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バレンタインがきっかけ?クックパッドがAWSとのなりそめを語る

人気レシピを食べながらクックパッドのAWS導入の話を聞いた

2014年09月04日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

9月3日、アマゾン データ サービス ジャパン(以下、ADS)は、クックパッドのAWS(Amazon Web Services)導入事例の説明会を開催した。クックパッドの人気レシピをアマゾンの社員食堂「a2z」で味わいながら、AWSを採用した理由やクラウド上のサービス開発について話を聞くことができた。

「チョコを作る人の気持ちを考えたら……」

 20~30代の女性の8~9割が利用するという国内最大のレシピサイトであるクックパッド。月間利用者数4400万人、170万品を超えるレシピを誇り、グローバル展開を進めている。9月からは、主要出版社13社と提携し、月額360円で雑誌やレシピ本のレシピが見放題となる「プロのレシピ」もスタートさせた。

説明会の会場となったAmazonの社食「a2z」

 こうした同社のサービスを支えるのが、AWSになる。2010年当時、月間2000万の利用者、120万以上のレシピ数にまで拡大していたクックパッドは、検証を行ないながら、データセンター上に構築していたシステムを徐々にAWSに移行していったという。

 クックパッドがAWSを導入するきっかけになったのは、バレンタインの負荷をいかにさばくかという課題だ。チョコレート作りのために検索するトラフィックは年々記録を更新し続け、クックパッドを悩ませていた。クックパッド インフラストラクチャー部 部長の成田一生氏は、「バレンタインの時、アクセスが数倍に跳ね上がる。でも、ピークにあわせてサーバーを買っておくと、平常時が無駄になる。サーバー発注から時間もかかるので、今までは必要なサーバーの3倍発注をかけていた」と振り返る。

自ら“インフラカレー”をふるまうというクックパッド インフラストラクチャー部 部長 成田一生氏

 そこで、シンガポールリージョンにあった時期からAWSを導入し、動的にサーバーを増やせるAWSのオートスケールを活用。「バレンタインにチョコ作る人の気持ちを考えたら、アクセス過多でレシピにアクセスできないなんてありえない。その女子の人生がかかっているかもしれない」と胸アツなコメントをした成田氏は、ピーク時でも快適にアクセスできるインフラをAWSで構築。コスト面に関しては、決してデータセンターの時と比べて安価になったわけではないが、余剰なサーバーを持たないで済むようになったという。

 その後、2011年11月には、社内システムまで含めて、すべてのサービスをAWS化し、EC2とS3を組み合わせたVPC(Virtual Private Cloud)環境で運用している。「社内にはもはやほとんどサーバーはないです。社内wikiや人事評価システムも、AWS上に構築しています」(成田氏)。

どこまでAWSに任せるのか?クックパッドのポリシーを聞いた

 AWSもプロダクトを充実させており、データベースやアプリケーションまでかなりの品揃えとなっている。これに対して、クックパッドとしては、載せられるものは、全部AWSに載せたいというのがポリシーだ。成田氏は、「運用担当が4名しかいないので、なるべくマネージドのものを使いたい」と語る。

 最近導入したのが、ご存じAmazon Redshift。「クックパッドでどのレシピや食材が検索されているのかを、グラフィカルに表示します。調味料や食品のメーカーが食のトレンドをリアルタイムで知ることができる『たべみる』というBIサービスで使っています」(成田氏)。また、従来Youtubeを使っていた動画配信も最近自社配信に切り替え、Elastic TranscoderやDynamoDBなどAWSのサービスをフル活用して構築されている。

クックパッドとa2zがコラボし、人気メニューを社食で食べられる1週間となっている

 一方で、ビジネスに直結する部分は、徹底的に自社開発し、チューニングを施しているという。たとえば、クックパッドの検索はまさにコアビジネスにあたる部分。「レシピを載せる人たちをいかに大切にするかが、われわれの大きなテーマ。ランキングが固定しないよう、人気順の検索を有料にしているのもそれが理由」(成田氏)とのことで、特定のレシピや投稿者をフィーチャーするわけではなく、新着順でバラエティ豊かなレシピをリスト化できるよう腐心している。これにより、新しく投稿デビューした人がユーザーから“つくれぽ”をもらい、またレシピを上げるというサイクルを回しやすくしているわけだ。

 また、料理や素材の検索で利用するデータベースも独自なものが多い。「じゃがいも」と「ポテト」を同義語として扱ったり、「塩」と「レモン」を分かち書きするのではなく「塩レモン」を単一の用語として認識させるような“秘伝の辞書”は、まさに同社のノウハウそのものだという。

1日10回のアップデートのスピード感はAWSならでは

 日本でのAWS導入が活況を呈しているため、新サービスがシンガポールよりも早く導入されるようになったり、業界を震撼させる大規模な値引きが行なわれたりで、AWSの魅力はますます増しているとのこと。一方で、従量課金なのでコストを逐一チェックする必要があり、コストがかかり過ぎにならないか、緊張するときもあるとのこと。ともあれ、大なり小なり1日10回のアップデートを施しているサービスのスピード感を維持するのは、AWSのサービスが必須といえるようだ。

 サービス導入の背景について説明しつつ、自身も質問する側に回ったADS 技術統括本部長 玉川憲氏は、「古くからAWSに移行していただいており、技術者界隈でもインフルエンサーの役割を果たしていただいている。いち早くサービスのフィードバックいただき、われわれにしても本当にありがたいお客様」と語った。

今回ふるまわれたメニューはアマゾン、ADS両社の投票で決まった「絶品簡単激うましらす丼」「鶏肉と大根おろしのうどん」とじゃがいもやズッキーニを使ったおかず。どれもワンポイントの工夫があり、とても美味。ごちそうさまでした!

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