期待高まるローカル5G
〔1〕ローカル5G導入の最新版が発行
日本における5GのSA(スタンドアロン)サービスの開始を背景に、ローカル5Gの普及が期待されている。ここで簡単に、ローカル5Gについて概観してみよう。
5G/ローカル5Gの社会実装に向けて、研究開発から普及・促進を展開する、5GMF(第5世代モバイル推進フォーラム)注2は、2022年3月に、『ローカル5G導入支援ガイドブック2.0版』(第1版は2020年5月に発行)を発行した。
これによれば、ローカル5Gとは、「携帯電話事業者による全国向けの5G(第5世代移動通信システム)とは別に、地域のニーズや産業分野ごとの個別ニーズに対して、それぞれのセキュリティレベルや通信網構成をはじめとした目的に特化した、高度な無線通信システムの利用環境を柔軟に構築して利用できるもの」となっている。
〔2〕企業網はローカル5GかWi-Fi6か
現在、企業には、パブリックな5Gや4G LTEの他に、企業ネットワークとしてWi-Fi(無線LAN)が広く普及しており、企業ユーザーは、「ローカル5G」と最新の第6世代の「Wi-Fi6」(9.6Gbps)を比較・検討するケースが増えてきた。
表1に、5Gとローカル5G、ローカル5GとWi-Fi6の比較を示す。
表1 企業で活躍する「5G・ローカル5G・Wi-Fi6」の比較
Wi-Fi6:ワイファイシックス。モバイル通信規格の第3世代(3G:WCDMA)、第4世代(4G:LTE)、第5世代〔5G:NR(New Radio)〕という呼称を模して、Wi-Fiアライアンスは、Wi-Fiの名称について、第4世代Wi-FiをWi-Fi 4(802.11n)、第5世代Wi-FiをWi-Fi 5(802.11ac)、第6世代Wi-FiをWi-Fi 6(802.11ax)と命名(2019年以降の認定製品に付与)し、世代ごとに理解しやすい名称とした(第1世代〜第3世代のWi-Fiについては世代別の呼称はしない)。
APN:Access Point Name、アクセスポイント名。モバイル端末でデータ通信を行う場合に、接続先の通信事業者やサービスを指定するための識別名。通常はモバイル端末やSIMカードに事前に格納されているものを使うケースが多い
出所 5GMF(第5世代モバイル推進フォーラム)、「ローカル5G導入支援ガイドブック」、2022年3月31日の6ページと8ページ
〔3〕大幅に拡張されたローカル5Gの周波数
現在、ローカル5Gの周波数には、図1および表2に示すように、①Sub-6(6GHz以下)の4.7GHz帯と、②ミリ波の28GHz帯に、合計1,200MHz幅もの周波数が割り当てられ、ローカル5G普及の推進力となってきている。
図1 国内のパブリック5Gとローカル5Gの周波数割当状況(NECブースの展示より):「Sub-6」と「ミリ波」周波数帯
出所 編集部撮影
表2 ローカル5G用の周波数帯域(2022年6月現在)と共用条件/ローカル5Gの方式
共用:その周波数を二者以上が共同して使用すること。電波は有限希少な資源であるため、異なる無線システム(例:衛星通信システムと移動通信システム)で周波数を共用したり、同一の無線システムで多数の利用者が周波数を共用したりして利用している。
TDD:Time Division Duplex、時分割複信。無線通信では同時刻に同一の周波数で双方向に通信できない。このため、TDDの場合は、使用する周波数帯域を時間軸方向に細かく分割し、短時間内で交互に切り替えて送信と受信を繰り返す。これによって、擬似的な双方向通信を実現する。これに対し、1つの周波数帯域を送信(上り)用と受信(下り)用の2つの帯域に分割して、同時に送受信を行う方式を「FDD」(Frequency Division Duplex、周波数分割複信)という。
出所 5GMF(第5世代モバイル推進フォーラム)「ローカル5G導入支援ガイドブック」、(2022年3月31日)等をもとに編集部で作成
ローカル5G導入時の参考のため、表3に、ローカル5Gの基地局および端末(特定無線局)の電波利用料を示す。
表3 ローカル5Gの基地局および端末(特定無線局)の電波利用料
包括免許:移動体通信事業において、スマホなどの無線局(無線端末)が個別に免許を受けるのではなく、1つの免許で複数の同一タイプの無線局を開設できる制度のこと。包括免許制度が採用される以前は、スマホや自動車電話などのような移動端末の無線局を開設するたびに個別に免許が必要だった。
出所 5GMF(第5世代モバイル推進フォーラム)「ローカル5G導入支援ガイドブック」、(2022年3月31日)等をもとに編集部で作成