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ターゲットアカウントとの接点を「つくる」「広げる」「深める」アクション|ABM 入門と実践ガイド第5回

法人営業
コンサルタント
政次 貴弘
コンサルタント
名生和史

大手企業の新規開拓・既存顧客の取引拡大に有効な戦略として、ABM(Account Based Marketing[アカウント・ベースド・マーケティング])が注目されています。

そこで才流では、全6回にわたり『ABM入門と実践ガイド』として、ABMの基礎知識から実践方法までを体系的に解説します。

第5回は、ターゲットアカウントからのリード獲得や面談機会、商談創出を目的とするアクション(施策)についてです。

マーケティングと営業、それぞれのアクション例を「ターゲットアカウントとの接点をつくり、広げ、深める」の観点から紹介します。

才流では、「ABMに興味があるが、自社に適しているかわからない」「ABMを始めているが、成果が見られない」とお困りの企業さまを支援しています。才流のABMコンサルティングは、マーケティングから営業までを一貫して支援できる点が強みです。ABMのお悩みや不明点がある場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。⇒サービス紹介資料のダウンロードはこちら

ABMのアクションは3つに分類できる

ABMのアクションでは、「ターゲットアカウントに対する自社の認知率・貢献度を高めるために何をするか?」を考えます。

『ターゲットアカウントとの接点を「つくる」「広げる」「深める」』の3つに分けて考えると、イメージがしやすいです。

注意したいのは、接点づくりのアクションだけに力を入れてしまうこと。せっかくつくったターゲットアカウントとの接点を、「広げる」「深める」まで考えられていないケースが多いです。

ABMがうまくいかない企業は、短期的な成果を追求するあまり、すぐに商談をしようとしがちです。しかし、ABMでいきなり商談はできません。アウトバウンドからアポイントを取り、時間をかけて膨大な数の面談を重ね、ようやく商談や提案の機会へつながっていくのです。

面談とは、顧客と対話するすべての場・機会のこと。面談から、どのようにして商談・提案へつなげていくかを考えることが、ABMの営業の仕事です。アカウントプランをもとにターゲットアカウントとの関係性を把握し、「今、どんなアクションを実施すべきか」を明確にしましょう。

接点をつくるアクション

では、ABMのマーケティング・営業活動のアクション例を紹介します。

「接点をつくる」アクションとは、自社とまったく接点がないアカウントを開拓するときに実施するアクションです。アウトバウンドのアプローチが中心となります。」

接点をつくるアクションの一例

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接点をつくるアクションでは礼儀を大切に

接点をつくるアクションは、ほとんどがアウトバウンドです。

アプローチを受けるアカウントの担当者は、自社のことをまったく知らない状態であることを前提に、敬意を持って接しましょう

たとえば、LinkedInやFacebookからの一方的なアクションは、先方にとって合理的な理由がない限り危険です。まずは、相手を知る第三者を介してアプローチするなど、ワンクッション挟む方法が適切です。

ABMでは、ターゲットアカウントを絞っているため、相手に一度ネガティブな印象を与えてしまうと、リカバリーが大変です。

とくに大手企業は、組織規模が大きい分、よくも悪くも社内で風評が広がりやすいため、丁寧なコミュニケーションを心がけます。「礼儀を欠いたアクションをしてはいけない」と意識してください。

接点を広げるアクション

ターゲットアカウントとの接点がつくれたら、接点を広げるアクションを実施しましょう。ターゲットアカウント内に、面識のある人や部署を増やしていくことが目的です。

接点を広げるアクションでは、コンテンツの質が重要です。ターゲットアカウントの課題を解決することを意識し、カスタマイズしたコンテンツをつくりましょう。

接点を広げるアクションの一例

接点を深めるアクション

最後は、接点を深めるアクションです。

ターゲットアカウントとの関係性を、より深めることを目的とします。カウンターやキーパーソンの興味関心や課題をよく知ることが大切です。

具体的には、キーパーソンと会う頻度を増やすほか、完全招待制のクローズドイベントの開催、ゴルフコンペや自社がスポンサードするスポーツイベントへの招待などが挙げられます。

接点を深めるアクションに大切なのは、ギブアンドテイクのギブの精神です。提案したい商品・サービスに直接関係がないことでも、自社がターゲットアカウントに貢献できることがあれば、協力しましょう。

たとえば、「IT部で、○○というサービスの導入を検討している。情報収集のために、貴社のIT部の方とつないでもらえませんか」のような相談も快く受けてください。

また、キーパーソンとの定期接触ができているかを可視化するために、CRMの整備も行いましょう。さらにSFAを使うと、一定期間疎遠になっているキーパーソンの情報をアラートとして知らせることもできます。

接点を深めるアクションの一例

期待値を超える情報提供が信頼関係をつくる

ターゲットアカウントとの接点は貴重であり、最大限にいかさなければなりません。とくに、初回面談は非常に重要です。

ABMでは、アウトバウンドによる初回面談が多くなるでしょう。ターゲットアカウントの担当者目線では、会社も人も“不信”の状態からのスタートです

そのような状況で、自社のいいたいことばかりを話しても、相手は耳を傾けてくれません。ヒアリングを試みても、十分な回答は得られないでしょう。いくら、綿密なセールスシナリオやヒアリングシートがあっても、信頼関係がない相手に、顧客は重要な情報を答えてはくれません。

相手の困りごとや課題感などは、もってのほかです。向こうから「会いたい」といってきた初回面談で、あなたは深い悩みごとを相談するでしょうか?恐らく、そうはしないはずです。

新規のアカウント開拓によくある課題

初回面談のゴールは、会社と人の両方に対するネガティブな印象を小さくし、ポジティブな印象がそれを上回る状態をつくり出すことです。

相手から、「ちゃんと考えて準備してきてくれているな」「知見が深いな。また話を聞きたいな」と思ってもらうためには、相手の期待値を超える情報提供が必要不可欠となってきます。

信頼関係が生まれるメカニズムを理解する

では、どのようにして信頼関係を築くとよいのでしょうか。

まずは、信頼関係のメカニズムを理解しましょう。顧客の判断は、営業パーソンから受け取るさまざまな情報や印象の影響を受けています。

たとえば、服装の清潔さや表情からは、無意識のうちに「優秀そうだ」「少しだらしないな」などを判断します。また、スピーディな返信や顧客個人が持つ価値観への共感は、「信頼できる」といった感情的な判断に影響を与えています。

営業に求められるのは、「自社に(自分に)有益な情報を提供してくれそう」「課題解決に役立ちそう」という、顧客の合理的な判断に影響を与える姿勢や関わりです。

合理的判断には、高い顧客解像度やネクストアクションの提示、そして情報提供が関与します。とくに、大手企業の開拓では、情報提供が大きく成否を分けるのです。

お客さまとの関係構築に近道はない

ターゲットアカウントのカウンターやキーパーソンと接点をつくり、役員層へ早く提案を進めたい──。

ABMは成果が出るまでに時間がかかると理解をしていても、焦る気持ちが出てくることもあるでしょう。一足飛びに、役員との面談が獲得できたらと思うかもしれません。しかし、いきなり役員の方と会って、「また会いたい」と思っていただけるような情報を提供できるでしょうか。

さらに、日本の大手企業の場合、意思決定のプロセスがボトムアップであることが多いです。役員層に対して稟議書を書くのは現場の人たち。現場との信頼関係なしに、提案や受注後のカスタマーサクセスは成り立ちません

また、役員層は現場の思いを知る機会が限られています。役員との面談の際は、それまでのヒアリングで得た現場の声を伝えたり、現場の意見を踏まえた仮説提示ができたりと、信頼構築に効果的です。焦らず、丁寧なコミュニケーションを重ねていきましょう。

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ターゲットアカウントのリードは全リードの30%を目指す

次に、ABMのアクションにおける、マーケティングの関わりを解説します。

ABMでは、「ターゲットアカウントに対する自社の認知率・貢献度を高める」ために何をするべきかを考えます。マーケティングも、ターゲットアカウントからのリードや接点づくりに注力しましょう。

しかし、大量のリード獲得を目的としたLBM(リード・ベースド・マーケティング)に慣れていると、施策の切り替えが難しいものです。

広告出稿を例に考えてみましょう。

LBMでは、リード獲得単価を抑えつつ、大量のリードを獲得できる出稿計画を考えます。一定のターゲティングを行いつつ、できるだけ多くの潜在顧客と接点をつくることが優先されます。

一方、ABMでは、ターゲットアカウントからのリードを獲得することに重点を置きます。そのため、リード獲得単価が多少高くなったとしても、ターゲットアカウントがよく接触するメディアへ戦略的に出稿します。

このように、大量のリード獲得を前提としたLBMと、ターゲットアカウントのリード獲得を目的とするABMでは、施策の考え方を変えなくてはならないのです。

ABMにおける広告出稿は、まずターゲットアカウントがどのような媒体から情報を得ているか調査します。仮に業界専門誌が重要な接点であれば、業界のインフルエンサーとの記事広告が考えられます。業界団体イベントへの出席が多ければ、イベントのスポンサードもよいでしょう。

ABMを実践するにもかかわらず、マーケティングのKPIがリード獲得単価やリード数のままでは、従来の量を求め効率化を優先する施策と変わりません。

ターゲットアカウントからのリード数やMQL(Marketing Qualified Lead)からの商談化率、受注率など、マーケティングのKPIを見直てください。ターゲットアカウントから獲得したリードの割合は、全リード数の約30%を目指すことをおすすめします。

ターゲットアカウントが興味を持つ施策・コンテンツづくり

ABMに限った話ではありませんが、コンテンツには自社が伝えたい情報ではなく、顧客が知りたい情報を盛り込むことが大切です。

ターゲットアカウントが明確であるABMのコンテンツなら、なおさらのこと。ターゲットアカウントが知りたい、または重視する情報をあらかじめ盛り込みましょう。

1つ事例を紹介します。才流では、大手企業向けの提案書に、大手企業が重視する情報をあらかじめ記載しています。この情報があると、顧客側の担当者は上司や他部署に対して、スムーズに説明や提案ができます。この取り組みにより、大手企業からの商談受注率は、施策を行う前の3倍になりました。

ABMにおいても、このような細やかな工夫がコンテンツに求められます。導入事例のように、顧客から聞かれるとわかっている情報は、あらかじめコンテンツとして用意し、提供しましょう。時間の効率化だけでなく、「自社を理解してくれている」という信頼の醸成にもつながります。

顧客理解を深めると、顧客が知りたい情報がわかってくる

マーケティングは、営業が効率的・効果的に動くための支援を行う

ABMのマーケティングでは、営業がより効率的・効果的に動くことができるような支援を行うことも、役割の1つです。

営業への支援をとおし、マーケティングの担当者自身も、顧客の解像度を上げ、コンテンツや情報提供にいかしましょう。面談や商談の場への同席がおすすめです。

マーケティングができる営業支援の一例

  • 企業調査レポート作成
  • ターゲットアカウントのニュース、異動情報などの収集・提供
  • SFA・CRM・MAなどのツールの整備
  • ABM関連ツールの検討
  • 各種データ(顧 客・リード情報など )のクレンジング
  • 行動分析による確度の高いリード、ユーザーの発見
  • 営業商談同行
  • 営業会議への参加
  • 各施策の費用対効果計測

成果・活用・導入。3つの事例を制作する

接点をつくる、広げる、深める、すべてのフェーズでニーズの高いコンテンツが事例です。 事例は、大きく次の 3 つに分けられます。

  1. 商品・サービスの利用による定量的な成果をまとめた「成果事例」
  2. 商品・サービスの活用と課題解決のプロセスをまとめた「活用事例」
  3. 商品・サービスの導入背景や導入のプロセスをまとめた「導入事例」

これらの事例は、「顧客へのインタビュー」「顧客からのコメント」「自社視点」の 3 つの切り口からつくることができますが、まずは導入事例を充実させましょう。

顧客にインタビューができない場合は、顧客名を伏せた事例「ユースケース」や「ケーススタディ」がおすすめです。

まだ事例が少ない場合は、導入実績として、商品・サービスの導入・利用社のロゴを掲載します。一目で見てわかるほか、サイトに掲載しやすいことがメリットです。顧客にロゴの掲載許可を取りましょう。

※関連記事:導入事例の作り方12のパターン【BtoB企業の事例で解説】


ABMのアクションを、よりくわしく説明した『ABM 入門と実践ガイドブック』をダウンロード配布しています。付録では、各アクションの効果の計測方法例や初期に設定する目標の例も紹介しました。ぜひ、参考にしてください。

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第6回では、ABMを適切に実践できているかを見るモニタリング(ABMの評価方法)を解説します。

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