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「SUPER SIX EVOのここがいけてない」乗って気づいたこと

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普段の練習からレースまでさまざまな環境でSUPER SIX EVO 第4世代目(以下EVO4)を試してきた。はじめはよくわからないバイクだったが、次第に良いところも、悪いところも見えてきた。

EVO4は雑誌やメディア、インフルエンサーなどの露出も多く、有名なライダーが使っていることからも非常に人気があるようだ。プロモーション的にも成功したバイクの一つではないだろうか。

このような状況になってくると、「耳障りのいい」情報に注意する必要がある。世間に広がるEVO4の情報を一歩引いてとらえ、自分の中で咀嚼して解釈していく必要がある。

良いことは、他の人達が手に余るほどに、情報を垂れ流してくれるだろう。だから、EVO4について違った角度、方向から実際のEVO4について実際のところをまとめた。

詳細な数値データーの話は以下の2つの記事に譲る。

CANNONDALE SuperSix EVO LAB71インプレッション 前編 「何か」が仕組まれたバイク
最も人気があったのは、初代だろうか。2011年、初代SuperSixEVOが発表されたとき、凄まじい熱狂があった。フレーム重量が695g、ピーター・デンク氏(SL8、AETHOSを開発)が開発、各社が血眼になって競い合っていた重量剛性比、剛性に相反する乗り心地の良さ、初代はあらゆる面で他社の数歩先を進んでいた。リクイガス時代のサガンが乗っていたことも話題だった。この頃のサガンを、いまの選手で例える...
SuperSix EVO 4 インプレッション 「快適なレーシングバイク」という矛盾
ほんとうによくわからないバイクだ。SuperSix EVO 4(以下EVO4)を乗り込み、試した。良いのか、合うのか、乗り初めは素性がよくわからなかった。ただ、乗り込んでいくうちに、「もしかしたら」という思いが湧き上がってきた。感覚によって感知されることができ、事実として、文字として扱うことができるような思いでは決してなかった。ただ、「EVO4はこういうバイクなのではないか」という、マト外れでもな...
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不思議なジオメトリ

ヘッドチューブが長く、ヘッドアングルが寝ている。

キャノンデールのバイクは昔からジオメトリにクセがあった。あえて、昔を掘り起こして意地悪なことを書くと、過去のSuperSix(無印)は、50~54のサイズ間でリーチの差が5mmしかないという、めちゃくちゃなジオメトリだった。

大きなサイズになるとリーチが逆転する(!)という、今となっては、素人目に見ても破綻しているジオメトリ設計だった。EVO4は突拍子もないジオメトリではないが、サイズ選びは悩む可能性がある。ポイントは先程触れた2点ある。

  • ヘッドアングルが寝ている
  • ヘッドチューブが長い

ジオメトリの詳細な検証は以下の記事を参照して頂きたい。

CANNONDALE SuperSix EVO LAB71インプレッション 前編 「何か」が仕組まれたバイク
最も人気があったのは、初代だろうか。2011年、初代SuperSixEVOが発表されたとき、凄まじい熱狂があった。フレーム重量が695g、ピーター・デンク氏(SL8、AETHOSを開発)が開発、各社が血眼になって競い合っていた重量剛性比、剛性に相反する乗り心地の良さ、初代はあらゆる面で他社の数歩先を進んでいた。リクイガス時代のサガンが乗っていたことも話題だった。この頃のサガンを、いまの選手で例える...

ヘッドアングルが寝ていると、ややもっさりとしたハンドル操作になる傾向にある。ヘッドチューブが長いとステムを下げても狙ったポジションにならない可能性がある。人によっては攻撃的なポジションを取ることができず、アップライトなポジションしかとれない事態もありうる。

参考までに、キャノンデールのカズさんと私の身長はほぼ一緒なのだが、カズさんは51サイズ、私は48だ。どちらが悪い、良いという話ではなく、リーチ差はわずか4mmながら、51サイズのヘッドチューブ長は130mm、48サイズは、114mmとかなりの差がある。

54サイズに至っては、154mmとかなり長い。そのため、現代のロードバイクのジオメトリと比べると相対的に長い作りになっている。私の場合は、ワンサイズ落とさないと以前と同じようなポジションが取れなかった。

例えば、VENGEやSL7からの乗り換えの場合はワンサイズ落とすことになるだろう。それ以外の方、下ハンドルを常に持ち続けて攻撃的な姿勢を取らない場合はメーカー推奨のサイズで良いと思う。ヘッドアングルが寝ている件については、別の章で詳しく紹介する。

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空力性能はほんとうに良いのか?

世界最速ではないが重量を考えるとかなり良い。ただし、空力を感じることは非常に難しい。

EVO4は空力が良く感じると言う人が多い。

人間が空力の良し悪しを判断することは非常に難しいため、実際には「速く感じている」だけだろう。ただし、万人にそう感じさせる、思わせてしまう、という錯覚を抱かせたのは見逃せないポイントだ。

「あの娘、自分のこと好きかもしれない!」と思わせる(勘違いさせる)魅力と似ている。

だからあえて書いておきたいのは、EVOが踏み出した瞬間から早く感じるだとか、そういう記事やメディアに遭遇したら警戒したほうがいい。で、実際のところEVO4は早いのだろうか。

空力性能について語るとき、ドイツのTOUR紙のテストが最も有力なデータだ。同社は何年にも渡って、決まった試験方法を用いて各社のバイクをテストしてきた。事実上、TOUR紙の結果で最も優れているバイクが「世界最速」という暗黙の了解になっている。

EVO4を含めた現在の空力性能ランキングは以下の通りだ。

  • PRIDE II:199W
  • Aerfast.4 Pro:201W
  • Aeroad CFR:202W
  • S5 Disc:202W
  • SystemSix:203W
  • FACTOR One:206W
  • SCOTT FOIL RC ULT:206W
  • SuperSixEVO4:207W
  • Madone Gen7:207W
  • VENGE:208W
  • Dogma F:208W
  • AEROAD CF:208W
  • Tarmac SL8:209W
  • PROPEL:209W
  • Tarmac SL7:210W

これ以上でも、これ以下でもない。

のだが、やや意地悪な見方をすると空力的に突出したバイクではない。しかし、悔しいが、重量面を考えると非常にバランスが取れた「良いヤツ」でEVO4より上位のモデルは完成重量がかなり重い。モノによっては8kg台ということを考えるとEVO4は空力を考えると「相当軽い」バイクだ。

最も競合視されているスペシャライズドのTARMAC SL8というと、EVO4よりも空力が「悪い」。さらに突っ込んでいうと、SL8の風洞実験結果は、一体型RAPIDE COCKPITとRAPIDE CLXを取り付けた状態だ。

対するEVO4は、空力条件が悪い2ピースハンドルと純正SOLO50ホイールの構成で207ワットを叩き出している。一体型のMOMOハンドルやRAPIDE COCKPITを取り付ければさらにEVO4は軽量化し空力性能も増すだろう。

空力性能は体感することは非常に難しく、私がEVO4の前に乗っていたAEROADの空力が良かったため、私の場合はAEROADと比べると「相対的にEVO4は空力が悪い」という結論になる。しかし、数値上は非常に優れた空力性能を持ち、他社(SL8)のバイクと比べてもハンデを背負いながらも空力性能は優れている。

むしろ、空力と軽量性を考えると、今のところEVO以上のバイクが見当たらないのが悔しいところだ。ハンドルとホイールを空力の良いモノに変えると、あと数ワットは空力改善が見込める余地がある。対してSL8はテストのスペック上これ以上空力を改善する余地がない。

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ハンドリングの「クセ」をどう捉える?

ハンドルを意識的に切る必要がある(はじめは)

EVO4のハンドリングが「良い」か「悪い」か、切り口によって判断が分かれると思う。私も実際、はじめ戸惑った。

EVO4でコーナーリングしようと思ったとき、これまでのバイクよりも意識的にハンドルを切って、バイクを傾ける必要があると感じた。この感覚は、切れ込むタイプのAEROADに乗り慣れていたというのもあるが、ヘッドアングルが寝ているのも少々影響があるように思う。

しかし、慣れは怖いもので100kmほど走ればEVO4の操作性に慣れきってしまう。むしろ、下りの安定性たるや、昨今のバチバチのエアロ系バイクにしては扱いやすいとさえ思う。私は下りが苦手なのだが、むしろ下りはEVO4のほうが安心できる。

やや特徴的なヘッドアングルだが、下りの恐怖心のなさ、安心感という面ではEVO4は非常に優れている。ようは、特徴をどのような切り口でとらえ、活かせば長所に変わるようだ。

逆にうと、レーシングバイクに乗ったことのない人にとっては、EVO4の比較的まったりとしたステアリングが受け入れやすいかもしれない。

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疲れにくいは本当か?

独特のしなやかさ、疲れにくさがある。

自分がEVO4を購入する前に目についた特徴としては「EVO4は疲れにくい」という話が多かった。実際どうなのかというと、確かに昨今のエアロ系バイクにしては非常に快適でしなやかなほうだ。レーシングバイクでありながら、比較的体に優しいバイクに仕上がっているのは間違いない。

突き上げや振動も、縦方向に硬くなりがちな、昨今のエアロ系バイクと比べると相対的にしなやかで快適になっている。だから、以下の記事のタイトルになった。

SuperSix EVO 4 インプレッション 「快適なレーシングバイク」という矛盾
ほんとうによくわからないバイクだ。SuperSix EVO 4(以下EVO4)を乗り込み、試した。良いのか、合うのか、乗り初めは素性がよくわからなかった。ただ、乗り込んでいくうちに、「もしかしたら」という思いが湧き上がってきた。感覚によって感知されることができ、事実として、文字として扱うことができるような思いでは決してなかった。ただ、「EVO4はこういうバイクなのではないか」という、マト外れでもな...

実際のデータ上でも数値に表れている。以下の剛性データは、シートポストがある変形量に達するまでにどれくらいの力を要するのかを示している。

  • VENGE:261N/mm
  • AEROAD CFR:188N/mm
  • TARMAC SL8:156N/mm
  • SuperSixEVO4:120N/mm

「エアロ形状=乗り心地が悪い」という通説は決して間違えていない。垂直方向の剛性値にも現れている。VENGEやAEROADは特に数値が高く(≒硬く)コンフォートではない。

これは、バーチカルコンプライアンス(垂直剛性)という縦方向の剛性を表している。主に突き上げ感として現れる。ただ、ペダリング中に感じる「硬い」「柔らかい」といったたぐいの変化とは、別の話、切り離して考える必要がある剛性だ。

極論を言うと、タイヤと空気圧が「剛性」に与える影響は非常に大きく支配的だ。それらを理解しつつ、考慮しても、EVO4は後半に脚が残しやすいと感じる。実際に何度も走っている練習コースにおいて、最後の登りに挑む際のパワーの残り具合、かけやすさなどはEVO4の特徴が生かされるように思う。

脚を削られにくいのは確かにその通りで、余裕を持って峠を攻めることができる。しかし、パワーがある人が一気にかけたときの反応性のようなものは、SL8のほうが秀でていると感じるかもしれない。

それでも、全体的に非常にバランスの取れた乗り心地、むやみやたらに剛性を高めなかったのは評価できる。

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重箱の隅をつつく・・・

不満な点は4つある。性能とのトレードオフの部分もあるが、設計上いかがなものかと思う部分もある。

  • スルーアクスルのレンチ差し込み口が前後異なる
  • ダイレクトマウントが無い
  • テールライトが取り付けられない
  • ヘッドベアリングの防塵が甘い

スルーアクスルのレンチ差込口は6mmと5mmで異なっている。ただ、この点はメーカーも理解していたようで、現在出荷されている2024年モデルは前後6mmになった。発表当時にEVO4を購入した方のほとんどは6mmと5mmの異型だとおもう。私もその一人だ。

参考までにリア側の設計は以下の通り。

  EVO4 F SL7 F SL8 F
シャフト長 118.5 115 113.5
直径 12 12 12
スレッドピッチ M12x1.0 M12x1.0 M12x1.0
スレッド長 13 14 15
  EVO4 R SL7 R SL8 R
シャフト長 160 158 158
直径 12 12 12
スレッドピッチ M12x1.0 M12x1.0 M12x1.0
スレッド長 17.5 14 15

この設計をみるとわかるのは、スペシャライズドのスルーアクスルとほぼ同一の設計であるため流用できる可能性がある。実際に私も流用しているのだが、純正でなく長さも短いため、固定力を考えると使うことは避けたほうが良いだろう。

キャノンデールからスルーアクスルを別途購入できるとよいのだが。

「ダイレクトマウントが無い」件についてはサードパーティ製のダイレクトマウントで代替する。各社主流になりつつあるダイレクトマウントリアディレイラーハンガーの純正品がEVO4には無い。SIGEYI CND-TH3を使用することで解決できる。

Cannondale SuperSix EVO4 ディスク用 CNC 軽量化 ダイレクトマウント リアディレイラーハンガー (CND-TH3) (Black-Gray)

「テールライトが取り付けられない」件は、EVO4の細すぎるシートポストのせいだ。空力を優先させるために細くなりすぎたがゆえ(これはこれで良いのだが)ゴムバンド式のマウントを使用すると振動で回転しまう不具合が発生する。

私はキャットアイのテールライトを愛用しているのだが、以下のバンドに変更することでしっかりと固定することが可能になる。

キャットアイ(CAT EYE) フレックスタイトブラケット SP-11 534-2280 ライト 自転車
キャットアイ(CAT EYE) セーフティライト RAPID micro AUTO TL-AU620-R ライト 自転車

「ヘッドベアリングの防塵が甘い」は、クロッサー仲間のすくみず氏も指摘していたが、ヘッドベアリングを覆うカバー部分の防塵性は十分とは言えず、水の侵入をやや許してしまう。洗車回数が多い方は、テフロン系のグリスをたんまり塗っておいたほうが良いかもしれない。

フィニッシュライン(FINISH LINE) プレミアムテフロン強化グリース 100g TOS07600
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まとめ:それでも最も理想に近い完成度

EVO4は非常に困ったバイクだ。

実際のところ、アラを探さないと不満という不満が出てこない。EVO4が”いけてない”ポイントは、重箱の隅をつつくような、非常に卑しい、意地の悪い指摘をしなければ出てこないようなものだ。実際の走行性能とは結びつかない、どうでもいい話なのかもしれない。

昨今のエアロ系バイクの一体型ハンドルでもないし、ステアリングの切れ角の制限もない。BBも悪しき圧入方式からBSA(ねじ切りタイプ)を採用した。バッテリーをダウンチューブ側に移動し低重心化、UCIの規定のギリギリを攻める細すぎるシートポストも魅力的だ。

空力性能も比較的よく、軽量性ではむしろ他のエアロ系バイクと比べて秀でている。剛性面に関してもむやみな剛性アップを求め、ちょうどよい中庸な乗り心地を実現した。

ここまで来ると、次のEVO5はどうなるのだろう。

EVO4の完成度が高く、逆に首を締めているようにおもえてならない。それでも、EVO4を超えるバイクをキャノンデールは開発するのだろう。最近のバイクで1台なにか選べと言われたら、EVO4だ。総じてEVO4はまとまりのあるバイクに仕上がっている。

SuperSix EVO
これぞロードバイク。軽量カーボンフレームで、滑らかで、超高速。ロードレーサーが満足する進化。
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