サッカー日本代表2030年のメンバー予想 後編 サッカー日本代表の5年後のメンバーを大予想。2030年ワールドカップはどんな顔ぶれになっているだろうか。残っている選手は? 台頭するべき選手は? 足りないポジションは? 代表チームの未来は順調…
サッカー日本代表2030年のメンバー予想 後編
サッカー日本代表の5年後のメンバーを大予想。2030年ワールドカップはどんな顔ぶれになっているだろうか。残っている選手は? 台頭するべき選手は? 足りないポジションは? 代表チームの未来は順調か、識者に考察してもらった。
前編「2030年は世代交代が進む? 識者が予想した日本代表メンバー」>>
【選手たちの欧州活躍の流れは5年後も加速しているか】
杉山茂樹(スポーツライター)
FW/塩貝健人
MF/濱﨑健斗(中村敬斗)、鈴木唯人(佐野航大)、久保建英
MF/藤田譲瑠チマ(田中碧)、佐野海舟(中島洋太朗)
DF/伊藤洋輝(新保海鈴)、チェイス・アンリ、高井幸大、関根大輝
GK/鈴木彩艶
4年前、マジョルカでプレーしていた久保建英(レアル・ソシエダ)の現在の姿はある程度、想像できた。ブライトンからユニオン・サンジロワーズにレンタルされていた三笘薫(ブライトン)の場合は、それより難易度が高かった。
それをはるかに凌駕したのが、シュツットガルトでプレーしていた遠藤航だ。これぞ二階級特進。リバプールでプレーすることになるとは想像のはるか上を行った。当時シュツットガルトにいた伊藤洋輝しかり。バイエルンに移籍し、チャンピオンズリーガーに昇格しようとは。
一方、アーセナルに移籍した冨安健洋が故障を繰り返していることは、悪い意味で想定外だった。復帰を祈るばかりであるが、全体的には朗報が大きく勝った。選手の所属先が格段に上等になった。日本代表より、代表級選手個々が右肩上がりであることにひどく驚かされた4年だった。
この流れは向こう4年も続くのか。さらに加速するのか。減退するのか。加速するならば代表チームの顔ぶれも大幅に入れ替わるだろう。ちなみに2018年ロシアW杯から2022年カタールW杯の実質4年半の間に、残ったメンバーは6人。2002年カタールW杯から、先のサウジアラビア戦までの2年4か月の間では15人だ。
登録選手の数が異なり、また間隔に違いもあるので単純に比較することはできないが、この流れで推移すれば、カタールW杯のメンバーで2026年W杯に残る選手は10人いるかどうか。現状から5人入れ替わるわけだ。それが誰かを予想するのは簡単ではない。その4年後の2030年となると超難解だ。現在のメンバーで残る選手は、従来に照らせば数人。6〜8人といったところか。スタメンは半分以上入れ替わるだろう。
現在のスタメン候補で残る選手をたとえば4人とすれば、その一番手は2030年W杯を29歳で迎える久保となる。続いて25歳で迎える高井幸大(川崎フロンターレ)。今季のチャンピオンズリーグで唯一ベスト8に進んだ伊藤洋輝も有力だ。
33歳で迎える三笘薫が実力者として残るか。現在、その三笘を抜けずにいる中村敬斗(スタッド・ランス)も微妙な選手だ。左右のウイングが強力でないと期待は抱けない。中村同様、現在スタメンを取りきれておらず、31歳で迎える田中碧(リーズ)も微妙だ。代表に定着しつつあるが出番が回ってこない藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)は残れるのではないか。それにGKの鈴木彩艶(パルマ)を加えたあたりまでが、年齢的な要素を含めて、可能性を感じる選手とみる。
若手でカギを握るのは、代表ではまだ底が割れていない鈴木唯人(ブレンビー)。センターフォワード(CF)でもトップ下でもプレーできるが、探さなければならないのは本格的なストライカーだ。塩貝健人(NEC)はどうなのか。成績はCFしだいと言っても言いすぎではない。MFでは佐野海舟(マインツ)、航大(NEC)の兄弟、さらに2030年W杯を23歳で迎える濱﨑健斗(ヴィッセル神戸)がベルナルド・シルバ的で面白そうに見える。
【未知のスーパータレントに台頭していてほしい】
西部謙司(サッカーライター)
FW/北野颯太(三笘薫)、福田師王(鈴木章斗)
MF/中村敬斗(斉藤光毅)、久保建英(三戸舜介)
MF/藤田譲瑠チマ(松木玖生)、佐野海舟
DF/伊藤洋輝、高井幸大、チェイス・アンリ、菅原由勢
GK/鈴木彩艶
2030年に30歳になる2000年生まれで線を引いて考えてみると、現在の代表選手で2000年以降生まれは鈴木彩艶、谷晃生(FC町田ゼルビア)、高井幸大、菅原由勢(サウサンプトン)、瀬古歩夢(グラスホッパー)、関根大輝、中村敬斗(以上スタッド・ランス)、久保建英、藤田譲瑠チマの9人がいる。ただ2030年には平均29歳になってしまうので、もう少し若い選手が必要だろう。
Jリーグでプレーしている最も若い世代は中島洋太朗(サンフレッチェ広島)、名和田我空(ガンバ大阪)の2006年生まれ。彼らでも2030年には24歳だが、それ以下となると判断が難しいのでここまでを対象に考えてみよう。
ただし欧州や南米などを見ても、18歳や19歳で代表デビューする選手は珍しくない。もしW杯優勝を狙うなら、10代で代表のレギュラーを獲るようなスーパータレントがおそらく必要で、あと5年の間にそうした選手が現れることを期待したい。そろそろJ1で大活躍して、2年後くらいにはプレミアリーグでレギュラーを獲ってもらわないと2030年には間に合わないタイミングかもしれない。
GKは鈴木彩艶。2030年は28歳。センターバックは高井幸大、チェイス・アンリ(シュツットガルト)の26歳コンビ。右は菅原由勢、左は31歳になる伊藤洋輝。ボランチにはパリ五輪で活躍した藤田譲瑠チマと現在ブンデスリーガでバリバリやっている佐野海舟。右は29歳で脂が乗りきっている久保建英、左は30歳になっている中村敬斗。2トップは福田師王(ボルシアMG)、北野颯太(セレッソ大阪)。
リザーブはGK谷晃生、DF鈴木淳之介(湘南ベルマーレ)、瀬古歩夢、関根大輝、東俊希(サンフレッチェ広島)。MF松木玖生(ギョズテペ)、中島洋太朗、斉藤光毅(QPR)、三戸舜介(スパルタ)。FW鈴木章斗(湘南ベルマーレ)、三笘薫。
33歳の三笘はクリスティアーノ・ロナウドのようにウイングからゴールゲッターに転身している想定である。三笘が無理そうなら名和田我空。あるいは20代後半に入っている鈴木唯人。
交代は基本的に負傷以外でGK、DFは代えたくないのでMFから前のポジションで想定すると、疲弊しやすい両サイドは斉藤、三戸の交代出場になるが、場合によってはスーパーサブ的に俵積田晃太(FC東京)、望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)を投入。得点の切り札として鈴木章、三笘。マルチの松木は常にスタンバイさせておきたい。この7人のうち5人が交代出場する。
ただ、正直このメンバーでW杯優勝は難しい気はするので、やはりひとりないしふたりの未知のスーパータレントが台頭していてほしいところだ。
【左利きの守備選手の台頭が望まれる】
小宮良之(スポーツライター)
FW/中村敬斗(三笘薫)、上田綺世(塩貝健人)、久保建英
MF/中島洋太朗(鎌田大地)、田中碧、佐野海舟(田中聡)
DF/新保海鈴、板倉滉、高井幸大、関根大輝
GK/小久保玲央ブライアン(鈴木彩艶)
率直に言って、5年後の代表は想像がつかない。もし想像がつくような代表なら、それは停滞を意味する。アップデートのない集団は衰退の一途をたどる。5年後には"この選手がまさか"という選手も台頭してこないと厳しい時代を迎えるはずで......。
ただ、主軸は残るべきだし、残るはずだ。
上田綺世(フェイエノールト)、久保建英、板倉滉(ボルシアMG)の3人は、30歳前後で大会を迎えることができる。現時点でも、各ポジションで個性を発揮。プレースタイルはやや変化しても、欠かせない存在だろう。
上田は31歳になっているが、日本人FWが一番熟成する年齢で(Jリーグで日本人FWはほとんどが30代に入って初の得点王。中山雅史、佐藤寿人、大久保嘉人、小林悠、大迫勇也など)、円熟の域か。オランダ挑戦の塩貝健人の猛追も期待したい。久保はややスプリントが落ちても、トップ下でプレーメイクにもかかわる役割も期待できるし、絶対的なエースか。板倉はディフェンスリーダーになることが望まれる。バーレーン戦はやや低調だったが......。
三笘薫は33歳で機動力を考えると厳しい。ただ、極限まで自分と向き合う選手だけに、5年後も自らの生かし方を探し当てている可能性もある。最近はゴールゲッターとして開花しているだけに......。
ただ、中村敬斗が定位置を奪う成長こそ、代表を強力にする。彼の得点力の高さは本物。欧州挑戦でもうひとつレベルアップできたら......。
遠藤航、守田英正(スポルティング)は現時点で絶対的存在だが、ふたりとも35歳以上で、彼らを凌駕する選手が出てこないことは弱体化を意味する。その点、田中碧はバックアッパー的存在から殻を破ってほしいし、佐野は欧米の選手と真っ向から戦える力量を持つ。田中聡はJリーグのMFでは比類なきクレバーさで、ポテンシャルは高い。
そして最大の注目は中島洋太朗で、破格のビジョンやスキルを持つ。現時点で、底が見えない。「時間を操る」という域の選手で、鎌田大地(クリスタル・パレス)のエレガントな才能とも通じ、彼だけの間合いがある。攻守両面で中心になっていてもおかしくはない。
パリ五輪のメンバーでは、関根大輝、高井幸大、小久保玲央ブライアン(シント=トロイデン)の3人に底上げが求められる。関根のスケール感は、フランス挑戦で触発されるだろう。高井のセンスは歴代センターバックでもトップで、これから大化けできるか。小久保はパリ五輪出場の殊勲者で、海外で積み上げてきた感覚はアドバンテージ。鈴木彩艶への期待の声は内外で大きいが、ワールドクラスのプレーを見せる一方、ユースレベルのポカが今も消えず......。
最後に本命不在が左サイドバックだろう。現時点でボールプレーを重んじた場合、左足のキックで起点になれそうなのは新保海鈴(横浜FC)か。昨シーズンはJ2のベストサイドバックで、J1で揉まれたら面白い。日本は左利きの守備のポジションの選手が圧倒的に足りず、台頭が望まれる。
いずれにせよ、無名に近い選手の台頭こそ、日本サッカーが強くなるために必要条件だ。