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林信行のマイクロトレンド 第4回

ネット広告を急成長させる3つの起爆剤

2007年03月30日 23時45分更新

文● 林信行 (ITジャーナリスト)

急成長するネット広告


 インターネットの最新動向にもっとも敏感なのは実は広告業界かもしれない。ここ数年、広告業界がインターネットにつぎ込む費用が急速に伸びているからだ。

 例えば電通の国内総広告費は、2004年時点でラジオ広告費の1795億円を抜き去り、1814億円に達している(同社『2004年日本の広告費』)。今年2月に発表した『2006年日本の広告費』では、ネット広告の総広告費は、さらに倍の3630億円に達しており、今年中には、よほどのウルトラCがない限り、雑誌広告費(3887億円)を抜くことが確実になった。

 大量の費用が注ぎ込まれるだけあって、ネット広告では大きなイノベーションが続いている。昨年にはYouTubeブームに乗って、話題に乗りそうなおもしろい映像に広告を動画を使ったバイラル広告が大きな話題となった。

 今年は、SNSやブログを活用したパーソナリティー型広告、ユーザーのコンテクストを分析して絞り込んだ広告を表示するビヘイビアー型広告、インターネットと出版やテレビなどの従来メディアとを融合するメディアミックス型広告といった3つが大きなトレンドになりそうだ。



持続効果を狙うパーソナリティー広告


 mixiなどのソーシャルネットワークサービス(SNS)は、最近、ネットに敏感な広告代理店が最も注目している広告媒体だ。これまでにもmixi内に、スポンサー付きの公認コミュニティーを設けてプロモーションを計る動きはあったが、最近ではこれにパーソナリティーという要素を絡めた広告が登場している。

マイミク

mixiではiPod nanoと“マイミク”になれる広告が展開された

 昨年12月にはmixiに突然、『iPod nano Green』、『iPod nano Pink』、『iPod nano Blue』といったiPodを“マイミク”(mixi上での友達)にした人が現れ始めた。

 ユーザーがこれら3人(!?)のプロフィールを表示させると、昨秋発表の3色のiPod nanoのテレビCMが、当時のmixiではサポートしていなかった動画の形式が再生され、彼らがただものではないことを知ることになる。

 試しにiPodに“マイミク申請”(友達になってくれる依頼)を出すと即座に受付され、それ以後、Apple Storeで開催されるイベントの情報や、iTunes Storeから曲を無料でダウンロードするためのコードがメッセージとしてとして送られてくる。

「めちゃくちゃいい友達をゲット」したと喜んでいたのも束の間。3人のiPod nanoは2月末のフリーソングのプレゼントの後、さっさとmixiを退会してしまった。

 説明するまでもないが、このiPod nanoたちは、おそらくアップルまたはアイチューンズ(株)などが仕掛けた広告だ。mixi上でパーソナリティー(人格)を与えられ、あなたの親しい友人しか送ってこないはずのmixiのメッセージ機能を使って、最新のニュースをや伝えたいメッセージを伝えてくる。

 ユーザーが、自発的に情報をチェックしなければならない公認コミュニティーを使ったプロモーションよりは、もう少し能動的な広告手段で、忘れたころに新しいニュースを送って、継続的に注意を引きつける効果があるだろう。



小説の登場人物に日記を書かせる


ミクドラ

mixi上で始まった連載小説“ミクドラ”

 さらにおもしろいのが、最近、mixiで始まったドラマ“ミクドラ”だ。これはmixi上の連載小説だが、各登場人物を演じる役者の写真が掲載されているだけでなく、なんとmixi上のアカウントが用意されていて、友達登録することもできる。さらに、これらの登場人物の人格が、それぞれmixiの日記を更新しているのだ。

 つまり読者は、序章から終章に向かって展開する小説という一次元の展開に加え、登場人物の日記という形でも小説の世界観を楽しむことができ、この多面展開の新しいエンターテイメントに、さらに広告が絡んでくる。

 連続小説という形態、そして登場人物の日記という形態が、読者から継続的な関心を集め、その一方で共感やライフスタイル/世界感の提示といった効果をもたらす。

 まだドラマの展開の仕方も、広告の使い方も手探りな印象があるが、これは大きなトレンドの出発点かもしれない。注目のミクドラはインテリジェンス、花王、トヨタ、P&Gが協賛している。

“花々しいな”

登場人物の一人、“花々しいな”のトップページ

インテル(株)の広告では登場人物が書くという設定のブログを用意して、SNS会員だけに限定されないオープンな展開を狙っている

 こうした広告の展開はSNSだけに限定されるものではない。最近ではインテル(株)が、「インテルCPUに乗り換えることはこれくらい衝撃的」とアピールするために、日本の小学生とアメリカ在住の黒人ビジネスマンの魂が入れ替わってしまうドラマを始めた。

「パーソナリティーによって消費者との親密な関係を計る広告は昔からあった」と言う人もいるかもしれない。しかし、最新広告が違うのはmixi日記やRSSの用意されたブログという新しいメディアを使うことで、あまり押し付けがましくない形ユーザーからの継続的注目を引きつけられる点にある。


(次ページに続く)

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