるつもりだっただけに、気力はだいぶ萎えている感じ。体調も万全とは言えないようだ」との声が漏れる。

 石原氏も既に79歳。そろそろ政治家としてまとめの時期を迎えているのは間違いない。これまで、毎年のように保守結集の旗頭に、と「石原新党説」が浮かんでは消えていたが、今度はどうなのか。

 「都知事の任期途中の辞職の可能性も公言しており、ラストチャンスとして国政進出・天下獲りを狙う可能性はある」。都選出の複数の国会議員はこうした見方を披歴する。

「息子を首相に」が石原氏の本音か

 ただ、仮に石原氏が国政に舞い戻ったとしても、一気に宰相の座を手にするには次期総選挙で民主、自民両党が過半数を獲得できず、石原氏が参画する保守系新党と連立を組むケースなどに限られそうだ。

 しかも、たちあがれ日本の平沼氏らは、石原氏も含む新党の早期結成を目指す構えだが、自民党幹部は「今は自民党で選挙をしたほうが有利と判断する議員が多いはず。民主党も選挙基盤が弱い比例選出組はともかく、離党する議員が大量に出るとも思えない。それほど大きなブームにはならないだろう」と読む。

 それでは、次期衆院選をにらみ、石原氏と橋下氏が一緒に新党結成などに踏み切る展開はあるのだろうか。

 石原氏は大阪市長選で橋下氏の応援に参上。橋下氏との会談では大阪都構想への支持や、橋下氏が掲げる教育基本条例案などの改革で足並みを揃える意向を伝える蜜月ぶりを演出してみせた。表面上、歩調を合わす2人の裏事情に詳しい自民党議員が解説する。

 「石原さんの本音は、自分が、というより、自民党幹事長を務める息子の伸晃さんを首相にしたくてたまらないんだ。橋下さんにはできるだけ恩を売って、政界再編のタイミングで伸晃さんを首相にかついでくれ、ということだろう」

「伸晃さんが、盛んに総選挙後の再編に言及するのも、こうした文脈で考えれば分かりやすい。でも、橋下さんは利口だから、うまく立ち回って、石原さんの思惑通りには運ばないだろうね」

 こうした見立てが正しいとすれば、早いタイミングでの「橋下・石原新党」も、「慎太郎首相」も、実現には高い壁があると言わざるを得ない。

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