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塵と芥の思索室

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2010.03.09
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カテゴリ:読書の部屋
ピーター・ドラッカー著『マネジメント(エッセンシャル版)』のなかに、
公的機関(学校や病院、行政)のマネジメントについて書いてありましたので、
抜粋しました。いままで、公的機関も、企業と同じようなマネジメントが
有効とばかり思っていましたが、認識を新たにすることが多く書かれてあり、
とても勉強になりました。(数字は、ページ数です)

公的機関の成果 ピーター・ドラッカー
◎はじめに
公的機関は、その成長と重要さに伴う成果を上げていない。不振の原因は何か。公的機関が成果をあげる上で必要なものは何か

◎公的機関にもマネジメントが必要である。
42
現代社会において、企業は組織のひとつにすぎない。企業のマネジメントだけがマネジメントではない。政府機関、学校、病院、各種の団体など、いずれも組織である。そして、いずれもマネジメントを必要とする。これら企業以外の組織、すなわち公的機関こそ、現代社会の成長部門である。今日我々の社会は、企業社会というよりも多元社会である。

サービス機関は、すべて経済活動が生み出す余剰によってコストがまかなわれている。サービス機関は、今や贅沢でもなければ飾りでもない。現代社会の支柱である。社会の構造を支える一員である。社会や企業が機能するには、サービス機関が成果をあげなければならない。

◎公的機関ではマネジメントが可能か
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しかるに公的機関の成果たるや、立派どころか、なるほどと思わせるレベルにも達していない。しかも、あらゆるところで危機に瀕している。一世代か二世代前には、公的機関の活動が問題になることはなかったが、今日では、その活動の不振が攻撃の的である。

あらゆる国において、官僚主義への不満が高まっている。貢献と成果のためではなく、そこにいる者のためにマネジメントしているとの不満さえある。

しかし、公的機関を廃止する可能性も、廃止できる可能性もない。学校無用論を説く者さえ、教育の低下ではなく向上を望んでいる。

我々に与えられた選択は、サービス機関が成果をあげるための方法を学ぶことに他ならない。しかも、サービス機関は、成果をあげるマジメントすることが可能である。

◎公的機関不振の原因
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◇三つの誤解
公的機関不振の原因としてあげられるのは、次の三つであるが、どれも誤解である。
1、企業のようにマネジメントしていない 
 企業のようにマネジメントせよというのは、間違った処方箋である。公的機関にかけているものは、成果であって効率ではない。効率によって成果を手にすることはできない。公的機関の根本的な問題は、成果をあげられないことにある。

2、人材がいない
 多くの組織で人材がいないことが問題視されてきた。組織の数はあまりに多い。あらゆる病院の院長が天才や偉人でありるはずがない。企業の人間が公的機関のマネジメントに任命されたとき、官僚よりも上手くやれると信じるべきではない。我々は、彼らが直ちに官僚になることを知っている。

3、目的や成果が具体的でない
そもそも事業の定義は、公的機関だけでなく、企業の場合も抽象的たらざるをえない。
全人格の発達という学校の目的は、定量的にはつかめない。だが、「小学校三年生までに本を読めるようにする」との目標は具体的である。容易に測定できる。かなり正確に測定できる。

◎公的機関と企業とは何が違うか
企業においては、顧客の満足が成果と業績を保証する。
ところが、公的機関は予算によって運営される。成果や業績に対して支払いを受けるのではない。
予算から支払いを受けるということが、成果と業績の意味を変える。予算型組織では、成果とはより多くの予算獲得である。従って、成果という言葉の通常の意味、すなわち市場への貢献や目標の達成は二義的となる。

いかに大切さを説いたとしても、予算型組織においては効率やコスト管理は美徳ではない。より少ない予算や、より少ない人間で成果をあげても業績とはならない。むしろ組織を危うくしかねない。
しかも予算型組織では、効率よりも成果の方が危うくされる。
予算に依存することは、優先順位をつけ、活動を集中する妨げとなる。間違ったもの、古くなったもの、陳腐化したものの廃棄を難しくする。その結果、公的機関は、非生産的な仕事に関わりを持つものを大勢抱えることになる。

今日、あらゆるサービス機関が守るべき原則は、「現在行っていることは永遠に続けるべきものである」ではなく、「現在行っていることは、かなり近いうちに廃棄すべきものである」でなければならない。

47
人は、報われ方に応じて行動する。それは、報酬、昇進、メダル、ほめ言葉のいずれであっても変わらない。予算型組織も、その支払いの受け方ゆえに、貢献ではなく予算を生み出すものこそ成果であり業績であると誤解する。

◎公的機関成功の条件
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あらゆる公的機関は、次の六つの規律を自らに課す必要がある。
1、「事業は何か、何であるべきか」を定義する。
 目的に関わる定義を公にし、それらを徹底的に検討しなければならない。異なる定義、しかも一見矛盾する定義を採用し、そのバランスをはかる必要さえある。

2、その目的に関わる定義に従い、明確に目標を導き出す。

3、活動の優先順位を決める。
 これは、目標を定め、成果の基準すなわち最低限必要な成果を規定し、期限を設定し、成果をあげるべく仕事をし、責任を明らかにするためである。

4、成果の尺度を求める。

5、尺度を用いて、自らの成果についてフィードバックを行う。成果による自己管理を確立しなければならない。

6、目標に照らして、成果を監査する。
 目的に合致しなくなった目標や、実現不可能になった目標を明らかにしなければならない。
 恒久的精巧などありえない。
 しかるに、成功は失敗よりも捨てるのが難しい。
 精巧は愛着を生み、思考と行動を週間化し、過信を生む。意味のなくなった成功は、失敗よりも害が大きい。

公的機関が成功をあげる上で必要とするのは、偉大な人物ではない。仕組みである。それは企業が成果と業績を上げる上で必要な仕組みに似ている。もちろん、適用の仕方は違う。公的機関は、企業ではない。成果の意味が違う。

学校や病院のような、予算から支払いを受けて事業を行う公的機関に必要なものは、所有は社会化するが競争は行わせるという、社会主義的競争である。
この種の公的機関の顧客は、本当の意味での顧客ではない。むしろ拠出者である。
この種の公的機関が生み出すものは、欲求の充足ではない。必要の充足である。学校は、誰もが持つべきもの、持たなければならないものを供給する。
この種のサービス機関は、成果について最低限の基準を設けなければならない。

公的機関に必要なことは、企業のまねではない。もちろん、成果について評価することは必要である。だがそれらのものは、何よりもまず、病院らしく、行政組織らしく、政府らしくなければならない。自らに特有の使命、目的、機能について徹底的に検討しなければならない。






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最終更新日  2010.03.09 15:51:06
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