WO2024024060A1 - スライドファスナー用エレメント部材及びスライドファスナー付き製品 - Google Patents

Abstract

エレメント（４０）の胴部（４１）には、固定部材（１５）に対して前記噛合部と反対側である反噛合部側に、固定部材（１５）に向かって凹む凹部（４５）がエレメント（４０）の幅方向に沿って設けられる。凹部（４５）は、エレメント（４０）の幅方向中央部よりも幅方向両端部において深さが深くなるように形成される。これにより、エレメント部材（１０）が生地に縫着された際、固定部材（１５）と生地（６）のエレメント取付縁部（７）との間に生じる隙間を極力抑制して、外観性を向上できる。

Description

スライドファスナー用エレメント部材及びスライドファスナー付き製品

　本発明は、複数のファスナーエレメントが固定部材に取着されたスライドファスナー用エレメント部材、及びスライドファスナー用エレメント部材を１組有するスライドファスナー付き製品に関する。

　スライドファスナーは、一般的に、衣料品、日用雑貨品、産業用資材などの製品や、自動車、列車、航空機等の各種シート類などの製品の開閉具として多く使用されている。このような各種の製品に使用されるスライドファスナーは、一般的に、ファスナーテープのテープ側縁部にエレメント列が形成された左右一対のファスナーストリンガーと、左右のエレメント列に沿って摺動するスライダーとを有する。また、スライドファスナーの一つとして、左右のファスナーストリンガーを分離して離間可能にする開離嵌挿具が設けられたスライドファスナーが知られている。

　特許文献１には、ファスナーテープを用いることなくスライドファスナーが形成され、且つ、開離嵌挿具がスライドファスナーの所定位置に設けられるスライドファスナー付き製品が記載されている。具体的には、複数のエレメントが固定部材にそれぞれ取着されて左右のエレメント部材を形成し、各エレメント部材が衣服を形成する左右の生地にそれぞれ縫着されている。

　また、特許文献１では、エレメントの胴部は、生地に対向して配される側面部に、生地のエレメント取付縁部の一部が挿入される挿入凹部を、エレメント部材の長さ方向に沿って設け、各ファスナーエレメントを所定の向きでエレメント取付縁部にしっかりと安定して固定できることが記載されている。

日本国特許第６７８６１８３号明細書

　ところで、特許文献１に記載のようなスライドファスナー付き製品では、エレメント部材が生地に縫着された際、エレメントと生地のエレメント取付縁部は接触するものの、実際には固定部材と生地のエレメント取付縁部は接触しないことが多い。そのため、固定部材と生地のエレメント取付縁部との間に比較的大きな隙間が生じ、平面視した際に見栄えが悪くなる問題が発生することがあった。そこで、外観性向上の観点からさらなる改善が求められる。

　本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、エレメント部材が生地に縫着された際、固定部材と生地のエレメント取付縁部との間に生じる隙間を極力抑制して、外観性を向上できるスライドファスナー用エレメント部材及びスライドファスナー付き製品を提供することにある。

　上記課題を解決するため、本発明は以下の構成によって達成される。
（１）　紐状の固定部材と、前記固定部材に取着されるとともにエレメント列を形成する複数のエレメントと、を備えるスライドファスナー用エレメント部材であって、
　前記エレメントは、噛合相手側のエレメントと噛合する噛合部と、前記噛合部から前記エレメントの前後方向に向かって延出し、前記固定部材に固定される胴部と、を有し、
　前記胴部には、前記固定部材に対して前記噛合部と反対側である反噛合部側に、前記固定部材に向かって凹む凹部が前記エレメントの幅方向に沿って設けられ、
　前記凹部は、前記エレメントの幅方向中央部よりも幅方向両端部において深さが深くなるように形成される、スライドファスナー用エレメント部材。
（２）　前記エレメントの胴部は、前記エレメントの高さ方向において、前記固定部材に対して表側及び裏側にそれぞれ位置する表側胴部と裏側胴部とを備え、
　前記凹部は、前記表側胴部と前記裏側胴部の対向面間に形成され、
　前記凹部内には、前記エレメントの幅方向中央部において、前記表側胴部と前記裏側胴部とを連結し、前記固定部材と前記反噛合部側で接触する連結部が設けられる、（１）に記載のスライドファスナー用エレメント部材。
（３）　前記凹部内では、前記エレメントの幅方向両端部において、前記固定部材が前記反噛合部側に露出している、（２）に記載のスライドファスナー用エレメント部材。
（４）　前記凹部内には、前記エレメントの幅方向両端部において、前記表側胴部と前記裏側胴部とを連結し、前記固定部材と前記反噛合部側で接触する薄肉連結部が設けられる、（２）に記載のスライドファスナー用エレメント部材。
（５）　前記凹部は、前記表側胴部と前記裏側胴部にそれぞれ形成される傾斜面によって、前記固定部材側から前記反噛合部側に向かって前記高さ方向の間隔が徐々に広くなるテーパ状に形成され、
　前記連結部は、前記反噛合部側に、前記表側胴部及び前記裏側胴部の各傾斜面に連結する平坦な側面を有する、（２）～（４）のいずれかに記載のスライドファスナー用エレメント部材。
（６）　前記凹部の最大開口寸法は、前記エレメントの高さ寸法よりも小さい、（１）～（５）のいずれかに記載のスライドファスナー用エレメント部材。
（７）　（１）～（６）のいずれかに記載の左右一対のスライドファスナー用エレメント部材と、
　前記複数のエレメントによりそれぞれ形成される左右のエレメント列を噛合するためのスライダーと、
　前記左右一対のスライドファスナー用エレメント部材が取着されるファスナー被着部材と、
を備える、スライドファスナー付き製品。

　本発明のスライドファスナー用エレメント部材及びスライドファスナー付き製品によれば、エレメント部材が生地に縫着された際、固定部材と生地のエレメント取付縁部との間に生じる隙間を極力抑制して、外観性を向上できる。

図１は、本発明の一実施形態に係るスライドファスナー付き製品の要部を模式的に示す平面図である。 図２は、図１に示したスライドファスナー付き製品を裏面側から拡大して模式的に示す底面図である。 図３は、図１に示したスライドファスナー付き製品を模式的に示す断面図である。 図４は、図１に示したスライドファスナー付き製品に用いられる、固定部材に取着されたエレメントを示す斜視図である。 図５Ａは、図４に示したエレメントの平面図である。 図５Ｂは、図５Ａのエレメントを後方から見た側面図である。 図５Ｃは、図５Ａのエレメントを下方から見た下面図である。 図５Ｄは、図５Ａのエレメントを前方から見た側面図である。 図６は、エレメントを生地に対して回転させた状態を示す側面図である。 図７は、図１のＶＩＩ－ＶＩＩ線に沿ったスライドファスナー付き製品の断面図である。 図８は、図１に示したスライドファスナー付き製品に用いられる、固定部材に取着されたエレメントの変形例を示す斜視図である。 図９は、図８に示したエレメントを下方から見た下面図である。

　以下、本発明の一実施形態に係るスライドファスナー用エレメント部材及びスライドファスナー付き製品について図面に基づいて詳細に説明する。
　なお、本明細書中、「上下方向」とは、スライダーの摺動方向であり、エレメント部材の長手方向及びエレメントの幅方向を言い、特に、スライダーが左右一対のエレメント列を噛合させるように摺動する方向を「上方」とし、左右のエレメント列を分離させるように摺動する方向を「下方」とする。また、「左右方向」とは、一対のエレメント列が並べられる方向で、スライダーの摺動方向に直交する方向であり、エレメントの前後方向と言い換えることもでき、噛合相手側のエレメントに向かう方向を「前方」とし、その反対側を「後方」とする。さらに、「表裏方向」とは、上下方向と左右方向に直交する方向であり、エレメントの高さ方向と言い換えることもできる。また、一対の部材を、図面に基づいて「左右の」部材と表現することもある。

　本実施形態に係るスライドファスナー付き製品１は、スライドファスナー付きの衣服（衣料品）であり、このスライドファスナー付き製品１の前身頃の前立て部に、図１に示すようなスライドファスナー５が形成されている。また、このスライドファスナー付き製品１において開閉部となる前身頃（特に、前立て部）を形成する左右の生地６に、後述する左右のエレメント部材１０をそれぞれ取り付けるための左右のエレメント取付縁部７が設けられている。

　この場合、スライドファスナー付き製品１の前立て部を構成する生地６（ガーメント生地とも言う）が、エレメント部材１０が取着されるファスナー被着部材となる。従って、本実施形態で形成されるスライドファスナー５は、図１に示すように、生地６に直接固定され、エレメント列１１を形成する左右一対のエレメント部材１０と、左右のエレメント列１１を噛合及び分離させることが可能なスライダー３０とを有する。

　本実施形態において、ファスナー被着部材となる生地６の厚さ、形態、及び、柔軟性等の性質については特に限定されるものではないが、生地６は、ミシンによる縫製加工を行うときにミシン針が刺通可能に形成されていることが好ましい。

　本実施形態において、生地６に設けられるエレメント取付縁部７は、完成したスライドファスナー付き製品１において、左右の前立て部を構成する生地６の互いに対向する対向側縁から、その生地６の内側に向けてエレメント部材１０の幅方向に所定の寸法を有するとともに、エレメント部材１０の長さ方向に沿って連続的に形成されている。本実施形態の場合、エレメント取付縁部７は、幅方向において、少なくとも上記対向側縁から、折り返し側取付縁部９の先端までの範囲を含む部分である。

　左右の各エレメント取付縁部７は、例えば図３に示すように、生地６の裁断端部となる側縁部が、裏面側にＵ字状に折り返されることによって形成される。このように、エレメント取付縁部７が形成されることにより、エレメント取付縁部７が、薄い生地６の他の部分よりも局部的に厚く形成され、エレメント取付縁部７の強度を高めることができる。

　それにより、エレメント取付縁部７に、後述するように固定用縫製部２０の縫製糸２１（後述する上糸２１ａ及び下糸２１ｂ）が刺通しても、その縫製糸２１によってエレメント取付縁部７が切断され難くなり、エレメント取付縁部７の耐久性を高めることができる。さらに、エレメント取付縁部７の強度が高められることによって、そのエレメント取付縁部７にエレメント部材１０をしっかりと固定できるとともに、エレメント取付縁部７に固定された各ファスナーエレメント（以下、エレメントとも称す）４０の位置及び姿勢を安定させることができる。

　さらに、生地６の側縁部がＵ字状に折り返されることにより、例えば生地６の側端縁に解れが生じていても、その解れがエレメント取付縁部７の裏面側に隠されて、外側に表出しないようにすることができる。それによって、衣服１が、良好な外観品質（見栄え）を備えることができる。また、生地６の側端縁に生じている解れに起因して、左右のエレメント列１１の噛み合わせが悪くなることや、スライダー３０の摺動性（摺動の円滑さ）が低下することを防止できる。

　さらに、本実施形態では、例えばエレメント取付縁部７の表面及び裏面の少なくとも一方に、及び／又は、エレメント取付縁部７のＵ字状に折り返されている側縁部の内側（上下の折り返し部の間）に、図示しない樹脂フィルムなどの補強シート部材を貼着して取り付けることや、エレメント部材１０と一緒に縫い付けることも可能である。これによっても、エレメント取付縁部７を補強することができる。なお、本発明において、この衣服の生地の構成は特に限定されるものではなく、衣服の用途などに応じて適宜変更することができる。

　本実施形態におけるスライドファスナー用エレメント部材１０は、紐状の固定部材１５と、固定部材１５に取着される複数の独立したエレメント４０とを備える。固定部材１５は１本の紐状である。複数の独立したエレメント４０は、エレメント４０の幅方向に一定の間隔で固定部材１５に取着され、エレメント列１１を形成する。エレメント部材１０は、一対（２つ）を１組として扱う。図１における左右のエレメント部材１０は、それぞれスライドファスナー付き製品１に設けられた左右のエレメント取付縁部７の端部に沿って縫着されている。

　固定部材１５は、引き揃えられた複数本のマルチフィラメントからなる芯糸を、複数の編糸で編成される袋織部で包み込むことにより形成される紐体（ニットコードとも言われる）であり、可撓性を備える。なお本発明で用いられる固定部材１５は、複数のエレメント４０を取着できれば特に限定されず、例えばモノフィラメントや撚糸（撚紐）により形成されていても良い。固定部材１５は、長さ方向に直交する断面が略円形を呈する部材であり、図３に示すように、エレメント４０内では変形により扁平な断面形状を有している。ただし、本発明において、固定部材の断面形状は特に限定されない。

　エレメント部材１０の各エレメント４０は、例えば、ポリアセタールなどの熱可塑性樹脂を固定部材１５に射出成形することにより、固定部材１５と一体的に、且つ、固定部材１５の一部の外周面全体を覆って形成されている。なお、本発明において、エレメント４０の材質は、上述の合成樹脂に限定されるものではなく、例えばその他の合成樹脂又は金属でエレメントを形成することも可能である。また、本発明のエレメント部材は、エレメントが固定部材に射出成形で形成されたものに限定されず、例えば、予め所定の形状に形成されたエレメントを、固定部材に溶着又は接着などによって固着されて形成されるものも含む。

　本実施形態の各エレメント４０は、図２、図４及び図５Ａ～図５Ｃにも示すように、噛合相手側のエレメント部材１０のエレメント４０と噛合する噛合部４２と、噛合部４２からエレメント４０の前後方向（平面視して固定部材１５の延出方向に直交する方向）に向かって延出し、固定部材１５に固定される胴部４１と、を有する。

　本実施形態の各エレメント４０は、エレメント４０の高さ方向の略中間位置（本実施形態では、エレメント４０の高さ方向において固定部材１５の中心位置）を基準にして区別されるエレメント表半部４３とエレメント裏半部４４とを有する。エレメント表半部４３とエレメント裏半部４４とは、互いに異なる形状を有する。この場合、エレメント表半部４３の表面とエレメント裏半部４４の裏面とは、エレメント４０の高さ方向に直交するとともに互いに平行に配されている。

　エレメント表半部４３は、噛合相手側のエレメントと噛合する表側噛合頭部４３ｂと、表側噛合頭部４３ｂからエレメント部材１０の後方に向かって延出し、エレメント裏半部４４との間に固定部材１５を挟持する表側胴部４３ａとを有する。

　表側胴部４３ａは、略直方体状に形成されている。また、表側噛合頭部４３ｂは、エレメント幅が表側噛合頭部４３ｂの先端に向けて２段階で漸次減少する形状を呈しており、表側胴部４３ａ側に形成された第１漸減部４６ａと、第１漸減部４６ａから段部４６ｃを介して先端側に形成された第２漸減部４６ｂとを有している。

　また、図５Ｄに示すように、第１漸減部４６ａ及び第２漸減部４６ｂにおけるエレメント側面（上面及び下面）は、エレメント幅をエレメント表面に向けて漸減させる傾斜面に形成されている。

　エレメント裏半部４４は、噛合相手側のエレメントと噛合する裏側噛合頭部４４ｃと、裏側噛合頭部４４ｃからエレメントの後方に向かって延出するとともに括れた形状を有する裏側首部４４ｂと、裏側首部４４ｂから更にエレメントの後方に延出する裏側胴部４４ａと、を有する。本実施形態では、裏側首部４４ｂ及び裏側胴部４４ａは、エレメント表半部４３との間に固定部材１５を挟持する。
　表側胴部４３ａと、裏側首部４４ｂ及び裏側胴部４４ａとは、エレメント４０の高さ方向において、固定部材１５に対して表側及び裏側にそれぞれ位置する。

　エレメント表半部４３では、表側噛合頭部４３ｂのエレメント側面を噛合相手側のエレメント４０の表側噛合頭部４３ｂのエレメント側面に接触させ、また、エレメント裏半部４４では、裏側首部４４ｂと裏側噛合頭部４４ｃとにより、噛合相手側のエレメント４０のエレメント裏半部４４と係合することで、左右のエレメント列１１は噛合する。したがって、表側噛合頭部４３ｂ、裏側首部４４ｂ、及び裏側噛合頭部４４ｃは、噛合部４２を構成している。すなわち、エレメント４０において、胴部４１は固定部材１５に固定されるが、同時に、噛合部４２の一部も固定部材１５に固定されてもよい。

　さらに、胴部４１の生地６に対向して配される側面部、即ち、胴部４１において、固定部材１５に対して噛合部４２と反対側である反噛合部側（エレメント４０の後方）の側面部には、固定部材１５に向かって凹む凹部４５がエレメント４０の幅方向に沿って設けられている。エレメント４０が射出成形される場合には、この凹部４５は、後述する連結部５０と共に、エレメント４０が射出成形される際に用いられるスライドコア（図示せず）によって形成される。

　具体的に、凹部４５は、表側胴部４３ａと裏側胴部４４ａにそれぞれ形成される対向面である傾斜面４５ａ，４５ｂによって、固定部材１５側から反噛合部側に向かって高さ方向の間隔が徐々に広くなるテーパ状に形成される。また、凹部４５の開口縁部には、互いに平行な平坦面４５ａ１，４５ｂ１が、傾斜面４５ａ，４５ｂに隣接して形成されている。

　また、凹部４５内には、エレメント４０の幅方向中央部において、表側胴部４３ａと裏側胴部４４ａとを連結し、固定部材１５と反噛合部側で接触する連結部５０が設けられる。連結部５０は、エレメント４０の高さ方向に沿った断面において略台形形状に形成され、反噛合部側に、表側胴部４３ａ及び裏側胴部４４ａの各傾斜面４５ａ，４５ｂに連結する平坦な側面５０ａを有する。なお、本願請求項における「平坦な側面」とは、多少のテーパや曲率を有する側面や、微細な凹凸等が設けられた略平坦な側面を含む。
　したがって、図３に示すように、エレメント４０の胴部４１は、エレメント４０の幅方向中央部において、エレメント４０の高さ方向の中央部に保持された固定部材１５の外周面全体を覆っている。
　連結部５０は、エレメント４０の胴部４１の剛性を確保できる大きさであればよく、例えば、エレメント４０の幅方向両端部における凹部４５の深さＤ２の１／４以上の厚さＴ１を有し（図５Ｃ参照）、エレメント４０の幅方向において、エレメント４０の幅寸法Ｗの１／４以上の幅Ｗ１を有する（図５Ｂ参照）ことが好ましい。

　一方、凹部４５内では、エレメント４０の幅方向両端部において、固定部材１５が反噛合部側に露出している。ただし、２つの傾斜面４５ａ，４５ｂによって与えられる、固定部材１５が露出する高さ方向の間隔Ｌ１は、固定部材１５の高さ寸法Ｈ１よりも十分に小さいので（図５Ｂ、図５Ｃ参照）、固定部材１５の外周面の大部分は、エレメント４０の幅方向両端部においても、十分に包み込まれて胴部４１内に保持されており、胴部４１内で位置ずれすることはない。

　したがって、図５Ｃに示すように、凹部４５は、エレメント４０の幅方向中央部の深さＤ１よりも幅方向両端部の深さＤ２が深くなるように形成される。これにより、エレメント部材１０が生地６のエレメント取付縁部７に縫着された際、凹部４５内に収容される生地６のエレメント取付縁部７は、エレメント４０の幅方向中央部よりも幅方向両端部において、噛合部側まで入り込むことができる。この結果、図１及び図２に示すように、エレメント部材１０の表裏方向から見て、隣り合うエレメント４０間の固定部材１５と、固定部材１５に対向する生地６のエレメント取付縁部７との間の隙間が無くなる、または、十分に小さくなり、スライドファスナー付き製品１の外観性を向上できる。なお、図２においては、説明の便宜上、固定部材１５と生地６のエレメント取付縁部７との間に隙間を設けているが、実際には固定部材１５が弾性を有するので、固定部材１５がエレメント４０の前後方向にやや膨らみ、隙間は目立たない。また、エレメント４０の幅方向中央部における凹部の深さＤ１は、幅方向両端部の深さＤ２よりも浅いので、エレメント４０の胴部４１における剛性を確保することができる。

　一方、エレメント４０の幅方向中央部では、エレメント取付縁部７の対向側縁７ａは、連結部５０に突き当てられて、先端部分がエレメント４０の高さ方向に膨らんだ形状となって凹部４５内に収容されている。

　なお、本実施形態では、凹部４５は、表側胴部４３ａと裏側胴部４４ａの平坦な傾斜面４５ａ，４５ｂによって構成されているが、表側胴部４３ａと裏側胴部４４ａの対向面間に形成されればよく、傾斜面４５ａ，４５ｂの代わりに、凹状の湾曲面としてもよい。
　また、連結部５０も、エレメント４０の剛性を確保できるものであれば、他の形状であってもよい。

　さらに、凹部４５の最大開口寸法Ｌ２は、生地６のエレメント取付縁部７の表裏方向における高さ寸法Ｈ３よりも大きい（図３参照）。これにより、図６に示すように、生地６のエレメント取付縁部７に対してエレメント部材１０が固定部材１５回りに回転するような力が作用した場合であっても、エレメント取付縁部７の対向側縁７ａは、凹部４５内に収容された状態が維持され、生地６がエレメント４０の表面に乗り上げることも防止できる。

　上述のようなエレメント部材１０は、生地６のエレメント取付縁部７に対して、幅方向の外側に隣接する位置に並べられて、固定用縫製部２０（固定用縫製線）によって固定されている。この場合、固定用縫製部２０は、千鳥縫いミシンの縫製により形成されるとともに、本縫いにより長さ方向に対してジグザグ状に折れ曲がって形成される。この固定用縫製部２０によって、エレメント部材１０が、各エレメント４０の胴部４１を生地６のエレメント取付縁部７に接触させた状態でエレメント取付縁部７に固定される。

　ここで、千鳥縫いミシンとは、ミシンの送り方向に交差する交差方向に沿ってミシン針を揺動させながら、生地６等を本縫いでジグザグに縫うことが可能なミシンである。なお、千鳥縫いミシンにおけるミシン針の揺動を千鳥振りと言うこともある。このような千鳥縫いミシンを用いるとともに、その千鳥縫いミシンに、例えばミシン針の針落ち位置となるＸ座標（送り方向の位置）とＹ座標（交差方向の位置）の座標データを設定して縫製を行うことにより、縫製後に形成される固定用縫製部２０を、千鳥縫いミシンの送り方向に対し、上記交差方向にジグザグ状となるように容易に屈曲させることができる。

　本縫いにより形成される固定用縫製部２０の縫製糸２１は、エレメント取付縁部７の表面を走行するとともに固定部材１５の表面側半部に接する上糸（針糸）２１ａと、エレメント取付縁部７の裏面を走行するとともに固定部材１５の裏面側半部に接する下糸（ボビン糸）２１ｂとを有する。この場合、固定用縫製部２０は本縫いで形成されるため、上糸２１ａと下糸２１ｂとは、両者が交差する部分を除いて、上下方向において互いに面対称な位置関係で配される。

　なお、本縫いの上糸２１ａと下糸２１ｂとには、従来の一般的なミシン糸が用いられる。また、本縫いにおける上糸２１ａと下糸２１ｂとは、固定用縫製部２０がエレメント取付縁部７を刺通する刺通位置と、固定部材１５の外周面に接する位置とにおいて、互いに交差（交錯）している。

　また、本実施形態のエレメント列１１に取り付けられるスライダー３０は、図１に示したように、スライダー胴体３１と、そのスライダー胴体３１に保持される引手３２とを有する。本実施形態のスライダー胴体３１は、射出成形されたエレメント４０に対して一般的に用いられる従来のスライダー胴体と実質的に同様の構造を有する。すなわち、図７に示すように、本実施形態のスライダー胴体３１は、上翼板３３と、上翼板３３と離間して平行に配される下翼板３４と、上翼板３３及び下翼板３４の前端部（肩口側端部）間を連結する連結柱（図示せず）と、上翼板３３及び下翼板３４の左右側縁部に配される上下のフランジ部３６，３７と、上翼板３３の上面に配されるとともに引手３２を保持する引手取付部３８とを有する。

　また、スライダー胴体３１の前端部には、連結柱を間に挟んで左右の肩口が形成され、スライダー胴体３１の後端部には後口が形成されている。上翼板３３及び下翼板３４間には、左右の肩口と後口とを連通する略Ｙ字形状のエレメント案内路が形成されている。このような構造を有するスライダー３０を用いることにより、衣服１のエレメント取付縁部７に直接固定された左右のエレメント部材１０の噛合・分離を円滑に行うことができる。

　また、エレメント４０の凹部４５は、スライダー３０との寸法関係において、凹部４５の最大開口寸法Ｌ２は、エレメントの高さ寸法Ｈ２よりも小さい。これにより、表側胴部４３ａ及び裏側胴部４４ａの反噛合部側には、側面部４７ａ，４７ｂが設けられ、スライダー３０の上下フランジ部３６，３７の内側面を案内することができる。さらに、凹部４５の最大開口寸法Ｌ２は、上下フランジ部３６，３７との間隔Ｌ３よりも狭く設計されているので、エレメント４０の側面部４７ａ，４７ｂと傾斜面４５ａ，４５ｂとの開口縁部が、上下フランジ部３６，３７の内側面に摺接して、この内側面を摩耗するのを防止することができる。

　以上説明したように、本実施形態のスライドファスナー付き製品１では、胴部４１の反噛合部側に形成された凹部４５の深さが、エレメント４０の幅方向中央部よりも幅方向両端部において深くなるように形成されるので、凹部４５内に収容される生地６のエレメント取付縁部７は、エレメント４０の幅方向中央部よりも幅方向両端部において、噛合部側まで入り込むことができる。したがって、エレメント部材１０の表裏方向から見て、隣り合うエレメント４０間の固定部材１５と、固定部材１５に対向する生地６のエレメント取付縁部７との間の隙間が無くなる、または、十分に小さくなり、スライドファスナー製品１の外観性を向上できる。

　なお、上記実施形態では、エレメント４０の幅方向両端部において、固定部材１５が反噛合部側に露出しているが、本発明はこれに限らず、例えば、図８及び図９に示すように、凹部４５内には、エレメント４０の幅方向両端部において、表側胴部４３ａと裏側胴部４４ａとを連結し、固定部材１５と反噛合部側で接触する薄肉連結部６０が射出成形の際に設けられてもよい。薄肉連結部６０は、エレメント４０の幅方向において、連結部５０とも連続している。また、エレメント部材１０が生地６のエレメント取付縁部７に縫着された際、エレメント４０の幅方向両端部において、生地６のエレメント取付縁部７は、薄肉連結部６０と接触する。

　ただし、この場合にも、薄肉連結部６０の厚さ寸法Ｔ２は、連結部５０の厚さ寸法Ｔ１よりも小さく、凹部４５は、エレメント４０の幅方向中央部よりも幅方向両端部において深さが深くなるように形成されている（Ｄ１＜Ｄ２）。
　したがって、上記実施形態と同様に、エレメント部材１０の表裏方向から見て、隣り合うエレメント４０間の固定部材１５と、固定部材１５に対向する生地６のエレメント取付縁部７との間の隙間が無くなる、または、十分に小さくなり、スライドファスナー製品１の外観性を向上できる。
　なお、薄肉連結部６０は、図８に示すように、必ずしもエレメント４０の幅方向全面に設けられている必要はない。例えば、薄肉連結部６０はエレメント４０の幅方向の一部に設けられていてもよい。また、厚さ寸法Ｔ２も必ずしも一定でなくてもよく、例えば、薄肉連結部６０の一部に貫通孔や切欠が設けられていてもよい。

　なお、上記実施形態では、スライドファスナー製品として衣服について説明したが、本発明に係るスライドファスナー製品には、衣服（衣料品）だけでなく、靴類や鞄類などの日用雑貨品、産業用資材などの製品、自動車、列車、航空機などの各種シート類などのさまざま製品が含まれる。

　また、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、実施可能な範囲において、適宜変更、改良等が可能である。

　以上のとおり、本明細書には次の事項が開示されている。
（１）　紐状の固定部材と、前記固定部材に取着されるとともにエレメント列を形成する複数のエレメントと、を備えるスライドファスナー用エレメント部材であって、
　前記エレメントは、噛合相手側のエレメントと噛合する噛合部と、前記噛合部から前記エレメントの前後方向に向かって延出し、前記固定部材に固定される胴部と、を有し、
　前記胴部には、前記固定部材に対して前記噛合部と反対側である反噛合部側に、前記固定部材に向かって凹む凹部が前記エレメントの幅方向に沿って設けられ、
　前記凹部は、前記エレメントの幅方向中央部よりも幅方向両端部において深さが深くなるように形成される、スライドファスナー用エレメント部材。
　この構成によれば、エレメント部材が生地に縫着された際、固定部材と生地のエレメント取付縁部との間に生じる隙間を極力抑制して、外観性を向上できる。

（２）　前記エレメントの胴部は、前記エレメントの高さ方向において、前記固定部材に対して表側及び裏側にそれぞれ位置する表側胴部と裏側胴部とを備え、
　前記凹部は、前記表側胴部と前記裏側胴部の対向面間に形成され、
　前記凹部内には、前記エレメントの幅方向中央部において、前記表側胴部と前記裏側胴部とを連結し、前記固定部材と前記反噛合部側で接触する連結部が設けられる、（１）に記載のスライドファスナー用エレメント部材。
　この構成によれば、エレメントの幅方向中央部に設けられる連結部によって、エレメントの胴部における剛性を確保することができる。

（３）　前記凹部内では、前記エレメントの幅方向両端部において、前記固定部材が前記反噛合部側に露出している、（２）に記載のスライドファスナー用エレメント部材。
　この構成によれば、エレメントの幅方向両端部において、生地のエレメント取付縁部を固定部材に接触させることができ、エレメント部材が生地に縫着された際、固定部材と生地のエレメント取付縁部との間に生じる隙間を極力抑制して、外観性を向上できる。

（４）　前記凹部内には、前記エレメントの幅方向両端部において、前記表側胴部と前記裏側胴部とを連結し、前記固定部材と前記反噛合部側で接触する薄肉連結部が設けられる、（２）に記載のスライドファスナー用エレメント部材。
　この構成によれば、エレメントの幅方向両端部に設けられる薄肉連結部によって、エレメントの胴部の剛性をより確保することができる。
　また、エレメントを射出成形する際に、エレメントの幅方向両端部において、固定部材とスライドコアとの間に樹脂が入り込む場合であっても、固定部材と生地のエレメント取付縁部との間に生じる隙間を極力抑制して、外観性を向上できる。

（５）　前記凹部は、前記表側胴部と前記裏側胴部にそれぞれ形成される傾斜面によって、前記固定部材側から前記反噛合部側に向かって前記高さ方向の間隔が徐々に広くなるテーパ状に形成され、
　前記連結部は、前記反噛合部側に、前記表側胴部及び前記裏側胴部の各傾斜面に連結する平坦な側面を有する、（２）～（４）のいずれかに記載のスライドファスナー用エレメント部材。
　この構成によれば、テーパ状の凹部によって、生地のエレメント取付縁部を十分に収容することができ、また、生地のエレメント取付縁部に対してエレメント部材が固定部材回りに回転するような力が作用した場合であっても、エレメント取付縁部の先端部分は、凹部内に収容された状態が維持され、生地がエレメントの表面に乗り上げることも防止できる。

（６）　前記凹部の最大開口寸法は、前記エレメントの高さ寸法よりも小さい、（１）～（５）のいずれかに記載のスライドファスナー用エレメント部材。
　この構成によれば、表側胴部及び裏側胴部の反噛合部側には、側面部が設けられるので、スライダーの上下フランジ部の内側面を案内することができる。

（７）　（１）～（６）のいずれかに記載の左右一対のスライドファスナー用エレメント部材と、
　前記複数のエレメントによりそれぞれ形成される左右のエレメント列を噛合するためのスライダーと、
　前記左右一対のスライドファスナー用エレメント部材が取着されるファスナー被着部材と、
を備える、スライドファスナー付き製品。
　この構成によれば、エレメント部材が生地に縫着された際、固定部材と生地のエレメント取付縁部との間に生じる隙間を極力抑制して、外観性を向上できる。また、エレメントの幅方向中央部における凹部の深さは、幅方向両端部よりも浅いので、エレメントの胴部における剛性を確保することができる。

１     　スライドファスナー付き製品
６     　生地（ファスナー被着部材）
７     　エレメント取付縁部
１０   　エレメント部材（スライドファスナー用エレメント部材）
１１   　エレメント列
１５   　固定部材
３０   　スライダー
３１   　スライダー胴体
３２   　引手
４０   　ファスナーエレメント（エレメント）
４１   　胴部
４２   　噛合部
４３   　エレメント表半部
４３ａ 　表側胴部
４３ｂ 　表側噛合頭部
４４   　エレメント裏半部
４４ａ 　裏側胴部
４４ｂ 　裏側首部
４４ｃ 　裏側噛合頭部
４５ａ，４５ｂ       　傾斜面（対向面）
Ｈ     　エレメントの高さ寸法
Ｌ２   　凹部の最大開口寸法

Claims (7)

1. 　紐状の固定部材（１５）と、前記固定部材に取着されるとともにエレメント列（１１）を形成する複数のエレメント（４０）と、を備えるスライドファスナー用エレメント部材（１０）であって、
   　前記エレメントは、噛合相手側のエレメントと噛合する噛合部（４２）と、前記噛合部から前記エレメントの前後方向に向かって延出し、前記固定部材に固定される胴部（４１）と、を有し、
   　前記胴部には、前記固定部材に対して前記噛合部と反対側である反噛合部側に、前記固定部材に向かって凹む凹部（４５）が前記エレメントの幅方向に沿って設けられ、
   　前記凹部は、前記エレメントの幅方向中央部よりも幅方向両端部において深さが深くなるように形成される、スライドファスナー用エレメント部材（１０）。
2. 　前記エレメントの胴部は、前記エレメントの高さ方向において、前記固定部材に対して表側及び裏側にそれぞれ位置する表側胴部（４３ａ）と裏側胴部（４４ａ）とを備え、
   　前記凹部は、前記表側胴部と前記裏側胴部の対向面（４５ａ，４５ｂ）間に形成され、
   　前記凹部内には、前記エレメントの幅方向中央部において、前記表側胴部と前記裏側胴部とを連結し、前記固定部材と前記反噛合部側で接触する連結部（５０）が設けられる、請求項１に記載のスライドファスナー用エレメント部材（１０）。
3. 　前記凹部内では、前記エレメントの幅方向両端部において、前記固定部材が前記反噛合部側に露出している、請求項２に記載のスライドファスナー用エレメント部材（１０）。
4. 　前記凹部内には、前記エレメントの幅方向両端部において、前記表側胴部と前記裏側胴部とを連結し、前記固定部材と前記反噛合部側で接触する薄肉連結部（６０）が設けられる、請求項２に記載のスライドファスナー用エレメント部材（１０）。
5. 　前記凹部は、前記表側胴部と前記裏側胴部にそれぞれ形成される傾斜面（４５ａ，４５ｂ）によって、前記固定部材側から前記反噛合部側に向かって前記高さ方向の間隔が徐々に広くなるテーパ状に形成され、
   　前記連結部は、前記反噛合部側に、前記表側胴部及び前記裏側胴部の各傾斜面に連結する平坦な側面（５０ａ）を有する、請求項２～４のいずれか１項に記載のスライドファスナー用エレメント部材（１０）。
6. 　前記凹部の最大開口寸法（Ｌ２）は、前記エレメントの高さ寸法（Ｈ）よりも小さい、請求項１～５のいずれか１項に記載のスライドファスナー用エレメント部材（１０）。
7. 　請求項１～６のいずれか１項に記載の左右一対のスライドファスナー用エレメント部材（１０）と、
   　前記複数のエレメントによりそれぞれ形成される左右のエレメント列（１１）を噛合するためのスライダー（３０）と、
   　前記左右一対のスライドファスナー用エレメント部材（１０）が取着されるファスナー被着部材（６）と、
   を備える、スライドファスナー付き製品（１）。

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