2024年10月から12月までの期間、竹内アンナが3rdアルバム『DRAMAS』とともに3ピース編成で全国を巡った『THE BEST DRAMAS TOUR』。その最終公演の模様をレポートする。
ツアーを締め括る自身初のZepp Shinjukuワンマンは、『DRAMAS』収録曲の『BREAK MY CASE』で颯爽と始まった。森光奏太(Ba&Cho/dawgss)と松浦千昇(Dr/Yukino & Glanax、賽、NAGAN SERVER and DANCEMBLE、SHAG)という同世代の屈強なリズム隊を両サイドに敷いた布陣の中、センターに立つ竹内アンナ(Vo&Gt)が赤のエレキギター=Gibson ES-335を携え、のっけから活き活きと躍動する姿が印象的。各地で積み上げてきたものがナチュラルに伝わる、息の合ったバンドサウンド、ファンキーかつ骨太なグルーヴも痛快だ。
「踊れますか?東京!」と竹内が呼びかけ、クリスマスシーズンのキラキラに重ねられるような心弾む『THANK ME』、ハッピーなエナジーがいっそう加速する『Bye Bye, Hello』をテンポよく繰り出すと、フロアは早くも熱気で大いに沸き立つ。7月に開催したアーリーベストライブでセットリストに入らなかったナンバーを、序盤の陽が当たるポイントで聴かせてくれるのが嬉しい。
あわせて読みたい
12月7日に行なわれた上海でのイベントを含めて10ヵ所を回ることができたと話す竹内は、「アルバム『DRAMAS』からはもちろん、今までの曲も網羅した内容でお届けします。初めて来てくれた人もいつも来てくれている人もおるやろうけど、そういう枠とか境界線を取っ払えるのがライブなので、あなたらしく、思いやりを持って楽しんでいってもらえたら」と、自らのポリシーを込めて挨拶。
続いては、この愛おしい時間を噛み締めるように、幻想的な照明を添えたスウィートなラブソング『ICE CREAM.』『最幸のふたり』が場を彩る。アルバムに収録のコラボ曲『Chili Chili Chillax』『WONDERLaND mAGIC』をシームレスに繋いだ『Chili Chili Wonder』以降も、白のレスポール=Les Paul Standard 50sでジャキジャキと鋭い音を轟かせたり、『サヨナラ』の最後をオフマイクでやるせなく歌ったりと、竹内はさまざまなアプローチでオーディエンスを魅了していく。
中盤では、ミディアムチューン『Mr. moonlight』『TOKYO NITE』をゆったりと披露。夜の孤独が滲む切ない歌唱とそれを引き立てるアコギの音色に加え、洒脱なベースソロやブレイクの挿入など、落ち着いたトーンながら随所でスパイスが効いている3人のアンサンブルに、観る側はますます深くのめり込む。『RIDE ON WEEKEND』までの7曲を一気に聴かせた結果、ライブは理想的な盛り上がりを迎え、これぞツアーファイナルといったムードに。
「ちょっとー、めっちゃ最高じゃないですか!」と竹内も嬉しそうに語り、いい流れのまま、今回のツアーに向けて作ってきた新曲『デコレーション』へ。“愛したい 恋したい 噂されたい”のラインが耳に残る、欲望を無理に抑えたりせず、もっとピュアに生きようというメッセージを湛えたこの曲は、彼女のチャーミングな性格や視点が明るく際立っていて、普段の日常が鮮やかに色づくような気分へと誘ってくれた。
森光の軽快なベースリフから始まり、間奏でコール&レスポンスを決めた『YOU+ME=』のあとは、松浦の迫力満点なドラムソロが炸裂。そしてすぐさま「私と同じように、みんなもみんな自身の物語の主人公です。わかってますか?」という竹内の問いかけが重なって、アルバム表題曲の『DRAMAS』と疾走感あふれる『WILD & FREE』を、確固たる意志を持って強気にパフォーマンス。高速ラップも凛々しい畳みかけるボーカル、信じられないほど厚みがあるノリノリの3ピースサウンドに、場内はさらなる興奮の坩堝と化す。
クライマックスの『Free! Free! Free!』でも、揺るぎないアイデンティティをキリッと示す竹内。生きざまを映し出した熱いプレイに、デビュー7年目にしてまだまだ進化し続ける彼女の今が垣間見られた。こんなふうにライブができたら楽しいだろうなと感じさせる心地よい演奏で、そのクオリティはキャリアを経るごとにしっかり増している。
『I My Me Myself』では、森光のクールなスラップ弾きをきっかけに、松浦のパワフルな連打が滑り込んで火花を散らし、竹内も歪み豊かなキレッキレのギターソロで攻めるなど、3人が目の覚めるような掛け合いを展開。“どんなわたしもわたしなの”と肯定してくれる清々しい歌に乗せ、ここまで華麗なテクニックをアグレッシブに見せられたら、オーディエンスは全力のワイパーで応えるしかない。
「ありがとうございました。2024年最後のライブやったんですけど、ここにいるあなたとだからこそ作れた一日だったと思います!」と告げ、本編ラストは竹内の指針と言える『ALRIGHT』。英語詞を織り交ぜた爽やかな曲調、終盤もインパクトを放ったレスポールの響きが素敵な余韻を残す中、3人は笑顔でステージを去った。
「4年くらい前に家族を想って書いた曲があって、タイトルは私のおじいちゃんが庭先で育てていた花から取ったんです。今年の夏、おじいちゃんが亡くなっちゃって……“こんなに悲しいことってあるんや”となったけど、曲を歌い続けたら“ちゃんとその中で生きてるんや”“ずっとそばにいてくれるんや”と思えて、自分自身が音楽にすごく救われた瞬間でした」
アンコールで再登場した竹内は、そんな知られざる胸の内を明かし、アコギ弾き語りで『ペチュニアの花』を奥ゆかしく披露。まっすぐ伝わってくる言葉に浸りながら、コロナ禍の厳戒期に行なったライブでも、“明日また平凡な毎日が来ることが 当たり前じゃないこと 知ってても難しい”“あなたともっとずっと笑ってたい”と彼女が歌ってくれたことを思い出す。
「話すかどうか迷ったんですけど、シンガーソングライターとして自分の人生とか生きざまをいつも歌ってきたつもりやし、このツアーファイナルでちゃんと歌わせてもらいました。前に実家へ帰ったとき、ダメージジーンズを履いてたら、おじいちゃんに“なんでそんなに破れてるんや”とすごく言われたので、今日の衣装もアウトかセーフかわからないです(笑)。“大切に歌ったからOK!”としてくれてたらいいな」
その後は、森光と松浦に「2人とだったから、楽しんでできた」と感謝を述べ、今一度バンド形態で『生活』をジャジーに演奏。ファンとの再会を誓うように『あいたいわ』を弾き語ったダブルアンコールも力強く駆け抜け、『THE BEST DRAMAS TOUR』は大盛況のうちに幕を閉じた。
なお、竹内アンナは3月29日(土)にヒューリックホール東京でアコースティックワンマン公演『atELIER』を開催することが決定。幹葉(スピラ・スピカ)、竹内朱莉、佐藤まりあ(フィロソフィーのダンス)と、仲良しゲストの参加も発表されており、これまでにないライブが楽しめそうなので、ぜひチェックしてみてほしい。
取材・文:田山雄士
Photo by Kazushi Hamano
《SET LIST》
- 1.BREAK MY CASE
- 2.THANK ME
- 3.Bye Bye, Hello
- 4.ICE CREAM.
- 5.最幸のふたり
- 6.Chili Chili Wonder
- 7.サヨナラ
- 8.Mr. moonlight
- 9.TOKYO NITE
- 10.RIDE ON WEEKEND
- 11.デコレーション
- 12.YOU+ME=
- 13.DRAMAS
- 14.WILD & FREE
- 15.Free! Free! Free!
- 16.I My Me Myself
- 17.ALRIGHT
- <ENCORE 1>
- EN1.ペチュニアの花
- EN2.生活
- <ENCORE 2>
- EN3.あいたいわ
竹内アンナ
《ライブ情報》
ACOUSTIC LIVE -atELIER-
2025年3月29日(土) ヒューリックホール東京
開場16:00 / 開演17:00
ゲスト:幹葉(スピラ・スピカ) / 竹内朱莉 / 佐藤まりあ(フィロソフィーのダンス)
<チケット>
at TENDERチケット:8,000円 (終演後に竹内アンナの生歌演奏+お見送り)
指定席一般:6,500円
指定席学割:5,000円
ファンクラブ先行受付中 https://smam.jp/s/sma01/artist/2103
一般発売日 2025年2月15日(土)
問 HOT STUFF 050-5211-6077