デブリの試験的取り出し成功=事故後初、廃炉向け一歩―東電福島第1原発
東京電力は7日、福島第1原発事故で溶け落ちた2号機の核燃料(デブリ)の試験的取り出し作業を完了したと発表した。回収装置が採取した5ミリ大のデブリの放射線量を測定し、作業に問題ないことを確認した上で、運搬用の専用容器に収納。約2カ月で一連の作業を終えた。
2011年の事故後、格納容器内からデブリを回収したのは初めてで、廃炉に向けた工程は新たな段階に入った。今後、茨城県大洗町や東海村にある日本原子力研究開発機構などの4施設で成分などを分析し、本格的な取り出しに向けた研究に役立てる。
東電によると、7日午前9時ごろから作業を開始し、約2時間半余りかけてデブリの入った専用容器をコンテナに収納した。今後、重さや詳細な放射線量などを測定した上で分析施設に運ぶ。ただ、テロ対策を理由に詳細は公表しないという。
東電の担当者は7日午後の記者会見で「地域の皆さまへご心配を掛けることのないよう、安全を最優先に取り組みたい」と述べた。
試験的取り出し作業は9月に着手した。「テレスコ式」と呼ばれる釣りざお状の回収装置を遠隔操作で原子炉の格納容器内に投入し、爪のような器具を下ろして先月30日に底にたまったデブリを採取。今月2日に回収装置ごと格納容器の外に移動させていた。
同原発1~3号機内には、事故により溶け落ちた燃料と原子炉内の構造物が混ざり合って固まったデブリが約880トンあると推定されている。放射線量が極めて高く、詳しい状態や性質も分かっていないため、取り出しは廃炉作業の中でも「最難関」とされる。
作業は当初、21年に実施する計画だったが、海外での装置開発や準備作業などで約3年遅れた。今年8月の作業開始直前にはパイプの並び順にミスが発覚し、9月に着手した後もカメラの不具合で中断するなどした。
政府と東電が策定した工程表によると、試験的取り出しに着手したことで廃炉に向けた工程は最終盤の「第3期」に入った。51年までの廃炉完了を目標としている。
◇デブリ試験的取り出しの経緯
2011年3月 東京電力福島第1原発事故が発生
12月 政府と東電が廃炉に向けた工程表策定
17年8月 デブリ取り出しの作業計画を決定
20年12月 試験的取り出し着手について1年程度の延期発表
22年8月 2度目の延期発表
23年10月 格納容器につながるふたを開放
24年1月 3度目の延期発表
8月22日 作業着手直前にパイプの並び順ミスが判明し中断
9月10日 作業に着手
17日 カメラ不具合で中断
10月18日 カメラを交換完了
28日 作業再開
30日 デブリ採取に成功
11月2日 回収装置ごと格納容器の外に
7日 作業完了
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