Tarmac SL5発表
5月10日午前10時スペシャライズドから新型Tarmac SL5がローンチされた。事前に得ていた情報通りディスクブレーキ仕様(油圧)とリムブレーキ仕様の2つのラインナップになっている。
スペシャライズドのやり方としてシグネチャーモデルを出してフレームを売りさばいたあと(SL4)、次のシリーズに移行する手法が多い。今回もコンタドールモデルやカヴェンディッシュモデルを販売してきたことからもSL5の発表はすぐそこまできている、という印象だった。
実際に発表された内容を見ていく。特徴的なのは「イチから開発しなおし」という事だ。各サイズのためにイチから設計をしなおしている。それはディスクブレーキ仕様とリムブレーキ仕様双方のフレームに共通している点だ。
興味深いのは各サイズ展開が先日のUCIの認可リストにもあったとおり多数のサイズ展開を行っている。その全てのサイズに関して各サイズのジオメトリにあった設計が行われている。サーベロの小さいサイズはあまりよい設計と言えないことは機材をある程度知るサイクリストにとっては周知の事実だ。
サイズごとに適正な設計をしている所にスペシャライズドのやる気が感じられる。
Tarmac SL5 DISKはリア135mmへ
今回のTarmac SL5のローンチにおいて一番の話題はDISK仕様車が登場したことだ。DISK仕様車はリムブレーキ仕様とリアエンド幅が5mm広がっている。通常リアエンド幅を135mmにした場合チェーンステイを420mmにする必要がある。
なぜなら、リアディレイラーのシフトの際に問題を引きをこすからだ。どのような問題かというと例えば36×11でクロスしたチェーンラインの場合アウターチェーンリングのピンに干渉してしまうという問題引き起こされる。スペシャライズドはどのようにしてこの問題を解決したのか。
結論を言うと、ハブの中のスプロケットの位置をオフセット(センター寄りに)することにより先程のクロスしたチェーンライン上での干渉を防いでいる。これによりチェーンステイは通常の405mmに収めることが可能になった。企業努力と開発力そしてホイール(ROVAL)のセットで成り立つアイデアだ。
ただ、気になるのは「ROVALのホイールのみ」そのよなハブ内部でスプロケットをオフセットしてチェーンの干渉を緩和しているということ。別の角度で見ると、お気に入りのホイールを使う(元々DISKではないが)事は限られてくるというデメリットも考えられる。
現状、DISK用ロードホイールについてはNOVATECのハブを手組して組むかその程度しか考えつかない。シマノが大々的に油圧ディスクブレーキ市場に乗り込んできる(MTBで培ったノウハウを元に)ことは十分に考えられる。
DISKはサイクル業界(主にシマノ)が大きくかじを切ってからでも遅くないと思うのだ。ただ、頭出しとして業界大手のスペシャライズドがディスク仕様のバイクを出してきたことに意味がある。いづれDISK仕様のバイクがグランツールを走る日はそう遠くないだろう。
TARMAC SL5 DISKのラインナップ
リムブレーキ仕様とディスクブレーキ仕様の一覧をいかに記す。なお当ブログを長らく見ている方には釈迦に説法であるが、「オフィシャル情報ではない」ということだけ付け加えておきたい。なのでこの情報を元にショップへ電凸しても責任は追わない。
TARMAC SL5のラインナップは以下のとおりだ。
S-Works Tarmac Disc
- Shimano 785 hydraulic disc brakes
- Shimano Dura-Ace Di2 11-speed drivetrain with S-Works 52/36 crank
- Roval Rapide CLX 40 SCS Disc wheels with ceramic bearings
Tarmac Pro Disc Race Ultegra Di2
- Shimano 785 hydraulic disc brakes
- Shimano Ultegra Di2 11-speed drivetrain with Specialized 52/36 crank
- Roval Rapide CL 40 SCS Disc wheels
Tarmac Pro Disc Race
- Shimano 785 hydraulic disc brakes
- Shimano Ultegra 11-speed drivetrain with Specialized 52/36 crank
- Roval Rapide CL 40 SCS Disc wheels
以上の通り3つのTARMAC SL5 DISK仕様がラインナップされる予定だ。
TARMACL SL5リムブレーキ
フレームの設計は非常に難しい。TARMAC SL5と一口に言ってもサイズにより得られる数値データーは異なる。メーカーが意図したTARMAC SL5というマシンに対していかに均一の乗り心地として仕上げるのかそこが問題だ。
TARMAC SL5 DISKと同様にサイズごとの設計をイチから行っている。スペシャライズドは公式に述べられている事のようだが初めて知った事実を書こう。TARMAC SLシリーズ(過去の)は56サイズを「基準」に作られている。
何が言いたいのかというと56サイズがターマックの乗り心地なのだ。それ以外はジオメトリをそれらしく変更し、各サイズに合わせているという設計だ。事実フレームは「小さいサイズほど硬い」ということはある程度ロードバイクを乗った人なら知っていることであろう。
これは小さい49サイズに乗る私にとっては非常に耳寄りな情報である事である。TARMAC SL5は各サイズがTARMAC SL5なのだ。
スペシャライズドのデータとしてはこう説明している。「小さいサイズは硬い」「大きなサイズはしなやかだ」と。56サイズはしなやかな設計だったそうだ。SL4の時に硬いバイクと称された。今見返すとほとんどが49サイズ52サイズと、最も小さい2サイズではないか。
ターマックは確かにドイツの科学的サイクル雑誌TOURにおいても「数値として硬い」データーが得られていた。しかし過去のSLシリーズにおいてスペシャライズドが意図した56サイズの硬さは52サイズや49サイズでは少し増していると言っている事にほかならない。
スペシャライズドはそれらの問題を3年間研究開発を行い今回のSL5にぶつけてきている。そして大きな方向転換をしている。それは「軽くて高剛性」からの脱却だ。
軽くて高剛性の時代から「ペダリング効率」へ
自転車業界(主にフレーム)は「軽くて高剛性」を確かに競ってきた。第三者機関を用いてSUPER SIXEVOやサーベロのように「重量剛性比」を出したデータを売りに(主に米国の)販売を転換している。スペシャライズドもこの潮流に4年以上乗ってきた。しかしTARMAC SL5の発表と合わせここに来て方向転換をしている。
それはペダリング効率だ。
ペダリング効率と聞いて、パイオニアペダリングモニターを使う私としては聞き捨てならない。フレームとペダリング効率とはどのような関連性なのだろうか。TARMAC SL5の設計思想は踏み込んだ時(ペダリング)をいかに推進力に変えるための剛性なのか、を追求している。
フレームが全て「ガチガチの金属」ならばペダリングした時にフレームはたわまずに推進力に変えてくれるだろう(タイヤやフリクションロスは抜きにして)しかし今回TARMACのジオメトリーに変更はない(嬉しい事に)。
従ってTARMAC SL5はカーボンの繊維をわずかに微調整しながら最適な設計(ペダリングの伝達がより伝わる剛性)へ昇華した。
TARMAC SL5はOSBBがアルミインサートへ
TARMAC SL3,SL4と乗り継いできた私(個人)にとってはここからビッグニュースはBB(あの忌まわしいOSBB)がOSBBがアルミニウムインサートに変更になっている。
アルミニウムインサートにBB変えたことにより(剛性が高まり)ダウンチューブの形状を調整し空力学的に向上しているとのことだ。
私にとって(多くのOSBBペダリングモニター使用者にとって)ビッグニュースはこのOSBBがアルミニウムインサートに変わったことだろう。フレームの剛性を高めるためにBB部の大口径化が進んできた。スペシャライズドは特殊はOSBBの規格である。
これは非常に曲者(メカニック泣かせ)(ペダモニ使用者泣かせ)であった。踏むと「キシミ音」がする。初期のVENGEが特に残念なBBであった。このOSBBの為に社外品(プラクシスワークスの特許BBやROTORのBB等)が登場したりしたほどである。
TARMACユーザーだからわかるこのOSBBであるが、メーカーが「きしむのでアルミニウムインサートSL5はした」という。これは4年間OSBBに苦しめられたユーザーにとっては非常に嬉しい事である。
文句を言うときりがないが、このOSBBの構造はこうだ。カーボンのフレームにプラスチックのスリーブを噛ませる。そこへセラミックスピード社のベアリングを圧入する。さらに24mmシャフトに対応するスリーブをかませるいわば3重構造だ。
さらに厄介なことはベアリングを出し入れするとプラスチックのスリーブが経年変化で割れたり広がっりする(冬は気温変化の激しい時に)。正直TARMAC SL4の弱点はOSBBであったと言わざる負えない。
しかしアルミニウムインサートに代わりSL5では「改良された」とされている。本当なのかはさておき実物でそのキシミ音が解消されているのか楽しみだ。
TARMAC SL5ラインナップ
TARMAC SL5のリムブレーキ仕様のラインナップを列挙する。サイズは6展開だ
S-Works Tarmac Dura-Ace
- Shimano Dura-Ace rim brakes
- Shimano Dura-Ace Di2 11-speed drivetrain with S-Works 52/36 crank
- Roval Rapide CLX 40 wheels with ceramic bearings
S-Works Tarmac Red
- SRAM Red rim brakes
- SRAM Red 11-speed group with S-Works 52/36 crank
- Roval Rapide CLX 40 wheels with ceramic bearings
Tarmac Pro Race
- Shimano Ultegra rim brakes
- Shimano Ultegra 11-speed drivetrain with Specialized 52/36 crank
- Roval Rapide CL 40 wheels
Tarmac Expert
- Shimano Ultegra rim brakes
- Shimano Ultegra 11-speed drivetrain with FSA SL_K Light 52/36 crank
- Fulcrum S4 wheels
以上のラインナップになっている。
まとめ:TARMAC SL5は何が新しいか
TARMAC SL5は何が新しくなったのかもう一度おさらいしたい。大きな点としては全てのサイズが独自設計に変わっていることだ。そして油圧ブレーキ仕様車が登場した。これによりエンド幅は135mmに広げられた。
大きなトピックとしてはSL4で発生していたOSBBがイケてないために発生していた不快なきしみ音を打開するためにアルミニウムインサートに変更になった。このため剛性がさらに高まりダウンチューブはいくらかシェイプアップされている。
- 各サイズに特化した設計(共通の乗り心地)
- 油圧ブレーキDISK仕様車の登場
- 135mmのエンド幅
- BBはアルミリブ
以上のとおりだ。
歴代Tarmacユーザの私としては素直に欲しい。なぜならTARMACの乗り心地は56サイズを基準にして小さいサイズは硬いという話を聞いた。それらが改良され本当のターマックの乗り心地が49サイズ(一番小さい)でも体験できる。
ターマックを愛する者にとって、これ以上ない喜びだ。出来れば試乗車を今のホイールで乗ってみたい。新しいTARMAC SL5を乗る日が今から楽しみだ。