WO2023223467A1 - 空気調和装置 - Google Patents
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Definitions
- the vane 103 is pushed toward the center of the cylinder 101 by a spring 104 so as to partition the discharge chamber 101a and the suction chamber 101b.
- the vane 103 is slidably fitted into a vane groove 101c that connects the cylinder 101 and the back pressure chamber 105.
- the back pressure chamber 105 has a circular shape in plan view.
- the discharge pressure of the high-pressure side discharge chamber 101a partitioned by the vane 103 is assumed to be Pd, and the suction pressure of the low-pressure side suction chamber 101b is assumed to be Ps.
- the time zone is specified with reference to the outside temperature in Tokyo.
- the outside temperature varies depending on the installation location (prefecture, country, etc.) of the outdoor unit 7 or the time (each month, etc.)
- the conditions related to temperature may be changed as appropriate.
- the remote control 13 is capable of inputting the time.
- the control device 6 changes the lower limit frequency of the rotary compressor 1 from the first frequency to the second frequency during the time period indicated by the time input to the remote controller 13.
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Abstract
空気調和装置(100)は、冷媒回路(110)と、制御装置(6)と、リモコン(13)と、を備える。冷媒回路(110)は、ロータリ圧縮機(1)と、対象空間外に設置される熱交換器(2)と、膨張弁(12)と、対象空間内に設置される熱交換器(8)と、外気温を検出する温度検出部(4)と、を含む。ロータリ圧縮機(1)は、ピストン(102)と、シリンダ(101)内を高圧側と低圧側とに仕切るベーン(103)と、を含む。制御装置(6)は、対象空間の温度が設定温度となった場合に、ロータリ圧縮機(1)を下限周波数で連続運転するように制御し、ロータリ圧縮機(1)を下限周波数で連続運転しているときに外気温が閾値以上となった場合に、ロータリ圧縮機(1)の下限周波数をピストン(102)とベーン(103)とが離間しない下限周波数+Δfに変更する。
Description
本開示は、空気調和装置に関する。
インバータ式の空気調和装置では、室内温度と設定温度との差が小さくなると圧縮機の周波数を予め定められた下限周波数まで下げる制御を実行している。この下限周波数は、圧縮機が運転可能な最低の周波数に設定される。これにより、従来のインバータ式の空気調和装置は、冷暖房能力を抑えつつ室内温度の変動を小さくしている。
インバータ式の空気調和装置では、運転の能力が低いほど室内負荷の変化に対する追従性が良好となり、空調特性の一つである「快適性」および「省エネルギー性」が共に向上することが知られている。運転の能力を低くするためには、圧縮機の循環流量を少なくすることが有効である。圧縮機の循環流量は、以下の式(1)により定まる。
Gr=Vst×Fx×ρs・・・(1)
Grは、圧縮機の循環量、Vstは、圧縮機の排除容積、Fzは、圧縮機の運転周波数、ρsは、圧縮機の吸入冷媒密度を示す。式(1)において、冷媒の吸入密度および圧縮機の排除容積を一定とした場合、圧縮機の循環量を少なくするためには、圧縮機の運転周波数を小さくし、下限周波数によって運転することが有効である。
Grは、圧縮機の循環量、Vstは、圧縮機の排除容積、Fzは、圧縮機の運転周波数、ρsは、圧縮機の吸入冷媒密度を示す。式(1)において、冷媒の吸入密度および圧縮機の排除容積を一定とした場合、圧縮機の循環量を少なくするためには、圧縮機の運転周波数を小さくし、下限周波数によって運転することが有効である。
ここで、外気温が高い状態では、空気調和装置への負荷が高くなり、圧縮機にかかる負荷も高くなる。特開平03-294738号公報(特許文献1)には、室内温度と設定温度との差が小さくなり圧縮機が下限周波数によって運転されている場合に、圧縮機への負荷が高い状態では周波数を上昇させる技術が開示されている。
ロータリ圧縮機においては、シリンダ内に高圧側と低圧側とを仕切る仕切り板(以下、ベーンとも称する)が設置されている。ベーンは、通常の運転においてピストンと常に接している。しかしながら、ロータリ圧縮機では、ロータリ圧縮機の運転周波数を下げた際にベーンをピストンに押し付ける力(以下、押し付け力とも称する)よりもベーンがピストンから離れる力(以下、離間力とも称する)が大きくなり、ベーンがピストンから離間する(以下、ベーン離間とも称する)可能性がある。
ロータリ圧縮機は、ベーン離間により漏れ損失が増大し成績係数(COP:Coefficient of Performance)が悪化する恐れがある。ロータリ圧縮機におけるベーン離間の問題について考慮していない特開平03-294738号公報(特許文献1)においては、下限周波数による運転中に周波数を変更する際、ベーン離間の発生を抑制することが難しい。
本開示の目的は、ロータリ圧縮機においてベーン離間を抑制することのできる空気調和装置を提供することである。
本開示の空気調和装置は、冷媒回路と、冷媒回路を制御する制御装置と、対象空間の設定温度を入力可能な入力部と、を備える。冷媒回路は、冷媒を圧縮するロータリ圧縮機と、対象空間外に設置される第1熱交換器と、冷媒を減圧する膨張弁と、対象空間内に設置される第2熱交換器と、対象空間外の空気の温度である外気温を検出する第1温度検出部と、を含む。ロータリ圧縮機は、ピストンと、シリンダ内を高圧側と低圧側とに仕切るベーンと、を含む。制御装置は、対象空間の温度が設定温度となった場合に、ロータリ圧縮機を下限周波数で連続運転するように制御し、ロータリ圧縮機を第1周波数で連続運転しているときに外気温が閾値以上となった場合に、ロータリ圧縮機の下限周波数を第1周波数よりも高く、ピストンとベーンとが離間しない第2周波数に変更する。
本開示によれば、ピストンとベーンとが離間しないことを考慮してロータリ圧縮機の周波数が変更されるため、ベーン離間を抑制することができる。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本開示の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されている。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における空気調和装置100の冷媒回路110を示す図である。実施の形態1における空気調和装置100は、室外機7と、室内機11と、リモコン13とを備える。室外機7と室内機11とは、配管により接続され、冷媒回路110を構成する。室外機7は、ロータリ圧縮機1と、四方弁5と、熱交換器2と、ファン3と、温度検出部4と、膨張弁12と、制御装置6aとを備える。室内機11は、熱交換器8と、温度検出部10と、ファン9と、制御装置6bとを備える。
図1は、実施の形態1における空気調和装置100の冷媒回路110を示す図である。実施の形態1における空気調和装置100は、室外機7と、室内機11と、リモコン13とを備える。室外機7と室内機11とは、配管により接続され、冷媒回路110を構成する。室外機7は、ロータリ圧縮機1と、四方弁5と、熱交換器2と、ファン3と、温度検出部4と、膨張弁12と、制御装置6aとを備える。室内機11は、熱交換器8と、温度検出部10と、ファン9と、制御装置6bとを備える。
室外機7は、空調の対象となる空間外に設置される。室内機11は、空調の対象となる空間内に設置される。空調の対象となる空間とは、例えば、建物における室内である。リモコン13は、空気調和装置100において対象空間の設定温度を入力可能な入力部である。ユーザは、リモコン13をインターフェースとして設定温度を入力する。冷媒回路110では、配管を冷媒が循環する。冷媒は、例えば、R22などのHCFC冷媒、R410A,R32などのHFC冷媒、CO2,R290などの自然冷媒などである。冷媒回路110を循環する冷媒は、ここに示す冷媒以外の冷媒であってもよい。
ロータリ圧縮機1は、冷媒を吸入し圧縮して吐出する。四方弁5は、冷媒の循環方向を切替える。熱交換器2は、第1熱交換器として冷媒を空気と熱交換する。ファン3は、熱交換器2に併設され、熱交換器2に対して空気を送風する。温度検出部4は、第1温度検出部として機能し、対象空間外の空気の温度である外気温を検出するサーミスタにより構成される温度センサである。
膨張弁12は、冷媒を膨張し減圧させる。膨張弁12は、例えば、電子膨張弁等の開度を任意に制御することができる装置である。制御装置6aは、第1制御装置として機能し、CPU(Central Processing Unit)6a1と、メモリ(ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory))6a2と、各種信号を入出力するための入出力装置等を含んで構成される。CPU6a1は、ROMに格納されているプログラムをRAM等に展開して実行する。ROMに格納されるプログラムは、制御装置6aの処理手順が記されたプログラムである。制御装置6aは、これらのプログラムに従って、各機器の制御を実行する。この制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
熱交換器8は、第2熱交換器として冷媒を空気と熱交換する。ファン9は、熱交換器8に併設され、熱交換器8に対して空気を送風する。温度検出部10は、第2温度検出部として機能し、対象空間内に設置される熱交換器8に向けて流れる空気の温度(以下、吸込み温度とも称する)を検出するサーミスタにより構成される温度センサである。なお、温度検出部10は、熱交換器8を流れる冷媒の蒸発温度を測定する温度センサであってもよい。
制御装置6bは、第2制御装置として機能し、CPU(Central Processing Unit)6b1と、メモリ(ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory))6b2と、各種信号を入出力するための入出力装置等を含んで構成される。CPU6b1は、ROMに格納されているプログラムをRAM等に展開して実行する。ROMに格納されるプログラムは、制御装置6bの処理手順が記されたプログラムである。制御装置6bは、これらのプログラムに従って、各機器の制御を実行する。この制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
室外機7側の制御装置6aおよび室内機11側の制御装置6bは、お互いに連携して空気調和装置100全体の制御を行う。なお、制御装置6aおよび制御装置6bが実行する制御のアルゴリズムについてはどのような方法であってもよい。制御装置6aおよび制御装置6bに送信される情報および制御について具体的に説明する。
室外機7側の制御装置6aは、温度検出部4により検出された外気温に関する情報、室内機11側の制御装置6bから送信されてくる情報に基づいて各機器を制御する。制御装置6aは、ロータリ圧縮機1のベーン離間の抑制を目的として、運転条件によってロータリ圧縮機1の下限に設定された運転周波数を上げる制御を行う。室内機11側の制御装置6bは、温度検出部10により検出された吸込み温度に関する情報、ユーザからリモコン13を介して指示される運転情報を取得して、室外機7側の制御装置6aに送信する。
なお、制御装置は、室外機7側および室内機11側に別々に設けられる構成について説明したが、制御装置6aおよび制御装置6bの機能を有する制御装置を室外機7側または室内機11側に設置する構成としてもよい。以下では、制御装置6aまたは制御装置6bによって実行される制御をまとめて、制御装置6が実行する処理として説明する。
図1に示す冷媒回路110では、冷房運転中の冷媒の流れ方向を実線の矢印で示し、暖房運転中の冷媒の流れ方向を破線の矢印で示している。冷房運転中の冷媒の流れを例にし、空気調和装置100の運転について説明する。まず、冷媒は、ロータリ圧縮機1によって圧縮され、高温高圧ガスとして吐出される。高温高圧のガス冷媒は、四方弁5を介して熱交換器2に導かれる。高温高圧のガス冷媒は、熱交換器2においてファン3によって送風される空気と熱交換されて冷却され、冷媒の一部または全部が凝縮し、気液二相状態となる。
気液二相状態の冷媒は、膨張弁12により減圧され、熱交換器8に導かれる。気液二相状態の冷媒は、熱交換器8においてファン9よって吸込まれる室内空気と熱交換されて蒸発し、ガス状態となる。熱交換器8において冷却された空気は、ファン9によって対象空間である室内に供給され、室内が冷房される。熱交換後のガス冷媒は、四方弁5を介してロータリ圧縮機1に吸入される。冷房運転中は、このような冷凍サイクルが繰り返される。一方、暖房運転中は、冷房運転中とは逆向きに冷媒が流れ、熱交換器8において冷媒が凝縮されることによって室内が暖房される。
ロータリ圧縮機1の構造について説明する。図2は、実施の形態1のロータリ圧縮機1の概略図である。ロータリ圧縮機1は、シリンダ101と、ピストン102と、ベーン103と、スプリング104と、背圧室105とを備える。シリンダ101は、平面視において円形状であり、吐出される高圧側の冷媒によって満たされる吐出し室101aと、吸引される低圧側の冷媒によって満たされる吸込み室101bとを含む。ピストン102は、回転軸に対し偏心して取付けられており、矢印で示す回転方向に回転する。ピストン102の回転により、一方の吸込み室101bでガス冷媒が吸引され、他方の吐出し室101aでガス冷媒が圧縮される。
ベーン103は、吐出し室101aと、吸込み室101bとを仕切るようにスプリング104によってシリンダ101の中心側に押されている。ベーン103は、シリンダ101と背圧室105とを接続するベーン溝101c内に摺動自在に嵌入されている。背圧室105は、平面視において円形状である。ベーン103によって仕切られる高圧側の吐出し室101aの吐出圧をPd、低圧側の吸込み室101bの吸入圧をPsとする。
図3は、実施の形態1のロータリ圧縮機1の通常運転時の圧縮行程を説明する図である。図3(a)は、ピストン102の回転角度が0degである場合を示し、図3(b)は、ピストン102の回転角度が90degである場合を示し、図3(c)は、ピストン102の回転角度が180degである場合を示し、図3(d)は、ピストン102の回転角度が270degである場合を示している。ベーン103に重ねて記載されている矢印は、ベーン103の運動方向を示している。
ロータリ圧縮機1は、図3(a)から図3(c)にかけて吸込み室101bにおいて低圧のガス冷媒を吸引しながら吐出し室101aにおいてガス冷媒を圧縮する。ロータリ圧縮機1は、図3(c)から図3(d)にかけて吐出し室101aにおいてガス冷媒をさらに圧縮する。圧縮されたガス冷媒は、図3(d)の状態で吐出し室101aから吐出される。その後、ロータリ圧縮機1は、図3(d)の状態から図3(a)の状態へとピストン102が移動し、シリンダ101内が低圧のガス冷媒で満たされる。
ベーン103は、図3(a)から図3(b)にかけてシリンダ101の中心に向けて移動し、図3(c)において移動を停止する。ベーン103は、図3(c)において、低圧側の吸込み室101bの吸入圧Psと高圧側の吐出し室101aの吐出圧Pdとの圧力の均衡が保たれている。ベーン103は、図3(c)から図3(d)にかけてシリンダ101の中心から外側に向けて移動する。ベーン103は、図3(d)の状態から図3(a)の状態に戻り、シリンダ101の中心に向けて移動する。
図4は、実施の形態1のロータリ圧縮機1の内部に生じる力を示す図である。ベーン103には、シリンダ101の中心方向に働く力として、背面のスプリング104による押付け荷重(F1)、背圧室105内の圧力である吐出圧Pd、およびピストン102の回転運動に伴うベーン103の慣性力(F2)が加わる。以下では、シリンダ101の中心方向に働く力の合力を押付け力(Fx)と称する。ベーン103は、押付け力Fxによってピストン102と常に接触している。押付け力Fxは、以下の式(2)により表わされる。
Fx=F1+F2+Pd・・・(2)
このとき、ベーン103に作用するF1,F2は、以下のように表わされる。
このとき、ベーン103に作用するF1,F2は、以下のように表わされる。
F1=Kx[N]
K:バネ定数[N/mm]
x:ベーンの摺動距離[mm]
F2=mα[N]
m:ベーンの質量[kg]
α:ベーンの加速度[m/s2]
ベーン103には、押付け力Fxと反対方向に働く力として、ベーン溝101cとの摩擦力(F3)が加わる。摩擦力F3は、シリンダ101内の差圧(Pd-Ps)によって、ベーン103とシリンダ101のベーン溝101cとの間に荷重がかかることで発生する摺動抵抗である。ベーン103の先端には、シリンダ101内の圧力(Pd、Ps)により摩擦力F3と同一方向の力が生じる。ベーン103に対し押付け力Fxと反対方向に働く力の合力を離間力(Fy)と称する。離間力Fyは、以下の式(3)により表わされる。
K:バネ定数[N/mm]
x:ベーンの摺動距離[mm]
F2=mα[N]
m:ベーンの質量[kg]
α:ベーンの加速度[m/s2]
ベーン103には、押付け力Fxと反対方向に働く力として、ベーン溝101cとの摩擦力(F3)が加わる。摩擦力F3は、シリンダ101内の差圧(Pd-Ps)によって、ベーン103とシリンダ101のベーン溝101cとの間に荷重がかかることで発生する摺動抵抗である。ベーン103の先端には、シリンダ101内の圧力(Pd、Ps)により摩擦力F3と同一方向の力が生じる。ベーン103に対し押付け力Fxと反対方向に働く力の合力を離間力(Fy)と称する。離間力Fyは、以下の式(3)により表わされる。
Fy=F3+Pd+Ps・・・(3)
このとき、ベーンに作用する摩擦力F3は、以下のように表わされる。
このとき、ベーンに作用する摩擦力F3は、以下のように表わされる。
F3=μ(Pd-Ps)
μ:摩擦係数
通常運転時においては、押付け力Fx>離間力Fyの関係が成り立つ。式(2)と式(3)とを整理すると、F1+F2>F3+Pdと表わすことができる。ベーン103は、押付け力Fx>離間力Fyの関係が成り立つ場合に、ピストン102と常に接触することとなる。反対にベーン103は、押付け力Fx<離間力Fyの関係が成り立つ場合にベーン103がピストン102から離間する。ベーン103がピストン102から離間することをベーン離間とも称する。なお、Fx,Fyは、単位面積あたりの力を示している。
μ:摩擦係数
通常運転時においては、押付け力Fx>離間力Fyの関係が成り立つ。式(2)と式(3)とを整理すると、F1+F2>F3+Pdと表わすことができる。ベーン103は、押付け力Fx>離間力Fyの関係が成り立つ場合に、ピストン102と常に接触することとなる。反対にベーン103は、押付け力Fx<離間力Fyの関係が成り立つ場合にベーン103がピストン102から離間する。ベーン103がピストン102から離間することをベーン離間とも称する。なお、Fx,Fyは、単位面積あたりの力を示している。
ベーン離間について詳しく説明する。図5は、ベーン離間が発生する際の圧縮行程を説明する図である。図5(a)は、ピストン102の回転角度が0degである場合を示し、図5(b)は、ピストン102の回転角度が90degである場合を示し、図5(c)は、ピストン102の回転角度が180degである場合を示し、図5(d)は、ピストン102の回転角度が225degである場合を示し、図5(e)は、ピストン102の回転角度が270degである場合を示している。ベーン103に重ねて記載されている矢印は、ベーン103の運動方向を示している。
ロータリ圧縮機1は、図5(a)から図5(b)にかけて吸込み室101bにおいて低圧のガス冷媒を吸引しながら吐出し室101aにおいてガス冷媒を圧縮する。ロータリ圧縮機1は、図5(b)から図5(c)にかけてピストン102の回転角度が変化する際にベーン離間が発生する。図5(c)の状態において、ベーン103には、押付け力Fx<離間力Fyの関係が成り立っている。ベーン103は、通常運転時においてピストン102と常に接触している。しかし、外気温が高くロータリ圧縮機1に高負荷がかかる状態になると、図5(c)の状態に示すように、ベーン103がピストン102に追従できなくなり、ベーン103とピストン102とが離れる状態となる。ベーン離間の発生により、高圧側の吐出し室101aのガス冷媒が低圧側の吸込み室101bへと進入する。
ロータリ圧縮機1は、図5(c)から図5(d)にピストン102の回転角度が変化する際に再びベーン103がシリンダ101の中心方向に移動することによってベーン103がピストン102に追従するようになる。ロータリ圧縮機1は、図5(d)から図5(e)にかけて吐出し室101aにおいてガス冷媒を圧縮する。圧縮されたガス冷媒は、図5(e)の状態で吐出し室101aから吐出される。その後、ロータリ圧縮機1は、図5(e)の状態から図5(a)へとピストン102が移動し、シリンダ101内が低圧のガス冷媒で満たされる。
押付け力Fxと離間力Fyとの関係について検討する。押付け力Fxにおいて、F1は、ベーン溝101cおよびスプリング104の寸法による関数であるためロータリ圧縮機1の運転条件に影響されない。一方、F2は、ロータリ圧縮機1の運転周波数により変化する関数であるため、ロータリ圧縮機1の運転周波数が低くなると小さくなる。
離間力Fyにおいて、F3は、シリンダ101内の差圧(Pd-Ps)によって変化する関数である。F3は、吐出圧Pdが上昇する、あるいは吸入圧Psが低下することにより大きくなる。ここで、式(3)により吸入圧Psが低下することは、離間力Fyを小さくすることにもなる。よって、離間力Fyへの影響は、吐出圧Pdが上昇する方が吸入圧Psが低下するよりも大きい。以上より、ロータリ圧縮機1の運転周波数の低下、もしくは吐出圧Pdの上昇が、押付け力Fx<離間力Fyの関係が成り立つ要因となる。
図6は、ロータリ圧縮機1の運転条件と、ベーン離間の発生条件との関係を示す図である。ロータリ圧縮機1が下限周波数で運転しているときの吐出圧Pdを第1離間発生臨界点とし、ロータリ圧縮機1が下限周波数+Δfで運転しているときの吐出圧Pdを第2離間発生臨界点とする。吸入圧Psが同一となる位置では、外気温がT1である場合よりも外気温がT1よりも高いT2である場合の方が、ロータリ圧縮機1の動作による吐出圧Pdが上昇する。吐出圧Pdの上昇は、押付け力Fx<離間力Fyの関係が成り立つ要因となってしまう。
第1離間発生臨界点におけるロータリ圧縮機1の運転周波数は、外気温T1におけるロータリ圧縮機1の動作点を上回る下限周波数である。このため、外気温T1においては、押付け力Fx>離間力Fyの関係が成り立つ。よって、ロータリ圧縮機1は、外気温T1において下限周波数により運転している場合に、ベーン離間が発生することはない。それに対し、外気温がT1からT2に上昇すると、外気温T2におけるロータリ圧縮機1の動作点が下限周波数を超えてしまう。これにより、ロータリ圧縮機1の動作による吐出圧Pdが上昇し、押付け力Fx<離間力Fyの関係が成り立ってしまう。
本実施の形態では、外気温がT1から閾値であるT2に上昇し押付け力Fx<離間力Fyの関係が成り立ちベーン離間が発生する条件となる場合に、ロータリ圧縮機1の下限周波数を+Δf上昇させる制御を行う。これにより、外気温の上昇によってロータリ圧縮機1の動作による吐出圧Pdが上昇したとしても、ロータリ圧縮機1の運転周波数を上昇させることによって、押付け力Fx>離間力Fyの関係を保つことができる。このようにすれば、ロータリ圧縮機1においてベーン離間を抑制することができる。
次に、制御装置6が実行する制御について説明する。図7は、実施の形態1のロータリ圧縮機1における周波数制御を示すフローチャートである。図7のフローチャートの処理は、制御装置6の制御におけるメインルーチンから、サブルーチンとして繰返し呼び出されて実行される。図7では、冷房運転中の処理について説明する。ユーザによってリモコン13が操作されると、ロータリ圧縮機1が駆動し、空気調和装置100による冷房運転が開始される。
制御装置6は、まずステップS(以下、単に「S」と示す)1において、室内機11の温度検出部10によって検出される吸込み温度とユーザがリモコン13により設定した設定温度との差が小さいか否かを判定する。ここで、差が小さいとは、差が0℃ないし±1℃程度の範囲に収まっている状態である。制御装置6は、S1において、吸込み温度と設定温度との差が大きいと判定した場合(S1のNO)は、ロータリ圧縮機1の運転周波数を上昇させる制御を行い(S3)、処理をサブルーチンからメインルーチンに戻す。S3の処理を行うことにより、吸込み温度を設定温度に近づけることができる。
制御装置6は、S1において、吸込み温度と設定温度との差が小さいと判定した場合(S1のYES)は、ロータリ圧縮機1の運転周波数を低下させる制御を行う(S2)。次いで、制御装置6は、S4において外気温が予め設定した閾値以上であるか否かを判定する。制御装置6は、S4にいて、外気温が閾値より低いと判定した場合(S4のNO)は、ロータリ圧縮機1を予め設定された下限周波数で運転するように制御し(S5)、処理をサブルーチンからメインルーチンに戻す。S5の処理により、吸込み温度と設定温度との差が小さい状態において、ロータリ圧縮機1が運転可能な最低の周波数である下限周波数で運転することができる。
制御装置6は、S4にいて、外気温が閾値以上であると判定した場合(S4のYES)は、ロータリ圧縮機1を下限周波数+Δfで運転するように制御し(S6)、処理をサブルーチンからメインルーチンに戻す。S6の処理により、外気温が閾値以上となりロータリ圧縮機1の動作による吐出圧Pdが上昇し、押付け力Fx<離間力Fyの関係が成り立つことを下限周波数を+Δf上昇させることにより防ぐことができる。なお、制御装置6は、暖房運転時においても閾値は異なるが同様の制御を実行する。
なお、S1の代わりに、制御装置6は、熱交換器8を流れる冷媒の蒸発温度と、蒸発温度に対応して予め設定された設定温度との差が小さいか否かを判定するようにしてもよい。制御装置6は、蒸発温度と設定温度との差が大きいと判定した場合は、ロータリ圧縮機1の運転周波数を上昇させる制御を行い、蒸発温度と設定温度との差が小さいと判定した場合、ロータリ圧縮機1の運転周波数を低下させる制御を行えばよい。
実施の形態2.
実施の形態2は、実施の形態1とは閾値の対象が異なるが、空気調和装置100および制御装置6の制御内容は実施の形態1と同じである。以下では、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
実施の形態2は、実施の形態1とは閾値の対象が異なるが、空気調和装置100および制御装置6の制御内容は実施の形態1と同じである。以下では、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
実施の形態1では、下限に設定された周波数を上昇させるか否かの条件を外気温と閾値との比較により行う制御である。それに対し、実施の形態2は、外気温と設定温度との差および時間帯を考慮して下限周波数を上昇させるか否かの制御を実行している。
冷房運転中の制御について説明する。図8は、8月の東京の1日の外気温と時間との関係を示す図である。図8では、東京の1991~2020年における統計記録において最も平均気温の高い8月の時間単位における気温変動が示されている。制御装置6は、各月における外気温と時間との関係を示すデータをメモリに記憶している。
冷房運転中の制御では、設定温度を冷房時省エネ推奨温度である28℃に設定し、温度による閾値を外気温-設定温度≧3℃と設定する。このように設定した場合、外気温から設定温度を減算した温度差が3℃以上となる可能性がある時間帯は、10~18時の間である。10~18時の時間帯は、外気温が31℃以上となる可能性がある時間帯であり、このような時間帯では温度差が3度以上となる可能性がある。制御装置6は、温度差が3度以上となる場合にロータリ圧縮機1の下限周波数を+Δf上昇させることによりベーン離間を防止する制御を行う。
暖房運転中の制御について説明する。図9は、1月の東京の1日の外気温と時間との関係を示す図である。図9では、東京の1991~2020年における統計記録において最も平均気温の低い1月の時間単位における気温変動が示されている。制御装置6は、各月における外気温と時間との関係を示すデータをメモリに記憶している。
暖房運転中の制御では、設定温度を暖房時省エネ推奨温度である20℃に設定し、温度による閾値を設定温度-外気温≦14℃と設定する。このように設定した場合、設定温度から外気温を減算した温度差が14℃以下となる可能性がある時間帯は、10~18時の間である。10~18時の時間帯は、外気温が6℃以上となる可能性がある時間帯であり、このような時間帯では温度差が14度以下となる可能性がある。制御装置6は、温度差が14度以下となる場合にロータリ圧縮機1の下限周波数を+Δf上昇させることによりベーン離間を防止する制御を行う。
実施の形態2では、一例として東京の外気温を参考にして時間帯を指定した。しかしながら、室外機7の設置場所(都道府県、国など)、あるいは時期(各月など)により外気温は変動するため、温度に関する条件は適宜変更すればよい。
ユーザは、リモコン13を用いて時刻の入力が可能である。制御装置6は、リモコン13に入力された時刻によって示される時間帯において、ロータリ圧縮機1の下限周波数を+Δf上昇させる制御を行うようにすればよい。なお、制御装置6は、メモリに記憶された統計データを参照し自動的に該当の時間帯においてロータリ圧縮機1の下限周波数を+Δf上昇させる制御を行ってもよい。
<まとめ>
本開示の空気調和装置100は、冷媒回路110と、冷媒回路110を制御する制御装置6と、対象空間の設定温度を入力可能なリモコン13と、を備える。冷媒回路110は、冷媒を圧縮するロータリ圧縮機1と、対象空間外に設置される熱交換器2と、冷媒を減圧する膨張弁12と、対象空間内に設置される熱交換器8と、対象空間外の空気の温度である外気温を検出する温度検出部4と、を含む。ロータリ圧縮機1は、ピストン102と、シリンダ101内を高圧側と低圧側とに仕切るベーン103と、を含む。制御装置6は、対象空間の温度が設定温度となった場合に、ロータリ圧縮機1を下限周波数で連続運転するように制御し、ロータリ圧縮機1を第1周波数で連続運転しているときに外気温が閾値以上となった場合に、ロータリ圧縮機1の下限周波数を第1周波数よりも高く、ピストン102とベーン103とが離間しない第2周波数である下限周波数+Δfに変更する。
本開示の空気調和装置100は、冷媒回路110と、冷媒回路110を制御する制御装置6と、対象空間の設定温度を入力可能なリモコン13と、を備える。冷媒回路110は、冷媒を圧縮するロータリ圧縮機1と、対象空間外に設置される熱交換器2と、冷媒を減圧する膨張弁12と、対象空間内に設置される熱交換器8と、対象空間外の空気の温度である外気温を検出する温度検出部4と、を含む。ロータリ圧縮機1は、ピストン102と、シリンダ101内を高圧側と低圧側とに仕切るベーン103と、を含む。制御装置6は、対象空間の温度が設定温度となった場合に、ロータリ圧縮機1を下限周波数で連続運転するように制御し、ロータリ圧縮機1を第1周波数で連続運転しているときに外気温が閾値以上となった場合に、ロータリ圧縮機1の下限周波数を第1周波数よりも高く、ピストン102とベーン103とが離間しない第2周波数である下限周波数+Δfに変更する。
好ましくは、熱交換器8に向けて流れる空気の温度を検出する温度検出部10をさらに含む。制御装置6は、温度検出部10が検出した温度が設定温度となった場合に、ロータリ圧縮機1を予め定められた第1周波数で連続運転するように制御する。
好ましくは、冷媒回路110は、冷房運転中にロータリ圧縮機1、熱交換器2、膨張弁12、熱交換器8の順に冷媒が循環するように構成される。制御装置6は、冷房運転中に外気温から設定温度を減算した温度差が第1温度以上(例えば、外気温-設定温度≧3℃)となった場合に、ロータリ圧縮機1の下限周波数を第1周波数から第2周波数に変更する。
好ましくは、冷媒回路110は、暖房運転中にロータリ圧縮機1、熱交換器8、膨張弁12、熱交換器2の順に冷媒が循環するように構成される。制御装置6は、暖房運転中に設定温度から外気温を減算した温度差が第2温度以下(例えば、設定温度-外気温≦14℃)となった場合に、ロータリ圧縮機1の下限周波数を第1周波数から第2周波数に変更する。
好ましくは、リモコン13は、時刻の入力が可能である。制御装置6は、リモコン13に入力された時刻によって示される時間帯において、ロータリ圧縮機1の下限周波数を第1周波数から第2周波数に変更する。
好ましくは、制御装置6は、温度検出部4の検出値が入力される制御装置6aと、温度検出部10の検出値が入力される制御装置6bとを含む。制御装置6bは、温度検出部10の検出値に関する情報を制御装置6aへ送信する。
本開示の空気調和装置100は、上記の構成を備えることによって、制御装置6が条件の成立によりロータリ圧縮機1の下限周波数を+Δf上昇させる制御を実行する。これにより、ロータリ圧縮機1においてベーン離間を抑制することが可能となる。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 ロータリ圧縮機、2,8 熱交換器、3,9 ファン、4,10 温度検出部、5 四方弁、6,6a,6b 制御装置、7 室外機、11 室内機、12 膨張弁、13 リモコン、100 空気調和装置、101 シリンダ、101a 吐出し室、101b 吸込み室、101c ベーン溝、102 ピストン、103 ベーン、104 スプリング、105 背圧室、110 冷媒回路。
Claims (6)
- 冷媒回路と、
前記冷媒回路を制御する制御装置と、
対象空間の設定温度を入力可能な入力部と、を備え、
前記冷媒回路は、
冷媒を圧縮するロータリ圧縮機と、
前記対象空間外に設置される第1熱交換器と、
冷媒を減圧する膨張弁と、
前記対象空間内に設置される第2熱交換器と、
前記対象空間外の空気の温度である外気温を検出する第1温度検出部と、を含み、
前記ロータリ圧縮機は、ピストンと、シリンダ内を高圧側と低圧側とに仕切るベーンと、を含み、
前記制御装置は、
前記対象空間の温度が前記設定温度となった場合に、前記ロータリ圧縮機を下限周波数で連続運転するように制御し、
前記ロータリ圧縮機を第1周波数で連続運転しているときに前記外気温が閾値以上となった場合に、前記ロータリ圧縮機の下限周波数を前記第1周波数よりも高く、前記ピストンと前記ベーンとが離間しない第2周波数に変更する、空気調和装置。 - 前記第2熱交換器に向けて流れる空気の温度を検出する第2温度検出部をさらに含み、
前記制御装置は、前記第2温度検出部が検出した温度が前記設定温度となった場合に、前記ロータリ圧縮機を予め定められた前記第1周波数で連続運転するように制御する、請求項1に記載の空気調和装置。 - 前記冷媒回路は、冷房運転中に前記ロータリ圧縮機、前記第1熱交換器、前記膨張弁、前記第2熱交換器の順に冷媒が循環するように構成され、
前記制御装置は、前記冷房運転中に前記外気温から前記設定温度を減算した温度差が第1温度以上となった場合に、前記ロータリ圧縮機の下限周波数を前記第1周波数から前記第2周波数に変更する、請求項1または請求項2に記載の空気調和装置。 - 前記冷媒回路は、暖房運転中に前記ロータリ圧縮機、前記第2熱交換器、前記膨張弁、前記第1熱交換器の順に冷媒が循環するように構成され、
前記制御装置は、前記暖房運転中に前記設定温度から前記外気温を減算した温度差が第2温度以下となった場合に、前記ロータリ圧縮機の下限周波数を前記第1周波数から前記第2周波数に変更する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の空気調和装置。 - 前記入力部は、時刻の入力が可能であり、
前記制御装置は、前記入力部に入力された時刻によって示される時間帯において、前記ロータリ圧縮機の下限周波数を前記第1周波数から前記第2周波数に変更する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の空気調和装置。 - 前記制御装置は、前記第1温度検出部の検出値が入力される第1制御装置と、前記第2温度検出部の検出値が入力される第2制御装置とを含み、
前記第2制御装置は、前記第2温度検出部の検出値に関する情報を前記第1制御装置へ送信する、請求項2に記載の空気調和装置。
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