出版不況で本屋に行く人が減っている昨今、話題性で集客増を狙う書店も増えていますね。2019年オープンした京都烏丸の「大垣書店」も、なかなか攻めた本屋です。
立ち読みしてたら酢飯の匂いがするな~と思ったら、なんと、書店の奥に鮨屋があるではありませんか!
しかもよく見るとこのお店、空間が真っ二つに分かれていて、片方はカウンターだけの鮨屋、もう片方は餃子屋&煮込みメインの居酒屋という造りです。書店の奥にある上に鮨屋と餃子屋が同居しているなんて、なかなか一口で説明しづらいハイブリッドな構造ですねえ。
経営しているのは、京都の超有名タウン情報誌「Leaf」。だから書店!なるほど自然な立地ですね!(?)。実はLeafはこの「餃子と煮込み / 魚屋鮨しん」以外にも「Cafe&Bar POCHER 木屋町」などいくつか飲食店を経営しています。
「え~、出版社が片手間でやってんの? 美味しいの? 本業以外に手広げてコケるパターン?」とか言わないでください。実はこの「魚屋鮨しん」、出版社が経営しているなんて言われなければわからないほど本格的で、コンセプトもしっかりしているんですよ。
※本記事に掲載された情報は、取材日の2020年10月時点のものです
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください
※お酒の提供については、現在、国や自治体の要請に準じている可能性があります
気さくすぎる!雑誌「Leaf」の中西社長
そもそもLeafの中西真也社長は、「3歳の時から鮨屋やりたかってん」と話してくださいました。それはねえだろう!とツッコミたくなりますが、子供の頃から父親がよく鮨屋に連れて行ってくれたおかげで鮨好きになったそうです。
「ホンマは出版社より飲食やりたかってんけどな」とボソッと明かしていますが、社員が聞いたら「マジかよ」でしょう。
で、最初にその夢を実現させたのが、観光名所の錦市場に2017年8月出店した「鮨しん」。本格的な職人が握る鮨が夜おまかせ10,000円ぐらいからの高級店ですが、こちらが案外ブレイク。それに気をよくした社長は翌年先斗町にも2店舗目を出すなど快進撃を続けていました。あ、ちなみに、“しん”はもちろん真也のしんです。
そして2019年3月オープンしたこちらですが、鮨に餃子と煮込みの店もくっつけちゃったのは何故なのですか、と聞きましたら、「餃子が好きやってん!あと何か京都にないものと思ったら、煮込みやった」と案外簡単な動機でした。
握るのは某店で腕を磨いたベテラン鮨職人
この店、鮨部門と餃子部門を自由に行き来することができるのがミソ。鮨カウンターで無性に煮込みが食べたくなったら運んでもらえるし、餃子を食べながら鮨をつまみたけりゃ握りたてを席に運んでもらえます。ただし、鮨カウンターに餃子を運んでもらうのはNG。臭うからね!
予算はこちら、オフィス街なのでグッと抑え目です。鮨しんの平日ランチ握りは並8貫で900円、上8貫プラス巻物半分で1,600円。単品の握りは1貫100円~ですよ!夜も10貫3,000円~と良心的です。
ネタにももちろん手抜かりはなく、京都市中央市場などから仕入れ。季節によって変わりますが、900円でも写真の通り、マグロに車海老にヒラメにと大満足です。追加で、〆鯖とノドグロなど京都らしいネタも握ってもらいました。
シャリは京丹後米をこの店のためにブレンドし、酢をまろやかに利かせてふわっとまとめます。ネタとの大きさのバランスもちょうど良し。
よく女性だと勝手にシャリ小さめに握られることが多いのですが、私には不要な気遣いですよ!鮨屋の皆さん!余談ですが。
さて、鮨を食べていたらやっぱり餃子の匂いがしてくるのでこっちも気になります。ということで、「餃子と煮込み」部門に移動。こちらは、4種の餃子ほか、醤油ベースの「黒煮込み」と白味噌ベースの「白煮込み」、自家製燻製、ほか居酒屋メニューが揃っています。
タレなしでもいける焼き餃子は3種類
小ぶりでニンニク不使用のスタンダードな「焼き餃子」(6個380円)、ジューシーでニンニクのパンチが利いた「肉汁餃子」(4個480円)、人気ラーメン店とコラボした「麺屋優光餃子」(5個380円)、そしてツルッモチッの「水餃子」(4個480円)。
煮込みは飲み物!
煮込みは国産牛すじや大根、コンニャク、キノコなどを日がな一日、店内の大鍋でグツグツ煮込んでいます。関東の煮込みを踏襲しつつ、少し甘めに関西仕立てで。牛肉エキスが具材に染み渡り、とろ~り柔らかく煮込まれた肉、野菜類が喉をするっと流れます。飲める煮込みやで!
さてこんなに本格的な鮨や餃子や煮込みですが、やはり有名店の監修が入っているのでしょうね。と社長に聞いてみましたら、「全部自分たちで考えてん!」と堂々と暴露。
もちろん、餃子と煮込み部門は元イタリアンのシェフが入り、Leaf飲食部門の社員もメニュー開発に携わっていますが、基本的に中西社長が「こんなん出したらいいんとちゃう」といったノリでアイデアを出しているそう。
さっすが、これまでの飲食店紹介の経験の中で知った売れるメニューだけを良いとこ取りしちゃってるんですね!
ただ、ひとつ難点は、「有名雑誌がやってるので他の媒体から取材されにくい」ということ。さらには、「雑誌社が手がける鮨店なんて大したことないだろう」と見くびられがちなこと。こんなに社長も本気なのに、不憫でしょうがない……。
あ、「鮨しん」ですが他にもいろいろ揃います。「燻製おまかせ3種盛り」(780円)、燻製卵を乗せた「ポテトサラダ」(480円)など、まあ普通の居酒屋メニューですが(失礼)、いちいちちゃんと旨い。
で、やっぱりしばらく餃子や煮込みでビールを流し込んでいると、鮨が懐かしくなってきます。という時に、「鱧と太刀魚握って~」とか言うと、握りたてが席に運ばれてくる。いやあ、余は満足ですぞ。
はっ。このままいったら餃子と鮨のエンドレス天国やんか!と気づいたあたりで店を出るお客さんが多いそうです。
で、暖簾をくぐったらそこは本屋。ついでなので、コロナ禍で休刊していて10月に復活した「Leaf」を一冊買って帰る、というのがオススメのコースです。(社長、宣伝しときました)
紹介したお店
※本記事に掲載された情報は、取材日の2020年10月時点のものです
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください
※お酒の提供については、現在、国や自治体の要請に準じている可能性があります