舞台脚本とゲーム制作に共通する「完成させること」の大事さ 『ネタバレが激しすぎるRPG』作者・みぬひのめの創作ポリシー

みぬひのめが語る「完成させること」の大事さ

 リアルサウンドテックの連載「ゲームクリエイターの創作ファイル」では、“ゲーム作り”にフォーカスしてクリエイターたちにインタビュー。その真髄に迫っていく。

 第6回には、フリーゲーム『ネタバレが激しすぎるRPG』作者の「KSBゲームス」ことみぬひのめ氏が登場。みぬひのめ氏は2020年7月にフリーゲーム配信サイト「ふりーむ!」で公開した『RPGツクールMV』製フリーゲーム『速すぎるRPG』を皮切りに、独創的なアイディアを特徴とする「すぎるRPG」と称されたシリーズを展開。その中でも2023年4月に公開された『ネタバレが激しすぎるRPG―最後の敵の正体は勇者の父―』は、登場人物の名前を筆頭にどこもかしこもネタバレだらけでありながら、感動的で心に残るストーリーで好評を博し、2024年には多くのゲーム配信者がプレイして大きな賑わいを見せた。

 そして、同年4月に「ネタバレが激しすぎるRPG」シリーズの次回作を作ることを目的にしたクラウドファンディングを「CAMPFIRE」で実施。目標額20万円のところ、最終的にその10倍以上に及ぶ243万6644円の支援が集まった。

 その後、次回作こと『ネタバレが激しすぎるRPG2―親友の真の姿は大魔王―』(以下、ネタバレが激しすぎるRPG2)は12月に完成を迎え、創作物総合マーケット「BOOTH」にて有料タイトルとしてリリースされた。また、前作は2023年末に『ネタバレが激しすぎる勇者物語~最後の敵の正体は勇者の父~』のタイトルで、『小説家になろう』および『カクヨム』においてみぬひのめ氏が自ら執筆して公開。2025年4月にはマックガーデンより書籍版が発売予定となっている。

 次回作の発表から発売までが1年もかからなかったように、みぬひのめ氏は作品を完成させるスピードがずば抜けている。それはこれまで作られてきた「すぎるRPG」シリーズにおいても顕著だ。それぞれのゲームの完成度も素晴らしく、直近の『ネタバレが激しすぎるRPG2』はストーリーはもちろん、バトルシステムに難易度、ボリューム面においても並々ならぬこだわりが注がれた作りとなっている。とりわけ計算高く構築されたストーリーの完成度は特筆すべきものがある。

 なぜ、続々と作品を完成させられるのか。実は本業は舞台脚本家であるというみぬひのめ氏に、創作の原点や自身の考えるゲーム作りの心構えなどについて伺った。(シェループ)

本当は2024年9月完成予定 現在の心境は「ひと安心」

――まずは『ネタバレが激しすぎるRPG2』の制作、お疲れ様でした。2024年12月に製品版が販売開始となって、配信の方も著名なVTuberさんがプレイされるなど盛り上がりを見せていますが、反響や完成を迎えて感じていることについて、お聞きできればと思います。

みぬひのめ:実を言いますと、もともとは9月中旬ごろの完成を予定していたんです。しかし、遅れに遅れて12月になってしまいまして……。ですので、完成したときは「出来上がってよかった……」と、ひと安心しました(笑)。

 発売後もいろいろな方々が遊んでくれていたり、YouTubeで配信していただいたりしているのですけど、これまでの自分の作品は時間が経ってから遊んでもらったり、配信が賑わうような感じだったんです。今回は発売後間もないころからそのようになっていまして、本当にありがたく思っております。

――前作の『ネタバレが激しすぎるRPG』も公開からある程度、時間が経ってから盛り上がりを見せました。

みぬひのめ:『ネタバレが激しすぎるRPG』は、2023年の4月にフリーゲームとして、配信サイトの「ふりーむ!」さんで公開したのですが、それから半年以上が経った2024年1月にゲーム実況者のキヨさんが配信してくださいまして。それを皮切りにVTuberさんなど、いろいろな方々がプレイされるようになりました。

――『ネタバレが激しすぎるRPG』はその名のとおり、ネタバレの激しいストーリー展開や登場人物の名前を始めとする設定を最大の特徴としています。このアイディアはどのようなきっかけから思いつき、発展していったのですか?

みぬひのめ:最初に思いついたときは、あまり細かい設定などは考えていなかったんです。まず「最後の敵である大魔王の正体は勇者の父親だ」のようなサブタイトルを付けよう、というのがありました。それで「勇者と大魔王がお互いのことを何も知らずに戦う、それってちょっと悲しいよね」というストーリーを考えていたんです。

 ただ、どこかのタイミングでそれを発展させると言いますか、ズラすことを思いつきまして。それで大魔王の正体はたしかに勇者の父親なのだけど実は……というアイディアができて、「これはそうした方が面白いだろうな」となり、現在の方向に舵を切りました。

――登場人物の名前については、大魔王の名前が「ユウ・シャノチーチ」であるとか、ものすごく特徴的です。あのような名前はどのように考えていったのですか?

みぬひのめ:思いついた名前をメモ帳にとにかく入れていきましたね。ただ、大魔王はシンプルに勇者の父親だと分かるように「ユウ・シャノチーチ」と決めました。

――それらの設定と脚本は、ゲーム制作を始める前に仕上げた形だったのでしょうか? 前作『ネタバレが激しすぎるRPG』の制作時間が数ヶ月ほどであると、「ふりーむ!」さんの作品ページに記されていたのが気になりまして。

みぬひのめ:いえ、前作はゲームの制作と並行しながらセリフを打ちこんでいました。一応、「こういう順番でこういうことが起きる」というプロットはメモ帳に書いたと記憶しているんですけど、細かいセリフはもう、ゲームを作りながら打っていましたね。

――仕上がったストーリーを誰かに見てもらい、フィードバックをもらうようなことはあったのですか?

みぬひのめ:なかったです。テストプレイに関しては一度、X(旧Twitter)の方で募集をかけたのですけど、誰も集まらなくて……。結局、自分で何回も通しプレイをしまして、「きっとこれがいい形だ!」というタイミングで出しました。

――前作をリリースした当時のダウンロード数はいかがでしたか。

みぬひのめ:当時、自分の作った作品でぶっちぎりでダウンロード数が多かったのが「すぎるRPG」シリーズの1作目に当たる『速すぎるRPG』で、その次にプレイ数が多かったのが『弱すぎるRPG』だったんです。

 『ネタバレが激しすぎるRPG』はその2作に比べると、リリース当初はそこまでプレイされていなかった印象です。配信に関しても、1~2週間に誰かひとりが実況しているような状況でした。ただ、徐々にプレイ数自体は伸びていっていましたね。

――そしてキヨさんが配信されたことによって、まさに「ドカン!」と。

みぬひのめ:はい。そこで本当に「ドカン!」と行きました。

――それがきっかけで今回の続編を制作する気持ちが湧き起こったのでしょうか。

みぬひのめ:続編については、「もし、作るのだったらこんな名前の人が登場する」ぐらいのことをひとつ、ぼんやりと考えていたんです。そのなかで2024年の1月にキヨさんがプレイし始め、そこからVTuberの方々もプレイされ、ものすごい勢いで伸びていくのを見て、「ここがチャンスだ!」と。そこでCampfireさんの方でクラウドファンディングを始めました。そのタイミングで、具体的にどんなストーリーにするのかを考え出した感じでしたね。

――クラウドファンディングも最初、20万円ほどを目標にしていたのが、最終的に約10倍の額になりました。支援者にはにじさんじの加賀美ハヤトさんを始めとするVTuberの方々もいらして、「なんかすごいことになっているぞ!?」と見ていました。

みぬひのめ:支援いただいたみなさまには本当に感謝しております……!

小学4年生のころに触れた『RPGツクール3』がゲーム制作の原点だった

――前作と最新の続編、それから「小説家になろう」「カクヨム」に掲載されているWEB小説もすべて体験および拝読したのですが、WEB小説のあとがきによりますと、普段は舞台の脚本執筆をされているのですね。

みぬひのめ:はい、普段はそちらを主に活動しております。

――舞台の道へと進まれるきっかけはなんだったのでしょうか?

みぬひのめ:もともと、高校生のころに演劇部に所属していまして、脚本は当時からずっと書き続けています。合計で90本くらいは書いてきたと思います。

 舞台の道へと進んだきっかけは、自分が中学生のころに兄が高校で演劇部に入っていたのと、妹がある有名な劇団に入って活動している姿を見て、「演劇って楽しそうだな」って感じたことです。それで高校生のときに演劇部に入りました。

 ただ、最初は脚本を書きたいというよりも、舞台に出て喋りたい気持ちの方が大きかったんです。

――ということは、役者志望だったのですね。

みぬひのめ:そうです。でも、最初に演劇部に入ったときは、部員が自分ひとりしかほとんどいないような状態だったんです。それで、「もう自分で脚本を書き、演出もして出てやろう!」と書くようになりました。いまはあまり役者として舞台に出ることはなくて、脚本を書いたり、演出をする側の人間として活動しています。

――なるほど。WEB小説のあとがきでは『RPGツクール3』(※1)でゲーム制作をしたことがあるとありましたが、みぬひのめさんの創作の原点というのはそこだったのでしょうか。

みぬひのめ:本当の創作の原点となりますと、小学1年生ぐらいに描いていた漫画になりますね。小さい紙にひとコマ、ゲームのキャラクターを描くようなことをしていたのが最初だったのかもしれません。ゲーム作りという点では、やはり『RPGツクール3』が最初ですね。小学4年生のときに触れました。

――実際にゲームも1本仕上げられたのですか?

みぬひのめ:当時、NINTENDO64で発売された『マリオストーリー』(※2)を遊んでいたのですが、それをなぞったようなゲームを勢いで作ったことがありました。あまり遊べたものじゃなかったんですけど(笑)。

 その後はオリジナルを作ろうと思い、だいたい4章ぐらいまで作って適当に完成させた感じでしたね。

――『RPGツクール3』以降のツクールシリーズにも触れられたのでしょうか?

みぬひのめ:『RPGツクール3』の後に『RPGツクール4』(※3)に触れたんですけど、途中で挫折してしまいまして、フェードアウトしていってしまいました。

 『RPGツクール4』はオリジナルのマップを作るとすると、メモリーカードの容量がいっぱいになってしまうとか、いろいろバグがあったりしたんです。それで次の『RPGツクール5』(※4)も買ったんですけど、そちらは挫折まであっという間でしたね(笑)。

――となると、『RPGツクール』シリーズには結構触れられていたのですね。

みぬひのめ:そうですね。『RPGツクール3』から『RPGツクール5』までは触れていました。

――先ほど『RPGツクール3』で『マリオストーリー』をなぞったゲームを作られたとありましたが、普段からゲームの方はRPGが好きで遊ばれていたのでしょうか。

みぬひのめ:いや、アクションゲームに格闘ゲームなど、結構まんべんなくやっていたように思います。ただ、遊んでいたゲームとしてはRPGが一番多いかもしれないです。

――みぬひのめさんにとって、思い出深いRPGってなんでしょうか。

みぬひのめ:多分、一番遊んだのは『ゼノサーガ』シリーズ(※5)ですね。一番最初の『エピソード1』を兄が買ってきて、その中にカードゲームのミニゲームがあるんですけど、それをずっと遊んでいましたね(笑)。

――『ゼノサーガ』と言いますと、シナリオ面でも相当凝っていた作品との印象がありますが、若干、今のゲーム作りや舞台脚本の活動面などに影響を受けていたりするのでしょうか。

みぬひのめ:多少はあると思います(笑)。あと思い出深いRPGですと先ほども挙げた『マリオストーリー』と、『ファイナルファンタジーVIII』ですね。

――『マリオストーリー』はその後、「ペーパーマリオ」シリーズとして発展して、いまも新作が展開されていますけど、以降のシリーズもやられているのですか?

みぬひのめ:いや、それ以降は家庭用ゲーム機のゲーム自体をやっていないんです。大学に入学してからひとり暮らしになりまして、手元にゲーム機がなかったんです。

 家庭用ゲーム機で遊んでいたのは、実家で暮らしていた高校3年生までのことでして。世代的には多分、ニンテンドーゲームキューブの時期だと思うんですけど、そちらは買わなくて、NINTENDO64とPlayStation 2で時間が止まっています(笑)。

――では、最近の家庭用ゲームもやられていないのでしょうか?

みぬひのめ:はい、家庭用ゲーム機のゲームとなりますと、ほとんどやっていないですね。ただ、『Undertale』は前にちょっとだけ遊んだことがあります。

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