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ポリタス

  • 論点

【参院選2019】立憲民主党 政見放送 書き起こし

  • ポリタス編集部
  • 2019年7月16日

2019年7月9日にNHKで放送された立憲民主党の参議院比例代表選出議員選挙の政見放送の書き起こしです。


立憲民主党の政見放送です。お話は、立憲民主党代表・枝野幸男さんと、立憲民主党衆議院議員・石川香織さんです。

枝野:立憲民主党代表の枝野幸男です。

石川:衆議院議員の石川香織です。今日は枝野さんと、この夏の参議院選挙に対する立憲民主党の政策や主張についてお話をしていきたいと思います。国会の会期末に浮上した年金問題もあり、この選挙では多くの国民が年金をはじめとする社会保障や日本経済の先行きについて高い関心を持っています。先日も、麻生財務大臣による金融庁の報告書を受けた、老後に2000万円という発言が物議を醸しています。このことについてはどう捉えていらっしゃいますか。

枝野:はい。この5年間で非正規雇用の方は300万人増え、働く人の4割近くに達しています。年収200万円以下の方は1100万人を超えて、貯蓄ゼロの世帯の割合は3割を超えています。麻生大臣の発言は、そうした国民のリアルな生活実感とはかけ離れていると思います。しかも、その発言の端緒になった金融庁の報告書はもみ消されました。公文書の管理や情報公開という意味でも、現在の政権の体質を象徴する出来事だと思います。年金はお年寄り世代だけではなくて、働き盛りの世代にとっても、そして若い世代にとっても大きな問題です。私たちは2000万円を貯めなければならない社会ではなくて、大きな蓄えがなくても安心できる社会を目指します。年金不安を一挙に解消できる万能の処方箋はありません。

しかし、2つのアプローチで解決に向けて進みたいと考えています。一つは、年金制度そのものについての国民的な議論です。社会構造や人口構成など、年金制度を支える土台は大きく変化しています。前提条件が変わるなか、世代間で支え合うという年金政府のあり方について、与党や野党といった立場を超えて、政治が率先してビジョンを提起していきたいと考えています。二つ目は、年金制度以外にも医療、介護、保育、障害に関する費用の自己負担額の合計に、所得に応じた条件を設ける、いわゆる総合合算制度を導入することです。安心して医療や介護、保育や障害に関するサポートを受けられる、そんな体制を作りたいと考えています。

石川:年金問題以外にも、政治が解決を求められている問題は山積をしています。特に、経済の問題は私たちの暮らしに直結している問題です。これまでの経済政策は、一部の大企業を儲けさせればその恩恵が国民の隅々まで行き渡るという、トリクルダウンの考え方に基づいていました。しかし、現実には企業の内部留保が増える一方で、実質賃金は低下をしていますよね。

枝野:はい、そうなんです。今必要なのは経済政策を根本的に変えることです。一部の大企業だけを優遇する経済政策、これを続けた結果、国民の生活は非常に苦しくなり、全体の6割を占める個人消費が冷え込んでしまっています。私たちはこうした経済政策の方向性を逆転させる、そんな必要があると考えています。

今の日本には、むしろ国民一人ひとりの家計を豊かにし、冷え込んだ個人消費を回復させることで日本全体を経済成長させていく、そうした経済政策が必要です。

石川:立憲民主党は具体的な政策も用意しているんですよね。

枝野:はい。具体的には、最低賃金を5年かけて1300円にまで引き上げることを目指します。その際には、中小規模の企業に適切な支援も行います。最近は公務員でも民間企業でも非正規の働き方が増えていますが、これを可能な限り正規雇用へと切り替えていきます。また長時間労働を規制することで、可処分所得だけではなく可処分時間も確保できる、そんなまっとうな働き方を実現します。最近の日本は、生産性の低いままアジアなどの新興国と低賃金を競い合ってしまっています。成熟社会である日本ならではの、より高い付加価値で生産性の高い産業構造へと転換していくには、このように働き手を大切にする考え方がカギになってきます。

石川:次は、子育てや介護、医療などについても話をしていきたいと思います。私自身も子育て現役世代の一人であるんですけれども、私の周りのお母さん達からも、子育てや医療費のこと、そして私の親の世代からは介護の心配に関する話を多く聞きます。子育て世代にとっては、保育園の問題は非常に関心が高く、これから超高齢化社会を迎える日本にとっては、この介護や医療の水準も大きな問題だと思います。

枝野:はい。重要なのは、暮らしの安心を支える保育、介護、医療といった社会保障の政策と、経済を成長させるための経済政策と、一体不可分のものとして考えることです。特に、介護や保育などの分野は、これからの日本で間違いなくニーズが増えます。しかしこうした分野の仕事は賃金が低く、長く働き続けられない環境です。公的な力でこうした分野の労働環境を改善すること、これで働き盛りの世代にまっとうな雇用を提供し、同時に子育て世代や高齢者の安心を確保することができる、こうした社会保障と経済成長戦略をセットで考えることで、いわば安心と成長の好循環を作り出すこと、これを目指したいと考えています。

石川:暮らしの安心と言えば、10月に予定されている消費税の10%の引き上げについては、街頭の声を聞いても、やはりこのタイミングでの増税に不安を覚えている国民は多いと感じます。

枝野:今の日本の経済状況で、さらなる増税に踏み切るのは危険すぎます。そもそも、社会保障の財源として決められた前回の増税も、多くの国民の実感としては、暮らしの安心にはつながっていないのではないでしょうか。財源については、法人税の引き上げや、金融所得への課税など、国民目線で税制全体をチェックし、議論する必要があると考えています。

石川:立憲民主党は原発ゼロの推進、自然エネルギーへの転換も強く訴えてきました。東日本大震災と原発事故から8年がたちましたが、福島第一原発の事故処理は今もなお続いており、元の生活に戻れないという方々も多くいらっしゃいます。あの悲惨な経験を二度と繰り返さないためにも、原発ゼロに向けた現実的な対策を速やかに進める必要があると感じます。

枝野:はい。原発ゼロはもはやリアリズムです。今こそ政治が立地自治体の雇用なども考慮しながら、廃炉への現実的なプロセスを提示すべきです。再生可能エネルギーについても、世界的には技術革新が進んでいるんですが、実は日本はその波に乗り遅れてしまっています。省エネルギーの推進も含めて、日本のエネルギー政策の根本的な転換を実現すべきだ、そう考えています。

石川:G20直後の米朝首脳会談の開催など、北東アジアの安全保障をめぐる環境も激動をしています。国内でも、沖縄で辺野古新基地の建設に反対する民意が示されるなど、これまでにない変化が起きていると感じます。立憲民主党として、外交や安全保障の課題についてどう取り組んでいくのか、説明をしていただきたいです。

枝野:はい。私たちはまず日米同盟を堅持します。その上で、専守防衛、平和主義、これを基軸にアジアの平和構築へ向けて、より強いイニシアチブを発揮していくべきだと考えます。日本が戦後育ててきた民主主義の価値観は、北東アジアの国々にとっても大きな意味をもつはずです。沖縄の辺野古の新基地の建設問題についても、こうした観点からアメリカと再度交渉し、沖縄の民意を尊重できるスキームを探っていきます。日本の戦後の平和主義や民主主義に自信を持ち、内向きではないビジョンを示していきます。

石川:次は多様性についても話を聞きますが、今回、立憲民主党は多くの女性候補擁立をしています。LGBT、いわゆるセクシャルマイノリティ当事者の方々、障がい当事者の方々もいらっしゃいます。日本の国会における女性議員の割合は1割程度にとどまり、男女間の格差を示すジェンダーギャップ指数で、日本は先進国で最低水準です。LGBT当事者や障がい当事者の議員も少ない、こういった多様性のない政治を変えるために、この参議院選挙でどう有権者に訴えていきたいでしょうか。

枝野:はい。石川さんも感じているでしょうし、指摘されたとおりで、国会議員の総数に占める女性議員の数は非常に少ない。平成の日本では、女性の社会進出は一定程度進みました。また、LGBTをはじめとするセクシャルマイノリティの方々が声を上げるなど、価値観やライフスタイルの多様化が進みました。でも、政治はその状況に全く追いついていないと思います。人口減少が進むこれからの日本に必要なのは、異なる立場を尊重し、その多様性の中から新しい価値を発見していく、こうした姿勢だと考えています。出自やジェンダー、性的志向や性自認、障害の有無によって個人の可能性が狭められることのない、そんな環境を作る必要があると思います。

例えば、同性婚や選択的夫婦別姓の実現もその第一歩です。政治を変えるためには、より多くの当事者の声が国会に必要です。この夏の立憲民主党の候補者のうち、女性は4割を大きく超えています。LGBTの当事者の方々、障がい当事者の方もいらっしゃいます。数々の難しい裁判で活躍してきた弁護士の方、アナウンサーや新聞記者、そしてNPOの代表も名乗りを上げてくれています。みんな一人一人個性的で、これまでの永田町にはいない、そんなタイプです。でも、それはこれまでの日本の政治家があまりに画一的だった、そういうことなんじゃないでしょうか。この夏は、日本の国会が内側から変わる大きなチャンスだと考えています。

石川:立憲民主党は結党以来、草の根民主主義、そしてボトムアップの政治を掲げてきました。立憲民主党の目指す政治のビジョンについて、改めて聞かせてください。

枝野:はい。私たちは、日本の政治が誰もが参加しやすい、参加意識を持てる民主主義、こうしたものへ変わっていかなければならないと考えています。低い投票率を見ても、今の安倍政権は決して多くの国民から積極的に支持されているというわけではありません。どうせ政治は変わらないと諦めてしまう人が増え、いわば民主主義の空洞化、これが起きているのではないでしょうか。こうした状況の責任は間違いなく、国民からかけ離れたところで進んできた、いわゆる永田町政治にあると考えています。ただ同時に、今の政治状況に危機感を覚える声、そしてこれまでとは違う新しい政治を望む声も確実に広がっています。立憲民主党が生まれたこと自体、多くの国民が新しい政治を求めている証だと思っています。私たちは、こうした国民の期待を真剣に受け止めていきたい、そう考えています。

石川:はい。そのためには、現場を見ずに永田町の内側だけで政策決定をしてしまうという、これまでの政治文化そのものを変えていかなくてはいけないと感じます。

枝野:はい。国民の皆さんのニーズが多様化し、そして人口減少、超高齢化という誰もが経験したことのない変化の時代を迎えようとしているそんな今、一部の政治家にすべてを任せてしまう、いわゆるお任せ民主主義、これはもう通用しません。新しい時代をつくる政治の可能性は、様々な問題の当事者や、課題解決に取り組む現場のNGOやNPO、そして社会起業家の皆さん、こうした人々の経験や知恵にあると考えます。立憲主義を回復し、公文書管理や情報公開を徹底すること、これは大前提。その上で、住民投票などの活用も含めて新しい時代にふさわしい誰もが参加意識を持てる政治のモデルを作っていきたいと考えています。

石川:立憲民主党はこの夏の参議院選で、ハッシュタグ、 #令和デモクラシー を掲げていますよね。一般にあまり聞き慣れない言葉だと思うんですけれども、この趣旨についてお話をお願いします。

枝野:はい。ここまで述べてきた通り、私たちはかつてない急激な人口減少と超高齢化の時代を過ごしていくことになります。同時に、平成の30年間の間には考えられなかった多様な変化も生まれています。大きな転換期にあると言っていいと思います。日本の歴史を振り返れば、明治には議会の開設を求めた自由民権運動がありました。大正には、普通選挙権を求めた大正デモクラシーがありました。立憲民主党が掲げる令和デモクラシーは、これからの日本に必要な社会の大転換を、国民の皆さんと一緒に実現していく。そんな新しい政治のあり方を意味しています。

石川:今日お話ししたような様々な展開を実現していくプロセスが、この令和デモクラシーということですね。

枝野:はい、そうですね。一人一人を豊かにする経済へ、多様な価値観を力にする社会へ、政治との距離がもっともっと身近に感じられる民主主義へ、私たちと共に進んでほしい。そう考えています。私には、あなたの力が必要です。

続いて、立憲民主党代表・枝野幸男さんのお話です。

枝野:立憲民主党代表の、枝野幸男です。私が訴えたいのは、この夏を、日本の政治の流れを変える転換点にしたいということです。年金の安心は崩れ、働き盛りの世代が賃金の低さや長時間労働に苦しみ、子育て世代は孤立しています。女性の活躍を言いながら、その環境は全く整備されていません。安心して暮らせる医療や介護、保育や教育は整備されず、国民の生活がどんどん苦しくなるなか、今年10月には消費増税が実施されようとしています。老後に2000万円が必要だと無責任に開き直る政治を、このまま続けてよいのでしょうか。

政治とは、あなたの、国民の暮らしを豊かにするために存在しています。現在の日本経済を停滞させている最も大きな要因は、国民の暮らしが厳しく、将来の見通しにも不安を感じていることです。何よりあなたを豊かにする経済を取り戻しましょう。そして何より、現在の政治はあなたの現実とつながっているでしょうか。

国会には1割程度しか女性はおらず、LGBTをはじめとするセクシャルマイノリティーや、障害当事者の声も政治には届いていません。氷河期世代、いわゆるロストジェネレーションの不安に寄り添う姿勢も、人口流出にさらされた地方の機関に向き合う姿勢もありません。

これからの日本は、かつてない人口減少と超高齢化の時代を迎えます。必要なのは、国民一人一人の抱える課題や、あなたの暮らしの声から始まる政治です。あなたの声から始まる政治をここから始めましょう。立憲民主党の候補者に投票していただくあなたの1票が、新しい政治を作る力になります。

立憲民主党の政見放送でした。

著者プロフィール

ポリタス編集部
ぽりたすへんしゅうぶ

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