12月のいま読んでる本もかなりおもしろいんだけどなー!と思いつつ、一年を見渡して印象深かった本を5冊あげてみます。
今週のお題「読んでよかった・書いてよかった2024」
百年と一日
人生最後の日に食べたい食事は?という定番の質問があるけど、もし人生最後の日に本を読むとしたら、こういう本を読んでいたいなあと思ったのだった。
しみじみと滋味深くて、心残りがあるとかないとか、そういったものを超越した世界へ旅立てそう。
一編一編が数ページなので、毎日少しずつ読むのにもおすすめです。
救出の距離
ここ数年、靄のなかに包まれて困惑しているような人を書いたような、ちょっと不穏な本に惹かれるのだが、それは自分が靄につつまれている気分で毎日生きているからだった。
装丁もたいそう凝っていてよい。表紙のさわりごこちが他の本とはちょっと違って、生き物みたいにしっとりしてる。だけどどんな生物に似ているかといえば、今までさわったことのない未知の存在の肌のようで。
自転しながら公転する
ちょうど2024年の年越しのときに読んでいた本。山本文緒さんの著書を読んだのはこれが初めてだったけど、すっかりハマって今年は5冊読んだ。次々読みたいけど、もう新刊が出ないと思うと読み切ってしまうのがもったいないような……
今までなんとなく敬遠していたのは、恋愛小説、とカテゴライズされる小説を苦手だと思いこんでいたから。だけどなぜ恋愛小説が苦手だったのかといえば、主人公の考えることが全てそれしか無くなってしまうのなら嫌だと思っていたから。
だけどこの小説は、恋愛がどうこう、というよりは、人生というものに否応なくべったりと張り付いてくるあらゆるものたちについて、書いているように思ったのだった。そういう地に足のついた現実感覚にひきこまれた。
この世にたやすい仕事はない
会社という奇妙な閉鎖空間で働いた経験があるからこそ、この小説の良さをニヤニヤしながら頷けるのだと思うと、いかなる経験も無駄ではないなと思いますね……。
淡々としているようでユーモアがあり、穏やかなようで切れ味鋭い一文が、すっと差し出される瞬間がある。次は何がくるかとわくわくする。好きです。
韓国文学の中心にあるもの
小説以外にも一冊。
わたしは翻訳小説を読んだ後、「訳者あとがき」や「解説」を読んでフムフムするのが好きなのですが、これは近年日本でも盛り上がりを見せる韓国文学を、横断的に解説したような本。
韓国文学を読む背景知識の補填、副読本という意味でも読んでよかったし、関連する小説のブックガイドというか、文芸批評としての面もかなりおもしろい。
斎藤真理子さんという翻訳者の方の、文学を読み解く底力みたいなものが、仕事量夥しい翻訳作業の背骨となって支えているのだなあとつくづく思った。
読んでよかった小説とかインパクトのあった小説、あれもこれもあるけど、全部語らねばならなくなってしまってこの記事の意味がなくなる……
読んだ本って「今年会って話した友達」みたいなもので、どれもこれも「あのときのあれ!」ってそれぞれに思い出がありますよね。