コメント: 補足 (スコア 5, 参考になる) 4
ここで「海面の状況」と言われているのは、「海面高度」のことです。海面高度の定義も文脈依存なのですが、ここではジオイドのことだと思います。ひらたく言えば、大気と熱・淡水・運動量のやりとりが無い単なる水たまりになった海の表面の形です。実際の海洋は、暖められたり雨が降って海水の密度が下がる(すなわち膨張する)と海面高度は上昇しますし、冷えたり蒸発が増えると海面高度は下がります。さらに海流があると地衡流バランスによって海面高度が変化します。今回はその変動を取り除いたジオイドの部分を推定しています。海の上のジオイドを求めるのはなかなか難しかったのですがTOPEX/ポセイドンに代表される海面高度計を搭載した人工衛星が 1990 年頃から上がるようになってだいぶ分かるようになってきました。最近では重力異常を二つの人工衛星の間の微細な距離の変動から推定するGRACEの活躍によって、氷床の融解や数年スケールの海面高度の変動が観測されるようになってきました。
今回の研究はジオイドを観測するのに、海上風の計測など別な目的で打ち上げられる衛星と GSP 衛星を用いてしまおうというのが新しいところだと思います。CYGNSS は 2016 年 10 月打ち上げ予定です。今回はTechDemoSat-1という技術開発衛星を用いたそうです。
原論文 をななめ読みしてみたのですが、現在よく使われているジオイドモデルDTU-10との二乗平均誤差が北西太平洋で 7.4 m だそうです。ジオイド高さの空間変動は数十メートルで温暖化による海面上昇が年数ミリメートルであることを考えるとちょっとすぐ研究に使えるというデータではなさそうです。ただ海面高度は数秒オーダーの砕波から数千年スケールのGIA までさまざまは変動がありますからデータ数は多ければ多いほど有り難いです。人工衛星は我々が寝ている間もせっせとデータを集めてくれるのでこのような技術が増えるとよいとおもいます。
# 世界的に成果!成果!成果!な風潮のでこのように premature な技術でもとにかくプレスリリース出しとけってのはあったんだろうなと想像しますが。