「また失敗するに違いない」「どうせ、うまくいくはずがない」
そんなネガティブな思考が頭をぐるぐると回り、自信を完全に失ってしまう――
挑戦したいという気持ちはあっても、行動できない。モチベーションは下がる一方で、不安だけが大きくなっていく。
もしかしたら、いま、あなたもそんな状態かもしれません。自信がないと感じるとき、私たちは「なにか大きなことを変えなければ」と思いがちです。
でも、じつは違うんです。
自己肯定感を高め、行動できない状態から抜け出すための効果的な対処法は、意外にもシンプルです。劇的な変化は必要ありません。むしろ、小さな一歩から始めることで、確実に前に進むことができるのです。
今回は、自信を取り戻すための具体的な方法と、筆者自身が実践した「小さな変化」の体験をご紹介します。メンタルの改善に効果的な、誰でもすぐに始められる方法です。
「できない」が「できた」に変わる、その第一歩を一緒に見つけていきましょう。
自信への道のりは「行動」あるのみ、だとは言うけれど……
「自信がないから積極的に行動なんてできない」
筆者自身、そう思い込んでいた時期がありました。でもじつは、この考え方を180度ひっくり返す必要があったのです。なぜなら、自信は行動のあとからついてくるからです。
この「行動が自信を生む」という考え方は、多くの専門家も指摘しています。例えば、グロービス経営大学院の葛山智子氏は「自信があるから行動するのではない、行動するから自信がつく」と言います。*1
確かにその通りなのですが……正直なところ、自信を完全に失っているときに「さあ、行動しましょう!」と言われても、そう簡単には動き出せないもの。つまり、「自信がないから行動できないのに……」といったところです。
みなさまにも、行動しよう、何かを変えようとは思っているけれど、なかなか動き出せないという経験があるのではないでしょうか。
でもそれはどうやら、「行動のサイズ」を大きく想定しすぎているからかもしれません。
中小企業診断士の竹村孝宏氏は、まずは手をつけられることから始め、徐々に行動を増やしていくことをすすめています。この「手をつけられることから」という言葉に、はっとさせられました。*2
そう――いきなり大きな行動を起こす必要はないんです。小さな一歩でいいのです。
少しずつでも行動を重ねることで、
- 成功体験の貯金ができる
- 小さな失敗への免疫もつく
- 次第に行動することへの恐れが減っていく
ということです。では、その「手をつけられること」とは具体的に何でしょうか?
まだ行動する自信がないなら:本で「擬似的な」一歩を
「行動しなければ変われない」
そう分かっていても、自信をなくしているときは、その「行動」自体が大きな壁に感じられます。メンタルが落ち込んでいるとき、新しい一歩を踏み出すのは本当に難しいものです。
でも、「行動」にも色々なかたちがあります。
たとえば、本を読むこと。これは「擬似的な行動」と言えるかもしれません。実際の行動ではないぶん、失敗する心配もなく、気負わずに始められます。それでいて、思いがけず自己肯定感を高める一歩になることがあるのです。
ベストセラー作家で、経営コンサルタントの本田健氏も「本というフォーマットであれば、たくさんの人生を疑似体験できます」と指摘します。体験はリアルもバーチャルも、どちらも大事だというのです。*3
では具体的に、どんな本を読めばいいのかと言えば――実際のところジャンルは問いません。ビジネス書でも小説でも、失敗や挫折から立ち上がり、アイデアを駆使して危機を乗り越えていくストーリーであれば十分です。
その効果は明確です。
- 自信を失った状態から這い上がる道筋が見える
- 「自分にもできるかもしれない」という可能性に気づける
- 行動できない状態を脱するヒントが得られる
自信をなくし、「いますぐ行動」に躊躇しているならば、まずは本を開いて、挑戦の物語に入り込んでみてください。それは、メンタルを整える意外な近道になるかもしれません。
自信を取り戻す第二歩:「いまできること」を見つけるノート術
行動の第一歩として本を読むことをご紹介しましたが、次は実際の小さな一歩を踏み出してみましょう。とはいえ「すぐに手をつけられる、小さなこと」を考えようとしても、意外と具体的なアイデアは浮かびにくいものです。
そこで筆者が試してみたのが、認知行動療法士の丸山久美子氏が提案する「自信を取り戻すための3つの質問」です。*4
1. 「本当の自分はどうなりたい?」
2. 「現実はどうなっている?」
3. 「じゃあどうする?」
この質問に答えるかたちで、まずは大枠を考えてみました。
「本当の自分はどうなりたい?」という問いに対して、「もっと楽しく仕事に取り組みたい」と答えるような具合です。
次に「現実はどうなっている?」と問いかけてみると、シンプルで重要なこと気づきました。
仕事の楽しさを妨げている要因として、「デスクまわりがゴチャゴチャしている」「必要な道具がすぐに見つからない」「整理してもすぐ散らかってしまう」「殺風景で気分が下がる」といった、身近な環境の問題が浮かび上がってきたのです。
そして最後の「じゃあどうする?」では、具体的な行動のアイデアが次々と湧いてきました。
- 一時置きBOXを設置する
- モノを放置しやすい場所に道具入れを置く
- 使ったら3秒以内に元の場所へ戻す
- ワクワクする文具を使う
この「問いかけ」と「答え」を通じて、自己肯定感を高められそうな具体的なアクションが見えてきました。
そこでまず、「ワクワクする文具を使う」という、最も手をつけやすいアイデアから実践することに。以前から気になっていた Flying Tiger Copenhagen の「草のペン立て」を購入してみたのです。
さっそく机に置いてみると──疲れを覚えてPCの画面から目を離した瞬間、みずみずしい緑色の草原からペンがにょきにょき生えているユーモラスな姿が目に入り、思わず心が和みました。
たったひとつの小物を置いただけなのに、不満を抱えていたデスクまわりが、少しずつお気に入りの空間に変わっていきました。「草のペン立て」を見るたびに行動した自分をほめたい気持ちになり、「やればできるじゃない」と自己肯定感が高まり、そうやって自分のなかで満足感が広がったからです。
「やってみる」というのは、ほんのわずか1ミリの行動でいいのかもしれません。
このように、ノートに書き出すことで「いまできること」が見つかり、その小さな実践が、確実に自信を取り戻すきっかけとなりました。メンタルが落ち込んでいるときこそ、まずはノートを開いて「本当の自分はどうなりたい?」と問いかけてみましょう。そこから具体的な小さな一歩が見えてくるはずです。
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自信を取り戻すためには「行動」が必要不可欠です。しかし、自信をなくしているときほど、その一歩を踏み出すのは難しいものです。
この記事でご紹介した「本を読んで擬似的な行動を始める」「いまできることをノートに書き出してみる」というふたつの方法は、特別な準備や技術は必要ありません。気負わずに始められる小さな一歩だからこそ、メンタルが落ち込んでいるときでも実践しやすいはずです。
そして、その小さな一歩が、きっとあなたの自己肯定感を高める確かな一歩となるはずです。
自信×書き出す手法は、別記事でも紹介しています。ご興味あるかたは是非。
*1: note|自信があるから行動するのではなく、行動するから自信がつく
*2: イントランスHRMソリューションズ|できることからやって、自信をつける
*3: ダイヤモンド・オンライン|「何も決断しない、行動しないこと」が、いちばんのリスク
*4: リクナビNEXT|転職で自信喪失してしまったときの対処法
上川万葉
法学部を卒業後、大学院でヨーロッパ近現代史を研究。ドイツ語・チェコ語の学習経験がある。司書と学芸員の資格をもち、大学図書館で10年以上勤務した。特にリサーチや書籍紹介を得意としており、勉強法や働き方にまつわる記事を多く執筆している。